モンスターハンター~狩人レナードの軌跡~≪改稿版≫   作:ATA999

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【村住みハンター大募集!】
依頼人:ジャンボ村の村長

やあ、初めまして! 突然だが、オイラは今度新しい村を立ち上げる事にしたのさ。その名も≪ジャンボ村≫って言うんだ、良い名前だろ!
 
ついては、それに際して村に住むハンターを募集する事にした訳だが、何ぶん村作りは始まったばかりで規模が小さいからかまだ誰も手を上げちゃくれないんだ……。それでも、辺境に名前負けしないような村を作ってやるって言う気概のある仲間は、いつでも大歓迎だ。

……あ、支度金も用意してあるから、希望者は身一つで来てくれて構わないぜ!



第一話 村住みハンター大募集!

(……遂に、ここに来た。まだ小さくて、村と呼ぶのもおこがましい程の規模でしか無いけども。人の顔も活気に満ち溢れてて、誰も彼もが何と言うか、開拓者魂のようなものを持ち合わせているように感じられるし。うん、良い村になる)

 

村の入り口にあたる西の桟橋に、頭部防具を小脇に抱え一人の若者が船より降り立った。若者の名前はレナードと言う。レナードは、真新しいランポスシリーズと大剣であるアイアンソード改を身に纏い、旅の影響で少し長くなった明るめの茶髪を後ろになでつけながらも村を見渡す。その表情は希望に満ち溢れており、これから先どんな困難が待ち構えていようが、ねじ伏せてみせるという気概をも感じられる。

 

苦笑いを一つ浮かべ、気を取り直してここから見える景色を堪能する。

 

辺りからは、商品の新鮮さを半ば叫ぶように歩く人に訴えている声や、人が住む家や橋などの設備を組み立てている大工の人達の振るう金槌のトンカンと言う叩きつける音が響き渡り、今まで落ち着いた村での生活しかしていなかった彼にとっては前世でのお祭を髣髴とさせるような賑わいを見せている。そしてまた、彼はこの村がいずれその名に恥じぬ大きさになる事を知っている。

 

そう。

この村の名は、「ジャンボ村」。

 

一度は死に、再度生まれてきた彼にとって最後の思い出。かつてとの繋がり、とでも言うのだろうか。彼にとっては最もハマったのが、このジャンボ村が舞台の≪モンスターハンター2≫なのだ。

 

「ふぅ……」

 

つい、溜息を漏らしてしまう。

レナードは今年で18歳だ。言い換えれば、前の世界に別れを告げて18年の月日が経過しているのだ。新たな人生、様々な経験を積み重ねていき、最早あちらには全く未練もない。そう、思っていたものの。

 

(どうにも、思ったよりこういった感傷は尾を引くらしいな……)

 

実のところ、他にも生活に不便を感じた時にはちょいちょい懐かしんでいたというのは、言わぬが華である。

 

レナードが生まれたララノアという名の村に、このジャンボ村がしばらくの間長期的な滞在をしてくれるハンターを募集しているという話が届いた時には、その報せを持ってきてくれた村長である祖父に飛びつくように受けたという経緯がある。

 

元々、深く考えずともハンター業の引退後は血筋の関係上村長だろうとほぼ確定している人生設計を持つレナードにとって、何処でハンターをするかはあまり重要では無かった。何せ村には腕のいいハンターもいるのだ、後10年はレナードのような新米ハンターの出る幕など無いだろう。

 

同時期に起きた、ある出来事がレナードのジャンボ村行きを後押ししていた。疎外と言う程では無いものの、何となく居辛くなった村から離れる丁度良い機会だとも感じたのだ。

 

ともあれ、いつまでも浸っていては日が暮れてしまう。レナードは近くにいた大工仕事をしている人に声をかけた。

 

「あのーすみません。村長さんはどちらにおいででしょうか?」

「ん? 見慣れん顔だな。……ああ、新しくここに来たハンターか、村長ならさっきそこの坂を下りていったぜ」

 

短く刈り込んだ黒髪に角ばった顔の輪郭、限界ぎりぎりまで細まっている目がこちらを見据えてくる。その目尻には今までの人生の苦労そのものの如く皺が幾筋も刻まれていた。正しく、これぞ職人と言える風貌だ。

