「僕が駆け付けた時にはすでにアルバスが倒れていました」
「だったら!治療とか!」
痛がってる子供前にして何にもしないとかあるか!?と叫んだハリーにレイは毅然と対応する。宝物が傷ついてこんなに狼狽えるのならもっと大切にしてやりゃいいのに。
「禁じられた森だぜ、ハリーポッター。何が原因でケガしたかわかんない相手にいきなり治療もへったくれもないだろ。ハナハッカの傷薬がいかに万能であってもさ」
汎用薬が効かない、さらに言えば悪化を招く呪いに心当たりがないとは言わせないぞ。そう凄めば元闇祓いはテンションを下げた。おっかない保護者相手だと話も通じないのでいったんはその激情を収めてもらうしかない。
「マクゴナガル先生に聞いた。それに、手紙もよんだ。ありがとう、レイ。でももう少し早く!」
「ハリー」
「あぁ、もう今のは八つ当たりだ忘れてくれ」
ジニーから飛んだ鋭い音にハリーの威勢は完全に折られた。これでようやく普通の会話ができる。レイは怒鳴られたことで強く打ち付ける鼓動を理性でいなし、彼らに話しかけた。
「ドラコごめん、スコーピウス怖い目にあったかも」
もちろん、教育の観点からいえば二人には今すぐに雷を落としたほうがいいのかもしれない。けどいったん大人の話をさせてくれ、とレイは教師の顔をする。
「原因不明。なんであの子たちがホグワーツのものではない制服で禁じられた森にいたのか。僕にはちっともわからない。転校の意向も聞いてないんだけけど、親御さんたちからご意見は?」
男親たちは困ったように俯いた。そういうもんだってのはわかってる。それに、この二人は学生時代からありとあらゆる点で言葉足らずの空回り野郎だということも。
「あのさぁ。これはハセオ先輩としての意見ね。勿論?都合上、君たちより彼らとうーんと長く一緒にいれるって利点もあるんだけど、君ら自分の子供とちゃんと話してる?誤魔化してない?自分の話ばっかりしてない?僕たちは昔子供だったよね。子供だった頃に大人に侮られて腹を立てたこと、忘れてない?」
レイが言い切るとドラコは申し訳なさそうにし、ハリーは目の奥に炎を燃やした。対照的な様子にこれは一波乱あるぞ、主にポッター由来で。とため息をつきたくなるのも仕方がない話だろう。
それに、監督不行き届きを咎められるのは当たり前の話なのだ。親の目が届かない場所で怪我をしたのだから。
「僕が言いたいのはそれだけです。駆けつけたのが遅くってお宅の息子さんに怪我をさせてしまったことは学校の問題です。あの子たちは悪くない。だって、ここは校舎内。自由と責任のバランスを学ぶための箱庭だ」
レイはそれだけ言うと医務室を後にした。次の根回しは校長室だ。なんだかどっと疲れた気がする。
休憩と叫びだしたいところではあるが今の自分は学生ではなく責任深き大人の立場だ。上司でもあるマクゴナガル校長に対して今日一日かけて行ったことの報告義務がある。
それでも、今日一日だけで向こう五年分の驚きと涙と疲れが降りかかってきている気がする。もう少しバランスよく表れてくれよぉ、レイはフェリックスフェリシスの副作用が出始めた重たい体に元気爆発薬をぶちこんでやっとの思いで校長室へとたどり着いた。
「今日は一日大変でしたね」
出された紅茶に本気で泣いてしまったレイである。ミルクティだけはいまだに飲めない自分に優しい、少し薄めのイングリッシュブレックファースト。お茶うけに出されたのはホグズミードに最近できたパティスリーのケーキだった。
「きょ、きょうしって、こんなに。こんなにたいへん……!?」
「あなたはよくやっていますよ」
「ひぃいん、アルバスがケガしたぁ……」
「私はグリフィンドールのわんぱくに慣れていますから教師としてその繊細さを懐かしく思いますよ、ハセオ。生きていればケガは治ります」
お掛けなさい。数時間ぶり二度目の着席は足が疲れていたことを思い出させる。今日一日酷使した足はポカポカを通り越して発熱している気さえした。
