僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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いざいこう!最高出力で!!

 

 

 

 

緑谷の身体は『フルカウル』を発動することで稲妻を纏い発光している。

だが独特な動きをした途端、青い発光がオーラのように、『フルカウル』に重なるように発生しだす。

そして次の瞬間――彼は0.1秒にも満たない時間にて、爆豪の間合い、懐に移動していた。

 

「はっ――ガッ!!!?」

 

 

――二速(セカンド)!!

 

 

――三速(サード)!!!

 

 

――四速(トップ)!!!!

 

 

三撃…しかし一撃より二撃目、二撃目より三撃目と、その拳によって放たれる打撃の威力は倍増している。

防ぐ間もなく、全てを諸に受けた爆豪は、血反吐を吐きながら上空へと殴り飛ばされる。

全員が一瞬過ぎる瞬間に理解が追い付かず絶句する中、その三撃分の音は、その一瞬の出来事の後に続くように響いた。

 

『音が、遅れて聞こえてるだと…!?』

 

それは相澤すら思わず立ち上がり驚愕する現象。

同じく爆豪も、何をされたのは理解が追い付けずにいた。

 

「(ンだ今の…!? さっきまでの速さじゃねェ、気づいた時にはもう殴り飛ばされてた…!!! あのクソナード、まだ実力隠して――)」

 

「『変速』――」

 

「ッ!?」

 

 

――五速(オーバードライブ)!!!!!

 

 

発現させ、生きて使用していた二代目の時期とは訳が違う程に強化された"個性"。

今この時だけの限定ではあるが緑谷出久は、全ての"個性"を解錠し、疑似的に100%を発揮する。

緑谷の声に反応し咄嗟に振り返った爆豪は絶句した。

 

緑の稲妻と青いオーラを纏う身体に、赤い発光を纏う拳。

目の錯覚だろうか、支給された雄英の体操着の白のラインもまた発光しているように見えるその姿に、身体が、本能が告げた。

目の前の強者が自身へと放たれし攻撃が、とても危険であることを。

 

『ワン・フォー・オール』+『発勁』+『変速』――疑似100%

 

 

【――デトロイト スマッシュ!!!!!!】

 

 

会心の一撃。

全身全霊を懸けた拳を、憧れも使う技名と共に解き放つ。

そして爆豪は打ち上げられて間もなく、すぐに地面へと叩き落とされ、ステージが崩壊と共に土煙が高く巻き上げられた。

 

『なっ、なぁ~!!!!? なんっだあの速度ォ!? な、なにが起きたァ!? 気が付けば緑谷が爆豪を地上へと叩き落としてたぞォ!!?』

 

『あれで、まだ"個性"を発現して半年も経ってない奴なのか…!?』

 

 

――"個性"『変速』

他の継承者たちの"異能"同様『変速』の"個性"も『OFA』の成長に伴い強化された。

小さいものにしか付与できなかった『変速』は、その解釈を拡大し、細胞一つ一つにまで作用するに至った。

 

そして『OFA』自体に蓄積された純粋なる力。

この二つが重なるとき、その拳は世の理すら歪ませる。

 

 

【――デトロイト スマッシュ・五重(クインティプル)!!!!!】

 

 

畳みかけて放った打撃の五連撃は、ステージ全体を更に崩壊させる程のものだった。

 

 

——◆——

 

 

残り――四分!!!

『発勁』はさっきの【五重(クインティプル)】で溜め直した!!

 

『緑谷! 飯田のが可愛く見えるぐらい速すぎだろ!? てか見えねぇ!! お前そんなのあんだったら最初から使えよォ!!』

 

『……いや、あの速度…そうポンポンと使えるものなのか?』

 

かっちゃんへ急接近!!

