side ー一夏ー
「う、う~ん…」
しばらく意識を失っていたのだろうと目を覚ました俺はまだ覚醒してない状態で辺りを見回した。
「…ここはどこだ?」
そこはまるで監獄のような場所だった。無機質な鉄の壁に覆われ部屋の中にはベッドとテレビがポツンとあるだけだった。部屋を見回して少しずつ意識を取り戻していた俺はなぜここにいるのかを思い出した。
「そうだ。俺は木彫り熊の試練をクリアして…」
そして意識を失う前に見たあの光景を思い出しまたも頭が混乱しそうになった。
楯無さんが他の生徒を殺した。
その光景はあまりにも信じられなかった。簪が死んだことを知った時から様子がおかしかったと思っていたがまさかあんなことになるなんて。
そうして頭を抱えていたときにふと突然置いてあったテレビの電源が付いた。
『こちら現場となったIS学園です!学園の中には生徒たちや教師たちの死体が多数発見されており中には代表候補生と呼ばれる生徒たちもいることから警察はテロリストによる犯行ではないかと調査を始めております!』
そこにはIS学園が映っておりたくさんの警察や救急隊員が映っていた。当然だった。あれだけのことがあったのだ、警察が動かないわけがない。現場となったのはIS学園だ。そこには別の国からきた生徒たちもいる。今回の一件で日本は猛烈な批判を受ける。日本は断固として犯人を探すだろう。
しかし、ダルマや木彫り熊という非常識な存在が生徒を殺したなんて誰も信じない。犯人を捕まえることは見込めないだろう。
『更に警察の調査では行方不明となった生徒も存在しており行方不明になったのは唯一の男性IS操縦者の織斑一夏さん、中国代表候の鳳鈴音さんそしてロシアの代表候補生であり生徒会長の更識楯無さんが行方が分からず警察は三人の行方も探しており詳しい情報を聞く方針を進めています。』
「やっぱり生き残ったのは俺たちだけか。」
わかっていたことだが俺たち以外は生きている人はいない。いつも通りの平穏はこんなあっさりと崩壊してしまったのだ。そんな風に項垂れているとふとテレビからノイズ音が聞こえてきた。
「…?」
いつの間にか先ほど流れていたニュースは消えておりテレビ砂嵐を流していた。そして砂嵐が消えテレビに映った一文を見て俺は息を呑んだ。
『鬼から隠れて生き残ったら勝ち』
「!?」
そこに書かれている一文を見て俺は悟る。また始まったのだと。そのとき出口から鍵が開く音が聞こえた。すぐに扉を確認するとすんなりと開いた。そこは監獄のように鉄に覆われた道があった。
「どう見てもIS学園じゃないな。」
完全に別の場所にいることだけは分かった。おそらく眠っている間に移動されたのであろう。ということは鈴や楯無さんもどこかにいるはずだ。
「とにかく鈴たちを探して「ギャアアアア!!」!?」
突如聞こえてきた悲鳴に俺はすぐ聞こえた方向を見た。聞こえてきたのは男の声。鈴たちではない。俺はすぐに悲鳴が聞こえた方向に走った。悲鳴の主の安否と今ここで何が起きているのかを知るために。しばらく走ると誰かが倒れているのが見えた。
「お、おい!大丈夫か!?」
「く、くそ!こんなところで…。」
俺は倒れていた男を起こし声をかけた。年は俺と近く髪は銀髪で派手なアクセサリーを付けており顔はイケメンだが恐い印象があり不良のような風貌だった。男は体中に怪我をしており周りの血の量からもう長くはなかった。
「一体何があったんだ!?誰にやられたんだ!?」
「き、気をつけろ…奴らは…どこまでも追ってくる…。そして俺たちを…。」
男は最後の力を振り絞り腕を伸ばし指にはめた指輪を見つめる。
「申し訳ありません…十代目…最後まであなたをお守りすることが…できませんで…」
その言葉を最後に腕は倒れ男は息を引き取った。
「くそ!俺がもう少し早く来ていれば…。」
助けられたかもしれない。そんなたらればなどもはや意味がないと分かっていてもそう思わずにいられなかった。
俺は男を床に寝かせ指輪をはめた腕を彼の胸に置いた。おそらくこの指輪は彼にとってとても大切なものだと思ったからだ。今の自分にはこれぐらいしかできない。
俺はその場を離れながらふと俺は男が言っていたことを思い出す。
"奴らが追ってくる"
"奴ら"とはおそらく男を襲ったものでありテレビで言っていた"鬼"のことだろう。つまりその鬼から逃げ続けるのがこのゲームのクリア条件だろうか。
「あれ?そういえば。」
俺は今さらになって気づいた。白式がない。
おそらく眠っている間に盗られたのであろう。となると今の自分には完全に抵抗できる力がないということになった。
