劇場版・少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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束ねる強さ ②

『インベスに、なった?』

 

 ロックシードの暴走。今しがたの光景から想像できる原因はそれしかなかった。

 

 インベスとなったタイラントは、鳥の羽根をそのまま刀身にしたような形の大剣で、バロンと月花に襲いかかってきた。

 その剣捌きが、ただのアーマードライダーだった時より鋭いのは、どんな皮肉か。

 

 月花がバロンと共に斬りつけても怯まぬタイラントインベスは、逆に羽根の大剣で月花たちを容赦なく斬り裂いた。

 

『インベスになっただけでもオドロキなのに、めちゃ強じゃん、こいつ……!』

 

 

「駆紋戒斗!!」

 

 

 この声は。月花は驚いて崖上を見上げた。

 湊耀子が、パッションピンクのコートを翻し、立っていた。

 

 

 

 

 崖上から咲と戒斗の戦いを見守っていたヘキサたちの後ろから、意外な人物が現れた。

 

「コドモがこんなとこで何やってるの」

「あなたは……?」

 

 このような場所なのにハイヒールとミニスカスーツ姿の女は、コートのポケットから一つのロックシードを取り出した。

 

「っ、それ、朱月さんの……!」

 

 リンゴロックシード。自分と光実を襲撃した朱月藤果が変身に使っていたロックシードだった。

 

「どうしてあなたが」

「――彼女にはもう使えないから回収させてもらったのよ」

 

 もう使えない。生来の勘の良さから、ヘキサは悟ってしまった。朱月藤果がこの世にはもういないことを。

 半ば覚悟していたこととはいえ、はっきり突きつけられると、泣きたい心地がした。

 

「駆紋戒斗!!」

 

 女が崖下に向けて叫んだ。

 

 

 

 

 湊は何かをバロンに向けて投げた。

 

「プロフェッサー凌馬からの贈り物よ。さっさと倒しなさい」

 

 バロンがキャッチしたのは、金に縁どられたリンゴのロックシード。ナンバーは「L.S.TABOO」――禁忌のロックシード。

 

『いいだろう。使ってやる』

 

 バロンはためらいもなく、リンゴの錠前を開錠してバックルにセットした。

 

《 カモン  リンゴアームズ  Desire Forbidden Fruits 》

 

 バロンの鎧が変わる。リンゴの意匠の西洋甲冑。

 

 月花は知識より本能で悟った。

 ――これはエナジーロックシードやカチドキロックシードとはまた異なる、ヒトの手が造り出すロックシードが辿り着く、一つの極致なのだと。

 

 バロンはリンゴの形をした盾から片手剣を抜き、タイラントインベスに斬りかかった。

 

(速い。バナナの時とも、ううん、どのアームズの時よりもダンゼン速いよ! 盾も向こうのインベスの剣、受け止められるくらい強いし。イケる!?)

 

 思わず月花が見入っていると、バロンが急に片膝を突いた。

 リンゴの錠前から、ヘルヘイムの植物の蔓が生え、バロンに巻きつこうとしたのだ。

 

『だめ!』

 

 月花はバロンの前まで走って行って、リンゴの錠前から生える蔓を引っこ抜いた。蔓が次から次に生えても、手を止めずに引き千切り続けた。

 

(させない。戒斗くんをインベスになんて……初瀬くんみたいになんて絶対させないんだから!)

 

 すると、バロンが月花の手を掴んで止めた。

 

『俺は、っ、どんな痛みにも耐えてきた……』

 

 バロンが立ち上がる。蔓が、勢いを失っていく。

 

『この程度、どうということはない!』

 

 やがて蔓は完全にバロンから飛び散り、バロンは元の姿を取り戻した。

 

『戒斗くん……っ』

『決めるぞ。室井』

『うんっ』

 

 月花はカッティングブレードを拳で叩き落とした。

 

《 ドラゴンフルーツスカッシュ 》《 ジンバーピーチスカッシュ 》

 

 上空に、タイラントインベスへ向けて弧を描くように、ソニックアローを放つ。その軌道に、赤と桃色のポインターが並んだ。

 バロンが高く跳び、ポインターを次々に潜り抜けていく。

 ポインターによって強化されたライダーキックが、タイラントインベスが刃を揮うより早く、直撃した。

 

 バロンが着地すると同時に、タイラントインベスは爆散した。

 

 

 バロンはリンゴの錠前を閉じ、バックルから外して変身を解いた。

 月花もまた変身を解き、咲として戒斗に駆け寄った。

 

 戒斗の手の中。リンゴのロックシードは粉々に砕けていた。

 

 

 

 

 

 砕けたリンゴのロックシードを見ながら、戒斗は確信していた。

 

(これが俺の求める力――)

 

 ぱたぱた。軽い足取りで咲が駆け寄ってきた。

 

「戒斗くんっ。体だいじょうぶ? どこも痛くない?」

「何ともない」

「よかったぁ」

 

 咲は本気で安心している。葛葉紘汰と和解したとは聞いたが、まさかそれで自分に対しても同じ感情を持っているなら、――望む所ではない。利害の一致もない共闘など、駆紋戒斗にはぬるすぎる。

 

「こんなことは今回限りだからな」

 

 戒斗が両ポケットに手を突っ込んで歩き出した時だった。

 

 

「戒斗くん! 帰り、どうするの? ここまでバイクだったんでしょ。歩いて帰れるの?」

 

 ――これには戒斗も足を止めざるをえなかった。




 この後、戒斗は渋々、咲たちが乗ってきた車で一緒に市街地に帰りましたとさ。

 読者様のご意見を急きょ取り入れ、ヘキサと湊のやりとりを入れました。
 この時点ではまだ知り合いではないんですよね、この二人。

 今回が実は初めてです。こういうSP系で最終決戦まで書き切ったの。トッキュウジャーもキカイダーもラストバトルは書かなかったあんだるしあが。
 そのためなかなかに気力体力共に消耗しました……ふぅ(_ _)

 鎧武外伝を観終わって思った最初のことは一つ。
 「これ、大体プロフェッサーのせいじゃね?」
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