外に出てぐっと伸びをする。
そのまま軽いストレッチで体を慣らしながら、俺は庭の一角へと向かった。
「グゥ!」「フュルル……」
「おー、おはようさん。今日もやってるなぁ」
置かれたテーブルの近くで作業をしていた2体のポケモン、グレンアルマとソウブレイズがこちらに気がついて声を上げる。
テーブルの上に広げられているのは円形に伸ばされた小麦の生地。横にはピザソースやチーズも準備されている。どう見ても手作りピザの準備中だ。
それに乗せる具材はスライスされたきのみやベーコン、野菜や卵……惣菜屋で売られているものが中心らしい。まあ手軽だし作れるものにも限度はあるからなぁ。
上機嫌なグレンアルマが石窯……よく見たらセキタンザンの背中の石炭、そこに石組みを入れて石窯代わりにしている。……そこへ遠慮なく手を突っ込み、焼きたてのピザを取り出した。
生地も具材も焦げることなく色よく焼けて、溶けたチーズがぽこぽこと沸騰したように膨れている。
「グルルッ!」
「うんうん、よくできてるな。そっちは……ああ、セキタンザンの分なのな」
上手くできた! 見て! と言いたげなグレンアルマを褒めてやれば、さらに嬉しそうに炎を揺らす。ちょっとテンションと共に体温も上がっているようだ。愛いやつめ。
何枚かまとめて焼いたらしいそれの1枚を石窯セキタンザンに渡して、残りをテーブルの大皿へと広げる。そこへぬっと近付いたソウブレイズがゆらりと影を揺らし……“シャドークロー”が見事にピザを分割していく。
グレンアルマがぱちぱちと拍手をして、そこから何切れかを小皿に取りこちらへと差し出して来る。
おすそ分けをありがたく受け取って、俺は石窯にされているセキタンザンの方へと向かった。
「セキタンザン、別に嫌なら断っても……あ、嫌じゃないのね。おすそ分け分役得……と。そっか……」
「ゴゴ」
流石に改造は嫌がったんじゃ……と気を使った俺の心など知ったこっちゃないと言わんばかりにもちゃもちゃと1枚丸ごとピザを頬張るセキタンザンに呆れながら、俺も手にしたひと切れを口にする。……いや、普通にうまいなコレ。好きこそものの~っていうのは案外嘘では無いのかもしれない。
そんなことを言っている間にも次々にピザを焼きながら切り分けて、方々におすそ分けに行く兄弟。今日も平和だなぁ……とその様子を眺めながら、俺はまたもうひと切れに齧り付いた。
「……ん?」
「グル?」
案外いけるピザに舌鼓を打っていると、ふと向こう側から何かが走ってくるのが見えた。
その影はソウブレイズ……今ここで“シャドークロー”を器用に使い食材カットをしているのとは別の個体。つまりは……
「っておいバカ走んなお前ッ……あーあー、いわんこっちゃねぇ……」
テンション高く走ってきたソウブレイズが、足元の段差に躓いて盛大にすっ転ぶ。
コケた衝撃で砕けた鎧の破片をまき散らし、ズシャアッ!!!とヘッドスライディングの勢いで地面を滑ったそいつに頭を抱えながら、一言断りを入れつつ具材用のきのみからオボンの実を取って、俺はいまだ転がったままのソウブレイズの元へと駆け出した。
▼グレンアルマ♂ ソウブレイズ♂
むじゃきな性格とさみしがりな性格。どちらも食べるのが大好き。
仲良しはらぺこ兄弟。ちなみにグレンアルマが兄でソウブレイズが弟。
野性時代は弟に食料を譲っていたためか種族差を加味しても兄の方が小さい。弟は平均サイズ。
おいしいものが好き。それをみんなで食べるのはもっと好き。最近作る方にも手を出し始めた。材料などはちゃんとイサリに頼んで買ってもらっている。
ちなみにどちらも色違いである。
▼セキタンザン♂
おだやかな性格。居眠りが多い。
みんなのママ(ママではない)。よく背中の石炭できのみやらなんやらを焼かれているのでちょっと美味しそうな匂いがする。
石窯にされたのはちょっと想定外だったが、焼きたてを一番最初に貰えるのは役得なのでまあいいか……と思っている。
基本温厚だが睡眠を邪魔されるとキレる。
▼ソウブレイズ♂
うっかりやな性格。打たれ強い。
上記兄弟の自称兄貴分。だがポンコツだ。ちなみにこっちは通常色。
バトル以外では超ド級のドジっ子。1日1回は必ずすっ転ぶしどこかにぶつけて鎧を砕いている。“くだけるよろい”ってそういうこっちゃねぇから!