僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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名前と体験先を決めよう!

 

 

 

 

雄英体育祭から三日。

完全完治ではなくとも、右腕のギプスがなくなったし立って歩けるようにまでは回復した。

リカバリーガールの治癒のおかげでもあるけど、その分体力自体はまだ劣っていて、過労が残ってるけど。

 

いつも通り電車で近くまで行こうと思ったけど、この状態だと却って満員は大変かもしれないからと歴代に言われ、タクシーに乗ることにした。

まぁ運転手には凄い話しかけられたけど。

そして天気は雨となっているから、傘を差して雄英まで向かっていたけど、しばらくしてから後ろからバシャバシャと走る音が聞こえた。

 

「何呑気に歩いているんだ!! 遅刻だぞ緑谷くん!!」

 

「飯田く――ってカッパに長靴!?」

 

振り返ればカッパに長靴を身に付けて走っている飯田くんがいた。

あぁいうのって小学校を卒業してから見なくなったから逆に新鮮だ……。

 

「てか遅刻って、まだ予鈴五分前だよ?」

 

「雄英生たるもの、十分前行動が基本だろう!!」

 

そう言って飯田くんは校門をくぐり抜けて校舎へ走り続けた。

僕もつられて走っちゃったけど、とりあえずついてから傘と外靴をしまう……でも、飯田くんの空気がどこか重い気がする。

 

「飯田くん、あの…」

 

「兄の件なら心配ご無用だ。要らぬ心労をかけてすまなかったな」

 

「さあ、今日も一日頑張ろうじゃないか!」

 

下駄箱の前で雨合羽の水滴を払うその姿に、僕は何も言えなかった。

体育祭の時とその後のニュースで、飯田くんのお兄さん、『インゲニウム』は東京保須市で起こった事件で重傷を負ってしまったことを知った。

犯人は神出鬼没で、過去17名ものヒーローを殺害し、23名ものヒーローを再起不能に陥れた存在『ヒーロー殺し・ステイン』だったと報道された。

 

(本人はあぁ言ってたが、あれはやばいぞ)

 

ッ!やっぱりわかるんですが五代目!

 

(俺たちは最も過酷な時代に生きた。肉親がやられたり、殺されたりした奴らがどうなっていったのかも、この目で幾度となく見て来たさ)

 

(彼、復讐心に駆られてるね。内側で静かに薪を組んで復讐の炎を滾らせてる。ほっといたらえらい目にあうよ)

 

飯田くん……でも、飯田くんは何も言ってくれない。それにそういった経験がない僕が何かを言えるはずもない。

 

(けど気にしておいた方がいい。誰かに止めてもらわないと、自分じゃ止められないのが復讐ってものだからね)

 

……はい。

 

 

——◆——

 

 

教室に着けば、皆がみんな、僕みたいに体育祭での注目の的になっていて、その話題で持ちきりだ。

ちょっと怖かったのは、かっちゃんが何か言ってくるかもしれない事だったけど、当の本人は何も言わずただただ静かに座ってるだけだった。

 

「おはよう」

 

「「「おはようございます!!」」」

 

包帯が取れた相澤先生が来た頃には、もうみんな席に座っていた。

 

「今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ」

 

特別?ヒーロー情報学は、ヒーロー関連の法律などの授業だけど、小テストとかな?

 

「それは『コードネーム』ーーヒーロー名の考案だ

 

「「「「――胸膨らむ奴来たァァアア!!!!!」」」」

 

一気にクラスが沸き立ったけど、先生の一睨みで一気に静まり返る。

 

「というのも、プロヒーローからのドラフト指名に関わってくる。だが今回来た指名は将来性に対する興味に近い方だ。指名が本格化するのは経験を積んだ二、三年からだからな。そして卒業までに興味がそがれたら一方的にキャンセルなんてことも良くある」

 

後ろから「大人は勝手だ」って軽く台パンしたのが聞こえた。

 

「で、その集計結果がこうなった」

 

黒板に指名の合計件数が表示されて驚いた。

 

緑谷:5,394

轟:4,123

爆豪:3,985

常闇:360

飯田:301

上鳴:272

八百万:108

切島:68

麗日:20

瀬呂:14

 

「例年はもっとバラけるんだが、今回は三人に注目が偏った」

 

