僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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師匠(弟子)と弟子(師匠)

 

 

 

 

職場体験を終え、生徒たちは雄英へと戻っては各々が体験先での出来事や体験したことを共有していく。その一方で切島と瀬呂は爆豪の想像もできない姿を目にした途端吹き出し腹を抱えて笑いだした。

それは8:2坊や状態の髪となっている爆豪であり、当の本人は最終的に怒りのあまり怒鳴り、その勢いで髪を戻すという人とは言えない芸当を実行してみせる。

 

しかしそんな姿すらも笑いの種となってしまい、笑いがより激しくなる。

最終的に二人は爆豪に襲われた。

その一方でヒーロー殺しの件もあり、緑谷、轟、飯田のことでも話題は大きかった。

 

緑谷が一括送信で位置情報だけなのもあって皆心配していたのは、一人を除いて明らかだ。

だが表上はエンデヴァーによって救われたことになっている。

緑谷は思わず轟を見るも、轟は「救けられた」と、ハッキリと言っていたことに安堵した。

 

 

——◆——

 

 

そして午後のヒーロー基礎学。

 

「ハイ、私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね。ハイ、ヒーロー基礎学ね! 久しぶりだ少年少女! 元気か!?」

 

運動場γ。

そこに戦闘服(コスチューム)に着替えたA組とオールマイトは集まっており、久方ぶりのヒーロー基礎学が行われようとしている。

 

「ヌルっと入ってきたな」

 

「久々なのに」

 

「パターンが尽きたのかしら」

 

久方ぶりのオールマイト授業であるが、いつもの派手な登場をせず、今回は本当にヌルっと始まった。

故に生徒たちから少なからず疑問の声が上がっており、オールマイトは思わず硬直する。

 

「コホン、職場体験後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!!」

 

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!?」

 

黄金時代(ゴールデンエイジ)のコスだ~!」

 

オールマイトに対し飯田は救助訓練であるならば、さまざまな災害状況を再現できるUSJが最適であることを主張するが、「災害時の訓練になる」と言い返し、今回行うのはまた違うのであると告げた。

 

「私は先ほどレースと言った。そう、レース!!」

 

「ここは運動場γ! 複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯の中で五人四組に分かれて一組ずつ訓練を行う! 私もまた密集工業地帯のどこで待機しており、君たちへ救難信号を出す。救難信号が出されたらそれが合図となり街外から一斉スタート! 誰が一番に私を助けに来てくれるかの競争ということだ!! もちろん、建物の被害は最小限にな!

 

右人差し指を立てながらオールマイトは今回行われる授業の説明を続け、最後には流れるに人差し指を前科持ち生徒である爆豪へと向けた。

 

「指さすなよ…」

 

そんな爆豪は思わず顔を背けてしまっていた。

 

 

——◆——

 

 

『じゃあ初めの組は位置について!』

 

モニターが設置された『OZASHIKI』にて、最初の組以外の生徒らは待機しており、モニターには運動場γの内部が映し出されていた。

そしてオールマイトの場内アナウンスに従い、最初の組である緑谷・尾白・飯田・芦戸・瀬呂らは、各々がスタートしやすい位置で合図に備える。

一方で待機している生徒らはレースの展開について意見を交わしていた。

 

「飯田まだ完治してないんだろ。見学すりゃいいのに……」

 

「クラスでも機動力良い奴が固まったな」

 

「中でも緑谷さんの機動力は一番高いですから、緑谷さんが優勢と思いますわ」

 

やはりというべきか、機動力が高い者たちが集まった中で緑谷が注目されていた。

 

「確かに、ぶっちゃけあいつの"個性"って体育祭でプレゼント・マイク先生が言った通り、ほぼ複数持ちに近いもんね」

 

「加えて分析力は目を見張るものがあります……ですが本人はあれで何故いつもご自身を蔑ろにしたり、自信が無かったりするのでしょう……?」

 

『OFA』の身体強化によって引き上げられた機動力自体も高いが、加えて機動力でも活躍できる"個性"が三つも、実際には四つあるからだ。

 

「トップ予想な! 俺、逆転を見て瀬呂が一位!」

 

