モンスターハンター~狩人レナードの軌跡~≪改稿版≫   作:ATA999

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依頼人:竜人族のお姉さま
密林にクシャルダオラがいるとの観測情報が入ったわ……。
遂にこの時が来た訳ね、準備はいいかしら……?
……いえ。無粋な問いかけだったわね。行って、帰っていらっしゃい。奇跡を信じているわ。



第十六話 吹きて惑うは如何なる風か

村長達が村でガブラスの群れと相対している頃、レナードは大雨降りしきる密林の中を一歩、また一歩と踏み進めていた。

 

「…………」

 

全身を覆うタイプであるザザミシリーズの中にも、僅かな隙間の中から雨が入り込んできていた。現在は温暖期だ、普段は蒸し暑い密林の気候だと言うのに日の当たらぬ夜、かつこの大雨という事で肌寒さすら感じる事に、レナードはどこか状況にそぐわぬ新鮮さを感じていた。

 

身に纏う全身鎧の中は、既に水浸しの様相を呈している。

だがそんなものは意に介さず、ただ黙々とレナードは目的の地へと足を進めていく。

 

(目指す先は、エリア3。密林北部、そこにクシャルダオラはいる筈だ)

 

人外の域に達した怪力を得る前に狩場で遭遇したランポス、今では歯牙にかける事も無いのだが、あの時自分は殺されるかもしれないという感覚を初めて知った。先達である、ベルの親父さんに助けてもらわなければ間違いなく死んでいた。

 

初めて単独で狩ったドスランポス、あの相手によって狩りで全力を出さないなどという余計且つ無駄な慢心を戒める事を知った。

 

純粋な飛竜よりは一回り小粒とは言え、人間を容易く屠れる事には違いない力を秘めるイャンクック。レナードの記憶の中にあるものとほぼ同じ動きを見せた為に、気負った割に存外危なげなく狩る事が出来た、その経験。

他にもドスファンゴやドスイーオス、ゲリョス、ダイミョウザザミ……数え上げて行けばキリが無い程のモンスター達。

 

己に存在しているかつての知識に対する信頼は、既に幾度にも渡る狩りの経験を経る事によってかなり強固な物となっていた。現に今回とて、古龍の中では比較的生態が明らかとなっているクシャルダオラの情報を古龍観測局より教えられた中に、新鮮味溢れる情報は皆無であった。

 

後は自分が下手を打ちさえしなければ、間違いなく勝てる。

腰元に存在している毒の属性を持つ得物の存在を意識しつつ、そう思考する。

レナードはエリア3に近付くにつれて徐々に強くなりゆく雨を物ともせず、力強く突き進んでいく。

 

その順調な歩みが、直に終わる事も知らずに。

 

 

 

 

 

 

――話で聞いただけの脅威と、実際に遭遇した時の心臓を掴まれたようなあの感覚は全然違う。

 

かつて、レナードがセイディに語った言葉だ。

 

――想像と実物との違いがある事を踏まえて尚、もう一つ上を行く。

 

自分だけは用心深くそうならぬという確信と共に。不出来な緑髪の弟子にそう述べていた。

 

如何にも賢しらに。

現状、古龍に魅入られ動けぬ体を従えている自分を思えばそう結論付けるしかないだろう。

 

(動け……う、ごけってのにッ……!)

 

意識ははっきりとしていた。視界を遮る程の暴風を纏うように従え、悠然とこちらへ向け一歩、また一歩と歩いてくるクシャルダオラ。その存在を、レナードは嫌になる程鮮明に認識出来ていた。

 

一見周囲に渦巻く暴風とは真逆、脅威など感じられない程に凶暴という言葉とは対極である静謐な歩み。だと言うのに、その目を見たレナードの体はどうしようもなく震え、怯えていた。

 

人間がその身に宿す天然のセンサー、本能が古龍に対し最大限の警戒を行っているのである。意志は前へと突き進もうとし、体は後ろへ駆け出そうと必死になり。結果、レナードの体は本人の意思に反して動こうとはしなかった。

 

『ルルッ……』

 

口から漏れ出る僅かな唸りが、荒々しい暴風に乗って図抜けた身体能力を持つレナードの耳へと入る。未だ20m程は距離があるもののその程度、強力なモンスターと対峙していれば決して安心できるものでは無い。

 

『グルアアアアアーーッ!!』

 

世界が引き裂かれるような咆哮に、死ぬまで動かないかと思えた体が嘘のように動き素早く耳を塞いだ。

 

(げ、現金なもんだよ全く……不味いッ!?)

