僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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I・アイランド 2

 

 

 

 

セントラルタワー内・診察室。

トゥルーフォームのオールマイトは医療用カプセルにて身体及び"個性"の状態検査をデヴィット・シールドの元受けた。

そしてその結果を見たデヴィットは絶望でもしたような表情を露にしている。

 

「どういう事だトシ! "個性"数値が何故これほど急激に下がっているんだ!? 数値が下降したのは、オール・フォー・ワンとの戦いで損傷を受けたことで臓器を摘出したからまだ分かる。だが突然この数値は異常すぎる! いったい君の身に何があったというんだ!?」

 

「ゴホッ…長年ヒーローを続けていれば、ガタも出るさ」

 

表示された数値にはオールマイトの、正確には彼の身体と『OFA』による現状を示す数値が表示されており、その数値は『6 Years ago(ねんまえ)』をからみるみると下がっている。

そして一つの数値から急激に数値が下がり、『Current(げんざい)』ではもはやなくなってしまうと思うものになっていた。

しかし医療用カプセルから出たオールマイトは、心配をかけまいと気軽な口調で返すも、デヴィットの表情は依然として暗くなっている。

 

「……このままでは平和の象徴が失われてしまう。日本の(ヴィラン)犯罪発生率が6%を維持してるのは、偏に君の存在があるからだ。他の国は軒並みに20%を越しているというのに……君がアメリカに残ってくれればと、何度思ったことか……!」

 

「それほど悲観する必要は無いさ。私以外にも優秀なプロヒーロー達や、君のようなサポートしてくれる人間も大勢いる。私だって一日数時間はオールマイトとして活動を――」

 

「だが、オール・フォー・ワンの様な(ヴィラン)がまた現れる可能性も……」

 

オールマイト自身も気づいていること。

それは平和の象徴が弱く衰えた事実が、世間に晒されれば最悪な事態になることで起きる最悪の未来。

 

「その時の為にも、私は平和の象徴を降りるつもりはないが、私を超え得る存在(もの)はいるさ。緑谷少年のことは知ってるだろ?」

 

「…あぁ、あの時はトシの身体の方を気遣ったから話せなかったが、彼は複数持ちのヒーロー志望。私も個人として複数持ちのことは聴きたい気持ちもあったが……」

 

「実は彼、私の弟子なんだぜ?」

 

「なっ!? それは本当なのか!?」

 

オールマイトは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それは後継者にしていずれ魔王と衝突する愛弟子のために。

 

「信じられないが…君が彼を私の所をまで連れて来た理由に合点はいったよ。確かに彼の力は凄まじい。しかし私には君ほどの素質があるとは到底思えない。それにプロになるにしても後二年、最悪三年は先だ。早く見えて遠い未来でもあるんだぞ……」

 

確かにその時までオールマイトが『残り火』でトップに君臨し続ける未来はないだろう。

それはオールマイト自身、己の能力が衰え続けることに気づいている。

だがその真実を話せば最後、親友であるデヴィットとその娘メリッサを戦いに巻き込むことになる。

 

オールマイトはそこに一種の恐怖もあり話せずにいた……()()()()()()()()()()()()

今のオールマイトは違う。

 

「──デイヴ、実は私ね、"個性"数値の低下の原因を知っているんだ」

 

「何…? 君自身が知っているのか!? ならなぜ話してくれない!!」

 

「それを話せば最後、君とメリッサを巻き込んでしまうかもしれないからだ。だがその事実を友人や同期にはもちろん、娘であるメリッサにも他言無用でいてくれるなら、話そうと思っている。それ程までに、大事な秘密なんだ」

 

オールマイト――八木俊典はデヴィットに告げる決意をしており、その口を動かす。

その問いにデヴィットは戸惑うも、親友であるが故にオールマイトの真剣さを感じ取っていた。

 

「……わかった。誰にも話さないと誓おう。だから教えてくれないか? その大事は話とやらを」

 