「ハリーが乗り込んでくる前に話を聞きたいのですができそうですか?」
「やっぱり、来ますよね。ああ、モンスター気味のペアレントに喧嘩売っちゃったぁ……!絶対魔法省から圧力がかかって俺、退学だぁ!!!」
「ハセオ」
「あい……」
「教師の進退を決めるのは魔法省ではなく、校長です。それと、貴方の辞任を退学と呼べる時期はとうに過ぎています」
それに、あの子の元寮監として言ってやりたいことをあなたが言ってくれて多少すっきりしました。
どことなく微笑みを浮かべているマクゴナガルはレイにケーキを勧めた。フルーツが苦手な彼のために用意したのは重たいガトーショコラ。
「考える不安の八割は起こらないといいますよ」
ただでさえあなたは悲観が強いタイプです。一日中駆けていたでしょうから、一口でもお食べなさい。
促されるままにレイはケーキを口に入れる。濃密で蕩ける舌ざわり。鼻から抜けるカカオの香りも華やかで奥深い。今まで食べたどんなガトーショコラよりもレイの心にしみた。
「さ、何があったのか話してもらいましょうか」
マクゴナガルが今回の事件の状況説明を求める。ここからはレイの腕の見せ所だ。子供たちを危険に巻き込まず、かつ、自分の願望をかなえるために丁寧な嘘を重ねる必要がある。
「アルバスとスコーピウスは列車から飛び出し、逃亡。校長もお察しの通り、先導したのはアルバスかと思われます。
またこれは冗談ですが、さすが双子の関係者ですよね。とうとう動いてる列車から逃げやがった!かつて生徒だったものとしては鼻高々。
とはいえ、今の僕は立場が違います。教師としてはこの暴挙、許してあげることができません。寮監の手に余りますので校長からの罰則をお願いします。少しは懲りてくれるといいんですが。
また、同時に列車の魔法強化を次の列車稼働までのタイミングで教師業務に盛り込みましょう。これは明確な警護の穴です」
まずは、事実の羅列とするべきことへの提案。少々の冗談を交え、軽やかかつ繊細を演じた。これは教師としての面である。
そして、紅茶をすすり、校長が欲しいであろう今回の脱走事件の核心に触れる。
「列車から飛び降りて向かったのは聖オズワルド魔法老人ホーム。どうにもエイモスディゴリーに面会に行ったらしいんですよね、あの子たち」
「どうしてここでディゴリー氏が?」
「それが、わからないんです。担当癒者にも聞いたんですが、その時姪御さんがいらしていて癒者自体は席を外していたみたいでして。内容までは知らない、と。ただ妙なんですよね。九月一日に学生が、列車発車後の時間帯に、親の同伴なしで制服のまま、彼に面会を求めている。そのことを疑問に思う人間が一人もいなかった、と言うんです」
イギリスに住んでいる魔法使いで九月一日に特急列車が走っていることを知らないものなどいないはずなのだ。にも拘わらず、あの場には学校に連絡を入れるものはおろか引き留めるものすらいなかったのだ。さすがに異常事態である。
「何もかもがおかしいんです。列車の魔法を確認したところ、途中の高架橋に差し掛かった時に飛び降りてる。あそこから老人ホームに子供の足で向かうのはまずもって不可能。二人がマグル生まれならバスや電車という公共交通手段を活用することも考えられますが、彼らの出自を考えればありえません。何か明確な手引きがあるとしか」
誰が、どんな手法をもって、何の目的で。推理小説じみてきた学校始まって以来の大問題にマクゴナガルは眉間に手をやった。
「引き続き僕は二人に目を向ける、重点的に。一旦はそれでどうでしょうか。学校内にいればおかしなことには巻き込まれ難いでしょうし。今のホグワーツには賢者の石も秘密の部屋もトライウィザードトーナメントもありませんから」
レイが少し棘を孕んだ物言いをする理由は彼女も知っている。彼もまた巻き込まれた世代の一人であるのだ。だから、今も昔も彼は大人のことを嫌っている。それは自分が大人になった今でも。