 

余りの大音量にレナードは、耳と同時に目も塞ぎしゃがみ込んでいた。その時間は正しく一瞬。だがその一瞬の合間に、クシャルダオラは次の行動に移っていた。頭部を上方に持って行き、その顔の周りには可視出来るレベルで風が渦巻いていた。ブレスの前兆だ。

 

「う、おおっ!?」

 

恥も外聞も無く真横に飛び跳ねる。と、その直後レナードがいた場所を含めゴッソリとクシャルダオラのいる位置から大地が削り取られていた。体内で圧縮した空気を勢いよく吹き出しているというだけの単純な原理な筈なのだが、ここまで馬鹿げた威力を誇るとなると最早笑いしか出てこない。

 

(どんなに圧縮して勢いよく吹き出したからって風圧だけでここまで行くもんなのか……? 息の中に何か混ざってんじゃねぇの……?)

 

抉られた大地に目をやりレナードは思考する。

機械加工の製法の1つにブラスト加工と言うものがある。それは空気の中に砂を混ぜる事で威力を増し成り立っている加工方法なのだが、このレベルの勢いであるのなら砂粒どころか石でも関係無く飛んできてしまう事だろう。

 

(とにかく一太刀……まずは一撃入れないと話になんねぇ)

 

先程までの動きで何とか体は動く様になった。少々出鼻は挫かれたものの、行う事に変わりはないのだ。

 

顔の見えぬ兜の中、額から滴る汗をペロリと舐めつつレナードは気合いを入れ直すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそっ……!」

 

既に、30分が経った。

エリア3は、戦いはじめる前とは様変わりを果たしていた。戦闘の余波によって木々は薙ぎ倒され、大岩は砕け散り、剥き出しの地面を曝け出し。戦いの前の鬱蒼とした雰囲気からは、想像もできない程に開けた光景となっていたのだ。

 

「隙が、見つからねぇっ!」

 

分類から言えば全身鎧である≪ザザミシリーズ≫を着ていなければ、無数の小さな擦過傷がレナードの体に刻まれている筈である。そんな頼りになる≪ザザミシリーズ≫ではあるが、クシャルダオラの右の鉤爪による一撃を避け損ねた為に左肩周りが破損していた。

 

盾蟹の強固な甲殻すらも破壊し得る。

再認識の影響で、頑丈な鎧のおかげで左腕は多少の痺れ程度ですぐに使えるようにはなったものの、更に必死に攻撃を躱す事に集中する羽目になっていた。

 

そんなレナードの手には、いつもとは違う種類の武器が存在している。

右手には防ぐというより受け流す目的の小型盾。左手には、剣というより斧。刃の部分が削り出した竜骨であると共に、部分部分にゴムのような質感を感じさせるのは素材にゲリョス亜種を使用しているからだろう。

毒液を滴らせいかにもな雰囲気を漂わせている見た目は、今も出番を今か今かと待ちわびているかのように思わせる。

 

≪デッドリィタバルジン≫。前世のユーザー間においては通称『死束』などとも呼ばれていたそれが、今回レナードが得物として選択をした武器である。余談ではあるが、生前のゲーム『MH2』においては片手剣使いであったレナードが、最後まで使い続けた思い入れのある武器でもある。

 

この武器の特性として、斬り付ける事さえ出来れば、例え鱗や甲殻に弾かれようと濃縮された強力な猛毒が付着し体内へ浸透していく事が挙げられる。人間で言う経皮毒のようなものだ。

 

強力無比、その力強きなる事比べる者無し。時に天災や神にすら例えられる古龍ではあるが、事クシャルダオラに限って言えば、「毒に弱い」という非常に解りやすい弱点があった。

その為レナードは周りの制止を振りきってでも、普段使い慣れている大剣ではなくこの≪デッドリィタバルジン≫を使う事を決めたのだ。

 

「く、おぉっ!?」

 

目の前、際どいタイミングで閉じられるクシャルダオラの顎。

問題は、そもそもクシャルダオラに有効であるところのその一撃を当てる事が

出来ないと言う所にあった。

 

「デッドリィなのはどっちなのかねぇ……?」

 

こちらの一撃が食らえば有効なのだとすれば、クシャルダオラの一撃は食らえば致命傷。

一撃でもまともに受ければ死に到る攻撃を、まさか受ける訳にもいかない。

その為、先ほどからクシャルダオラの攻撃を体捌きや盾によって何とか躱していくのだが、その時には既に次に繰り出す攻撃の予備動作へと相手は移っているのだ。

 

並みの飛竜を上回る巨体。それに見合わぬ隔絶した飛行能力や滞空性能による、素早い動きに小回り。

これもまたクシャルダオラにおいては無視出来ぬ特徴の一つである。

 

結果、攻撃を出されては躱すだけという綱渡り。この30分間レナードはそんな状況を強いられていた。

 

「くっ……はぁ、はぁ」

 

肉体的にもそうなのだが、何より精神的に疲弊してきているのをレナードは自覚していた。このままではジリ貧、いずれ何か致命的なミスをしてしまうだろう。

 