「あー…でもやっぱ緑谷じゃね? あいつ障害物競走ぶっちぎりの一位だったじゃん」

 

「オイラは芦戸! あいつ運動神経すげぇぞ!」

 

「う~ん……飯田くんの可能性もあるな~【レシプロ】出した時めっちゃ速かったし。でもやっぱうちと同じで浮くこともできるし、爆豪くんとの決勝戦でとんでもな速度出してたし、デクくんが一位かな」

 

「ケロ、私もそう思うわ。USJの時なんて私と峰田ちゃんを持ち上げて飛んでたりもしていたし」

 

「体育祭の決戦でのあの異常な加速は目を見張る」

 

一方でレースの結果を予想する者たちもいる。

だが大半が緑谷と告げていた。

確かに彼自身がミスでも起こさない限り大逆転は叶わないだろう。

 

『それでは……START!!!』

 

第一組が合図と同時に駆け出す。

飯田は地を走り、芦戸は酸で昇ったり滑ったり、尾白は尻尾を使い進んでいく中、瀬呂は先行して距離を縮めていく。

だがそんな四人よりも速く緑谷は救難信号を送ったオールマイトの元へと【エアフォース】『浮遊』『黒鞭』を駆使して向かっていた。

 

「ほら見ろ! やっぱこんなごちゃついたとこは上行くのが定石!」

 

「となると、滞空性能が高い緑谷と、劣るとはいえ同じような移動が出来る瀬呂が有利か」

 

「相変わらずすっげぇなアイツ。爆豪と瀬呂と麗日を合体させたみたいだ」

 

「ちょ、上鳴くんそれどういう意味や!?」

 

モニターに映る緑谷はパイプなどに『黒鞭』を伸ばし遠心力を利用したり、そこからさらに【エアフォース】を使用したりして、同じように他より有利な二番目の瀬呂との距離を離していく。

さらには一度『浮遊』を意図的に解除し走り出す場面も多々あった。

そんな緑谷が映し出されているモニターを静かに見つめている爆豪は、自身の拳を握りしめていた。

 

「……」

 

彼が今何を思い見続けているかは本人しか知る由はない。

その後レースの結果、緑谷は一位を難なく獲得し、オールマイトから直々に貰った『助けてくれてありがとう』の襷を家宝にすると宣言していた。

 

 

——◆——

 

 

久々のヒーロー基礎学の後、更衣室でいろいろとあったが僕はオールマイトに放課後、仮眠室に来るよう言われて言われた通り来ていた。

 

「掛けたまえ」

 

そして入るや否や、雰囲気がいつもと違うオールマイトが既にいた。

なんだか、ちょっと怖い……。

 

「いろいろ大変だったな。歴代の方々がいるが、それでも傍にいてやれなくてすまなかった」

 

「オールマイトが謝ることでは……それより、『ワン・フォー・オール』の話って……?」

 

「君、ヒーロー殺しが血を舐めて拘束する系の"個性"だって報告したね? 舐められなかったかい?」

 

「い、いえ…血を取り入れて身体の自由を奪う"個性"で、そのための刃物を使用していましたが四代目の『危機感知』でギリギリ対応できました。それが何か…?」

 

「そうか……とりあえずだ。力を渡したときに言ったこと、覚えているかい?」

 

 

「――食え」

 

 

「そこじゃない」

 

なっ、せっかくの渾身のモノマネがそんなばっさりと……。

 

(……先輩、笑いすぎでは?)

 

(ヒーッ! だって坊主、八木のマネうますぎだろ…! どうやれば俺らでも疑問に思うあの画風の違さを再現できるんだ…!!)

 

どうやら五代目には受けたみたいだ。

内側で一人ずっと笑ってる。

 

「君に譲渡する(わたす)際、私はこう言ったはずだ。『DNAを取り込められるなら何でも良い』とね」

 

「……あっ」

 

言ってた。

髪の毛のインパクトで忘れてたけど、確かにそう言ってたけど…待てよ…ッ!?てことは!!