「もちろんですハセオ、しかし、」
マクゴナガルが何かを言いかけたところで校長室にノックの音が響く。ちらりとマクゴナガルが時計に目をやると確かに約束の時間だった。
「申し訳ありませんハセオ、続きはのちほど」
「ええ、もちろん」
レイが扉を開ければそこにいたのはハーマイオニー。過去でのことも相まって文句の一つでも言いたいところであるが、そこは大人。柔らかな嫌味程度に留めておこう。英国式である。
「あぁ、大臣。随分とお早いご登場で」
「大臣……?あなた私にそんなふざけたあだ名付けたの」
ふざけたあだ名、はて。と考えるも理解ができない。いかんせんレイはハーマイオニーが苦手でこれといって話したことがないのだ。勝手な同族嫌悪というかなんというか。見てるとこっちがそわそわしてしまう言動を繰り返す彼女はレイにとっては自分の恥ずかしい部分の詰め合わせみたいな。ともかく苦手なのだ、このおしゃべりおせっかいのことが。
いつもより威厳のなさそうに見える、つまりは金がかかってなさそうな衣服に身を包み彼女は校長室へと入る。
彼女のファッションチェックをするわけではないが、魔法界のトップらしく小綺麗で質のいい衣料品にこだわっていたはずなのに。それとも、普段の彼女はこうなのだろうか。いやぁ、あのハーマイオニーグレンジャー女史に限ってそんなことあるか?
けれど、入れ替わって外へ出たレイには何かがおかしい、ということしかわからない。
「あ、ケーキ……」
違和感にモヤつきつつも、最後まで食べることができなかったことに気づいたレイである。
ちきしょう、グレンジャーのお大臣め。俺のおやつタイムを邪魔しやがって。うぐぐ、とレイがうなっていれば猫用の出入り口から可愛く包まれた箱がやってきた。
ちなみにこの猫扉はマクゴナガルが校長特権でこっそり付けたものである。学校中の猫ちゃんだけが自由に出入りできる秘密の出入り口だ。
もしや、とラッピングをほどけば中には食べかけのケーキ。レイはそれを受け取るとウキウキ自室へと戻った。そして、これだけは邪魔されてなるものか、と鬼の形相で口の中に入れてしまったのである。いつの世もカロリーは、美味い。
どうせ、今晩は長いのだ。レイは覚悟を決めて口の中にカフェイン錠剤をぶち込んだ。甘味の直後に苦み走ったそれを口内に招くのは抵抗があったが仕方がない。
元気爆発薬の再接種はおそらく脳がハイになりすぎる。教師として説明責任がある以上、あっぱらぱーになるわけにもいかないのだ。ゆえに、こういう場合はマグル製だが高純度のカフェインが望ましい。馬鹿になることはない上に、効能が段違いである。
「っしゃ、打倒モンペ!負けるな俺ちゃん!」
うぉー!と気合を入れればドアノッカーが来客を告げる。早速一人目だ。初戦からポッターじゃないといいな、といきなり弱気を発揮してしまうのが自分の悪いところである。
「はぁい、どうぞ」
招き入れれば少しくすんだプラチナブロンド。徐々に彼は彼の父君に似てきている。ドラコだ。
見るからに顔色が悪いが仕方のないことだろう。たった一人の息子があんな目にあったのだ。アストリアに次いでスコーピウスの身にまで何かあったらおそらく精神を壊してしまう。
「スコーピウスの様子は?」
「一日連れまわされて疲れたんだろう。よく寝ている」
「そっか、後でフォローしとく。で、アルバスにもよく言い聞かせておくね」
ポッター憎しといえど息子の親友だ。複雑な思いだろう。友人の大切さを知っている自分たちは彼らを離すことができない。それに、だ。離したとてどうにかして繋がろうとする。大人の都合で友情を割くことの無意味さは理解しているつもりである。
それに、レイは知っているのだ。かつてドラコがほんの少しだけ彼ら三人を羨ましがっていたことを。
「レイ、説明を」
