職場体験当日。
最寄り駅に一度集合し、各自職場体験先へと解散と同時に向かいだした。
その際飯田くんのことが心配で、別れる前に一声掛けたけど、それでも飯田くんは一言だけで返事して、東京の保須市へ向かった。
それから新幹線で45分。
オールマイトから貰った住所を頼りに山梨県に着いた。その道中で七代目がおっしゃったとおりにたい焼きは買ったけど……それに調べてもヒットしなかった。
(空彦は元々ヒーロー活動には興味がなかったからな。俊典を育てるために私が頼み込んだ結果、免許を取ったって感じだ)
そ、そうなんですね……あれ、そうなると六代目もご存じって感じですか?
(そこまでじゃないさ。志村が『ワン・フォー・オール』のことを知ってからニ、三回顔を合わせたぐらいで、実際交流は少ない。その時の彼はヒーローでもなかったからね)
な、なるほど……っと、そろそろ住所の通りの場所、に……。
「こ、ここ…なのか!?」
言っては悪いが、劣化が目立つ建物だ。
手入れもされてないのか、看板がずり落ちてる。
いや、隠居しているからこそ、事務所だってバレない為の意図的なものなのか!?
で、でもこの中にオールマイトの教師であり七代目の盟友がいるんだ。
ドアハンドルに手を掛けて、ゆっくりと開ける。
「し、失礼します。雄英から来ました…緑谷出久で………へ?」
自己紹介しながら入って目の前に映った光景は、赤い液体と小腸、もしくはソーセージみたいなものが床にぶちまけられ、その中心に老人が倒れている姿だった。
「ぁぁあああ死んでるゥ!!!!!!!!」
「――生きとる!!!!」
「あああ!!!!! 生きてるゥ!!!!!!!」
(乗り良いな)
(そういうコントみたいっすね)
よ、良かった……本当にホッとした。
「いや~切ってないソーセージに、ケチャップぶっかけたやつを運んでたらこけた」
ま、紛らわしすぎる……!
「誰だ君は?」
「えっ、あ、ゆ、雄英から来た緑谷出久と申します! 今日からお世話になります!!」
「――なんて!?!?」
「――緑谷出久です!!!!!」
「……誰だ君は!!!!」
や、やばい……でもオールマイトの先生だ。
相当なお歳だしこうなっててもおかしくない。
(……出久くん、試しに自分で決めたヒーロー名を言ってみたらどうだ?)
え?ヒーロー名…?
(いいから。ほら)
は、はい。
「あの、ヒーロー名の方はデクです」
「なんて!?!?!?」
「デクです!!!!!!!」
「……威勢よく吠えるようになったじゃないか、受精卵小僧」
ッ!!雰囲気が変わっ――ッ!?
杖を捨てたと思ったら一瞬で背後に!?
移動に特化した"個性"なのか!?
かっちゃんよりも速い…!
もしかしたら『黒鞭』で捕えるのも難しいかもしれない!
「俊典の手紙から既に聞いている。『ワン・フォー・オール』に加え、初代と
しかも受精卵小僧……その言い方は初めての戦闘訓練でオールマイトが言った言葉だ。
同じ言い回し……つまり、オールマイトの先生だってのは本当だって意味だ。
(空彦は基本実戦形式。その実力は本物だよ)
実戦形式…!?だからオールマイトもガチ震いしてたのか!
とりあえずケースとバック、たい焼き入りの箱を地面に置いてから『フルカウル』を纏い、『黒鞭』をいつでも発動できるようにする。
「……ふっ、確か『ワン・フォー・オール』内で継承者たちと会話ができるんだったな。志村に助言でも貰ったか。だったら話は早い――始めるぞッ!!!!」
それが合図となってグラントリノは一気に屋内にも関わらずとんでもない速さで飛び回り始め――ッ!後ろッ!!!
「ふんっ!!!!」
「おっとッ!」
カウンターで回し蹴りをしたけど、かっちゃんのように空中で止まり、一瞬で角度を変えて飛んで避けられた。
また『危機感知』が鳴り出して、今度は『黒鞭』で捕えようとしたが、一瞬で回り込まれてしまう。
『危機感知』で躱せるけど、捕えるとなると難しいぞ!!
お年寄りとは思えない速度に威力…!
速度は脳無程じゃないけど、かっちゃんより俄然、倍速い!
『危機感知』があって攻撃は躱せはするけど、それでも二回背後を取られた!
「どしたァ! その程度か!?」
『危機感知』が鳴り出した!
また背後から来る……ならッ!!!