かっちゃんは……まだ辛うじて意識があるのか、そのタフネスで立ち上がって反撃しようとしていた。

 

「(目で追えねェし、見えねェ!! けど、予測すりゃあこっちだってまだ!!!)」

 

かっちゃんはカウンターで爆破してこようとしてくる。けど僕は慣性を完全に無視してその場でピタリと止まった。

 

「なっ!?」

 

『どぇ!? 動画の停止みたいにピタリと止まったぞ!?』

 

 

「――一速(ロー)!」

 

 

二代目の"個性"『変速』は『慣性によらぬ速度の切り替え(スピードチェンジ)』!

一速(ロー)から五速(オーバードライブ)までの計五つの速度を切り替えながら動くことが出来る!!!!

 

「クソがァ!!!」

 

危機感知(よんだいめ)』が鳴った(さっちした)瞬間、瞬時に一速(ロー)から四速(トップ)切り替え(チェンジ)

それと同時に『煙幕(ろくだいめ)』を発動して視界を潰してから、『浮遊(ななだいめ)』で上に上昇し爆破を回避。

意識外から『黒鞭(ごだいめ)』で拘束して引き上げながら、別で地面に強く突き刺し一定の長さで伸ばすのを止める。

 

「なっ、テメェ!!」

 

『緑谷なんだ今の動きはァ!! は、速すぎて何したのかわかんねぇ!! しかも目視したと思ったらあんな高台にいて、太陽が逆光になって見えねぇ!!』

 

残り三分……さっきの【五重(クインティプル)】で溜め直した右腕と別で溜めていた片足の『発勁(さんだいめ)』と『変速(にだいめ)』の速度を四速(トップ)から五速(オーバードライブ)に切り替える。

全てを、今出せる全てを出し切る!!!

 

「(ッ! デクの癖に…何っだその力!! しかも、さっきよりもやばいってのが肌を通して伝わってきやがる!! さっき喰らった二つので意識が飛びかけた…!! クソがァ! あれも回避は出来ねぇ…ガードもやったところで意味ねェはずだ……ならッ! 最大火力で迎え撃つまでだァ!!!)」

 

かっちゃんが爆破しながら回転して向かってきてる。そうだよ。君は避けない。

迎え撃つ、真正面からねじ伏せようと、完膚なきまでの一位を獲りたい君はそうするってわかってた。

 

だから僕も、僕が今出せる全てを賭けて君を――勝利の権化である君を超える!!!

 

――『黒鞭の弾性』+『ワン・フォー・オール45%』+『発勁・蓄積最大』+『変速・五速(オーバードライブ)

 

 

【――疑似120% デトロイト スマッシュ!!!!!!!!!】

 

【――榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!!!!】

 

 

僕とかっちゃんの一撃の大技が衝突した瞬間――白い光に視界が包み込まれた。

 

 

——◆——

 

 

『おわ眩しいィ!! これどうなったんだ!!?』

 

『緑谷と爆豪の攻撃が衝突した途端だ。俺も見えねぇよ』

 

会場が白光に包まれ、全員が目をこらえて見守ることしかできない。

するとゆっくりと光は消えていき、ついにステージ上の上空が見えるようになる。

 

『あ? あぁ~!?』

 

プレゼント・マイクの声が響く。

その理由は――ボロボロとなった緑谷と爆豪が二人揃って地面へ落下していたからだ。

やがて二人は同時に崩壊したステージに衝突し、それぞれが衝撃音と土煙を起こす。

 

『こ、これは…!?』

 

「ハァ…ハァ…!!」

 

緑谷は辛うじて意識が保たれていた。

しかし微かに息が上がっており、反動が襲い掛かるのも時間の問題と言えよう。

否――立ち上がった緑谷はすぐに膝を付いて、上がっていた息は既に荒げ始めた。

 

「ハァーッ! ハァーッ! ハァーッ! (息、が…! 強化された『変速』の反動……細胞を休ませないと、酸素を取り込めない……!!!)」

 

それは二代目の"個性"『変速』の反動。

細胞一つ一つ、全てに作用させ世の理を歪ませる程の速度を一時的に体得した緑谷。

だがそのデメリット、反動は強化された力に相応するほどに大きいものだった。

 