「きゃっ!」
「うおっ!」
考えている途中に後ろから衝撃がきた。誰かが後ろからぶつかってきたようだ。後ろを振り返るとそこには制服を着た女の子がいた。
「す、すいません!走ることに夢中で前を見ていなくて!」
「だ、大丈夫だ!俺も考え事していたから気づかなくて!」
その女の子は髪をポニーテールにしており大人しい雰囲気をしていた。しかしその雰囲気とは逆に身長は俺と同じぐらいの高さがありある一点がとても発達していた。
「ハァ…ハァ…」
彼女は息を切らしていた。そんな彼女を見てまるで何かから逃げているように見えた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「!そうです!早く逃げないと!」
すると彼女の後ろからもうひとつ足音が聞こえてきた。その方向を見るとそこには異質な存在がいた。
「な、なんだよあれ…?」
それは一言で言うならロボットだった。人型で全体は白いボディだがパーツごとに赤、青、黄の塗装がされていた。そして左手に赤い盾、右手には光る剣を持っていた。
「あ…ああ…」
女の子は怯えた表情をして震えている。どうやらこれから逃げていたようだ。少しずつ近づいてくるロボットを見て俺は彼女の手を掴む。
「走るぞ!」
俺は彼女を連れて逃げた。案の定ロボットは追ってくる。ISが無い以上逃げるしかない。仮にあっても前のようにルール違反で殺される可能性がある。とにかく今はこの場から逃げるしかなかった。しかし相手はロボット。無論疲れるなどということはない。こちらが体力切れをおこして捕まればどうなるか火を見るよりも明らかだ。そのために何とかやり過ごさなければならない。
幸いここはかなり入り組んでいるようだ。これなら曲がり角を利用すれば逃げられるかもしれない。そう思いながら曲がり角を右に行くとそこには真っ直ぐの道がありその左側には俺が閉じ込められていたのと同じ部屋があった。
「ここだ!早くこの部屋に!」
「は、はい!」
俺は彼女と共に部屋に入り扉を閉めた。足音が聞こえてくる。ここに入って来たら一貫の終わり。俺たちは通りすぎることを祈りながら息を潜めた。
「………」
「………」
どんどん近づいてくる足音。扉の前まで来ると足音が止まった。
もう駄目かと思った…だが再び足音が鳴り扉から遠ざかって行った。足音は小さくなっていき最後は完全に聞こえなくなった。
「はぁ~…助かった。」
俺は安堵の息を吹く。実際に生きた心地などしなかった。もし入って来られたらどうなっていたか考えただけでぞっとする。
「あ、あの…」
一緒に逃げた彼女が近づいて来て頭を下げていた。
「ありがとうございます。あの時手を掴んでくれなかったら私…」
よほど怖かったのであろう。どこかも分からない所であんな訳も分からない存在に襲われば誰だって怖い。俺も実際にはそうだがIS学園での経験のお陰でこういう時でもある程度冷静に行動出来るようになった。
「いや無事で良かった。ところでここにいるってことは君もダルマと木彫り熊の…」
「…はい。そのせいでみんなが…」
震える彼女を見て俺は自分の失言に気づく。
「ご、ごめん!変なこと聞いて!」
「いえ大丈夫です…。大丈夫ですから…。」
体を震わせている彼女を見て今の質問をした自分を殴りたくなった。だが今の質問で分かったこともある。あれはIS学園を狙ったテロだと思っていた。しかし制服からして彼女はIS学園の生徒ではない。となると他校の生徒だ。死んだあの男もおそらく他校の生徒。つまり襲われたのはIS学園だけでは無いと言うことだ。
そう結論した後まだ彼女の名前を聞いていなかったことを思い出す。
「そういえばまだ自己紹介をしていなかったな。俺は織斑一夏。君は?」
震えながら彼女は自分の名前を名乗った。
「私は大河内アキラです。」
この時俺はまだ知らなかった。
今置かれている状況の異常さがどれだけ自分の常識を越えているのかを
2年ぶりの投稿です。待ってくれていた方大変申し訳ありませんでした。今回久しぶりに書こうかなという気力が湧き完成しました。次回は何時になるのかもはや自分でも分かりません。ですので期待しないようにお願いします。
今回別のキャラたちが登場しました。一人は名前は出ていませんが誰かは分かりますか?
そしてネギまから大河内アキラが登場しました。なんとなく平井翔子に似ているかなと思いまして。
彼女がこれから一夏とどうなっていくのか。その話一体何時になるのか。