永琳は、
すべての戸が閉ざされた永遠亭の奥で、静かに外の気配を探っていた。
「刀と弾丸」のような実戦的な戦い方をしていることが伝わってきた。
やがて、戦闘の音が途絶えた。
永琳は表情を変えなかったが、鈴仙が敗れたことを直感した
鈴仙の敗北は想定内だった。
多勢の異変解決者たちを相手にするのは無理がある。
重要なのは、彼が兵士としての務めを果たそうとしたその覚悟だった。
異変は、解決へと向かっている。
永遠亭の奥の障子が開け放たれた。そこには、
息を切らした見知らぬ数人の女たちが立っていた。
博麗神社の巫女、魔法使い、そして吸血鬼とそのメイド。
彼女たちは互いに顔見知りではないようだが、目的は同じだった。
「やっと見つけたわよ、黒幕!」巫女が息巻く
。
「随分と手こずらせてくれたな! とっとと月を元に戻せ!」
魔法使いが箒を構える。
永琳は静かに立ち上がり、彼女たちを見据えた。
「ええ、無理なお話ね」
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月の異変は、解決した。永琳は、
月の都の技術を使って空の偽物の月を消し去り、
幻想郷の空には、いつもの満月が戻ってきた。侵入者たちは、目的を達すると互いに言葉を交わすこともなく、それぞれの帰路についたり姫様と遊び始めた
その中
異変解決後、永琳は門前へと向かった。
そこには、意識を失って倒れている鈴仙の姿があった。
月の光が、彼女の軍服を静かに照らしている。
永琳は鈴仙の傍らに跪き、その頬に触れた。鈴仙はまだ意識はないものの、息はしていた。
「ご苦労様、鈴仙」永琳は、誰にも聞こえない声で囁いた。
「あなたは、あなたの戦いを全うした。護るべきものを護ろうとした」
鈴仙は目を覚ますと、永琳に深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、永琳様。侵入者を止めることができませんでした」
「いいえ、あなたは立派に戦ったわ。もう心配することはない。すべて、問題ないわ」
永琳は微笑み、鈴仙を立ち上がらせた。
輝夜は、退屈そうにしながらも、鈴仙の無事な姿を見て、少しだけ表情を和らげていた。鈴仙は、敗北の悔しさを感じながらも、同時に奇妙な達成感も感じていた。
彼女の「刀と弾丸」のような戦い方は、幻想郷の「弾幕ごっこ」とは違うかもしれない。だが、護るべきものがある限り、彼女はその戦い方を貫くだろう。
月の光の下、永遠亭はいつもの静けさを取り戻した。
、黒い裂け目は彼女の体を有無を言わさず飲み込んだ。
「鈴仙!?」
永琳の声が響いたが、
鈴仙の姿は一瞬で消え去り、境界も閉じた
。
静かな空間に立っていた。目の前には、扇子を優雅に広げた八雲紫が座っていた。
その表情は、いつもの飄々としたものではなく、冷ややかだった。
「月の兎さん。随分と、はしたない戦い方をしてくれたようだね?」
紫の声は静かだったが、底知れぬ圧力を感じさせた。鈴仙は本能的な恐怖に駆られ、
敬礼の姿勢をとる。「八雲紫様……」
「『弾幕ごっこ』のルールは、。それを、あなたはまるで実戦のように、相手の精神を直接攻撃と実弾使っていた」
紫の瞳が、冷徹に鈴仙を見つめる。鈴仙は息を飲む。
永琳の言葉――
「紫のルールも大切だけれど、それ以上に大切なのは、護るべきものを護り抜く覚悟」――が脳裏をよぎる。
「申し訳ありません……しかし、月の民が……」
「言い訳は聞きたくないね」紫は扇子を閉じ、立ち上がった。
「異変であろうと、ルールはルール。あなたのような、地に足の着いていない月の民が、幻想郷の秩序を乱すことは許されない」
鈴仙は震えた。彼女が恐れていた事態が、まさに目の前で起こっている。
この賢者は、護るべきもののために戦った自分の事情など、一切考慮しない。彼女にとって重要なのは、絶対的な「秩序」だけだ。
「あなたのその『刀と弾丸』のような戦い方は、幻想郷では不要だ。次は、容赦しない」
紫はそれだけ告げると、再び境界を開き、鈴仙を永遠亭へと送り返した。
鈴仙は、永遠亭の門前に力なく倒れ込んだ。体中が冷え切り、恐怖で動けない。
八雲紫の怒りは、月の都の兵士が受けるどんな罰よりも恐ろしいものだった。
永琳が駆け寄ってくる。「鈴仙、大丈夫?」
鈴仙は永琳を見つめ、震える声で呟いた。
「私……怒られました。八雲紫様に、ルールを破ったと……」
永琳は静かに鈴仙を抱き起こした。
「そう。でも、あなたは間違っていなかったわ。護衛兵士として、最善を尽くした。紫のルールも大切だけど、あなたの覚悟は、それ以上の価値がある」
鈴仙は永琳の言葉に涙を滲ませた。