デヴィットの眼には嘘偽りない。

俊典は少し安堵しながら、その重い口を開き告げた。

 

「今は緑谷少年の中にある、私がかつて保持していた"個性"『ワン・フォー・オール』について話そう」

 

それはただ明かすためでも、安心して引退するためでもない。

いずれ巨悪と戦う緑谷出久(まなでし)を、一つでも多く支えるために。

 

 

——◆——

 

 

皆でI・エキスポを楽しく周り、一度ホテルに戻って正装に着替えてから会場に集合することになった。

その際僕はメリッサさんに誘われて、彼女の通うアカデミーの校舎の研究室に案内されていた。

だけどメリッサさんからの話も聞かされ、成績が良くなかったから、ヒーローになりたくて一生懸命勉強したという。

 

「プロヒーローにですか?」

 

「それはすぐに諦めた。だって私、"無個性"だし」

 

「ッ! "無個性"って……」

 

「五歳になっても"個性"が発現しないから、お医者さんに調べてもらったの。そしたら発現しないタイプだって診断されたわ」

 

僕と同じ……。

 

(世間は広いようで狭いもんだが…正直驚いたな)

 

……。

 

「ん? どうしたの?」

 

「いや、その…周りの人たちが、当たり前のように持っているものが、ないって言われるって……」

 

オールマイトから『OFA』を譲渡される前までは、僕もメリッサさんと同じ"無個性"だったからか、どうしても他人事とは思えなかったけど、なんて声を掛ければいいか……。

 

「気にしないで? 私にはすぐ近くに目標があったから」

 

だけどメリッサさんはもう気にすることなく、今では父であるデヴィット・シールド博士のような、科学の力でオールマイトやヒーローたちをサポートして支え救ける存在になること。

それが今目指すヒーローの在り方だと言ながら、メリッサさんはある箱を取り出してきた。

 

箱の中には赤い一つの装置があり、その装置を僕の右手首に装着させてきた。

ボタンを押してと言われたからその通りに押してみれば、装置は僕の前腕全体を覆うように青白く光りだし、ハチの巣のような六角形の模様が不規則に浮かび上げながら展開し装着された。

困惑する中、メリッサさんは説明してくれた。

 

『フルガントレット』

それがこの装置の名前らしく、オールマイト並みのパワーを放出しても最大三回までは耐えられる強度があるらしい。

つまり僕が『OFA』を100%で使用しても、三回までは反動がなく放出できるということになる。

 

『OFA』の100%に耐えれるサポートだなんて……。

 

(にわかには信じがたいな)

 

(俊典がサポートアイテムを一時期使ったときは、20から30%でも耐えられず壊れていたんだけどね……)

 

ん?ん!?今オールマイトがサポートアイテムを使用していたとおっしゃいました!?

 

(気のせいだよ。それより彼女が話してる)

 

そっちの方が気になるんですけど!?

 

「デクくんと初めて会った時、手に傷があるのと、ヴィランアタックをしていた時のを見てね、意図的に"個性"をセーブしている。もしかしたらデクくんの身体は、強すぎる"個性"にまだ身体がついていけてないんじゃないかって思ったの」

 

ッ!見抜かれて……!?

 

(あの短期間で見抜くとは……)

 

(この子も九代目同様に鋭い観察眼を持っているみたいだな)

 

「それ、デクくんが使って」

 

「ッ!? で、でも…大切な物なんじゃ……」

 

「――だから使ってほしいの」

 

「え?」

 

「困ってる人たちを救けられる――素敵なヒーローになってね!」

 

面を向かってそう言われて嬉しいわけがない。

僕は笑顔で返事して返す。

でも次に鳴り出したのはスマホで、着信だったから出れば飯田くんの怒号が脳に響くように鳴り出した。

 

『何をしている緑谷君!! 集合時間はとっくに過ぎてるぞ!!!!!!』

 

「あっ…」

 

集合のこと、完全に忘れちゃってた……。

 

 

——◆——

 

 

ホテルに戻って正装に着替えてから急いでセントラルタワーに着けば、まだ僕以外にも他の人は来ていないみたいで、その後女子たちも来て、とりあえずかっちゃんと切島くん以外の全員が揃った形になった。

 

峰田くんと上鳴くんは相変わらずの反応をしていたけど……。

 

(性欲に正直なのはいいことだが、限度はあるわな)

 

(叱ってやりたいけど男が女のあれやこれを知ってるのは怪しまれるし、担任に報告はしておいた方がいいな今後)

 

いや、まぁ…そういうお年頃ですし、ね?

