ダイジェストォ!!!
二日目、本格的に始まった"個性"伸ばしが終わり、全員がもう限界の状態で集まっていた。
「――さぁ昨日言ったね! 『世話を焼くのは今日だけ』って!」
「己で食う飯くらい己で作れ! カレー!!」
「「「イエッサー……」」」
思考すらあまり動かない……細胞も一日に何度も『変速』をした影響でずっと痛い。
(一回目でこれはハードだなァマジで)
(まぁ俊典の時もそうだったしな)
それでも…です…。
「アハハハハ全員全身ブッチブチ! だからって雑なネコマンマは作っちゃダメねッ!」
「はっ、確かに…災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環…! 流石雄英無駄がない!! 世界一うまいカレーを作ろう! 皆!!」
「「「オォー……」」」
そうなのかな飯田くん……でもお腹は空いたから早くやろう……。
——◆——
あの後、皆で役割分担してカレーを作ってそのまま夜食に入った。
皆がみんな楽しく食べる中、先にトイレを済ましていた僕は、終えて出た時に、洸汰くんが森の奥へと行くのを目撃した。
マンダレイの呼びかけにも応じず……きっと夜食も取ってないだろうと思って、一杯分のカレーを持って足跡を辿って探した。
結構森を進んでいるみたいで、途中から山…というよりも崖に当たるところに足跡が進んでいて、上がれば洸汰くんがいた。
呼びかければ、敵意むき出して睨んできた。
「テメェ! 何故ここが……!」
「あ、ごめん。足跡を追って……ご飯食べないのかなぁと」
「いいよ、いらねえよ。言ったろ、つるむ気などねぇ。俺の秘密基地から出てけ」
「ッ! 秘密基地か」
こんな見晴らしのいいところがあったなんて。
それに洞窟もある。
確かに私有地だったら、こういう所を秘密基地にすることもできるかも。
「"個性"を伸ばすとかはり切っちゃってさ……気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ、力を……」
「……君の両親さ、ひょっとして――水の"個性"の『ウォーターホース』?」
「ッ! ……マンダレイか!?」
昨日聞いたことと、ヒーローニュースなどから合致するヒーローの名を言ってみれば、洸汰くんの表情が一気に険しくなった。
やっぱり…そうだったんだ。
「ごめん! 流れで聞いちゃって……情報的にそうかなと……残念な事件だった。覚えてる」
犯人が当時ウォーターホースが対峙して、そのまま亡くなってしまったこと。
ヒーローのニュースを見ていて一番気が滅入ってしまうのだけは、わかる。
「……頭イカれてるよ、みんな。馬鹿みたいにヒーローとか
ヒーローだけじゃない……洸汰くんは"個性"……超人社会そのものを憎んで……。
「なんだよ! もう用ないんだったら出てけよ!」
「……僕の友達さ……親から"個性"が引き継がれなくてね」
「は?」
「先天的なもので、稀にあるらしんだけど……でもそいつはヒーローに憧れちゃって、でも今って"個性"がないとヒーローにはなれなくて……そいつさ、しばらく受け入れられずに練習してたんだ。物を引き寄せようとしたり、火を吹こうとしたり……」
そいつは…僕だ。
"無個性"と診断されて間もない…受け入れられず何度も"個性"があると、現実逃避のようにないのに"個性"を使おうとした。
「"個性"に対して色々な考えがあって、一概には言えないけど……そこまで否定しちゃうと君が辛くなるだけだよ。えっと、だから――」
「――うるせぇ! ズケズケと!! 出てけよ!!!」
「…ごめん。取り止めのないことしか言えなくて……カレー、置いておくね」
静かにカレーを置いて、僕は洸汰くんの秘密基地を後にした。
——◆——
(お前さんの気持ちを否定はしない。だが時にはそっとしとくのも大事なことさ)
五代目……。
(ずっと気にしてたもんな。それにさっきの話も…坊主。お前はあの子を救けたいって思ってんだろ?)
……はい。
(俺達の時代でも、あぁ言った形で
そうなんですか?三代目。
(むしろ、力があるからこそ復讐できるという考えだな。あの少年の瞳には確かに怒りや憎悪が宿っていたからこそ、アレは下手すれば
……洸汰くん。
それでも、僕は苦しんでるようにも見えました。
(天秤…きっとまだ、心の奥底では完全には抱いていないと言えるかもしれない。明確なそれがあっても、実行に移すことは簡単ではないからな)
(ともかく。彼のことも大事なのは確かだけど、今は自分のことも考えよう九代目。難しくて、酷だろうけど)
はい…六代目。
(………ッ)
——◆——
三日目。
「ふぅーっ」
『フルカウル』を纏ったまま『変速』を発動させ、『煙幕』に
これによって雨じゃなくても『煙幕』を滞留させることができる。
この状態で『黒鞭』を展開すれば視界防止からの不意打ちができるけど…問題は索敵だ。
(俺の『煙幕』、ただ出すだけでそれ以外意味がないからね。強化されて弁が馬鹿になってるぐらいさ)
いえ、それでも強い"個性"です。
やりようはいくらでもあります…!