 

「もしかしてヒーロー殺しに血を少しでも摂取させられてたら譲渡が成立してしまっていたんですか!?!?!?!?」

 

「いやないよ。君ならそれを憂慮しているかと思ったが……そう、忘れてたのね? てっきり歴代の方々も教えてるもんだと思ったんだが……」

 

あっそっか、もし仮にも"個性"の譲渡がされたら歴代も一緒に譲渡されちゃうから……なんで気付かなかったんだろ。

 

「これは私もお師匠から聞いたことなんだが、『ワン・フォー・オール』は持ち主が『渡したい』と思った相手にしか譲渡されないんだ。無理矢理奪われることはない、無理矢理渡すことは出来るがね」

 

そ、そうなん…ですか?

 

(事実だ。俺とブルースで仮説を立て、立証させている)

 

(それを彼らに譲渡させる際に教えていた。もしくは死の間際に無理やり譲渡させたのもある)

 

な、なるほど……。

 

「『ワン・フォー・オール』の成り立ち、背負いし宿命、退治する巨悪……君は歴代と接触できるようになった時にそのまま聞いた。だから多くは語らない。本格的な話はここからだ。USJ時、そして今回の保須事件に出現した脳無。その検査結果がわかったんだ」

 

脳無の、検査結果…。

 

「塚内くんの情報では薬物等の投与に肉体改造……まさに"複数個性"に耐えられるよう改造された生物兵器。既にわかっちゃいたが、せめて奴が私と対峙する時よりも前から育てていた後継だと思った。だが違った。奴は確実に生きてる。そして今も返り咲く瞬間を伺っているはずだ」

 

「……ッ『オール・フォー・ワン』が」

 

「私の代で遂に奴を討ち取ったはずだった奴は生き延び、今や(ヴィラン)連合のブレーンとして再び動き出している。君はそんな奴と対決しなければならない運命にあるが、既に歴代と対話で知り受け入れている」

 

オールマイトは窓の外へと顔を向けて見つめる。

 

「まさに皮肉と言える話さ。正義はいつも悪より生まれ出ずる」

 

……小さい頃、ある本で読んだことがある。

『勇者は最初から勇者として存在するのではない。悪に立ち向かうことによってはじめて勇者と呼ばれるのである』と……。

 

「オール・フォー・ワンは、どうやって今現代まで生きていたんでしょうか…?」

 

「『成長を止める』といった"個性"を奪ったのだろう。何より奴に仕える者たちもまだいるはずだ。死柄木や黒霧がそれを裏付ける証拠だ。奴を死なせまいと医療を施したものもいるはずだ。私自身あまり詳しくないが、塚内くんが言うに、生物兵器を作り出せるのは生物学や工学系に加え、医学にも携わっていないとできないらしい。つまりそれらを熟知している者が奴の下にいるってことだ」

 

「オール・フォー・ワン自身ではない……ってことですね。歴代もその可能性が高いとおっしゃってました」

 

「あぁ……」

 

「でも頑張ります。必ず、オール・フォー・ワンを止めます…!!」

 

そのためにも、もっと力をものにしないと…!!

 

「(………その頃には私はもう、君の傍にいられないんだ。緑谷少年……)」

 

(……出久くん、せっかくの機会だ。代わってくれ)

 

あっ……そうですね。

分かりました。

 

「オールマイト」

 

「ん、どうしたんだい?」

 

「お話ししたい方がいるので、代わりますね」

 

「えっ、それどういう――」

 

目を閉じて、七代目と交代する……このやり方もだいぶ掴めて来たからか、スムーズになっていた。

 

「……み、緑谷少年?」

 

「空彦はすぐに分かったのにお前はわからないのか? ――俊典」

 

「…? ッ! ッ!?!?!? まさか本当にお師匠なのですか!?!?!?!?!?!?

 

僕と七代目が入れ替わったことに気づいたのか、オールマイトは驚きながら立ち上がる。

 

「久しぶりだな。こうしてまたお前と話せて嬉しいよ。立派になったな」

 

「お師匠…私は、私は…!!!」

 

オールマイトは涙を流しながら膝を付いて、片手で顔を隠している。

やっぱり、亡くなられてしまった方と再会するってのは、とても嬉しいことなんだ。

 

「とりあえず、いろいろと話したいがまず最初に――」

 

 

「――正座しろ。俊典」

 

 

「……えっ?」

 

な、七代目…?なぜ??