しかもかっちゃんと轟くんは逆転していた。

 

「だー! 白黒ついた!」

 

「二位の爆豪より轟が多いって……」

 

「態度も口も悪すぎたからそりゃ指名も躊躇するわ」

 

「躊躇してんじゃねえ! プロなら実力で判断しろやクソが!!」

 

まぁ確かに、二位のかっちゃんが轟くんより少ないってのは、かっちゃん的にもあれなんだろうね。

 

「さすがですね轟さん」

 

「殆ど親の話題ありきだろ」

 

微かに聞こえたけど、確かに轟君の場合、No.2でありエンデヴァーの息子としての話題が大きく影響してるかも。

 

「緑谷の数やべぇな…あんだけボロボロになって、正直オイラは怖かったのに……」

 

「う、うん…僕もここまで来るとは思わなかったよ」

 

てか怖かったんだ峰田くん…ヒーローが怖がられるってあんまりよくないな。

 

「それでこれらを踏まえたうえでお前らには、指名の有無関係なく――いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らはUSJん時に一足先に(ヴィラン)との戦闘を経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

 

なるほど。そのためのヒーロー名であると。

 

「まあ仮ではあるが適当なもんは──」

 

「──付けたら地獄を見ちゃうよ!! この時の名が世に認知されそのままヒーロー名になってる人多いからね!!!」

 

教室に18禁ヒーローのミッドナイトが入って来た。

 

「まあそういうことだ。将来自分がどうなるのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近づいていく……名は体を表すってことだ。『オールマイト』とかな」

 

オールマイト……か。

ヒーロー名、僕が将来成りたいと思うような名前か……力を授かって、歴代の力もある今じゃ、昔よくやってた憧れの名を使うってのは、僕にはとてもできない。

 

 

——◆——

 

 

あの後、ヒーロー名を発表形式で公開することになり、先行した青山くんと芦戸さんのがほぼ大喜利のネタみたいで、まさに大喜利のような空気感になってしまった。

だけど、蛙吹さんのや切島くんのヒーロー名を口切りに真面目な流れが生まれ、自然と一人一人発表していった。

そして残りは飯田くんと僕、後は却下されたかっちゃんだけとなった。

 

その後飯田くんは自分の名をヒーロー名にしたけど、僕は違和感を覚えた。

お兄さん、インゲニウムの件もあるし……。

 

「緑谷くん、出来た?」

 

未発表なのは僕か……やっぱり、どれだけ考えても、これしかないよな。

 

(それでいいのか本当に?)

 

はい。今までは好きじゃありませんでしたが、意味を変えてもらったことが、何より衝撃的で、それでも嬉しかったんです。

 

(中々の度胸だ。普通であれば選ばない選択だが、)

 

……かっちゃんに言いましたから。

『頑張れって感じのデク』と、だから胸を張って『デク』と名乗ります。

 

「これが……これが、僕のヒーロー名です」

 

 

——◆——

 

 

5,394件……用紙がいっぱいあるなぁ。

あ、そうだ。歴代の皆様も見てください。

僕が自分で決めるのもアリですけど、歴代の方々的にはどこがいいとか意見が分かれそうですし。

 

(それもそうだね。九代目の言う通り見てみようか)

 

(欲を言えば『ワン・フォー・オール』を知る共有者の場所ならいいんだけどね)

 

そうですね。

オールマイトにそういう人がいないか確認もしてみよう。

 

「まずは指名してくれたヒーローの得意な活動条件を調べて、系統別に分けた後、事件・事故解決件数をデビューから現在までの期間でピックアップして僕が今必要な要素を最も揃えてる人を割り出さらないといけないな……こんな貴重な経験そうそうないし慎重に決めないとだし、そもそも事件がないときの過ごし方等も参考にしないといけないな。あぁ忙しくなるぞ……!!」

 

「緑谷ちゃん、相当悩んでるのね?」

 

「ッ! あ、う、うん。ここまで多いと却ってどこが一番適切か考えたりもするから」

 

「確かに。緑谷の"個性"はどこでも活躍できるからな。出来る事は多い方がいいってよく聞くけど、逆に多すぎてどこが一番適切かで悩むなこれは」

 