僅かに芽生えた焦りと共に、レナードは事態を変える決断をする。

 

今まで常に前に見据えていたクシャルダオラからあえて視線を外し、後方へ駆け出す。一直線に駆けるのではない。クシャルダオラを中心にし、グルリと円を描くかのように駆けるのだ。こうする事でブレスを当たりにくくする狙いがある。

 

と同時に、レナードはただ単に距離を取った訳では無い。腰元から一つの道具を取り出していた。

中に≪光蟲≫を入れた手りゅう弾の如き球状の物体、≪閃光玉≫だ。

 

「いっけぇッ!!」

 

常よりも力を籠め、まるで投擲用の投げナイフでも放るかのような勢いで投げられる。クシャルダオラの周囲に渦巻く風の鎧に阻まれ位置がずれ、上手くクシャルダオラの眼を灼けない事を危惧しての行為であった。

 

怒声と共に放たれた閃光玉は放物線を描く事も無く、荒れ狂う暴風をも意に介さずただ真っ直ぐにクシャルダオラの眼前へと向かう。

破裂までの時間を見誤り、などと言う初歩的なミスも犯してはいない。あの閃光玉は間違いなく古龍の目の前、1m手前程度で破裂する。

 

取るに足らぬ人間程度の編み出した道具など、今まで歯向かうモノのいなかった古龍・クシャルダオラからすれば、未知の物体であろう。

本能から来る警戒か、僅かな興味関心か。ともかく、野生に所属する生物ならば足を止め注視する筈。

 

(そして注視する程に、大きな隙を生み出してくれ――)

 

か細い反撃の兆しを掴みとる為、レナードはいるかも知れぬ神へと祈った。

 

――それは、後になって考えれば、きっと気のせいだったのだと考えるだろう事象。

そも、神にも例えられる程の生物とは言え人間と同じ精神構造や知能を持つとは限らない。

 

(……こいつ、今)

 

だが、確証など何一つ無いにもかかわらず。にもかかわらず、レナードは確信をした。

 

(俺の事、嘲笑いやがった……!)

 

事前に予想し待ち構えでもいたかのように。

口の端を歪めつつ、一歩前進をしてこちらとの距離を急に詰めたクシャルダオラは、そのまま首を上へともたげる。

 

鼻先にぶつかった閃光玉は弾かれた為に勢いを失い、風の鎧に絡め取られクシャルダオラの後ろ、当初の目論見からすれば明後日の方向へと飛んで行った。

 

言い換えれば。

クシャルダオラにとっては問題なく、レナードにとっては大問題な位置に。

 

通常通り煌めいた光は、ある程度以上離れている為に眼を灼く程では無い。とは言え強烈な光が発生すれば、唯でさえ視界の悪い夜の暴風雨だ。目を慣らす間にすぐに、全身が黒く素早い動きを見せるクシャルダオラを見失ってしまう。

 

例え一瞬とは言え、姿を見失うなどとそんな命取りになりそうな危険は冒せる訳もない。目を細めつつ、目の前に手をかざし光を遮る。

 

「マ、ズッ……!」

 

先程クシャルダオラが首をもたげたのは、閃光玉を弾く為だけでは無かったのだ。次の瞬間目に映るのは、再度口の周りに渦巻く風。

 

直撃すれば、死ぬ。

それを知覚した瞬間、レナードはまるで時間が引き伸ばされるような感覚に陥る。

今まで速い速いと思ってきたクシャルダオラの速度が、スローモーションかのように冗談のように遅く感じてしまう。

 

だがそれは、何もクシャルダオラに限った事ではない。自身の体にしても例外では無かった。むしろ自身の体の場合は、亀かと思う程に絶望的に遅かった。

 

(俺は……死ぬのか)

 

遅くなった世界の中、どこか茫然とその結論へと至ってしまう。

最早どうしようもない、このブレスの一撃は今からどう足掻こうとも避けられないのだ。むしろ足掻く事すら出来ない。変わるのは直撃によって体中が細切れのようになって死ぬか、思ったよりも頑丈な体によって辛うじて五体満足で耐えた後、続く追撃で死ぬかだ。

 

遂に、高く掲げられた首が振り下ろされ始める。

 

せめて、この光景を目に焼き付けてやる。自分を殺す事になる存在を、ひたすら睨み付けるように凝視し続ける。

 

だからだろう、横合いから飛び込んできた物にも真っ先に気が付く事が出来たのは。

何故、誰が。そんな疑問が湧くよりも前に、死を覚悟した上での凝視を止め視界を遮ったのは死中に活路を見出すハンターとしての習性である。

 

『グルアアアオッ!!?』

 

果たして、再度開いた光の花は今度こそクシャルダオラの目を灼いたのであった。

 

