劇場版・少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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束ねる強さ ①

 

 ――登場した初期こそ、モグリのビートライダーズというだけで気に入らなかったが、今回の件で、その評価は大きく更新せねばならなくなってしまった。

 

(コドモだから弱いわけじゃない。コドモだから同じコドモと手を取り合う。それがお前たちの強さか)

 

 バロンは、気絶した咲をヘキサとナッツから受け取り、膝の上で横抱きにし、軽く揺さぶった。

 

『室井。起きろ』

 

 すぅ

 

 あの救出劇の中にあってさえ目を覚まさなかった咲の瞼が、半分だけ開き、黒い目にバロンを映した。

 

「あ、は。戒斗くん、来てくれたんだぁ」

 

 咲はふにゃりと笑い、小さな手でバロンのフェイスマスクを撫ぜた。

 

『来ないと思ったのか?』

「ううん。絶対来るって信じてた。まだあのエセ執事とケッチャクついてないもん」

『そういうことだ』

 

 バロンは改めて咲をリトルスターマインのコドモたちに任せ、タイラントへバナスピアを突きつけた。

 

『答えろ。何故最初から俺を狙わず、こいつらを襲って、人質まで取った』

『あなたが私の邪魔をするからです。いずれ“財団”の支配者となる私に対して、それがいかに罪深いか。大切なモノを踏みにじられて思い知ればいいとね』

『俺に思い知らせる? 笑止。ならば最初から俺と戦って俺を屈服させればよかった。そうしなかった、いや、できなかったのは貴様が弱いからだ。少なくとも、後ろのガキどもよりは、貴様は弱者だ』

 

 リトルスターマインの彼らは自ら行動を起こした。オトナの誰にも頼らず、小さな小さな力を一つに束ね、仲間を信じる気持ちを武器に恐ろしいモノに挑んだ。その勇気を、決断力を、認めないわけにはいかなかった。

 

『――シャプールを渡せ』

『欲しいなら俺を倒せ。俺より強いことを示せ』

 

 その言葉により、両者の戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 咲の目の前で、バロンとタイラントの戦いは激しさを増し、ついにはバイクチェイスに突入した。

 

 バロンたちの姿が見えなくなった所で、咲はヘキサとナッツに一人でもう立てると伝えて、彼女たちの肩から腕を外した。

 アルフレッドに殴られた腹はまだにぶく痛むが、これしきで音を上げるわけにはいかない。

 

 すると、ヘキサがスマートホンを出して電話を始め、すぐ切って咲をふり返った。

 

「今、うちの車呼んだわ」

「ヘキサ」

「行きたいんでしょう?」

「うん」

 

 迷いはなかった。

 

 黒塗りの呉島家私用車が到着するなり、ヘキサが助手席、咲たちは2列ある後部座席に別れて乗り込んだ。

 ヘキサが運転手に行き先を指示した。

 車は走り出した。バロンとタイラントの決戦の場へ。

 

 

 

 

 

 車が採掘場に横付けされるや、咲は一番に車を降りて崖際に走った。ヘキサたちも車から降りて付いて来た。

 

 下ではバロンとタイラントがバイクによるデッドヒートを未だにくり広げている。

 

 咲が取り出したのは、普段は葛葉紘汰が使っているコアスロットルと、ピーチのエナジーロックシード。

 

「みんな、はなれてて。――変身」

《 ドラゴンフルーツアームズ  ミックス  ジンバーピーチ  ハハーッ 》

 

 ドラゴンフルーツと桃が混ざった陣羽織モチーフの鎧が咲を装甲し、月花へ変えた。

 

『先に言っとくけど、隠れてソゲキしてきたのはあんたが先だからね。ヒキョウだとか言わないでよ』

 

 月花は弓のストリングを引き、タイラントに照準を合わせてソニックアローを放った。

 

 ソニックアローを見事に被弾したタイラントと、それと相対していたバロンが崖上――月花を見上げた。

 

 月花は砂利の急斜面を滑るようにして、バロンたちのいる場所へ下り、バロンと並んだ。

 

『お前……』

『あなたには、あたしのチームを守ってもらった恩があるからね。リーダーとして、恩返しするのはとーぜんでしょ』

『――。ぬるい戦いをしたら承知しないぞ』

『チームメイトの前でそんなブザマ、するわけないじゃん』

 

 2対1の、アーマードライダー同士の戦いが、再開された。

 

 

 バロンがタイラントをバナスピアで斬りつけ、バロンが離れればタイラントの追撃より速く月花が桃色のソニックアローを放つ。

 初戦とは異なる、二人が互いの呼吸を読み、動きを合わせたヒット&アウェイ。

 

(前の合同ステージの時も思ったけど、この人、ちゃんとチームワークとれば強いのに。何でいっつも一人でやりたがるんだろ。これだから男ってのは!)

 

 

《 バナナスカッシュ 》

 

 ついにバロンが黄色いソニックウェーブでタイラントに必殺の一撃をくり出した。

 

 タイラントが膝を突いた。

 

『私はこんな所で倒れる男ではないはずだ……いつの日か、“財団”の全てを奪い取る……っ』

『そのつまらん理由が、お前の弱さの秘密だ』

 

 タイラントがふらつきながらも立ち上がった。

 

 その時、ドラゴンフルーツのエナジーロックシードが禍々しく明滅した。

 

 エナジーロックシードが爆ぜ、中から外へ芽吹くのを待っていたかのようにヘルヘイムの植物が大量に生え、タイラントを覆い尽くした。

 

 蔓が消えた時、そこにタイラント――アルフレッドの姿はなかった。




 チームの仲間を守ってくれた。ならばすでに戒斗も「仲間」。
 咲の中ではそういう方程式です。
 よってその「仲間」=戒斗を咲が放っておくわけがないのです。
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