僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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主人公がいる場所でいない展開だとこうも難しいと痛感しました。
あと「i am a hero too」良かった…事前にインターン編見たせいで泣いた。




吹く風の向きはどちらへ

 

 

 

 

少し戻り、常闇の暴走が収まり緑谷がまだAFOと交戦中の時。

肝試しルートの一か所にて、二つと一つの影が対立していた。

 

「――血が少ないとダメです」

 

二つで一つに繋がった、ダイビングボトルのような装置を背面に装着している癖毛の制服少女。

そのボトルとチューブで繋がっている両肩に装備されている注射針を一本、取り出し構える。

 

「普段は切り口からチウチウと吸い出しちゃうのですが……この機械は刺すだけでチウチウするそうで、お仕事が大変捗るとのことでした」

 

注射針から針が伸び、片手にナイフともう片方には注射針という凶器の武器を構える女子高生敵(ヴィラン)――『渡我被身子』。

 

「だから――刺すね」

 

渡我は二人に向かって駆け出す。

 

「来たァ!」

 

「お茶子ちゃん!」

 

しかし接近する前に蛙吹は自身の舌を麗日に巻き付かせて、後方へと投げた。

 

「施設へ走って! 戦闘許可は『敵(ヴィラン)を倒せ』じゃなくて『身を守れ』ってこと! 相澤先生はそういう人よ!」

 

「梅雨ちゃんも!」

 

「もちろん、私も――ッ!」

 

冷静に考える蛙吹はイレイザーヘッドの考えも即理解し、撤退を選ぶ。

それを聞いた麗日はすぐに蛙吹へ手を伸ばし、蛙吹も続いて撤退しようとする。

だがそれよりも速く渡我は接近し、ナイフを振るう。

 

掠りはしたものの斬り落とされることはなかった。

それでもナイフは深くまで入ってしまい、舌から血が流れ出る。

 

「梅雨ちゃん…梅雨ちゃん…? 梅雨ちゃんっ! カァイイ呼び方。私もそう呼ぶね!」

 

「やめて。そう呼んで欲しいのは、お友達になりたい人だけなの」

 

行動とは裏腹に純粋な笑みを浮かべるその姿に、蛙吹は不気味さを覚える。

そして跳躍力で撤退しようとするも、渡我は注射針を投げ、蛙吹の束ねている髪ごと木に打ち付けることで拘束した。

 

「や~! じゃあ私もお友達ね! やったァ!」

 

「梅雨ちゃんッ!!」

 

麗日は着地後すぐに蛙吹を救け出そうと駆け出す。

一方で渡我は気にせず蛙吹に密着し、顔を赤めながら口角を上げていた。

 

「血ィ出てるねぇ、お友達の梅雨ちゃん! カァイイねェ! 血って私大好きだよ」

 

「離れてッ!」

 

麗日はそのまま接近し、それに気づいた渡我は蛙吹から離れてすぐに麗日へナイフを突き立てるも、そのナイフを麗日は躱した。

 

「(ナイフ相手には、片足軸回転で相手の直線上から消えて、手首と首根っこを掴み――おもっくそ引き押す!!)」

 

「あら?」

 

「(職場体験で教わった近接格闘術――)」

 

【――ガンヘッド・マーシャル・アーツ!!】

 

麗日は職場体験先であるプロの武闘派ヒーロー『ガンへッド』に直々に教わった近接格闘術を記憶通りに、練習通りに行い、見事渡我を抑えた。

 

「凄いわ、お茶子ちゃん…!」

 

「梅雨ちゃん! ベロで拘束出来る!? 痛い!?」

 

「ベロは少し待っ――」

 

瞬間――突如大きな地響きが彼女たちを襲った。

それにより注射器は抜け落ちて蛙吹は解放されるも、麗日も体勢を崩して渡我がその隙に抜け出して自由になる。

 

「な、なに!?」

 

「どこかの戦闘によるものかもしれないわ。それよりも今ので敵(ヴィラン)が…!」

 

状況は元通り。

麗日と蛙吹は身構えるもその直後に、彼(・)女(・)た(・)ち(・)の(・)間(・)を(・)巨(・)大(・)な(・)レ(・)ー(・)ザ(・)ー(・)が(・)通(・)過(・)し(・)、(・)草(・)木(・)と(・)地(・)上(・)を(・)削(・)り(・)焼(・)い(・)た(・)。それを目にした二人は驚愕する。

 

「な、何今の!?」

 

「分からないわ……きっと敵(ヴィラン)の仕業でしょうけど…こんな……」

 

余にも規模がデカい。

偶然にも目の前の渡我との距離が離れたために、巻き込まれずに済んだが場合によっては確実に死んでいた。

それほどまでに先の通過した攻撃らしきものは危険。

 

二人は渡我へ視線を戻すも、渡我もまたその通過した跡を見ていた。

 

「確か弔くんが、とてつもない助っ人が後から来ると言ってましたね。その人のでしょうか?」

 

事前に聞かされた情報。

拉致と優先殺害対象者である人物は、ある助っ人が場合によって対応することを聞かされている。

故に彼女はあの攻撃がそのものではないのかと考えていた。

 

