僕のヒーローアカデミア 継承の黎明   作:伽華 竜魅

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どうも皆様方、一か月ぶりです。
生きています。生存しています。
最近仕事がハードすぎて執筆も出来ない日々が続いていましたが、何とか出来たので今回更新です。




最悪の結果

 

 

 

 

「Mr.、避けろ」

 

「ラジャ…!!」

 

状況を瞬時に把握した荼毘は、蒼炎を出しながらコンプレスに避けるよう指示を出す。

コンプレスも意図を察し、自身を"個性"にて圧縮させた。

そして蒼炎が放たれ、残った三人へと襲い掛かる。

 

「ぐっ…あああ!!」

 

「ゔ、ゔぅぁ…!!」

 

「麗日! 障子!! ッ!」

 

かろうじて轟は躱すことが出来たものの、麗日は片方の手を、障子は片腕を浴びてしまう。

その間にもトゥワイスが轟へと接近した。

 

「死柄木の殺せリストにあった顔だ! お前なかったけどな!!」

 

「チッ!!」

 

「熱っつ!!」

 

轟は氷結を放つ。

だがトゥワイスもおどけるようでいて氷結をあっさり躱し、手首に装備している、見た目に反して鋭利なメジャーを取り出し、氷を切断しながら轟を攻め立て始めた。

 

「わぁ! 来てくれたんだねお茶子ちゃ~ん!!」

 

「くっ!!」

 

片手を焼かれた麗日が、しばらく苦しむ中、渡我は麗日へと接近する。

そしてナイフを手に襲い掛かり、麗日は必死に対応しようとした。

 

「恋バナしよ! 血ももっと頂戴!!」

 

「くっ、誰が!!」

 

しかし焼かれたばかりの手が動かすだけで激痛が走る為、先のように取り押さえるのは難しい。

そのまま渡我は麗日へナイフを振りかぶる。

 

「きゃっ!?」

 

「麗日!!」

 

だがナイフが振り下ろされる寸前。

障子が渡我を弾き飛ばした。

飛ばされた渡我は慣れてるように体勢を整え、地面に着地する。

 

しかし先ほどまでの笑顔は消えており、逆に冷徹な表情で二人を見据えた。

 

「そうですか。邪魔するんですか。あなた少しも好みじゃないけど――刺してあげます」

 

「イカれてやがる…!!」

 

殺気を放つ渡我に二人は警戒を強める。

一方の轟とトゥワイスも交戦中故、混戦模様となっていた。

 

「僕が手を貸すほどでもないね。(それに僕が彼を直接捉えてる以上、彼らにこれ以上の大胆な奪還はできないし、まだ彼が接触的に攻撃していない)」

 

ただ一人、AFOだけは緑谷を抱えたままその状況を見据えるのみ。

状況によっては手を貸すとこまでは考えているが、数的に有利なのと、攻撃性を持つ"個性"は現状一人なこともあり問題はないと踏んでいる。

すると自信を圧縮していたコンプレスは自身にのみ"個性"を解除し立ち上がる。

 

「いってて……飛んで追ってくるとは! 発想が飛んでる!!」

 

「爆豪は?」

 

「もちろん。ついでにアドリブも……ん?」

 

荼毘は襲撃の目的の一つである爆豪をちゃんと確保できてるか問いただし、コンプレスは右ポケット手を入れ確保してある二人を確認する。

しかしそこに入れていたはずの圧縮された二人の玉がないことに気づいた。

その様子に気づいた障子は叫んだ。

 

「麗日、轟! 緑谷を奪還して逃げるぞ!」

 

「えっ!?」

 

「奴の今の行為でハッキリした! "個性"は分からんが、お前が散々見せびらかした……右ポケットに入っていたこの玉が常闇、爆豪だな――エンターテイナー!」

 

見せびらかすように、障子はその手に握られている二つの玉を見せる。

人間爆弾後、衝突して落下している最中に障子は抑えるだけではなく、コンプレスが隠したであろうポケットからその玉を取り返していたのだ。

 