 

「どうも、ありがとうございます。あ、俺の名前はレナードって言います。新しく、この村にハンターとしてやって来ました。色々とご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、これからよろしくお願いします!」

 

言って、頭をきっちりと下げる。

やはり最初の挨拶は大事なのだ、初対面で悪印象を与えないためには必須と言ってもいい。

 

「これぐらい礼儀正しいハンターは珍しいな」

「はぁ、そうですか?」

「まぁ、ふざけた態度をとられるよりはマシだが。ああ、若い頃の謙虚さは必要なモンだ」

 

昔取った杵柄とでも言うべきか。レナードはどうしても、こういう些細なところでちょっとした周りとの差異が出てしまう傾向にあった。少しずつこの世界の常識と噛み合わせてきておりほぼ問題ないと言えるレベルにまでなっていたのだが、結局子供の頃は変わった奴というレッテルが貼られたままであった。

 

レナードとしては、自分よりも年上で、更にこれから色々とお世話になる人なのだから普通にきっちりと挨拶をしただけなのだが。実力至上主義で細かい所は気にしないハンターは、基本そういう殊勝な態度は取らない荒くれ馬鹿が多いのもまた事実である。

別に荒くれ者=悪人という訳では無いので他者に対する敬意も持ち合わせてはいるし、流石に軽い挨拶くらいならば基本的に行うのだが、馬鹿丁寧にきっかりとお辞儀をして挨拶をするわけも無いという訳だ。

 

まぁともかく丁寧に接して悪印象を与える事も無い。

そう気持ちを切り替え、レナードは大工の元を後にした。

 

(いぶし銀とはああいう人の事を言うのかね、俺もいつかあんなセリフを言ってみたいなぁ。……また人のいないトコで練習しておくか、何かの役に立つかもしれないしな)

 

 

 

 

 

 

「村長なら、さっき工房の方へ走って行ったわよ。ほら、あっちあっち」

「ほっ! お前さん、村に新しく来たハンターだね。村長なら船大工の親方の方に行ったよ。まぁ、それは兎も角、ハンターなら色々と今後も世話をしたり世話になったりするだろうけど、その時はよろしくしておくれ」

「ハーハッハッハ! おう、ちびすけ! 村の為に、キリキリ働いてくれよ! 何せお前がアイテムを納品したりクエスト依頼をこなす度に、村が活性化していくんだからな!」

「ヌハハハハ! 初めましてだな、新米ハンターよ! 我輩が、貴様たち新米共を一端よりはちょ~っと物足りないかなという段階にまで押し上げてやる役目を負った、教官である! 貴様が感涙に咽びながらも訓練を受ける事が出来るのも、我輩の弛まぬ努力のおかげであると知るが良い、うむ!」

 

 

等々。

村中を走り回っているらしい村長を捕まえることがなかなか出来ず、結局村に住んでいる人にあいさつ回りをするかのようになってしまいへとへとになっていたレナードは、酒場のカウンターの奥から駆けてきた給仕服を着た女の子に声をかけられた。

 

「あ、いたいた。レナードさんですよね、初めまして!私はギルド受付嬢のパティって言います。あっちで村長がお待ちですよ!」

 

(えぇ~、なんだよそれ……)

 

未熟にも、レナードは顔が引き攣る事を止める事は出来なかった。

何故なら、なかなかに愛嬌があって可愛らしい三つ編みのギルド受付嬢、パティに連れられてやってきたのは最初にレナードが降り立った付近にある酒場であったからだ。こんな事ならここで休憩しながら何か飲み物でも飲んで待ってたら良かった……とは思うものの、村全体に挨拶周りが出来たし結果オーライ。そう思い直すことにした。

 

とにかく今は、このにこやかに人懐っこそうな笑みを浮かべながらこちらに握手を求めてくる村長との会話に集中しなければならない。

 

「やあ、よく来てくれた!ようこそ、オイラの《ジャンボ村》へ!」

 

ああ、この言葉を生で聞ける日が来るなんて……と心中で感動しながらも、レナードは目の前の人物の観察を続ける。

 