緑谷はまさにその反動に襲われ、呼吸もままならない状況下にある。

両膝を付き、倒れそうな上半身を片手を地に着けることで支え、もう片方で口元に持っていき呼吸を、酸素を取り込ませようと必死になってる。

『OFA』の反動による自壊とは違う。

 

長い時間の反動。

無論自壊による身体の崩壊もずっと痛みは続く。

しかし『変速』の反動は、細胞一つ一つに来る故、『OFA』の反動をはるかに上回る。

 

(――まだ倒れるな、小僧)

 

「(ッ! 二代目…!?)」

 

そんな緑谷の肩に手を添えながら二代目は告げる。

 

(お前の幼馴染は相当なタフネスだ。俺たち全員をもってして、今お前が出せる最大パワーを正面から迎え撃ち、食らったにもかかわらず意識を保っている。見てみろ)

 

「……ッ!? 嘘だろ…かっちゃん…!!」

 

二代目の発言に絶句する緑谷はすぐに爆豪へと視線を向ける。

土煙が晴れていき、そこにいたのは、疑似120%を真正面から迎え撃って重傷を負ったにもかかわらず、無理やりにでも立ち上がろうとする爆豪の姿だ。

 

「――ク、ッソがァ…!!」

 

意識がまだあること自体おかしいのに、さらに立ち上がろうとしているその姿に緑谷は驚愕していた。

 

(だが不幸中の幸いと言うべきか、向こうも自身の"個性"による反動も合わさって動けずにいる。おそらくあの火力は、アイツ自身も出せるのに限度があるのだろう)

 

二代目の言う通り、爆豪もまた、緑谷との衝突と自身の"個性"上限による反動で苦しんでいた。

度重なる緑谷の攻撃を受け、さらに両腕は最大火力を使用したことで反動を受けている。

両腕は今まで以上のダメージを負っているのだろう。

 

片やは強化された"個性"の反動。

片やはこれまでのダメージと自身の"個性"の反動。

 

状態は同じ。

動こうにも動けない状況。

両者ともに息を荒げ、その場で倒れないようにするばかり。

 

(まだ戦うのなら、一秒でも早く回復しろ。勝ちたいんだろ? 幼馴染(あこがれ)に)

 

「ハァー! ハァー! (立て、立つんだ緑谷出久ゥ…!!!)」

 

「くぅ…!! (デクも動かねぇ…あの異常な速度、無条件で出せるわけがねぇ……相当なリスクありの技だ。じゃなきゃあぁやって息を荒げるはずがねぇ…!!)」

 

『両者ともに意識はあり倒れていないものの! 膝を着き動けずにいる!! これはどうなる!?』

 

『爆豪はさっきの緑谷の攻撃全てをガードする間もなく食らい続けた。それにアイツの"個性"も限度があるはずだ。一方で緑谷も、やっぱりあの異常な速度アップはそれ相応のリスク付き。あんなのポンポン使えていれば障害物競走とかもとっくに一位で終わらせてるはずだ』

 

『ナイス解説!』

 

実況と解説が響く中、反動で動けない二人は動き出す。そう、だけど、だけどと、二人は立ち上がろうとする。

 

――どんだけピンチでも最後は絶対勝つんだ。

 

――どんなに困ってる人も笑顔で救けるんだ。

 

二人の根っこからの憧れが、執念が、意地が、その背を押して、さらに向うへと行かせる。

たとえ反動で動けなかろうと、二人は無理やり動かす。

 

『おっ、おぉ…! おぉぉ~…!!!