「こ、これでも先輩だぞ、と言いたいところですが。今の立場は教師と父兄。さもありなん……」
スコーピウスがどこまで語ったかは分からないが、あの賢い子はおそらく、余計な事、は口にしていないはずである。
レイは先ほどマクゴナガルにした説明にほど近いものをドラコにも語る。勿論学校の内部事情は省いた。
そして、彼には代わりの情報を渡す。デルフィーニディゴリーの件だ。
「現状、犯人探しをするのであれば怪しいのはその姪っ子だ。ドラコ、デルフィーニの名前に聞き覚えは?」
「いいや、ない」
ディゴリー家は純血名家でこそないが古く続く由緒正しい魔法族の家だ。にもかかわらず、ドラコが知らない、となると不審度は跳ね上がる。何が目的かわからないのが一等気味が悪い。
ポッター家やマルフォイ家に恨みがあり、誘拐?いいや、それは違う。そこが目的であればタイムターナーなんて持ち出さないだろう。おそらくあれは彼女の入れ知恵。そうでなければありえない。
「余裕があったらあたってくれる?杞憂ならそれでいい。薬が効いてるときに聞いた名前なんでね。なんかある、かも」
「薬?」
「フェリックスフェリシス。あ、もう効果切れてるから変なことにはならないよ」
はらりと手を振って薬が抜けていることをアピールする。体は最高に疲れていて精神のへずれっぷりも今世紀まれにみる有様だけれど、今のレイはカフェインの効果も相まって過去一番に元気いっぱいだ。
人生半分早回しなんだから、これくらいの個人的薬事法違反は見逃してほしいものである。
「あともういっこ。これは君の表情を曇らせる話題。でも、聞いておきたくて」
「もったいぶらなくてもいい」
「君、タイムターナー、持ってたりしないだろうね?」
無論、スコーピウスの出自についての件とは関係ない。
そう前置きをしてもこれが彼にとって触れられたくない話題だということはわかっている。それでも、あれが存在している以上確かめないわけにはいかなかったのだ。
「エイモスディゴリー氏を訪ねた時に彼が言ったんだ。二人とデルフィーニは魔法省にタイムターナーを取りに行ったって」
「なるほど……繋がった」
ドラコは先日魔法省法執行部から捜査を受けたノット家についての話を始めた。そこで押収されたのが非合法タイムターナー。
セオドールノットがイッケイと同じくらい器用で才能がある魔法使いだとは知っていたが、まさかタイムターナーを作れるほどだなんて。
「それを隠してたってわけか、魔法省は」
「だろうな。すべて壊した、などとよく言えたものだ」
「今思ってること言っていい?」
「あぁ、たぶん同じことを考えている」
「「これだからグリフィンドールはッ!」」
子供に盗まれるなんてなんてずさんな隠し方。ありえない。万に一つもあっちゃいけないお粗末な警備体制に二人は頭を抱えた。
「え、じゃあまだ手元にあるよね!?どっちが持ってる?」
「スコーピウスは持っていなかった」
「じゃあアルバスか!後で回収しなきゃ……!」
そんな風に慌ててみせるレイだが、そのポケットに問題の品が入っていることは彼しか知らないことだ。あの一瞬のうちにくすねておいたのだ。子供らに持たせておいても碌なことにならないだろうから。
後で出どころを確認しなくちゃと思っていたが手間が一つ省けた格好となる。アルバスの怪我もこれ由来なので呪いの心配をしていたのだ。
ノット製、ということはきっとあれは試作品か何かなのだろう。だからこそあの短時間。使い道は多岐にわたるが、使い方には細心の注意を払わなくてはならない。
この幸運のおこぼれに預かっているのは重々承知だ。それでも、いや、本当に。魔法省の危機管理ってどうなってるんだろう。ダンブルドアももういないのにどうして子供が危ない目に合わなきゃいけないんだろう。運命とか予言とか呪いとか心底どうでもいい。
誰かの人生を変えてしまうような悲劇、起こっていいわけない、そう思うのだ。
