僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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連続投稿です。

そして誤字報告ありがとうございます。




全力でかかってこい!

 

 

 

 

僕が何とか勝ち、二回戦への進出が決まった後、轟くんと瀬呂くんの戦いで、瀬呂くんが轟くんに瞬殺された。

その時の氷結の規模は今まで見た中で一番の規模だった。

 

上鳴くんとB組の塩崎さんの戦いもまた一瞬だった。上鳴くんの"個性"も強力だけど、塩崎さんは入試四位の実力者でもあるから、あの髪がツルやシンリンカムイみたいな感じになったのはとてもすごかった。

 

飯田くんと発目さんのは……もはやサポートアイテムを紹介するために利用して、されたって感じだった。飯田くんはうまいこと言いくるめられたからなおさらドンマイだ。

 

芦戸さんと青山くんのは、最初こそは予想通りの展開だったけど、芦戸さんの体力を見誤っていた。

把握テストの時も、男女混じって10位だったし、"個性"でなく元の身体能力も高いんだ。

 

常闇くんと八百万さんの戦いは、『黒影(ダークシャドウ)』が八百万さんが創造した盾に集中して押し出すことで圧勝した。きっとあれは、八百万さんの身体を気遣ったのもある…そこまでの余裕があるってことだから、やっぱり常闇くんはすごい。

 

切島くんとB組の鉄哲くんのも見たかったけど、その次は麗日さんとかっちゃんだ。

だから、付け焼刃だけどかっちゃんの対策を考えて、伝えに向かった。

けど断られて、自分の力で勝ちたいと言ってきた。

 

震えていようと「決勝で会おうぜ」と言い切ったその姿は、本気なんだと痛感した。

だからこそ席に戻ってから、その戦いを見届けた。

キャパを超えてまで、必死に戦って、かっちゃんの"個性"を逆利用もした。

 

けど、負けてしまった。

そして麗日さんのことを思いながら、小休憩の後に行われる二回戦の準備のため控室の向かっている途中でかっちゃんと鉢合わせになった。

かっちゃんは「入れ知恵」とか言って僕が考えた策だと思っているみたいだったけど、それは違う。

 

麗日さんが考えて、かっちゃんを翻弄させたと、しっかりと伝えた。

本人も、僕じゃないとわかったのか何も言わなくなった。

 

控室に着けば麗日さんがいて、かっちゃんとの戦いを話したりしたけど、その時に再戦した切島くんたちのが終わって、僕の番がもう来てしまった。

けど控室を出た時、すぐに麗日さんが泣いているのが分かった。

悔しくないわけがない…救けになればなんて言っておいて、僕は結局、また背中を押された。

 

だったらなおさら、ここでうだうだしてられない。

そう胸に秘めて、歩き出したけど、その瞬間廊下の曲がり角から――

 

「ッ!? エンデヴァー!?」

 

――エンデヴァーが出て来た

 

「おぉ、いたいた」

 

近くで見るとすごい威圧感だ……でも、なんでここに…?

 

「君の活躍は見させて貰った。うちの焦凍とはまるで大違いだ」

 

…え?大違いって……。

 

「君は焦凍と同じく"個性"を二つ、もしくはそれに近しいことができる"個性"を持っているんだろう。君の戦い方は実に良い。考えつくされていて素晴らしいものだった。実質的な形になるが、"複数個性"をきちんと使いこなせている――」

 

エンデヴァーは急に笑みを浮かべて言った。

 

「――是非とも、焦凍に見習わせたいくらいだ」

 

それってつまり…じゃあ轟くんが話したことも本当に……。

 

(隠す気が毛頭ねぇなコイツ)

 

(これ、開き直ってるね)

 

「何を…言いたいんですか……?」

 

「あの子にとって君は良い刺激になるだろう。同じように"個性"を複数かそれに近しい能力持ちだからな」

 

試合があるからといい、僕は横を通り過ぎようとした。けどその時、エンデヴァーは言った。

 

「――ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合は変則的ながら有益なテストベッドなのと同時に、君が焦凍の殻を破ってくれることを期待しているよ」

 

それを聞いた僕は思わず足を止めて、彼がヒーローであることも、これから試合のことも忘れて睨んだ。

 

「僕は、オールマイトじゃありません」

 

「? そんなものは当たりま――」

 

「当たり前のことですよね。だから……轟くんも――あなたじゃない

 

ハッキリと言って、僕は今度こそステージへと向かった。

 

 

——◆——

 

 

廊下を抜け、ゲートを潜る。

日は傾きはじめていたが、それでもなおスタジアムの熱気は最高潮に高まっていた。

ステージにはすでに轟くんが立っていて、お互い何も言わずに向き合う。

 