村長は、純粋な人間では無い。彼は竜人族と言われる種族だ。

 

竜人族とは、寿命が数百年以上と長く、身体的な特徴としては耳が長く、全体的に若い頃は容姿端麗な者が多いという。東洋のテイストが混ざったエルフのようなものと考えればいいだろう。

但し相違点も存在しており、年をとってくると体の縮み具合が半端では無く成人男性の膝上程度にまで小さくなってしまう。

人と共存をしている竜人族はそのほとんどが老人であり、目の前の村長のような若い竜人族はほとんどいない。隠れ里のような所で隠れ住んでいるようで、好奇心が旺盛で里を飛び出した村長は数少ない例外というわけだ。

 

付け加えると竜人族は非常に優れた知能を持っており、この世界は一部を除けば絶対王政が敷かれていたりと中世的な世界観、価値観にも関わらず、比較的現代的な物事の考えをしている。かつ、一方で自然との一体化も重んじているらしい。

 

まぁとにかく、村の発展その他諸々には彼らの知識は無くてはならないものとなっている。

その為、村長のような重要な役職に彼ら竜人族が就いている事は決して珍しい事では無い。

 

「? オイラの顔に何かついてるかい?」

「あーいや、すみません。ちょっと若い竜人族の人を見るのが初めてで……」

「オイラ達はなかなか里の外には出ないからなぁ、もっと皆世界に目を向ければいいのに!」

 

身振り手振りを交えて興奮気味に話をする村長。想像通り、良く言えば行動力のある、悪く言えばかなり落ち着きの無い性格の持ち主のようである。今もパティに話を元に戻すよう窘められている。

 

「いや、悪かったね一人で盛り上がっちゃって! さて、これからの事なんだがキミさえ良ければ村のみんなにも挨拶してあげてもらえないか? 何しろこれから一緒に村を盛り上げていく仲間なんだから、みんな喜んでくれるはずさ!」

「や、それならもう済ませてきました。……本当に歓迎してくれましたね、ええ痛いほどに」

 

村の南側で食材を売っていた、見た目が完全に肝っ玉母さんな感じの恰幅の良いご婦人に思いっきり背中をバシバシと叩かれた事を思い返す。

 

(あれは絶対に元ハンターに違いないよ、それで愛用してた武器がハンマーで、ある日ガノトトスに怪我を負わされて引退したんだそうに違いない)

 

別人物である。

 

「おお、なかなか早いなぁ! どうだい、皆気の良い人たちばかりだったろう?」

 

レナードの言葉に含まれている棘を全く意に介さず、村長はこちらに同意を求めてくる。

ああ、なんとなくこの人の性格がわかった気がする、と嘆息をしながらもその意見には何の疑いもなく同意をする。本当に良い人たちばかりだったのだこの村は。

 

こちらの心境を察したのか、村長は嬉しそうにウンウンと頷いている。

 

「それと、《緑色の屋根の家》をキミが寝泊り出来るようにしておいたんだ。家の中には給仕のアイルーを雇っておいたよ、何でもキミの知り合いだそうだから丁度いいと思ってね」

 

「知り合いのアイルーって……」

 

レナードの頭の中に、一匹のアイルーの顔が浮かぶ。まさかこんな所まで追いかけてくるとは思いもしなかった。

 

「それじゃ、こいつが約束の手付金だ。これからよろしく頼んだぜ!」

 

そう言って、まさかの存在に手を組み唸っていたレナードに村長が約束の1500zを手渡してくる。村の規模が大きくなってきたならともかく、この時点ではなかなかの大金である。

 

村長がハンター誘致にどれだけ本気なのかがわかる。

 

(これからは俺も、この村の一員として発展に力を注いでいこう……!)