『OFA』『浮遊』『黒鞭』『煙幕』。

『危機感知』『発勁』『変速』。

『変速』は一時的な解錠だったとしても、いずれ全部をいつでも扱えるようにしなきゃいけない。

 

反動で一日動けなかったとしても、発動してから五分間の間に二代目の的確な指導もあってある程度のトレーニングはできていた。

体育祭の時には『変速』を発動後、イメージを固めるためにトレーニングしたこともあってすぐに動くことが出来た。

でもその後の反動で余計に身体に負荷をかけてしまったことは良くなかった……って怒られた。

 

(やっぱ先輩の"個性"だけずば抜けて有能ですね、こうしてみると)

 

(そうか? まぁ自分でもそうは思ってるさ)

 

(思ってるんだ……)

 

あっ、エンデヴァーからの指名もある。

 

(どっちかというと、息子さんへの指導としてだろうな。彼も炎と氷を使う、複数持ちと変わりない子なんだ)

 

確かにそうですね。

体育祭であったときも「ぜひ見習ってほしいぐらいだ」って言ってましたし……でもこの中に『OFA』の共有者はいるんでしょうか?

 

(……俊典が説得できればいいんだけどな)

 

えっ?

 

(実は『ワン・フォー・オール』のことを知っている人物、私の盟友がいるんだ)

 

えっ!?本当ですか!?

 

「うぉどうした緑谷!? 急に立ち上がって!!?」

 

「あ、ご、ごめん…! すごいヒーローからも来ててつい……」

 

咄嗟に誤魔化して座り直す。

それで七代目、まだ『OFA』を知っている人がいるんですか?

 

(どちらとも俊典と繋がっている。片方は難しくても、もう片方は……俊典の勇気次第…まぁどっちも結局は同じだな)

 

えっ?

 

「――私が来たァー!!!!!!」

 

突然扉がバンッ!と開けられてびっくりしたらそこにはオールマイトがいた。

他のみんなもびっくりしている中、オールマイトは僕を見ていた。

 

「みみみみみ緑谷少年!!!! 君に追加でもう一人、新たな職場体験の指名が来た!!!! ちょっと来てくれるかい!?!?!?」

 

「あ、はい…」

 

僕はオールマイトへと駆け寄り、そのままついていった。

付いたのはトイレ…なぜトイレ?

 

「あの、追加の指名とは……?」

 

「あぁ、その方の名は『グラントリノ』。かつて雄英で一年間だけ教師をしていた私の担任だった方であり、お師匠……七代目の盟友でもある方だ。無論、『ワン・フォー・オール』の件もご存じだ。むしろそのことで君に声を掛けたのだろう」

 

そんな人が…!!あ、もしかしてさっき七代目が言っていた盟友ってそのグラントリノって人ですか!?

 

(そうだよ。空彦は私が『ワン・フォー・オール』を保持していた頃からずっと一緒に戦ってくれた)

 

「お師匠に聞いているかは分からないが、グラントリノはとうの昔に隠居し、隠居生活の身となっている。しかし何故緑谷少年に指名したのか……いや、心当たりはすごいあるけど……手紙を送った時に君のことと歴代のことを書いたからか、それとも歴代の皆様にほぼ任せきりによる私個人の指導不足のせいか……あえてかつての名を使ってきたということは……怖ぇ…怖ぇよ……震えるなこの足め!!!」

 

オールマイトが挙動不審のように、その巨体がガチ震いしてる…!?

な、七代目、盟友ってどんな――

 

(………)

 

(そっぽ向いちゃってるさ)

 

――そっぽ向いちゃってるさァー!?

お、オールマイトの担任でもあって七代目の盟友グラントリノ……どんな人なんだ!?

 

「君は他に多くの指名が来ている…! そこで行く場所を決めて行くのならそれでいいが……私個人としては折角のご指名だから行って欲しいと思っている……! もし、行くのなら君も…存分にしごかれてくるといいィいィ……!!!!!」

 

「――本当に大丈夫な人なんですかオールマイト!? 大丈夫だって言ってくださいッ!!!」

 

七代目も言ってください!!!

 

(…………たい焼きは持っていきな。あいつの大好物だから)

 

……へっ??た、たい焼き…???

 

 

 

 




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