『第二試合! 今の時代がある意味空想だが、そのさらに空想として誰もが一度は思っただろ!? 実質の――ザ・複数持ち対決をォ!!!!』

 

まずは氷結が来る。

 

『まさしく両雄並び立ち、緑谷バーサス轟!!!』

 

「(まだいくつ能力を隠しているか分からねぇ……分からねぇ以上、開始瞬間にぶつける!)」

 

『今――スタートォ!!!!!』

 

轟くんが開幕早々ぶっぱで氷結を出してきた。

あらかじめ溜めていた『発勁』+『OFA』インパクト30%による疑似70%で!!

 

【――スマッシュ!!】

 

正面からぶち抜く!!

 

「くっ…やっぱりそうするか!」

 

また氷結!今度は『OFA』インパクト30だけで壊す!!

そしてすぐに駆け出す!轟くんは懲りずに氷結をぶつけてくる。

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これらは僕にとっても有効に使える!

 

「『浮遊』!」

 

『浮遊』を発動して次の氷結は躱す。

轟くんは氷結を出すけど『浮遊』+【エアフォース】で避けて行って接近する。

『黒鞭』を放出して、次の氷結を避けてから捕縛する。

 

「くっ!」

 

そして引き寄せて、僕も接近して足を構える!

 

【――セントルイス スマッシュ!!】

 

足技を轟くんの頭部に向け蹴って、地面に叩きつける。轟くんは諸に受けて、顔面から地面に叩きつけられた。

 

『緑谷会心のいい蹴りを轟にかましたァ!! しっかももう技名まで付けてやがるぜ! 最近の子供ら先見過ぎだろォ!? 後それオールマイトリスペクトかァ!?』

 

「ッ!」

 

『危機感知』が鳴り出した。

すぐに背中から後方に『黒鞭』を伸ばして突き刺し、一瞬で下がれば、轟くんが氷結をその場に繰り出していた。

 

「くっそ……!」

 

また氷結が来る。その前に!!

 

「『煙幕』!」

 

『お~っと緑谷! 煙幕を繰り出したぞ!! こっちからしたらなんも見えねぇんだよなこれ!!』

 

 

——◆——

 

 

六代目の"個性"『煙幕』がステージを包み込む。

一方で轟は、むやみに"個性"を発動して自身の居場所を知らせたり、逆にその隙に責められ場外へ吹き飛ばされたりしたら終わりだと気づいており、むやみに動くことはなかった。

それは足元も真下か少し先しか認識できないのもあるだろう。

 

「(向こうにとってもリスクはあるはずだ……何を企んでやがる)」

 

自身の周囲に外壁として氷結を出す構えをしながら、轟は身構える。

すると『煙幕』が揺れ、影が彼に接近した。

 

「(防御と同時に凍らせて――ッ!?)」

 

しかしその正体は『黒鞭』によるデコイ。

防ぎはしたものの、凍らせたところで解除すれば意味をなさない。

そんな『黒鞭』に気を取られている次の瞬間――轟にそれは襲い掛かった。

 

「――がっ!!!」

 

固く、冷たい何かが背後から突如として突撃してきた。咄嗟に振り返った轟は驚愕する。

 

「俺の氷だと…!?」

 

その正体は、大きな岩一つ分程の氷結。

轟は悟った、自分が今罠にかかったことを。

 

「ッ! くっ!!」

 

すぐに氷結を繰り出すも、全方位から氷岩が投擲され襲い掛かる。

だが彼は気付かない。

それすらもデコイであることを。

 

「――はっ」

 

気が付いた時には遅かった。

轟の間合いには既に、『フルカウル』を纏う緑谷が立ち、拳を構えている。

 

【――デトロイト スマッシュ!!】

 

「――ごっ!!」

 

そしてその拳が腹部に綺麗に入る。

同時に『フルカウル』による衝撃波によって、『煙幕』は吹き晴られた。

 

 

——◆——

 

 

『おっ、晴れた……ってなんじゃこりゃあ!!? 緑谷いつの間に轟の間合いに入って腹に一撃かましていたァ!! しっかも周りに氷がめちゃんこバラバラにあるぞ!?』

 

『……まさかアイツ、あの煙の中で』

 

拳をさらに力み、轟くんを殴り飛ばす。

轟君はすぐに態勢を直して氷結で場外に行かないように耐えた。

 

「ゴホッ…! テメェ、俺の氷結を…!!」

 

正解だ。

『黒鞭』を背中から出して、周囲にまだ残ってる氷岩を掴み持ち上げる。

 

『緑谷の奴、轟の氷を武器として投擲してやがった。こりゃあ轟は緑谷の策略にまんまと嵌められたな。自ら緑谷に追加の武器を与えたようなものだ』

 

『コイツはシビィィィイイイ!!! 緑谷お前、派手で一見"複数個性"みてぇな能力に加えて、めっちゃ頭脳派な戦いを披露してんじゃねぇよ!! カッコいいじゃねぇか!!!』

 

轟くんは氷結を出してくるけど、勢いが弱まってるから避けやすい!!

