着地したロード・バロンを迎えたのは4人――咲、碧沙、舞。加えて、ドライブと共に来た婦警。
「オーバーロードに変身したな~~?」
その内、咲が一番にロード・バロンの前にやって来て、半眼で戒斗を見上げた。凄んでいるつもりなのだ、本人としては。(ザックやペコに言わせると)可愛げしかないが。
「どーすんのさ。これでSNS炎上したらジゴージトクだかんねっ。もし沢芽市民のバッシング始まったら」
『始まったら、お前が味方するだろう?』
指摘すると、咲は顔をわずかに赤く染めてそっぽを向いた。
「わかってるなら、いーけど」
『あと、リトルスターマインのガキどもと、俺のチームバロンも』
「わかってるなら! いーけど!」
「咲。ちっともいいように聞こえないわよ」
「戒斗、もうちょっと乙女心を思いやろう……?」
ロード・バロンはフンと鼻を鳴らしただけで全員への答えとした。
そして手近な手摺を飛び越え、未だ戦っている龍玄たちに加勢すべく、戦場に飛び降りた。
「もー! あいかわらずヒトの話聞かないんだからっ」
「心配?」
「ベツにっ。なんかもー、慣れた。あたしが心配なのはむしろ……」
咲は空を、そこから迫りくる天上の大徒花――惑星メガヘクスを見上げた。
「紘汰のことが気になるの?」
舞のいたずらっぽい問いに、咲は無言で肯いた。
「あなたも。ドライブが気になるんじゃない?」
舞が問いかけた相手は、霧子だ。
「べ、別に。泊さんは“仮面ライダー”ですから。……まあ、宇宙で戦うなんて初めてだから、っていう部分は、ないわけじゃないですけど」
相手を想っていても、心配だと言い切れない気持ちは、ほんの今日までまさに思春期真っ盛りだった碧沙にはよく理解できた。
舞は微笑んで両手の平を碧沙たちに差し出した。
「手を出して」
碧沙と咲は右手に、霧子は左手に。舞の手にそれぞれの手を置いた。
すると、まるで映画のスクリーンのように、機械惑星メガヘクスを走る赤い改造車――トライドロンと、その中に乗った鎧武とドライブの映像が視えた。
トライドロンは、惑星メガヘクスの閉じゆく窪みを全速力で駆け抜けている。それを上空から追う、機械の巨大コウモリ。
“もっと早く行けないのかよ!?”
“分ぁってるうるさいから!”
「紘汰くん……」
「泊さん……」
咲と霧子がほぼ同じしぐさで頭を抱えた。
巨大コウモリを追い払うため、鎧武がドライブに全力でアクセルを踏み込むよう言っている。すると、トライドロンのタイヤがオレンジの果汁を後方に飛ばした。果汁を目に食らった巨大コウモリが遠ざかって行った。
しかし、後ろが片付けば次は前。
迎撃ドローンが幾重にもレーザーをトライドロンに発射した。
ドライブがこれ以上ないくらいにアクセルを力一杯踏み込んだ。トライドロンはレーザーの網を抜けた。
鎧武とドライブを乗せたトライドロンは、もはや惑星の
“急げ急げ急げ!!”
“分ぁかってるから!”
……状況とは裏腹に、どこまでも緊張感のない二人のライダー。さすがの碧沙も肩を落としそうだ。
トライドロンを止めるべく、左右の壁が狭まっていく。それでもトライドロンはギリギリまで走った。
“オレンジタイヤ、W果汁キックだ!”
“お、おうっ”
ドライブがギアの横のレバーを引くなり、鎧武とドライブがトライドロンの天井を突き破って空に跳んだ。
彼らは空中で一回転し、それぞれソニックブームをまとったキックをくり出す。
「紘汰くん!」
「泊さん!」
「「いっけええええええッッ!!」」
咲と霧子が同時に叫んだ。
オレンジ色と赤色のWライダーキックは、惑星メガヘクスの核を貫き、爆散させた。
爆発が惑星中に広がっていく。
鎧武とドライブは、オープンカー式になったトライドロンに再び着地し、惑星の爆発から離れていく。
「「やったぁ!」」
碧沙は咲と両手を握り合って飛び跳ねた。
横にいる霧子も、輝くような笑顔を浮かべていた。
そんな碧沙たちを、舞は、まさしく女神の微笑みで見守っていた。
杖剣を揮っていたロード・バロンの前で、インベスが唐突に動きを止めた。
見回せば、どのインベスもロイミュードも、煙を上げてショートしたかのように停止している。
(やったか。葛葉)
空を見上げて確かめるまでもない。葛葉紘汰には、こんな所でこの程度の敵に敗れてもらっては困るのだ。
遠くからの振動と爆発音。あの鋼鉄の花の塔もまた、惑星メガヘクスと運命を共にしたようだ。
「戒斗くんっ」
「兄さん!」
咲が自分に、碧沙は呉島兄弟に、それぞれ駆け寄り、無事を確かめて安堵を浮かべている。
戒斗はオーバーロード化を解いた。
「俺がこれしきの敵に負けると思ったのか?」
「思わなかったけど、心配なものは心配だったの!」
あちらでも光実と貴虎が変身を解いて碧沙を迎えている。
「兄さん……その……ケガとか、してない?」
「多少は。でも大したことないよ。ね?」
「ああ。不安にさせたな。すまない」
「そ、そういうわけじゃ。その、一応、家族だから」
戒斗は咲に視線を戻した。
急にじっと見られた咲は、気まずげに眉根を寄せ、唇を尖らせた。
「それじゃ行きましょうか」
歩み寄ってきた呉島三兄妹の中で、パン! と、光実が手を打った。
「行くって?」
「紘汰さんと舞さんのとこ。あの人たちのことだから、誰にも言わずに帰るに決まってます」
「あれ!? そういえば舞さんいない!」
「大丈夫、咲ちゃん。二人が出発する場所なんて一つしかないんだから。ガレージに帰って他のみんなも一緒に。みんなで。二人を迎えに行きましょう」
眩いばかりの光実の笑顔に、全員が苦笑したり肩を竦めたりした。
「そういうわけなんですけれど……詩島さんはどうされます?」
碧沙が恐る恐るといった調子で、婦警に声をかける。
「私はここでドライブを待ちます。私は彼のバディですから」
「そう、ですか。それじゃあ、さようなら。駆けつけてくださって、本当に、ありがとうございました」
碧沙は深々と頭を下げ、上げた。
ほのかながらも霧子は笑み、敬礼を返した。
ちょうど紘汰と進ノ介が帰ってきて海沿いで握手を交わしている頃ですね。
居残り組はどうしていたか。
紘汰、舞、ミッチにはバッチリ読まれてるよ(^v^)
この後、紘汰は舞と鎮守の森へ、進ノ介とベルトさんは霧子を迎えに行って3人仲良く久瑠間市に帰るのでしょう。
もちろん、紘汰と舞に関してはこれで終わりじゃないんですけどね。
次回、本当の本当に最終回です。