 

そう胸に誓いつつお礼もそこそこに、レナードはいそいそと足早に新しい我が家へと足を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

「思ったよりも、頼りなさそうな人でしたね~」

 

先ほどの会合の感想をパティはポツリと漏らす。その目線の先は屋根が緑の家へと向けられていた。

パティはドンドルマという、近隣で最も大きな街に出てギルドの受付嬢として非常に専門性の高い教育を受けてきている。その時に、ドンドルマに所属しているハンター達の、粗野に見える中に秘められていた自信と自負に満ち溢れていた様子を見てきていた。力量が物を言う世界において、時に暴力的な印象が好印象となる事もある。そこに頼もしさがあるのだ。そういった印象とは、レナードは明らかに違う。

 

だからこその反応だろう。村長はそう判断をした。

 

「なに、誠実そうで感じは良さそうだったじゃあないか!」

「それはそうでしたけど……」

 

それでは街はいつまでたっても発展なんか夢のまた夢じゃないのかという思いを込めて村長の顔を見つめてくる。出来れば、もっといかにも熟練の技を持ったベテランという風なハンターに来て欲しかったのだろう。アヒルのように尖らせた唇は上手くいかなくていじけた子供を思わせ、村長はついついハハハ、と苦笑する。

 

「まだ、オイラたちのジャンボ村は出来たばかりでこれからなんだ。カレ、レナード君と同じようにね。これから、一緒に苦労を共にしながら大きくなっていけばいいじゃあないか」

カレももう、この村の一員なんだからね、と締めくくる。パティは、その言葉を反芻するように口の中で繰り返しながら何度も小さく頷いている。

 

「そう……そうですよね、これからなんですよね……。く~っ、今はまだ私たちのこの村もまだまだですけど、もっとも~っと大きくなっていくんですもんね! ……ああ!! 村長、私いいこと思いついちゃいました!!」

「うん? 一体何を思いついたんだい?」

 

突如、何か大事なことに気が付いたかのように大きなリアクションをしながら村長に話しを持ちかけるパティ。それに対し、しっかりと村長は耳を傾ける。いつだって、何気ない会話や想定外のところからいい案が思いついたりするものなのだ。村を束ねる村長としては、村で実際に暮らす仲間の一員からの言葉は決して聞き逃せるものではない。

 

「この村のシンボルなんですが、家より大きな風車っていうのはどうでしょうか!?」

「……は?」

「あ、でもやっぱり河が傍にあるから水車の方がいいんですかね? んー……でも、一番高い所の目立つ場所にあった方がシンボルっぽいし……。村長はどう思います?」

「あぁ~、うん……。まぁ、村のシンボルはおいおい考えていくとしよう。まだ住人もそんなにいないし、やることは山ほどあるからなぁ。ハハハ……」

 

未だ村は発展途上。と言うか未だ村というのもおこがましいほどのこじんまりした状況だというのに、彼女の頭の中ではこの村はもうドンドルマにも匹敵するほどの大きな規模になっているらしい。

 

村唯一の酒場の看板娘にしてハンターズギルドの受付嬢であるパティ。天真爛漫で愛くるしい彼女ではあるがその想像力の逞しさは、やはりアクの強いこの村の住人らしいのかもしれないなぁ、などと自分のことを棚の上に押しやって村長はそう心の中でぼやくのであった。

 

「いやいやあの新米、存外我輩たちが思っているよりも出来るやもしれんぞ!」

 

突如二人の会話にヌハハハハ! と大きな声をした男が加わってくる。黒いインナーを身に纏い、クロオビシリーズと呼ばれる、頭や腕などの要所要所に赤色をした防具が装着されている。ハンターの教官として、その実力をギルドに認めてもらえた証である。

村の人から教官と呼ばれているこの男。実はその粗暴そうな印象とは裏腹に、事実これまでにも何十人もの新人ハンターを育て上げてきた経験を持つ優秀な人材なのである。村長は、彼の未だ若輩故に乏しい人脈を、それでもどうにか駆使してなんとかこうして一人の元ハンターを村に引き入れることが出来たのだ。

 

「試しに親指と薬指で摘まめるほどの狩りについての知識を訊ねてみたら、まぁ少しうろ覚えのところもありはしたが、あの年にしては非常に優秀と言ってもいいほどの知識量だったからな!」

「へぇ、それはそれは……」

「火山や氷雪地帯での対策など、経験も無いだろうに良く覚えていたものだ!」

 

ハンターの腕前としては、知識は決して外すことの出来ない要因である。例えば、狩猟対象の習性を知らないと知っているでは狩りの成功率は段違いに変わってくる。腕っぷしだけでは、ハンターは務まらないのだ。