僕が与えたダメージもあるけど、やっぱり……。

 

『左を使わず勝利することで、奴を完全否定してやる』

 

「――震えてるよ、轟くん」

 

「ッ!」

 

僕が呟けば、轟くんは睨んできた。

 

「"個性"だって身体機能の一つだ。君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろ? でもそれって、左側の熱を使えば解決できるんじゃないのか?」

 

「お前……!」

 

「皆本気でやってる…目標に近づくために、一番になる為に、僕だってそうだ。半分の力で勝つ? 僕は君に一度も攻撃を食らってないし、君がやられてる一方だぞ!! それでも勝ちたいんだったら、ヒーローになりたいんだったら――」

 

『フルカウル』『黒鞭』『浮遊』。

『危機感知』『煙幕』『発勁』。

今使える全てを総動員し、彼に向って、拳を握って叫んだ。

 

 

「――全力でかかって来い!!!」

 

 

「クソ親父に金でも握られたか!? さっさと場外にでも放り投げればいいだろ!」

 

苛立った轟くんが正面から突っ込んでくる。

踏み込みをよく見て、彼の動きは意外と単調だ。

それに脳無と真正面から戦った経験から、彼の速さはそれには及ばない。

 

『フルカウル』を駆使して、グッとしゃがみ込むように、彼の懐に潜り込み、一発放つ。

 

『モロだァ! 生々しいの入ったァ!!』

 

吹き飛んで行くけど、氷結を出すことで止まりすぐに体勢を整えた。

氷結を出してきたけど、さっきより威力が落ちてる。けど、『発勁』+インパクト15%による疑似50%!

 

【――スマッシュ!!】

 

片足を地面のコンクリに叩きつける。

すると衝撃が一気に前方に広がっていって、コンクリが抉られ盛り上がって氷結を防いだ。

 

『おー! 緑谷、轟の氷結を地面を抉ることで盾にして防いだァ!!』

 

そしてすぐにコンクリを砕いて『黒鞭』で回収。

『浮遊』で上昇し、轟くんに向けて投擲する。

轟くんはコンクリを避けていく。

 

「何でそこまで…俺のことなんてほっときゃいいだろ!? (ひだり)を使うの待ってないで、お前は勝てばそれでいいだろうが!!」

 

君の言う通りだ。

わざわざ両方を使ってくるのを待つ必要なんてない。でも、それじゃあ納得が出来ないし、このまま勝ってもいいとは僕は思えない。

 

(出久くん、やっぱり君は彼を……)

 

(九代目、君はこんな時でも……いや、だからこそ、僕は君に渡ってよかったと思うよ)

 

「君の境遇も、君の決心も、僕なんかに計りしれるものじゃない。でも……全力も出さないで一番になって、完全否定なんて、ふざけんなって今は思ってる!!!」

 

そんなことで証明できることなんて、きっと何もない。

 

「うるせぇ…」

 

霜が出て、凍り付いていく右側を抑えながら、苦しい表情を露にする轟くんへと距離を詰める。

拳を握って、その顔にぶつけながら僕は言う。

 

「僕が勝つ! 君を超えてェ!!」

 

「ッ……それでも、俺は親父を――」

 

……駄目だ。届いていない。

彼の意識は、父親の事で囚われたままだ。

 

その二つの"個性"が一つになったものは、全部生まれ持った、正真正銘の君の"個性"だ。

そこに両親は関係ないだろ。

どうしてそれを否定するんだ。

 

僕が、僕が君にただ言いたいのはただ――

 

 

「――君の! 力じゃないか!!」

 

 

「――ッ!!」

 

どうして否定する?自分のじゃないと。

なんで言い切れる。両親の力だと。

確かに、両親から受け継いだ力なのかもしれない。

 

でも、それは生まれた時、発現した時からもう君の自身の、君しか持ってない"個性(ちから)"なのに。

最初から、ただ君だけのものなのに。

 

受け継いで、借りているだけとも言える僕とは違う。そこはどこまで行っても変わることはない。

この罪悪感が消えることはない。

 

(九代目……)

 

でも、受け継いだんだ。

認めてもらって、支えてもらって、恵まれて今、ここにいる。

だったら答えなきゃ。

 

胸を張って、自分の"個性"と言いきって!!!