「ホホウ! あの短時間でよく……さすが六本腕! まさぐり上手め!!」

 

それに対しコンプレスは奪われたにも関わらず障子の手際を純粋に褒め称える。

だがまだ終わりじゃない。

あとは緑谷だけだと、動こうとした。

 

「――残念だが、それらは爆豪君たちじゃないよ」

 

「は?」

 

しかしコンプレスの発言に三人は固まる。

爆豪たちではない…しかし障子はコンプレスが入れていた右ポケットから確かに取り返した。

その証拠にその手には二つの玉がある。

 

「悪い癖だよ。マジックの基本でね、モノを見せびらかす時ってのは――見せたくない物がある時だぜ?」

 

コンプレスらマスクをはずし、自身の口から二つの玉を見せびらかす。

それを見た三人は絶句し、障子が持っている方だけが解除されその姿を露にする。

それは轟の氷結の破片だった。

 

「俺の氷結を!?」

 

「あぁ。氷結攻撃の際にダミーを用意したんだ。アレだけ分かりやすく、右手に持ってた物が右ポケットに入れてるのを見て発見すれば、嬉しくなるさ!」

 

「クソ!!」

 

結局状況は変わらない。

コンプレスの手…否、口には二人が囚われている。

そしてAFOに抱えられた、気絶している緑谷。

 

彼は爆豪と常闇と違い、圧縮されておらずそのまま気絶して捕まってるだけ。

まだそっちは可能性はあるだろう。

 

「こっちはまだ可能性があると思っているのかい? なら奪い返せるかな? ――この僕から」

 

しかし相手はかつて世界を支配していた魔王。

オールマイトによって一度討たれたが、返り咲くためにこうしている。

何よりオールマイトに重傷を与えた最古の敵(ヴィラン)であるが故――

 

「「「――ッ!?!?!?!?!?」」」

 

その放たれる威圧、気迫、殺気によって彼らは動けず、していたはずの呼吸までも止まりかけた。

着いた瞬間にでもそうなってもおかしくないはずだが、状況によって意識がAFOから外れていた為、気づくまではそうはならなかった。

障子とて常闇のこともあり、AFOにそこまで意識は向いていなかったのもまたしかり。

 

だがこうして改めて直面することで改めてその存在に圧倒された。

故に彼らは動けない、身体が硬直し、呼吸もまた出来なくなる。

 

「せっかくだ。君たちの"個性"も貰っていこう」

 

AFOは片腕を放し、その手を差し向ける。

 

――『鋲突』+『増幅』+『貫通力』

 

指先から黒い爪が伸びようとした――瞬間。

 

「ッ!?」

 

A(・)F(・)O(・)と(・)緑(・)谷(・)の(・)間(・)に(・)衝(・)撃(・)波(・)が(・)発(・)生(・)し(・)、(・)共(・)に(・)互(・)い(・)に(・)吹(・)き(・)飛(・)ん(・)だ(・)。

AFOは血を抉りながらも耐え、緑谷は地に受け身も取れず転がり落ちる。

全員が、特にAFOが訳が分からずにいるが、AFOだけはすぐに理解した。

 

「まさか…も(・)う(・)目(・)が(・)覚(・)め(・)た(・)と(・)い(・)う(・)の(・)か(・)? それ程重症、普通ならたとえ目覚めるにしても相当の時間を有するはずだが……」

 

緑谷の本体である肉体はピクリとも動かない。

だが緑の稲妻を纏い、黒い鞭を伸ばし、紫染みの煙を出し始める。

そして開いた瞼から見える目が、そう…彼の眼が、眼中だけが鋭く敵(ヴィラン)たちをAFOを睨んでいた。

 

「どういうことだ!? 倒したんじゃねぇのかよ! 倒してねぇよ全く!!」

 

「ボロボロの出久くん素敵!!」

 

そっちに意識が息、辛うじて呼吸できるようになった麗日たちもまた叫ぶ。

 

「デクくん!?」

 

「緑谷お前…ッ!」

 

彼はまだ、諦めていない。

 

 

——◆——

 

 

身体が動かない…呼吸するだけで全身が痛む……。

 

(坊主! それ以上はもうヤバい!! 下手すりゃ命に関わるぞ!!)