 

その足は地を強く踏み、身体は重力に抗うように上へ上がる。

 

「まっ、だ……!!」

 

「ま、だァ……!!」

 

痛む拳を握り、相手が強者であるからか、勝ちたいからか、その口角は自然と上がる。

 

 

「終わって――」「――ねぇ!!」

 

 

そして――立ち上がった。

 

『両者ともに立ち上がったぁぁー!!』

 

プレゼント・マイクの声が電波のごとく広がり、会場全体が、さらに盛り上がるかの如く歓声で響き渡る。二人は互に、笑いながら構える。

もうこれまでの、ただの虐め虐められの関係ではない。

 

二人は認め、確信する――目の前にいるのは今までで最も大きな壁であり、一位を獲るために倒さなければならない強敵、超えるべき強者であることを。

 

特に爆豪は不本意だろうが、ここに立ち己の前に立ちはだかる以上、これまで"無個性"の出来損ないであろうと関係はない。

複数だろうが何だろうが関係ない。

ただただ上から完膚なきまでにねじ伏せて、完全勝利を掴み撮るために、本気で挑む。

 

ただそれだけだ。

 

 

「――行くぞォ!!!!!!!!」

 

「――来いやァ!!!!!!!!」

 

 

反動やこれまでの蓄積されたダメージがあろうと関係ない。

誤差などない程に、全く同時に駆け出し、互いの拳が迫る。

 

【――スマッシュ!!】

 

「――オラァ!!!」

 

稲妻を纏う拳が爆豪の頬を、火花を散らし爆破する拳が緑谷の頬を攻撃した。

 

『クロスカウンターァ!!!』

 

観戦者たちにも熱気が伝わり、歓声が響き渡る。

二人はよろけるがそれでも踏ん張る。

 

「(『変速』の反動で身体が動かないがなんだ! 呼吸は辛うじて出来るから、無理やり『黒鞭』で身体を…!!)」

 

呼吸は辛うじてできる程まで回復したものの、その身体は限界を迎え動かすのに激痛が走る。

それでも緑谷は意地と根性、"個性"をもってして立ち上がる。

『変速』の反動があろうと関係なく。

 

(『変速』の反動で動かない身体を『黒鞭』で無理矢理動かしてやがる…!!)

 

(なんて使い方を…それじゃあ身体が大変なことに!!)

 

緑谷の皮膚には内側から外側まで『黒鞭』が貼り巡られせ、露出している皮膚からは『黒鞭』が触手のように放出され、うねうねと動いている。

緑谷は動かない身体を『黒鞭』で無理やり、自分で自分を操り人形として動かしているのだ。

 

「まだ、まだだァァ!!!」

 

「望む、ところだァ!!!」

 

『OFA』と歴代の"個性"を駆使した攻撃が爆豪の身体を、『爆破』を駆使した攻撃が緑谷を襲う。

緑谷がその拳でアッパーを食らわせる。

しかし爆豪は負けじとカウンターでそのまま足を緑谷の顔へと蹴り上げる。

 

緑谷は『黒鞭』を伸ばし攻撃する。

爆豪は『爆破』で回避と同時にいなし反撃する。

 

――『黒鞭』+『発勁』

 

【――黒鎖!!】

 

「うっ、ぜぇ…んだよォ!!!」

 

緑谷は【黒鎖】を繰り出し、爆豪は『爆破』で地面を抉り壊し、瓦礫で防御する。

しかしそれだけに飽き足らず、緑谷たちの周辺からも【黒鎖】が這い出る。

それも地面を抉り上げて。

 

『おいおいおいおいぃ!!? ステージがもう原型留めてないぞこれ!!!』

 

プレゼントマイクの声が響くが関係ない。

緑谷は【黒鎖】で抉り取ったステージを瓦礫として粉々にし、爆豪へと流星群として投擲する。

 

『こりゃあ麗日戦の時の流星群か!?』

 

『あの黒い鞭っぽいのならそれも可能ってか』

 

それに気づいた爆豪はすぐに緑谷との距離を取りながら、両手をかざし、負荷が襲って来ようと関係なく最大火力の爆破を繰り出し全てを一撃にて一掃する。両手と視線が完全に上に向いた。

緑谷はそこを見逃さず瞬時に『煙幕』を発動し視界を潰す。

 

そして『浮遊』+『発勁』にて接近し、すれ違い様に『黒鞭』で捕縛した。

そのまま引き寄せ、近づき、【セントルイス】にてその顔に蹴りつけた。

 

「~~~ッ、うぅオラァ!!!」

 

「ぐぁっ!!!」

 