 

「ッ!!」

 

『こ、これは……!?』

 

『危機感知』が鳴り出した次の瞬間――轟くんから膨大な熱と炎が溢れ出した。

まるで凍てついた世界に生まれた、相反する炎の産声のように。

 

「勝ちてぇくせに…ちくしょう……敵に塩送るなんて、どっちがふざけてるって話だ」

 

絡みつく霜を溶かしてながら、炎を止めることなく纏っている。

 

「――俺だって、ヒーローに……!」

 

そんな轟くんの顔は、初めて見たけど、笑っていた。

 

 

「――焦凍ォォオオ!!!!」

 

 

急に叫びによる呼びかけが会場に響いた。

チラッと見ればエンデヴァーが、ステージからでもわかるその歪な笑みと狂ったような熱気を帯びた眼差しを轟くんに向けていた。

 

「やっと己を受け入れたか! そうだ、良いぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血をもって俺を超えて行き、俺の野望をお前が果たせェ!!

 

(もはやこれは親バカってやつなんじゃねぇか?)

 

(どうなんすかね、志村さん)

 

(そこで私に振る?)

 

『エンデヴァーさん、急に激励…か…? 親バカなのね』

 

歴代とプレゼント・マイク先生の思ったことが被っていた。

僕も一瞬思ったけど。

それにしても……。

 

「凄っ……!」

 

「何笑ってんだよ。 勝ちてぇくせに、敵に塩送りやがって……――どうなっても知らねぇぞ

 

「それでも……――全力で行くよ

 

轟くんは氷結と炎を同時に発動していく。

僕も『OFA』『浮遊』『発勁』を発動する。

恐らくこれが、お互い最後の一撃だ。

 

全力…そう、全力だ。

怪我のことなんて、今は気にするな。

身体への負荷も、制御範囲も、全部今は無視して最大をぶつけろ。

 

轟くんが膨大な氷結を繰り出してきた。

僕は片足の『発勁』を解放し一気に『浮遊』と合わせて接近していきながら、右腕に溜めていた『発勁』と『OFA』を発動する。

 

――『ワン・フォー・オール100%』+『発勁』

 

(ッ!? おい待て坊主!!)

 

(それと彼のがぶつかったらやばいことに!!)

 

なるべく近くで、僕のありったけを彼にぶつける!!!!

 

「緑谷――」

 

 

「――ありがとな」

 

 

互いが放出した瞬間――僕と轟くんの攻撃がぶつかり合い、膨大な爆発と爆風が発生した。

 

「うぐっ!!?」

 

同時に僕の右腕に膨大な痛みと嫌な音が鳴り響いた。そしてこの爆風は、限界まで冷やされた空気が急激に熱されて膨張したものだと理解した。

そこに僕の攻撃が加わったことで嵐が生まれたんだ。

 

乱気流に吹き飛ばされ、あたり一帯は霧に包まれていく。

『黒鞭』を即座に出して、地面を刺すのと同時に身体を支えて全力で踏ん張る。

やがて収まっていき、煙でステージが覆われている状態になった。

 

『何今の? お前のクラス何なの…?』

 

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ』

 

『それで爆風てどんだけ高熱だよ! ったく何も見えねぇ! オイこれ勝負はどうなってんだ!?』

 

煙が晴れていき、僕はゆっくりと地面へと降り立つ。一方で轟くんもまた、暴風に吹き飛ばされそうになって、それでもギリギリまで氷で抗っていたんだ。彼の足元は、まだ溶けてぐっしょりと湿っている氷の跡が残ってる。

 

けど、彼のいるそこは――ステージラインの外側だった。

 

「――轟くん場外! 緑谷くん、三回戦進出!!」

 

ミッドナイトに続き、歓声が響いた。

気絶はしていないみたいだけど……僕は痛む右腕を抑えながら轟くんへと駆け寄り、左手を差し出す。

轟くんは最初驚いていたけど、呆れたように笑って、取ってくれた。

 

「とても強くてカッコよかったよ、轟くんの"個性"」

 

「……そうか」

 

轟くんの表情は清々しいぐらい晴れていた。

 

 

 

 





『煙幕』の中捉えられたのは、『黒鞭』を巡らせて、氷結に当たり凍った感覚を感じたから。
その氷の奥にいると予測し、一気に攻撃を仕掛けたって感じです。


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