 

すみません……でも、みんなを救けるために、動かないと…!!

状況は…状況はどうなってるんだ!?

 

(お前が気絶している間も、俺達は敵の話を聞いていた。本当は肉体を一時的に借りて脱出するため、隙を伺っていたが…………まだ奴らのアジトに拉致られたわけじゃない)

 

(二代目…!?)

 

(撤退するための合流場所に今お前はいる。そして友人たちもまた)

 

!?誰が…!?

 

(だがそれ以上に、お前の幼馴染とあの時、奴に目を付けられた小僧が敵の一人の"個性"で捕まっている)

 

かっちゃんだけじゃなく常闇くんまで!?

クソ…!!!

 

(まだそいつらも撤退していない。攫われた後、回復し救助するか……いや、お前はきっと後者を選ぶだろう、九代目)

 

今、二人を救けます!!!!!!!!

だけど身体はもう合宿疲労に、マスキュラーとAFOの連続戦に、『変速』の反動でピクリとも動かない。

意識を保って、呼吸をするだけでもやっと……でも、それでも……"個性"は使える!!!

 

何より『黒鞭』『煙幕』『浮遊』だけでも叩ける…!!

 

「どうやら目が醒めても動けないようだね」

 

『危機感知』が鳴り出した…!

来る…身体が動かない以上、"個性"に意識を集中させて対応しなくちゃ…急げ、急げ!!

普通にやってもだめだ、手数を増やすことは出来ても『発勁』を溜める術がこの状況だと限られる!!

 

辛うじて意識が戻った時に、無理やり壊れかけてる筋肉を『黒鞭』で伸縮して『発勁』を溜めた分が残ってるけど、どうすればいい…!?

考えろ…考えろ…!!どんな方法でもいい…!!この状況を打破できる術を……!!

 

『――僕のお気に入りの"個性"たちと相性のいい"個性"たちを組み合わせた傑作の一つだ。そしてこれは手足のように、僕の思うがままに動いてくれる』

 

『――ヴォォォオオオッ!!!!!!!!!!!!!』

 

『静まれっ……! 黒(ダーク)……影(シャドウ)!!』

 

……ごめん、常闇くん。

暴走した『黒影(ダークシャドウ)』――参(・)考(・)に(・)さ(・)せ(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)。

そ(・)し(・)て(・)A(・)F(・)O(・)の(・)や(・)り(・)方(・)も(・)。

 

(九代目?)

 

歴代の皆さん、ここにいるクラスメイトは何人ですか!?

それと僕が把握できない、敵(ヴィラン)の配置を教えてください!!

 

(何を――)

 

早く!お願いします!!

 

(…ッ。君の位置から後方にクラスメイト三人で、その傍に敵(ヴィラン)が二人! そしてこの位置から正面にAFO含めた敵(ヴィラン)が三人!!!)

 

(志村さん!?)

 

(考えがあるんだろ!?!? いや、この状況を唯一打破できるかもしれない方法を思いついたんだろ!?!?!? ならお前に賭けるぞ――出久くん!!!!!!!!!)

 

ありがとうございます…七代目!!