爆豪は血反吐を吐くも、すぐさまカウンターとして『爆破』を繰り出す。

緑谷は『危機感知』で察知していても、身体のこともあり防御が間に合わず食らう。

結果二人は再び、お互い吹き飛び距離が離れてしまい、倒れ込む。

 

しかし不器用ながらに再び立ち上がる。

その身体はボロボロで、殴り蹴りなどで飛び散った二人の血が原型を失ったステージに染み込んでいる。

 

「「ハァ…ハァ…ハァ…」」

 

汗と血が地に落ちていく。

もはや歓声はない。

沈黙、静かにその戦いを見守るだけ。

 

クソなら止めると言われていたものの、血反吐を吐くレベルと言えるその戦いを、誰もクソとは呼ばない。決勝、幼馴染、因縁等、彼らはただただ思ってしまう。この戦いの生末を最後まで見届けたいと。

 

「(意識が、もう……保たねぇ…!)」

 

「(で、もォ……!!)」

 

――まだ…!!

 

爆豪はボロボロだろうと関係なく、両手で『爆破』を器用に扱い高速回転することで爆炎を纏い、崩壊したステージを更に壊しながら接近していく。

『危機感知』で察知した緑谷は『発勁』を溜めようとするが、今のままじゃ間に合わないと悟った。

 

「なら!!」

 

戦いの中で成長は必ず起きる。

緑谷の戦術を編み出す頭脳、積み重ねてきた"個性(ヒーロー)"へのオタク知識は今も成長を続けている。

故に『黒鞭』で身体を動かす術をこの戦いで編み出した緑谷は、今浮かんだアイデアをも即実行に移した。

 

「(『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!)」

 

肌の内側、筋肉そのものに『黒鞭』が巡り、筋肉を無理やり伸縮させる。

『発勁』は蓄積されていき、一定動作する行為をより早く溜められるように編み出した。

結果緑谷は、爆豪の攻撃が来るよりも早く『発勁』を溜めることに成功した。

 

「でぇあッ!!!」

 

そして『発勁』蓄積による攻撃を地面にたたきつけることで、迫りくる爆豪の攻撃とぶつけ合わせて相殺させた。

 

「――ッ!」

 

「ん、だ、らぁぁああぁあ!!!」

 

緑谷の『危機感知』が鳴った瞬間、相殺され、その場で爆破し立ち昇る煙幕の中から爆豪が飛びだす。

そして『爆破』を繰り出し、緑谷も反撃で【セントルイス】を繰り出す。

 

「ギャッ!!」

 

「ゴッ!!」

 

互いの攻撃が命中する。

何度目か分からない吹き飛び、しかしアドレナリンがドバドバ状態となり、それが臨界点とも言える所まで行った二人はもう関係ない。

緑谷はすぐに体勢を直し、稲妻と共に爆豪へと飛びだす。

 

「――こんなもんかよォ!!!!!!!!!!」

 

「――はぁ”ぁ”ぁ”っ!!!!!!!!!!」

 

悪くなった口調で挑発染みたことを発する緑谷に爆豪は反応し『爆破』で同じように接近する。

すれ違い様に緑谷は蹴り、爆豪は防ぐ。

間髪入れずに『黒鞭』+『発勁』による【黒鎖】が襲い掛かる。

 

それを避け『爆破』を繰り出すも『危機感知』で察知し防ぎ躱す。

実況や観客の声などもはや二人の耳には届いていない。そしてついに――勝利の天秤は傾く。

 

爆豪の攻撃を『危機感知』で回避し、その両手を【黒鎖】で捕縛した緑谷は、全身を構える。

【黒鎖】故振り解けない爆豪はマズいと悟ったが、もう遅い。

 

【――デラウェア!】

 

五指に『発勁』を溜めていたことで強大な空気砲を放つ。【黒鎖】を意図的に解き、吹き飛んでいく爆豪へとすぐに接近し繰り出す。

 

【――デトロイト!!】

 

追いついた間際に真っすぐ拳をぶつける。

 