「――気を抜くなよ。皆もダラダラやるな。何をするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗をかいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」
相澤先生の声が聞こえた。
原点……あっ、そういえば。
『変速』以外を解除して、相澤先生の下へとうまく速度を調整しながら近づく。
「そういえば相澤先生。もう三日目ですが……」
「言ったそばからフラっと来るな」
「す、すみません。えっと、今回オールマイト……いや、他の先生方って来ないんですか?」
オールマイトは一応…って言い方はアレだけど、雄英の教師でヒーロー科一年のヒーロー基礎学を見てくれていた。
だから合宿も一緒に来てくれると思っていたけど……。
「合宿前に言った通り、
「よってあちしら四人の合宿先ね」
「そして特に、オールマイトは
悪くもの割合がでかそう……!
……そっか、オールマイト来ないのか。
(まぁ八木が来なくても俺たちがいるさ! 気にしなさんな!!)
(いや、九代目の場合違うと思いますよ先輩)
(とりあえず続きだ。『変速』の発動時間をこれ以上無駄にするな)
は、はい!!
——◆——
三日目の"個性"伸ばしも終えて、皆で肉じゃがを作ってる時に、轟くんと洸汰くんのことで話したりもして時間は過ぎ、肝試しの時間になった。
その際補習を受けることになっている芦戸さんたち五人が、肝試しの時間を補習時間にされ連行されて行った。
切島くんたちの嘆きを聞いて、僕は思わず謝罪しながら見ないように目をつぶる。
ごめん…!僕には何もできない…!!
(心からの叫びだったね)
(よっぽど楽しみにしてたんだろ)
それから肝試しの説明を聞いて、二人一組のペア分けとなった。
最初はA組で、B組は脅かす側…なんか、怖いなぁ。
(俺たちの番になった時には、坊主が火ィ噴くぜ!!)
(九代目一人でいろいろ驚かしたりもできるし、俺達も全面的に協力するよ)
ここで本気になられても返って皆が心配になりますよ!!
と、とりあえずくじ引きを……っと、僕は八番か。
「ん? 二人一組…あれ? 二十人で五人補習だから…一、二、三、四、五、六、七、八……」
それぞれの組を数えていく。
「………二十人で五人補習だから…一、二、三、四、五、六、七、八――」
はっ!
「 ――一人余る!!!!!!!! 」
一人余る…一人余る……。
「クジ引きだから…必ず誰かこうなる運命だから……」
二人一組…僕だけ一人…二人一組…僕だけ一人…一人余り……。
(俺らがいるさ坊主!! ぼっちじゃないさ!!)
ぼっち……二人一組で僕だけぼっち……。
(ちょ、万縄先輩! 九代目の心抉らないで!!)
(でも実際傍にはいられないけど、僕たちがいるのは本当だから大丈夫だよ緑谷くん)
(それに実際に幽霊と話してるんだ。肝試しと比べたらねぇ~)
いや、皆さんと普通の幽霊とは違いますし、肝試しは肝試しでというか。
(自然と人の意図的なものじゃまたやり方が異なる故だ)
そ、そう!そうです四代目!!
——12分後——
『『いやぁぁぁあああッ!!!』』
「んじゃ五組目! ケロケロキティ! 麗日キティ! ゴー!!」
ペアの変更などもなく、そのまま肝試しが始まり、五組目まで来た。
僕は一人…怖いなぁやっぱこういうの……。
(まぁ周りから見たら幽霊と話してる坊主の方が怖かったりするかもな)
えぇ!?た、確かにそうですけど…声には出してませんし……。
(でも九代目、結構リアクション出やすいから、周りからたまに不思議がられてるじゃん)
そ、そうですけど……!!
これでも頑張って――ッ!?
『危機感知』が…鳴った!?
肝試しで、脅かす側にいるB組たちからじゃない…ましてやまだ入ってないから感知はそこまでしないはず。
なのに何で、こんな
「あれは……」
「黒煙?」
「何か燃えてんのか?」
プッシーキャッツの私有地である森で山火事?
だとしても、この感知は……。
「――な、なに!?」
ピクシーボブの声で振り返れば、そこには二人の見知らぬ人が立っていた。
足元にはピクシーボブが転がっていて、頭を鈍器のようなもので抑えられてる。
(おいおいマジか!?)
(いや、そうでなければ『危機感知』が鳴ることはない…つまりは事実!)
『危機感知』があるのに、対応に遅れた…!!!
「な、何で…万全を期したはずじゃ……何で――何で
長身に長い髪を靡かせたサングラスの男と、おそらく爬虫類の異形型であろう
なんで、
「『黒鞭』――ッ!」
『黒鞭』で救出と捕縛をしようとしたけど、虎に止められた。
「やばい……!!」
マンダレイがそう呟いた声が聞こえた。
確かに合宿先がバレて、こうして侵入を許したのはヤバい……いや、いや待て…まさかッ!!
――洸汰くん!!!!!
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