その夜、鈴仙は永琳の言葉を胸に、彼の心は決まっていた。
自分の戦い方が「弾幕ごっこ」の流儀に反しようとも、
護るべきもののために、その力を振るう覚悟ができたのだ。
そんな彼女の前に、一通の挑戦状「弾幕」が舞い込んできた。
それは、霧雨魔理沙からのものだった。
すべての戸や窓を内側から閉め、結界を張った。
そして、最も重要な入り口である門の前へと陣取った。銃を構え、神経を研ぎすます。
現れたのは、博麗霊夢、霧雨魔理沙、そして魂魄妖夢の三人。異変解決に乗り出した主人公たちだった。
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「いい加減、道を開けな! ここは通さねぇぜ!」
魔理沙が叫び、星弾の弾幕を放つ。
「この兎、本当に本気で来てるわね……!
」霊夢は、鈴仙の弾幕にスペルカードルールに苛立ちを感じていた。
「さっさとやっつけて、月を元に戻さないと!
鈴仙は、自身の「波長を操る程度の能力」で魔理沙の弾幕を逸らし、
霊夢の御札を弾き飛ばす。
彼女の戦い方は、ひたすらに実戦的で無骨だ。
銃を撃ち、接近戦では打撃武器として振るう。それは、芸術的な弾幕ごことは全く異なる、
「刀」であり、「弾丸」のような戦い方。
(……誰も、私のことなんて知らない)
鈴仙は、戦いながら冷静に現実を分析していた
。彼女たちが興味があるのは、空に浮かぶ偽物の月という「異変」だけ。
自分は、その解決を阻む「敵」。それ以上でも、それ以下でもない。
剣士が、半霊を従えて鈴仙に斬りかかってくる。
鈴仙は波長操作で幻覚を見せ、剣士の動きを鈍らせた隙に、刀で剣士の剣を受け止める。キン、と硬質な音が響く。
「くっ……! なんてしつこい兎!」
鈴仙は何も答えない。
ただ、無言で次の弾丸を放つ。
彼女の心は、彼らが自分をどう認識しているかではなく、
永琳様と輝夜姫を護るという使命感で満たされていた。
永遠亭の奥深く、すべての戸が閉ざされた中で、永琳と輝夜は外の戦いの音に耳を傾けていた。
「永琳、鈴仙は楽しんでいるかしら?」輝夜が退屈そうに尋ねる。
「さあ、どうでしょう」永琳は冷徹に答える。
「ですが、彼女は月の兵士。護るべきもののために、その『刀と弾丸』を振るうでしょう。地上の者たちが何を言おうと、彼女の使命は変わりません」
外では、戦いが激しさを増していた。鈴仙は、地上の者たちの「月を元に戻せ」という叫びをBGMに、ただひたすらに引き金を引く。彼女の戦いは、誰にも理解されないかもしれない。だが、それでいい。彼女には、護るべき場所と、護るべき人たちがいるのだから
「そろそろ 来るかもしれません 自室にを戻り」
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竹林の空から新たな影が舞い降りてきた。
「あら、先客?」
鈴仙の視線の先に現れたのは、
フリルのついた赤い洋服を着た幼い少女と、メイド服姿の女性、
そして何体もの人形を操る金髪の少女だった。紅魔館の主、レミリア・スカーレットと、そのメイド長である十六夜咲夜、そしてアリス・マーガトロイドだった。
「先に行くわよ」レミリアが、有無を言わせぬ態度で霊夢たちに告げる。
「へっ、勝手なこと言ってんじゃねーぜ!」魔理沙が反論する。
「ここは、私と妖夢が引き受けるわ」後ろから、西行寺幽々子と、
先ほど鈴仙と戦っていた魂魄妖夢が合流してきた。
「あなたたちは急いでちょうだい」
状況は混沌としてきた。
異変解決を目指す者たちの中でも、派閥や思惑が異なり、足止め役と先鋒役に分かれ始めたのだ。
レミリアは鈴仙をちらりと見て、すぐに興味を失った。
「この兎は、後でどうにでもなるでしょう運命道理に」
「ちっ、じゃあ私たちは先に行くぜ!」
魔理沙と霊夢は、咲夜の弾幕を避けながら、永遠亭の奥へと急ぐ。
永遠亭の門前には、鈴仙、そして新たに来た幽々子と妖夢、アリスだけが残された。
「さて、兎ちゃん。私たちはあなたに興味はないけれど、」
幽々子がふわりと浮き上がりながら言う。
「月を元に戻さないと、お花見ができなくなるもの」
鈴仙は改めて銃を構え直した。相手の事情など関係ない。
彼女たちはただ、月を元に戻すという目的のために、自分を排除しようとしている。
(それでいい。私の『刀と弾丸』は、護るべきもののためにある)
鈴仙は波長を操る能力を最大限に高め、
妖夢と幽々子、そしてアリスに向かって、無慈悲な実戦的な弾幕を放ち始めた。
それは、幻想郷のルールから外れた、護衛兵士としての最後の抵抗だった。
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鈴仙は波長を操る能力を最大限に高め、妖夢と幽々子、そしてアリスに向かって、
無慈悲な実戦的な弾幕を放ち始めた
。それは、幻想郷のルールから外れた、護衛兵士としての最後の抵抗だった。
妖夢は鈴仙の波長操作による幻覚に苦戦しながらも、
半霊の補助を受けて間合いを詰める。幽々子は背後から「死を操る程度の能力」でプレッシャーをかけ、鈴仙の動きを鈍らせる。
アリスは人形たちを盾にしつつ、精密な魔法弾で鈴仙の注意を逸らしていた。
多勢に無勢。
しかも相手は、幻想郷でも指折りの実力者たちだ。鈴仙の兵士としての練度は高かったが、この状況を覆すほどではない
。
「終わりにするわよ!」幽々子が、そのラストスペルを解放する。鈴仙の全身に、
抗いがたい「死」の概念がのしかかる。体が鉛のように重くなり、銃を構える腕が震え始める。
「そこ!」妖夢がその隙を逃さず、白楼剣で鈴仙の銃を弾き飛ばす。キン、と乾いた音が響き、鈴仙のから銃が落ちた。
鈴仙は刀で応戦しようとするが、
アリスの人形たちが放つ魔法弾が彼女の軍服を掠め、体勢を崩す。
護るべき人たちの顔が脳裏をよぎる。しかし、体は限界だった。
幽々子の能力による精神的な疲労と、絶え間ない物理的な攻撃。
「おやすみ」
幽々子が、慈悲深い笑みを浮かべて手を振る。
鈴仙の視界が歪み始める。頭痛が激しくなり、狂気の波長が自分自身に跳ね返ってくる。最後は、妖夢が楼観剣の刀身で鈴仙の首筋を軽く打った。
鈴仙の意識は、ぷつりと途切れた。力なくその場に倒れ込み、竹林の地面に横たわった。
「気を失ったわね」アリスが人形たちを片付けながら言う。
「まったく、随分と手こずらせてくれたものだ」妖夢が剣を鞘に納める。
「私たちも急ぎましょう、幽々子様」
「そうね、お腹も空いてきたし」幽々子は鈴仙を一瞥することもなく、
永遠亭の奥へと足を進める
。
「この子はここに放置しておきましょう。どうせ死にはしないわ」
三人は、倒れている鈴仙を残して、永遠亭のさらなる深部へと消えていった。
鈴仙は、ただ一人、冷たい地面に横たわっていた。
彼女の意識は深い闇の中。護衛兵士としての使命は、果たせなかった。月明かりだけが、静かに彼女の無意識の体を照らしていた。