【――テキサス!!!】

 

風圧を乗せた拳を続けてぶつける。

 

【――ワイオミング!!!!】

 

そのまま振り下ろし叩きつける。

 

【――カロライナ!!!!!】

 

胸に向け、手刀でクロス印に振り抜いて叩き込む。

 

【――ミズーリ!!!!!!】

 

そのまま再び手刀で首筋に叩き込む。

 

【――カリフォルニア!!!!!!!】

 

その勢いで回転し、そのままアッパーを掛ける。

 

【――ニューハンプシャー!!!!!!!!】

 

背を向け、すぐさまインパクト30%による【エアフォース】にてヒップドロップをぶつける。

 

【――オクラホマ!!!!!!!!!】

 

そのまま高速回転し渦巻きを起こす。

 

【――セントルイス!!!!!!!!!!】

 

その遠心力、勢いを乗せて蹴りつける。

 

【――マンチェスター!!!!!!!!!!!】

 

吹き飛ばされた爆豪を追うように飛び、追い越しざまに蹴り叩く。

 

止まることなく放たれる連撃は自身が考えた(もの)と憧れが使用する(もの)

一つ一つは事件解決の決め手となった所作に事件現場の州を関した技名。

それを参考に彼自身が考えた(もの)、州などもある。

 

緑谷の用いる全ての技を食らった爆豪は、地に落下する。

勝利の天秤は傾いた。

だがそれを彼は認めない。否、認めたくないと懇願する。

 

普通なら、どんな超人だろうが、これまでの負傷と先の休む間もなく放たれた連撃を食らっていればとうに意識を落とすだろう。

されど彼はそれでも意識を落とさない。否、落としてはならないと自身に言い聞かせ必死に現実にしがみ付く。

 

「(負けたくねぇ…! けど、これ以上身体が動かねぇ…いや、ンなの関係ねぇ……!!! アイツだって、クソデクだって、もう限界なはずだ……!!! だったら――!!)」

 

「(身体がもう保たない……かっちゃんの目はまだ諦めてない……!! なら――!!!)」

 

 

「(この一撃で――)」「(――終わらせる!!)」

 

 

二人は最後の一撃に全霊を集中させる。

一つの巨大な恒星の如く輝く緑谷の周りは緑の稲妻と、目の錯覚だろうか、巨大なリングが生み出されながら緑谷は接近する。

対する爆豪も、今までよりも限界を超え、さらに向こうへと言わんばかりの爆炎と煙幕を纏いながら流星の如く、爆豪もまた接近する。

 

――『ワン・フォー・オール』…!!!

 

――最大火力…!!!

 

握る拳と腕全体に巡っていき、かざす掌に火花が破裂する。

想いが、熱意が、覚悟が、"個性"が答えるように。

そして――二人の最後の一撃が交差した。

 

 

――デトロイトォォオォオ……スマァァアァアアッッシュ!!!!!!!!!!!!

 

――ハウザァァアァアアア……インパクトォォオオォオオ!!!!!!!!!!!!

 

 

瞬間――世界から音が消え、白光に再び包まれた。

白光の中に起こる大爆発は崩壊したステージをより崩壊させ、爆風で一部は会場外まで吹き飛んで行く。ステージ上にはクレーターができ始め、伝播するように亀裂が全体へ行きわたる。

 

全員が吹き飛ばされないようにもがく中、ようやくとばかりにそれは収まっていき、白光も消えた。

観客たちが、他生徒たちが目にしたのは完全崩壊したステージだった会場の中央のみ。

どうにか踏み留まったミッドナイトはゆっくりとステージ上を確認する。

 

そして小型マイクがその声を拾い、会場全体に――

 

「――君気絶!! 勝者――!!!」

 

――最後の最後まで出し惜しみなく全力で戦い、勝利と手にし、敗北を浴びた者たちの勝敗を、その結果を――告げた。

 

 

 

 





2025年今年最後の更新となります。
今年は今作含め色んなもの執筆し更新させていただきました。
来年2026年もよろしくお願いします。


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