だがその戦闘の余波がここまで来ることまでは思いもしなかった。

否、誰だってそこまで思わないだろう。

このままここにいては、敵味方関係なくやられる。

 

これは素人でもわかるレベルだ。

故に――

 

「なんかヤバそうなのでバイバイします。さ(・)っ(・)き(・)の(・)で(・)少(・)し(・)ば(・)か(・)り(・)血(・)も(・)頂(・)い(・)た(・)の(・)で(・)」

 

「へっ? あっ、痛…ッ!!」

 

「お茶子ちゃん!?」

 

「ッ!? いつの間に…!」

 

膝の横に僅かな刺さり傷。

麗日は先の衝撃による横転で枝などにも刺さったため気づくことが出来なかったのだろう。

故に渡我は麗日の血だけは少ないものの採ることができた。

 

「さっき崩れた間にチウチウさせてもらいました。ほんとはもっと欲しかったし、お茶子ちゃんとは恋バナもしたかったのですが…」

 

「え?」

 

「私と同じ匂いがします。分かるんです。乙女だもん」

 

頬を赤くさせて、口角を更に上げて大きくニヤける渡我。

一方で麗日はそんな渡我に動揺と疑問が湧き上がる。その後、渡我は暗い森の中へと駆け出し姿を消した。

 

麗日は後を追いかけようとするも、蛙吹が止める。

 

「どんな"個性"かもわからない。それにさっきのがまた来て、諸に受ければ即死よ。とにかくここは危険すぎるわ」

 

「……う、うん」

 

蛙吹の冷静で賢明な考えに、麗日は頷く。

すると茂みが揺れ、二人は警戒する。

だがそこから出てきたのは――

 

「麗日!? それに蛙吹も!!」

 

「障子ちゃん! 皆!!」

 

緑谷の加勢、並びに救助に向かっていたはずの障子たちだ。

障子たちは草むらから出て、麗日たちへと向かう。

 

「さっき知らねぇ女が飛び出して来て、そのまま素通りしていった。けど持ってたナイフに血がついてたからもしかしてと思ったが……」

 

「怪我は?」

 

「大丈夫。軽傷よ」

 

「皆はなんで……」

 

障子は、ここを通った経緯。

先のレーザーの件も含め、その事実を麗日と蛙吹に話す。

それを聞いた二人は、一度お互いを見て、先のレーザーのことも理解した。

 

「騒動がまだ起こってるから、きっと交戦中のはずだ。どうにか緑谷を救出後、爆豪と一緒に施設へ連れて行く。現状判明しているのは緑谷と爆豪が狙われていることだけだ。だから二人を――」

 

「えっと、緑谷ちゃんはここにはいないからわかるけど…爆豪ちゃんも最初からいないわよ?」

 

障子の言葉を遮るように、蛙吹は耳を疑い、その疑問を口にした。

それを聞いた障子たちは逆に疑問を抱く。

 

「何言ってんだ? 爆豪なら後ろに……――」

 

障子と轟は振り返る。

だが振り返った先、後方にいるはずの爆豪と、さらには常闇までもが――蛙炊の言うように姿がなかった。

 

「彼なら――俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

 

——◆——

 

 

そして現在。

予定通り爆豪と、アドリブで常闇を"個性"にて攫った敵(ヴィラン)『Mr.コンプレス』は、轟の氷結を避け、"個性"関係なく素の身体能力にて木々を飛び移り撤退している。

少し離れた位置の地上にて、轟たちは必死に駆け出し追いかけていた。

 

緑谷の救助のこともあるだろう。

だがコンプレスの「幕引き」という言葉を聞いて彼らは気づいた。

 

緑谷もまた敗北し、連れて行かれそうになっているのを。

 

ならば今、目の前にいるコンプレスを追いかけるしかない。

コンプレスの言っていた合流地点に追い付けばと考えていた。

 

「畜生速ェ! あの仮面……!」

 

「飯田君がいれば……!」

 

必死でコンプレスを追いかける。

だがその距離は徐々に引き離されていく一方。

今ここに機動力に特化した"個性"持ちがいない以上、決定打がない。

 

――デクくんだったらこんな時…!!

 

そんな中、麗日は緑谷ならばと思考が動いていた。

これまでも、緑谷の機転の速さに救けられて来た。

だが今ここに彼はいない。

 

故に頼れることも、その手段を思いつくことも出来ない。

それでも彼女は思考を動かす。

緑谷ならどう考え、どう思い付き実行に移すかを。

 

「(考えろ!! 考えるんや!!!! こんな時、デクくんだったら……!!!!!!)」

 

動かし、巡らせ、答えへと辿り着かせる。

そして自分なりの最適へと……至った。

 

「ッ! 障子くん!! 轟くん!! 私と一つに固まって!!」

 

「なに!?」

 

「そしたら私が浮かす! それを梅雨ちゃんが舌で思いっきり投げて!! あの敵(ヴィラン)に接近したタイミングで解除するから!!」

 

「…ッ! なるほど、人間弾か!!」

 

「うん! きっとデクくんもそう考える!!」

 