「それはそれとして後でグレンジャー吊るす」
「グレンジャー?あの女も一枚噛んでるのか、なんたる……!」
「一枚噛んでるっていうか……んー?」
そこでレイは違和感の正体に気が付いた。そしてこれに気付いているものはおそらく世界にあと二人だけということも。
であれば、今ここでドラコに『おかしなこと』を口走るのは賢明とは言えない。
「今のグレンジャーは別件。校長との今後トークに割り込んだの根に持ってるだけ。今日は一日が長すぎて僕の脳内が大混線してるから許して、ドラコ」
少し強引ではあるがレイは話を変える。彼はスリザリンにおいてもピカイチの頭脳の持ち主だ。
勉強よりクディッチが好きだが、優雅な上流貴族。幼いころから積んできた一流の教育と読書量が違う。努力と修練を積める秀才タイプなのである。そんな彼にこの違和感を見せるわけにはいかない。
「でもこれではっきりした。これが偏見だってわかってても言わせて。やっぱりグリフィンドールのこと嫌いだよ、僕」
教師の仮面を外す。もちろん、わかっているのだ。今の子供たちに罪はないと。それでも、四寮の隔たりが大きかった最後の世代として声高に唱えよう。赤に金の騎士道精神とは決して交わらぬ道があるのだと。
「スコーピウスを守りたいのであれば周りから固めたほうがいい。僕が手伝うし、絶対に守るよ」
なんなら、ここで約束使うかい?レイがそういえばドラコは何のことだかわからない、と言いたげに首を傾けた。
「え、言わなかったらなしになった可能性がある?黙ろうかな、今からでも遅くない?」
「まて、思い出す。貸しはきっちり返してもらわねばならない……」
「ノブレスオブリーシュってことにしといてよう」
「……、グリフィンドールの敵は我らの仲間、だな」
余計なこと言うんじゃなかったや、とレイはいうものの顔には笑みが浮かんでいる。これは彼にとって当然のこと。約束の行使にはふさわしくない。
「私は、君によくされる立場でもない」
「えぇ?あんなに良くしてくれたじゃないか」
できる範囲で、いつだってドラコは優しかったのだ。お菓子もくれたし、はみ出し者をのけ者にしないでくれた。
「だから今度は僕がここを守ろうと思ってる」
ドラコも手伝ってと手を差し出せば、当たり前だと握られる。
スリザリンこそ我が家。ホグワーツの中で一等深い場所にある。水で和らぐ太陽光は柔く優しく降り注ぐのだ。
「まぁ、目下ポッターだね」
「ポッターだ……」
確かめ合った変わらぬ情。その一方で二人が思い描いてしまったのは天敵の顔だった。
「あの顔見てた?ポッターの」
「あぁ、気に食わない、を全面に押し出してたな」
「日本の歴史の話なんだけどさ。忠臣蔵ってのがあってね。その行いはダメだよ、を冷静かつ遠回しに優しく伝えた上司にぶちぎれて切りかかった挙句、その咎で処刑された人がいる」
「どこにでもいるんだな」
「しかも、そのあとその処刑された側の関係者がさ、優しい上司に食ってかかるんだよ。最終的に優しい上司はそいつらに押し入られて殺されんだよね」
僕、大丈夫かしら、と遠い目をしだしたレイにドラコは持ってきていたクッキー缶と彼の好物であるハニーデュークスのキャンディーを差し出した。すっかり忘れていた手土産である。スコーピウスもかなり世話になっている、と聞いているので息子が好む紅茶の茶葉も差し入れてやった。
「せっかくだから飲んでく?お茶」
「魔法薬学の教室で飲む茶は初めてだ」
「あ、ほんと。スネイプ先生によく飲ませてもらっててさぁ、」
なんて昔話トークに花が咲く。レイからすれば現実逃避以外の何物でもないのだが、久方ぶりに生徒でも教師でもない人間とホグワーツについて話せたことが嬉しかったのだろう。珍しく随分と遅くまで話し込んでしまった。
だから、その裏でスーパーモンスターペアレントが荒れ狂っているなんて。二人が気付けるはずもなかったのである。