 

イメージ……参考を元に。

形を…体育祭で纏った時の感じを大雑把でもいい、思い出せ。

数は二つだけでいい……それでも大きく。

 

暴(・)走(・)し(・)た(・)『黒(・)影(・)』を(・)参(・)考(・)に(・)形(・)を(・)。

これまで合わせて来たように、『黒鞭』と『浮遊』で、足りないパワーを残ってる分の『発勁』で。

幾(・)重(・)に(・)も(・)、(・)何(・)十(・)に(・)も(・)重(・)ね(・)て(・)大(・)き(・)く(・)し(・)て(・)い(・)く(・)。

 

歪でもいい、僕自身に巡らせたように尖った五指を、一回りでも大きく形を、モンスターの手を作る。

 

「おいおいおいおい…! なんだこれ!! 知るか!!」

 

「アイツ重傷なんだろ? あそこまでやれば死んでもおかしくねぇと思うが」

 

「おい障子、これはまるで……」

 

「あぁ……常闇のアレを、再現している…!!」

 

背中から無数に『黒鞭』を出して一つにしていき、巨大にして形を作っていく。

周りから声が聞こえるけど、今は関係ない。

それよりかっちゃんたちは誰が捕らえてますか!?

 

(オレンジ色のコートを着て仮面を被っている奴だ!!)

 

ありがとうございます!

『危機感知』でAFOと他の敵(ヴィラン)を警戒しつつそいつから、取り返す!!

 

『黒鞭』+『発勁』+『浮遊』による即興必殺――

 

「あの時の、彼の"個性"を真似たのか! 実に素晴らしいよ!! 緑谷出久!!」

 

【――黒影(ダークシャドウ)!!!!!!!】

 

二本の巨大で歪な、モンスターのような手。

これで攻撃しつつ、かっちゃんと常闇くんを取り戻す!!

 

 

——◆——

 

 

暴走した『黒影(ダークシャドウ)』と、AFOの複数を組わせて異様な形を作った戦法。

その二つを参考に、緑谷は巨大で歪な手を二本作って見せた。

『黒鞭』は伸縮自在で捕縛等も可能。

 

【黒鎖】では二本を織り交ぜることで鎖にしていることから、これらも可能ではないかと緑谷はこの土壇場で思いついた。

AFOのあの歪な顔による追尾攻撃も、そういう"個性"などではなく、いくつもの奪った"個性"達を組み合わせることで可能にしている。

すなわち、『黒鞭』で再現できる可能性のある物ならば、出来るのではないかと緑谷は考え付いた。

 

体育祭でも麗日が爆豪の『爆破』を逆利用することで瓦礫を集め、秘かに浮かし空中で補充していた。

解除すれば落下し流星群となるその戦法を、緑谷は轟戦と決勝戦で参考にしている。

他にも参考にしたり出来る技や"個性"の応用等は事細かく調べ、考え、やって来た。

 

故に緑谷は考え付いた。

『黒影(ダークシャドウ)』そのものはできないが、その伸縮自在に伸ばし、『黒鞭』と同じで攻撃・防御・捕縛もできるその手を。

だが簡単にできることでもなく、リスクも存在する。

 

その巨大で歪な手を『黒鞭』一本で作ったわけではない。

『黒鞭』は伸縮自在なだけで、変幻自在に使うことは出来ない。

否、数を増やせばそれらも可能なのは成功している今、変幻自在でもあるだろう。

 

しかしそれは数を増やせばの話。

肉体に巡らせながら、外部へ放出する戦法があるがそれとは違う。

『黒鞭』の数に制限があるかどうかは未だ不明。

 

少なくとも十本…二桁は行けることは明白。

だからこそ、重ねて行けばより太く大きくなる。

ぶっつけ本番のかけではあるが、緑谷はそれでも実行に移し、成功してみせた。

 

「おいおいおい、いくら何でもこれは圧縮できないって!!」

 

コンプレスがそう発言した瞬間、巨大で歪な手の形となった『黒鞭』が連合たちへ襲い掛かる。

全員が一斉に避ける中、緑谷は必死に意識を保ちながら、轟たちを巻き込まれないようにしながら『黒鞭』を振るう。

土を抉り、木々を薙ぎ払うそれはまさに暴走していた『黒影(ダークシャドウ)』よりは劣るが、それでも凄まじいもの。

 

故に彼らは避けるだけ。

 

「本人はその場から動いてねぇんだ。こんなのどうってことねぇよ!!」

 