 

(俺は否定しないよ九代目)

 

ありがとうございます六代目……ってなんで僕が申し訳なさとお礼を言う流れになったんだ?

そう思っていると突如として警報が全体に鳴り出した。

 

『――I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムによりI・エキスポエリアに、爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました』

 

それに加えて出入り口全てにシャッターが下りて閉じ込められる形に…なんでいきなり――

 

「ッ!」

 

――『危機感知』が鳴り出した!

常時発動型故に会場内でも小さいのがずっと鳴ってたりしてたけど、これは明らかな悪意や敵意のように大きいものだ。

 

(とりあえず現状の把握が最優先。博士の娘が言うには既にパーティーは始まっている)

 

(八木もそこにいるかもしれないな。急ぎながら慎重に向かえ!)

 

はい…皆にもオールマイトがいることを教えて、現状把握を最優先に。

 

 

——◆——

 

 

レセプションパーティー会場には多くの来賓客や関係者、招待されたプロヒーローたちで賑わっていたが、(ヴィラン)の手により警備システムを乗っ取られ、島全体及び自分たちが人質になる形によって動けず拘束されていた。

さらにデヴィットの助手であるサムが連れて行かれそうになり、デヴィットが止めればそのまま一緒に連れていかれる形となってしまう。

 

「(デイヴ……!)」

 

そんな中拘束されているオールマイトはデヴィットを見ている。

それはまるで、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(()()()()()()。それまでの辛抱だ、耐えてくれ…!)」

 

そしてデヴィットとサムは(ヴィラン)たちに連行され、会場を後にした。

オールマイトはボスであろう(ヴィラン)がいなくなったことにより、拘束を解くか、デヴィットの言う通り耐え続けるか葛藤する。

だが天井のガラス奥に緑谷と耳郎がいることに気づいた。

 

緑谷は声が聞こえるとジェスチャーし、オールマイトは周りに聞かれないように秘かに現状を伝えた。

(ヴィラン)がタワーを占拠した理由を秘かに聞いたオールマイトだが、それでも万が一の可能性を考え、緑谷たちには早く逃げるようにも伝えた。

『イヤホンジャック』にて聞いていた耳郎は顔を青くさせた。

 

 

——◆——

 

 

薄暗い非常階段まで移動し、耳郎さんの『イヤホンジャック』でオールマイトに現状を聞いた結果、I・アイランドの警備システムを(ヴィラン)が占拠。

結果、この島にいる人たち全員が人質の状態、さらにオールマイト含めプロヒーローたちも拘束され動けなくなっている状況になっていた。

 

当然、飯田くんはオールマイトの指示通りにここから脱出することを提案した。

まだヒーロー資格を持っていない僕たちは、ヒーロー活動ができないから、その行動が当然。

もし行動を起こせば問題になる。

 

でもタルタロスと同等の警備システムを持つI・アイランドの脱出は困難だ。

それを聞いて気落ちし、何もできない悔しさがこみ上げてくる。

ヒーローを目指しているなら、いやそれが関係なかろうと僕は――

 

「――救けたい」

 

「……デクくん?」

 

「救けに行きたい」

 

(ヴィラン)と戦う気か!? USJで懲りていないのかよ緑谷!?」

 

峰田くんに違うと告げながら、今もずっと頭で考える。(ヴィラン)との戦闘を起こさずにオールマイト達を救けられる方法を。

 

「気持ちはわかるけど、そんな都合のいいことは……」

 