 

(黙ってた方がいいぜ坊主)

 

えっ??えっ???

 

「お前に言わせてもらいたいことが山ほどあるんだ。だから正座」

 

「あの、それだと仮に誰かが来た際、生徒に正座されてる教師となるのですが……――ハイ」

 

僕の顔ではあるけど、眉間に出る血管から悟ったオールマイトは、観念したように綺麗な正座してしまった。

 

「確かに出久くんがオーバーワークなのもあるが、なんでそれでも入試当日に譲渡させた? 確かに身体の器的に譲渡させたら危ないのもわかるが、もっとやり方があったろ! 半年ぐらい経ってから身体を一度調べて、譲渡可能ならさせて"個性"を慣らせるのも一つの手だ。入試の時見ていたかは知らないが、私が手を貸さなかったら出久くんはそのまま落下死していた可能性があったんだぞ? それに体育祭前のあのプレッシャーの掛け方もなんだ!? 出久くんがお前をどれだけ尊敬してるか知ってるだろ。あんな掛け方されたら無理するに決まってるはずだ! それに平和の象徴でNo.1ヒーローなのは私も嬉しいことだが、今は教師だ。なのに他のヒーローが解決できる事件に首を突っ込んで教師の仕事ができないなんて、事務所で働いていた頃よりダメじゃないか! それにお前は教えるのが私も頭を抱えるほどに下手で、自分の感覚で教えたって相手は出久くんだ! お前と同じ"無個性"だったんだからそこら辺の経験が一切ないのは分かっていただろ!? それとだな――」

 

お、オールマイトが正座させられて怒られてる……!!!

 

(さすがは七代目にして師匠なだけある。世間からしたら日本のトップヒーローにこうして怒れるのなんて、同期か親、それこそ七代目みたいな関係者だけだろう)

 

(天才肌なのは確かだけど、こういった教師とかの事業はダメダメなのが実感しますね)

 

(外から見ると弟子に叱られる師匠にも見えるな!)

 

その後、最終的にオールマイトの頭を撫でながら微笑んだ七代目と、された結果嬉しさと恥ずかしさが同時に来たのか、照れくさそうに微笑んだオールマイトで説教は終わった。

 

 

——◆——

 

 

「これは予想以上だ。下手したらオールマイトよりも厄介かもしれないな」

 

薄暗い施設、もしくは研究所のような場所。

AFOは椅子に座りながらモニターにて、"個性"などを使用してなのかは不明だが『OFA』と歴代"個性"を使用する緑谷を観察していた。

その傍には側近であるドクターもいる。

 

「成長が思っていた以上に速いのう……」

 

「あぁ、もしかしたら奪う以前の問題になりかねない。今の僕の中にある"個性"たちと、オリジナルの方にストックしてある"個性"たちでも対抗できるか難しくなってきた。だが、今の『ワン・フォー・オール』所有者がどう戦うのかは分かったからね。その対策は練ることが出来る。ドクター、6()()()()()()()"()()"()()()()()()()()()()()?」

 

()()()()N()o().()6()()()()()()"()()"()()()()? あそこまで良い代物は当時では中々手に入れられなかった貴重なものだからのう、ちゃんと『超再生』と一緒に保存しておるわい」

 

「それはよかった。彼が体育祭で最後に使用していたあの異常な加速……なぜそのように至ったのかはわからないが、あれは間違いなくアイツの"異能"だ。ならそれに対抗できる"個性"を使用するまで。念のため複製して正解だったよ。その"個性"はオリジナルの方に入れておいてくれ。僕の身体ではきっと発揮できないだろうからね」

 

「ホッホッホッ、やはり保険は掛けるものじゃのう」

 

日差しが強くなれば、影も一層強く大きくなる。

緑谷出久の成長は良くも悪くも、他にも大きく影響を与えて続けていたが、それを本人が知ることはない。

 

 

 

 




今回もざっくりになってしまって申し訳ない。

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