それ故自然と知識に関することはハンター教官の目も厳しくなる。その教官をして、優秀と言わしめるほどのものを一つ持っている。

 

知識を得る事の重要性を把握し、それを実践している。このまま順当にハンターとして成長をしていけば、間違いなく優秀なハンターになってくれる事だろう。

 

このジャンボ村のような辺境の地では、言い過ぎでも何でも無く行商の邪魔となるモンスターを狩猟するハンターがいるかいないかで天と地ほどの差が出てくる。それが優秀であれば尚良い。優秀なハンターは村で最も高価な宝と言ってもいいほどの煌びやかな価値を放つのだ。

 

捕らぬ狸の皮算用だとわかってはいても、大きくなった未来のジャンボ村を想像して村長はつい頬が緩んでしまう。酒場の椅子にドッカリと座った教官の横に座り、新たに村へとやってきたハンターの話をツマミに、いい気分で酒を飲んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

「ごっしじんさま~! 会いたかったですミャ~~~ッ!!」

「どわぁ!?」

 

これから長い付き合いになる初めての我が家へと入ったレナードが初めに目にしたのは、視界一面に広がる白。しがみついてくるソレを何とか引き剥がしてみると、そこには見慣れたアイルーの嬉し泣き姿があった。どうやら向こうは身長差を考慮して、レナードの顔に狙いを定め飛び掛かってきたらしい。

 

「おいニャー、ちょっと離れろって!」

「いやミャーいやミャー! もう絶対離れないですミャー!!

 

 

目から幅涙を垂れ流しながらレナードの顔にしがみついてくるアイルー。

このアイルーの名前はネコニャー。真っ白い毛並を持つメスだ。簡単に過去の経緯を話せば、昔、レナードが村外れの草むらで行き倒れていたところを助けた結果、非常に懐かれてしまったという流れである。それ以来家族同然の扱いをしてきた。

 

ちなみに、レナードが名前を5秒で適当に決めたのはネコニャーに対する最大の秘密である。ネコニャー本人には、その際にレナードが由緒正しいとか何とかそれっぽい理由で説明してあるのだ。知れば間違いなく血を見る事になる。

 

だが、名前を付けたのはいいものの、鳴き声がミャーなのに名前をニャーにしたのは今でも痛恨のミスとレナードは自分のミスだと責め続けていたりする。ぶっちゃけ凄く紛らわしい。

 

その紛らわしさは名前と語尾だけで留まりはしなかった。見た目猫なのに犬のような性格をしており、村ではいつもレナードの後をついてきていた。レナード曰く、「犬の従順さと猫の愛くるしさが両方備わり最強に見える」。前いた村でも、拾いアイルーとしてではなく家族として、まるで仲のいい妹のように接してきていた。

 

が、ネコニャーには一つ欠点があった。いや、人によっては長所だと言う人もいるかもしれないが。その弱点とはずばり、ドジッ子属性である。それも、普段は特にミスをせずに優秀なのに肝心なところで物凄い大ポカをしでかす、というタイプ。実際、村から離れることになった理由の発端がネコニャーのしでかした事なので、その事についてはレナードとしても弁解のしようもない。

 

であるならば、だ。常識的に考えて、そんな疫病神みたいな奴とはとっとと縁を切ればいいと考えるのだろうが。

 

「はぁ……。少しだけだぞ?」

「ぐしっ……わっかりましたミャー♪」

 

どうやら、そうするには少々胸の内に情が湧きすぎてしまったらしい。

既に彼らにとって、お互いに家族なのだ。だからレナードは、どんなにネコニャーが愚かな事をしたとしても決して見捨てられないだろうし、その逆もまた然り。

 

ただ。そう、ただ一つだけ蛇足と承知で言わせてもらうならば。

 

家の天井を見上げて寝転がり、ネコニャーがゴロゴロとレナードの体にじゃれついてくるのを好きにさせながら。

 

(コイツが人間の女の子だったらなぁ……)

 

などと、ついつい思ってしまうのは。

 

これは、誰にも責める事は出来ない事なのである。

 

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