しかし荼毘が蒼炎を緑谷へと放つ。

蒼炎は真っすぐ飛んで行くが、『黒鞭』が瞬時に緑谷の下へ戻り、地面を抉り取って盾にする。

それは体育祭で轟の氷結を防ぐ際にやった戦法と似たようなもの。

 

盾となった地面に衝突した蒼炎はそのまま左右に分かれるように散っていく。

荼毘は舌打ちを漏らしながらもう一本の攻撃を躱した。

 

「(彼の"個性"を模倣した攻撃。だが闇雲ではなくちゃんと僕達だけを狙っている。おまけに大雑把、いや、わざと派手に暴れることでこちらの位置を把握できていない他の者たちを知らせようとしているのか。一見すれば拉致られないように必死に抵抗するだけに見えるそれも、彼は常に先のことを考えている……何よりもその目だ緑谷出久)」

 

AFOは感知・検知・探知と言ったあらゆる"個性"で対象を確認する。

その緑谷の目には、一切絶望や敗北という色が染まっていない。

否、全く持って諦めていないという意思を宿らせていた。

 

「だがいくらそのような術を編み出した頃で、成し遂げなければ意味がない――『土操作』+『棘化』+『金属硬度』+『貫通力』」

 

瞬間――緑谷の下にある土が操作され、金属並みの強度となった棘となってそのまま身体を貫いた。

 

「カハッ…!!!! ぐぅ!!!!!!」

 

それでも諦めないのか、緑谷は必死に『黒鞭』を振るう。

 

「…! 障子!! 俺たちももう一度仮面から爆豪たちを!!」

 

「あぁ!!」

 

「麗日は緑谷を頼む!!」

 

「うん!!」

 

突っ立てるわけにはいかないと、轟は障子と麗日に指示をした後それぞれが駆け出す。

緑谷が今敵(ヴィラン)の手から離れ必死に抵抗しているのなら、まだ可能性はある。

轟と障子は今度こそコンプレスから爆豪たちを救うため。

 

そして麗日は緑谷のサポートと、撤退するさに連れて行くため。

しかし次の瞬間、連合たちの背後から黒い霧の渦が現れた。

 

「黒霧……」

 

「合図から五分が経ちました」

 

「もう時間か。しかしこの状況では難しさもあるよ」

 

襲い掛かる『黒鞭』を"個性"で防ぐAFO。

何より、個人的に緑谷は必ず連れて行きたいという気持ちもある。

その一方で荼毘たちは開かれたゲートへと入ろうとしていた。

 

「お茶子ちゃん、また会おうね!」

 

そして渡我とトゥワイスは一足先にゲートへと入り撤退する。

荼毘とコンプレスも入ろうとする中コンプレスは、ショーを終えたマジシャンが客席へ向けて礼をするようにお辞儀した。

その瞬間だ。

 

「――ガッ!!!!!!!!!!」

 

「「「ッ!?!?!?!?」」」

 

「……」

 

コンプレスの顔目掛け、青く煌めくレーザーが真っすぐ飛び、仮面を破壊させた。

その衝撃と反射的反応で口に含んでいた爆豪たちの玉も放り出される。

緑谷へと向かっていた麗日は、そのレーザーを追って視線を動かせば、草むらの中に一人の影がいた。

 

「青山君!!」

 

麗日たちとは別でここに到着していた青山が、覚悟を決めたように構えて、『ネビルレーザー』を放っていた。

それを見たAFOはしばらく黙っていた。

 

「(……いや、これはある意味彼らの信頼を得たということ。今回は彼らの信頼をより深く得たということで、特別に見逃そう。青山優雅君)」

 

AFOはそのまま青山に攻撃や視線を向けることなく、緑谷へ集中する。

一方で轟と障子は放り出された玉へとそれぞれ手を伸ばした。

そして障子が一つを掴み、轟ももう一つ掴もうとした。

 

しかしそれだけは荼毘が先に回収した。

 