「それでも探したいんだ! 今僕たちができる最善の行動を、みんなを救けられる方法を……!」

 

「デクくん…」

 

「――I・アイランドの警備システムは最上階にあるわ」

 

突然メリッサさんがI・アイランドの警備システムのことを話した。

 

(ヴィラン)がシステムを掌握しているのなら、認証プロテクトやパスワードも解除されていて、システムの再変更をできれば警備システムも正常に戻るかもしれないと。

 

「それに(ヴィラン)たちは警備システムの扱いに慣れてないと思うから、現時点で私たちに実害は無いと思うわ」

 

それなら戦いを回避しながら警備システムを取り返せれる……!みんなもやる気を出してきた。

 

「しかし最上階には(ヴィラン)が待ち構えているはずですわ」

 

そうかもしれない。

でも戦う必要はない。

 

「システムを取り返せれば、ヒーロー達の捕縛も解除される。オールマイトも復帰して、状況は一気に逆転するはず……!」

 

「デクくん……行こう!」

 

ッ!麗日さん!!

 

「私たちに出来る事があるのに、何もしないでいるのは嫌だ! そんなの、ヒーローになるならない以前の問題だと思う!」

 

「うん。困っている人たちを救けよう。人として当たり前の事をしよう!」

 

(言うようになったじゃねぇか坊主! 俺は賛成さ!!)

 

(俺もっス。そもそも俺らは九代目に委ねてる身だから、君の選択と行動を尊重するだけだからね)

 

(まぁ出久くんが意外と頑固で決めたことはやり遂げる子だからね、頑張ろうじゃないか)

 

五代目、六代目、七代目…!

ありがとうございます!それに、皆さんや麗日さんだけじゃない。

轟くん、耳郎さん、飯田くんに八百万さん、上鳴くんと賛同してくれた!

 

「――あぁもう分かったよ! 行けばいいんだろ!? 行けば!?」

 

「ありがとう峰田くん!!」

 

峰田くんも、全員が賛同してくれた!

だけどメリッサさんには危険だ。

ここまで待っておくように伝えたけど、メリッサさんはこの中で唯一警備システムの設定変更ができる人だ。

 

ある意味、この中で大きな役割をでもある。

それにメリッサさんも覚悟を決めていた……なら、否定なんてしない!

 

 

——◆——

 

 

最上階・制御ルーム。

 

「――今、何て言った?」

 

「こう言ったんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……依頼を受けてくれた君たちには申し訳ないが、今この計画を止められるのならやめて欲しい」

 

「博士!?」

 

現在I・アイランドにて起こっている衝動はデヴィットとサムが仕向けたこと。

今制圧している(ヴィラン)も偽物として依頼された者たち――

 

「依頼は確かに受けた。だが俺達が本当に偽物の(ヴィラン)だと思っていたのか?」

 

――ではなかった。

その発言にデヴィットは驚愕する中、サムはここまで来たからと焦りを露にする。

つまりサムが依頼し雇ったのは偽物ではなく本物の(ヴィラン)であるということだ。

 

「ここまで来たんですよ…長年あなたに仕えてきたというのに、あっさり研究は凍結し、手に入れるはずだった栄誉も名誉も全て、なくなってしまった……お金くらい貰わないと割に合いませんよ」

 

「サム……」

 

「そういうことだ。それにこの計画が決まった時点でお前は俺らと同じ(ヴィラン)――犯罪者だ。今更降り立って意味はないし、ここで抵抗すれば島のどこかで本当に悲鳴が響くことになるぞ……せめて死ぬなら、俺達のために働いてから死んでもらうぞ。デヴィット・シールド博士」

 

(ヴィラン)の親玉『ウォルフラム』は拳銃を突きつけ、部下たちも銃口をデヴィットへと向けた。

デヴィットは顔を歪ませながら、手遅れであることを改めて悟り、拳を握りしめながらオールマイトへ謝罪を述べていた。

 

 

 

 





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