「ボーっとしてたら救えるもんも――」
「――『黒鞭』!」
「うぉっ!?」
感知した通り背後から来たから、あらかじめ背中に『黒鞭』を集中させておいて、飛んできた瞬間に放出、そして捕縛する。
すぐに振り返りながら『黒鞭』を掴んで、引き寄せてながらインパクト5%で――
「――ストップだ!」
「うぇっ!?」
急にストップと言われて思わず止まってしまった。
な、なんで…?しかもグラントリノ、地に着いた途端からからと笑ってるし『危機感知』も鳴ってない。本当にストップ何だろうか…とりあえず『黒鞭』も解いておこう。
「体育祭の時点である程度把握していたが、しっかりと『ワン・フォー・オール』も扱えてるな! それに分析と予測もあると来た。だが実際、『ワン・フォー・オール』の使い方とかそこら辺はアイツと言うよりかは、歴代たちから指導されてるんじゃろ」
「ッ! わ、わかるんですか!?」
「そりゃあアイツにここまでの教えができるかって聞かれたらできないと答える程にはな」
オ、オールマイト…そこまでなのか。
確かにすごいけどその分説明がアレだったのは、認めざるを得えないけど……あ、忘れてた。
「あの、七代目からたい焼きが好物と聞きまして、これからお世話にもなりますので買ってきたのですが……」
「――お前さんようわかってるじゃないの!!!! じゃあ早速レンチンするぞ!!!!!」
「ア、ハイ」
本当にたい焼きが好物なんだ……。
——◆——
「それで、例のはできるのか?」
「へ? 例のって…?」
たい焼きを温めて、その後怒られて再度温め直してからたい焼きを食べてる中、いきなり掛けられた一言がそれだった。
「俊典経由で聞いたぞ。歴代継承者、志村が一時的にお前さんの身体の所有権を得て前に出て来たってな」
「あ、心操くんとの戦いの時のことですね」
そういえば、あの後試した覚えがないな……今もできるのだろうか?
(そういやそうだったな。お前さんがいろいろとアレだったからすっかり忘れてたぜ)
うっ、す、すみません……でもせっかくの機会ですしやってみましょうか?
(だったら志村行きなよ。盟友との再会だから)
(えっ、私でいいのか?)
(まぁ体育祭でも志村さんが出ちまったしいいんじゃねぇか? ともかくやってみないと分からないさ!!)
そ、そうですね!やってみます!!
グラントリノにやってみますと伝えて、目を閉じて意識を『OFA』と『浮遊』に集中させる。
奥底の、夢でしか行けないあそこに向かうように……イメージでしかないけど、幽体離脱的なイメージで――!!!
「……」
「小僧、どうだ?」
「……そっちからしたら分からないだろうけど、うまくいったみたいだ。久しぶりだな――空彦」
「ッ! お前、まさか本当に志村か!?」
意識が完全に『OFA』の中に移動して、周りには七代目を除いた歴代の方々がいる。
つまり成功だ。
今僕の身体に、外側にいるのは七代目で、僕の身体を動かしている。
(やっぱり彼の"個性"が、より僕たちの干渉を高める引き金になったみたいだ。志村さんだけじゃない。きっと僕たちも同じように出来ると思う)
(つまり坊主が意識を落としても俺らが交代すれば、戦略的撤退とかもできるってことさ!!!)
そうですね。
あの時もそうですけど、なんか『OFA』っていろいろとできることありますね。
「見た目も声も小僧のままだっちゅうのに喋り方や雰囲気、何より眼差しが志村だな」
「どういう見極め方してんのさ、というか随分老けたな。しかも縮んでる」
「うるせぇ」
お二人とも、嬉しそうに話してますね。
(まぁ実際、死んだ後にまた生きてる知り合いとかと話せることなんて普通ないからな)
そうですよね……。
「これは俊典の奴が驚くぞ、いや姿が見えなくともあいつなら確実に泣くな」
「……私としては、最後の別れ方があんなんだったのもあって気まずいけどな」
「だがまぁ言ってやりたいこともあるだろ? せっかくだ。終わった後にでもまた小僧の身体借りてガツンと言ってやれ」
「ハハッ、そうするよ」
オ、オールマイトにそういうこと言えるなんて……やっぱり先代にして師匠でもある七代目と、その盟友にして先生であるお二人は扱い方が違う…!!
「じゃあそろそろ身体を返すよ。空彦、出久くんは十分私たちを使いこなしてるが、スパルタ過ぎないように指導してやってくれ」
「そうだな。たい焼きの件もあるしな」
あっ、もうよろしいんですか?
「(十分さ。それに職場体験に変わりない。さっき出久くんがやったようにやってみればまた交代できると思うから、返すよ)」
すると七代目はさっき僕がやったことをやり出して、意識がどんどんと現実の肉体へ戻される感じになり、最終的に表に戻って来た。
「戻ったか」
「は、はい……というかわかるんですか?」
「雰囲気とかが違うからな。よし、明日はここいらのパトロールをするぞ。要するに
「いきなりですか!?」
今日は……あっ、一日ここである程度の把握と。
体育祭で見たけど、実際にも改めて見ておきたいと。だったら他の歴代の皆様も表に出られるか、時間あり次第やりましょうか。
(いいな! そしていつか大阪に行こうぜ!!)
(焼肉食いたいっすね)
普通に今やりたいことをおっしゃっている…!?
Q.二日目の
A.申し訳ありませんが書きません。
三日目からの展開に移行するために、二日目の穴埋めを入れただけです。お許しを…!
Q.初っ端のグラントリノとの実戦形式でたい焼きやられてない?
A.こっそり『黒鞭』で端に寄せて守ってました。
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