「哀しいなあ、轟…焦凍」

 

その際、荼毘は轟に対し嘲笑った。

そのまま二人は通り過ぎて地面に転がる。

 

「確認だ。解除しろ」

 

「っだよ今のレーザーは!? 俺のショーが台無しだ!!」

 

コンプレスへ"個性"を解除するよう指示する。

コンプレスは顔に攻撃を受けたことに忌々しげに文句を言いながら指を鳴らして"個性"を解除した。

その途端、障子の手にした玉からは常闇が。

 

荼毘の方には爆豪が姿を現す。

 

「問題――なし」

 

荼毘に首を掴まれた勝己は抵抗できず、ゲートへと入っていく。

 

「先生、時間が惜しいので」

 

「……いや」

 

「ッ?」

 

黒霧はAFOにも急ぐよう言うが、AFOは動かない。

今ここで、AFO以外の誰もが気付かなかった。

 

緑(・)谷(・)の(・)攻(・)撃(・)が(・)止(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)。

 

瞬間、一か所で土煙と共に風圧が発生し、麗日の叫び声が鳴り響く。

全員がそっちへ視線を向けた途端。

 

「がっ…!!!!!! テメェ…!!!!!」

 

『フ(・)ル(・)カ(・)ウ(・)ル(・)』を(・)纏(・)う(・)緑(・)谷(・)が(・)、(・)身(・)体(・)全(・)体(・)で(・)荼(・)毘(・)に(・)体(・)当(・)た(・)り(・)し(・)て(・)き(・)た(・)。

 

彼はいつの間にか攻撃を止め、動かない身体の中、『浮遊』と『発勁』を合わせて無理やり自身の身体を飛ばすように放出し、一気に距離を詰めたのだ。

その勢いで荼毘に体当たりしたことで、荼毘の手から爆豪を切り離すことに成功する。

その僅かな隙を逃さず、緑谷は『黒鞭』で爆豪を掴む。

 

(九代目!! それ以上は!!)

 

「かっちゃんは、渡さない…!!!」

 

歴代の必死な心配も届かず、緑谷はそのままゲートの反対側、麗日の方へと放り投げようとした。

 

「――そう簡単にやらせるわけないだろ?」

 

『危機感知』が鳴り出し、緑谷は目を見開く。

瞬間彼の身体は、急所をわざと外す形で『鋲突』を貫かれ吐血する。

 

「デッ…!?」

 

「君はこっちに来てもらうよ。黒霧」

 

「はい」

 

"個性"が完全に解けた緑谷は、そのまま荼毘たちとは別に開かれたゲートへと放り投げられ、入ってしまう。

そして爆豪も、再び伸びて来た荼毘の手に、抵抗する暇も与えずに首を掴まれてしまう。

 

「デクくん!!!! 爆豪くん!!!!!」

 

麗日が手を伸ばし救けようとする。

轟と障子も体制を直して同じように背後から手を伸ばしていた。

 

「君たちの勇敢な精神力は称賛に値するよ。だけど」

 

瞬間――AFOの"複数個性"による攻撃の余波で三人は吹き飛ばされた。

 

「君たちの――負けだ」

 

それを最後に、AFOもゲートの中へと入る。

土煙が晴れ、三人が急いで立ち上がる。

だがそこにはもう……誰もいなかった。

 

「そ、そん…な……」

 

残ったのは、戦闘跡による荒れ地と、森を焼き尽くす蒼炎のみ。

残された障子たちは現実を受け入れられないかのように唖然としており、麗日は思わず声を漏らす。

緑谷と爆豪は拉致られた。そう――

 

 

ヒーローを志し、目指す為、目指す者たちが――敵(ヴィラン)たちに完全敗北したのだ。

 

 

 

 





今回の内容、久々なのもあっておかしな点や何かしら不満点などあるかもしれません。
誠に申し訳ありませんが、何卒……。


もしよければお気に入り登録と評価、感想の方よろしくお願いします。
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