麗日なりの、緑谷なら考えるであろう即興の戦法。

これまで近くで見て来たからこそ、彼ならこうするだろうという信頼も兼ね備えた結果。

 

「麗日、お前まで来ることは――」

 

「時間がない!! 何より敵(ヴィラン)の数が分からない以上二人だけは危険だし、私の"個性"で動きぐらいは止められるはずだから!! 梅雨ちゃん! この人のこともお願い!!」

 

「わかったわ!」

 

全員が一度足を止める。

そして麗日は自身と障子と轟を浮かし、一つに固まり、蛙吹が舌で三人を巻きつけて投擲準備を始める。

 

「俺が軌道を修正しつつけん引する。タイミングは任せたぞ」

 

「うん!!」

 

「行くわよ……必ず三人を救けてね!!」

 

蛙吹は舌の傷による痛みなど気にすることなく、三人を遠心力を活かてで十分に加速をつけることで三人をコンプレスへ目掛けて投擲した。

急激な加速に轟と障子が驚愕の声を上げ、麗日も歯を食いしばるように声を漏らしながら、コンプレスとの距離を詰めていく。

その声を耳にしたコンプレスは、不意に後ろを振り向いた。

 

 

——◆——

 

 

開闢行動隊、指定回収地点。

本来は蒼炎と毒ガスにて発見は困難になるハズの地点に現状三人。

渡我被身子、そして『荼毘』と『トゥワイス』が既に合流していた。

 

「イカレ野郎、血は採れたのか? 何人分だ?」

 

「一人で~す!」

 

「一人ィ!? 最低三人はって言われてなかったか!?」

 

「仕方ないのです。殺されるかと思った」

 

「つうかよ、渡我ちゃんテンション高くねぇか!? 何か落ち込むことでもあったのか?」

 

トゥワイスのおかしなテンションと質問の問いかけに、渡我は律儀に答える。

そんな会話に荼毘はうんざりし、黙るよう声をかけようとするが、それを遮るように草むらから更に一人、人が現れた。

 

「――どうやら間に合ったみたいだね」

 

三人がその声の主の方へ視線を向ける。

そこには顔のマスクが砕かれているスーツを着た男――AFOが立っていた。

 

「お前は…」

 

「こんな形で対面することになってしまって申し訳ない。僕のことは、弔から聞いてるだろう?」

 

「(この声…あの時の……) あぁ、お前が死柄木の言っていた、助っ人か?」

 

「すっげぇ顔だな! イケメンだぜ!」

 

荼毘はすぐに助っ人である事、そして別で誰なのか感づき始めている。

だが全く知らない二人は疑問に思い、トゥワイスは普通に素直な感想を呟く中、AFOが抱えている存在に気づいた。

 

「そいつは……」

 

「緑谷出久だよ。僕が相手をしてね。気絶してるよ。彼が万全だったら僕もこうして拉致することは出来なかったさ」

 

AFOの両手で抱え、胸の傍にいるのは全身重傷に加え、完全に意識を失った緑谷だった。

『変速』の反動に加え、『黒鞭』で無理やり行使し続けた肉体全体、『OFA』の反動による複雑骨折もあって、それはとても言葉で表せない程に酷い姿となっている。

だがその姿を見た渡我だけは、まるで恋をするように頬を赤らませ、見惚れていた。

 

そして歩み寄り、AFOに問いかける

 

「出久くんでしたよね確か! チウチウしていいですか!?」

 

「僕の用事が終わった後でなら構わないよ」

 

「本当ですか!? やった~!!」

 

渡我は純粋な嬉しさでいっぱいになる。

 

「後は爆豪勝己君を拉致した彼が合流し、黒霧の迎えがくれば僕らの勝利さ」

 

「あぁ。Mr.ももうそろそろ――……あ?」

 

荼毘の言葉が止まり、視線が空へと向けられる。

すると夜空の中、ゆっくりと何かが落ちてくるのが見え、音も大きくなっていく。

 

「――おぉぉおおおおぉっ!!!!!!!!!!」

 

そして夜空から一つに固まった影が降り注ぎ、地面に勢いよく激突して衝撃音と土煙を引き起こした。

 

「おいおい知ってるぜこのガキ共ォ!!!!!」

 

「ここまで来るとはね」

 

「わぁ!!!」

 

その正体を見た各々が思わず声を漏らす。

土煙が晴れてそこにいたのは――

 

「爆豪たちを返せェッ!!!」

 

Mr.コンプレスを押さえつける麗日、障子、轟の三人だった。

 

 

「――誰だ!?!?!?!?」

 

 

 

 





Q.麗日、ここまで考えられるかな…。
A.体育祭の爆豪戦は麗日が自分で考え見出しました。その時でも彼女の脳裏には緑谷が映っています。きっとデクくんならという、熱い信頼とクラスの中では爆豪を覗いて隣で見て来た人材であるから(あとヒロイン力(?))という解釈の末です。

Q.なんで麗日まで来たの?
A.圧倒的数の差、障子と轟だけじゃ正直危ないなァ…いやかなりヤバいなァって感じでしたので。
いやまぁ魔王様がいる時点で変わらないでしょうがってね……アハハハッ(遠い目)。


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