「あわわわわ!? やっちゃったニャ! やっちゃったのニャ!?」

「やかましいニャ、ニャン吉! ……ハンター殿! 疾く、疾く駆け抜けられるニャ!」

 

その言葉に呼応するように。

閃光玉を投げてくれたニャン吉が、アイルーのハンターだろう精悍そうな顔立ちのアイルーに怒鳴られているのを尻目に、レナードは全力で飛び出した。

 

傷つき、疲労は蓄積していた。だがこの千載一遇のチャンス、逃したならばハンターでは無い。

 

「お、オオオォォォッ!!」

 

疲弊した体を紛らわせる為、そして目の前の黒い死神へと近づく恐怖を押し殺す為、レナードは全力で吼えた。

 

赤子がむずかるように身悶えしているクシャルダオラの元へ、最短距離にて突き進む。

 

音と気配に反応し牽制のように振りかぶられる爪を躱して狙うは頭部、額にある角だ。

実の所、クシャルダオラはどういう原理かは不明ながら、そこで風の鎧を生成していた。つまりそれさえ叩き折れば、クシャルダオラの力は劇的に弱体化されるという事なのだ。

 

「ラアアアアアッ!!」

 

レナードの攻めは壮絶なものであった。クシャルダオラとて無抵抗では無く、力任せに爪を振り抜いてくる。仮に無傷で躱そうとすれば大きく躱さざるを得なくなり、その【余分な】動きで一撃加えられなくなる。目障りな弱者の命を刈り取らんとするクシャルダオラのその爪を、あくまで最低限度のみに躱すのだ。

 

レナードは両の手に持つ斧剣と盾を、最早双剣使いの奥義≪乱舞≫をすら凌ぐ勢いでクシャルダオラの頭部へと振り抜いていく。一撃一撃がランポス程度ならば左の斧剣で両断し、右の盾で骨ごと粉砕するような、そんな苛烈な攻めを幾度も叩き込む。叩き込まれる。

 

『グルアアアアッ!』

「ルアアアアッ!!」

 

鋼龍の左爪がレナードの顔面目掛け襲い掛かる。僅かに身を低くし、それだけ。

掠めるように接した部分からヘルムが砕け、それでもそこから覗く瞳はただ一点だけを見つめ爛々と輝いている。既に、次の攻撃動作へと移行していた。

 

捨て身の特攻、既にボロボロな今のレナードの状態を表すのに売ってつけの言葉である。

 

客観的に見てレナードはこの時、余力など考えずにまるで命を振り絞るかのように力を出し尽くしていた。ただ体の動く限り鬼の如く振り続け。ただこの呼吸の続く限り獣の如く吼え続ける。

 

何せこの機を逃せば全てが終わるのだ、今までの経緯を想えば当然の行動と言えた。

 

そう、想いだ。生への渇望が、心穏やかな村の暮らしへの思慕が、そこに住む人々やハンター仲間への信頼が、そういったモノが混ぜこぜとなった言わば≪心の力≫が、レナードを今なお天災の元へと突き動かしていた。

 

「か、かはっ……!?」

 

だが。如何に心が前へと駆り立てたとして、レナードが生き物である以上肉体の持つ限界が来てしまう。呼吸が続かない、腕が上がらない、目の前が霞んでいく。そういった事象はアドレナリンが出ていようとも誤魔化しきれるものでは無い。

 

レナードは、たまらず膝を付く。自殺行為であった。一度体を休めてしまえば、目を背けていた体の不調が、全て目を背けるなとばかりに強烈に訴えかけてくるのだ。心とて、張りつめた糸を緩めてしまえばまた整え直すのに幾ばくかの時間が必要となってくる。

 

虚脱感が体を襲う。まだ目の前に死の恐怖がいるにも関わらず、喘ぐように両手を豪雨によってぬかるんだ地面に着く。泥の鬱陶しさなど、死闘にあってはどうでも良かった。

 

倒れ伏してしまいそうな体を叱咤しつつ、何とか鋼龍の方へと視線を向ける。まだ、角は折れてはいないのだ。あれ程の猛攻撃を喰らわせたというのに、未だ折れてはいないのだ。

 

そして。

 

『グ、ルアアッ……!』

 

悪戯な運命の女神は、レナードに微笑んだ。

 

まるで、酩酊でもしたかのようにクシャルダオラの体がグラリと揺らぐ。

気付けば、とうに閃光玉による目潰し状態は治っていたにもかかわらず風の鎧が作りだされていなかった。

 

「よ、よーやく毒が回ったか……」

 

疲れから、笑みと呼ぶには凶暴過ぎる表情で口元を歪める。

絶好の好機、出来れば今の内に追撃をしてダメージを重ねておきたいところなのだが、生憎体が満足に動きそうも無い。

 

「殺すなら、今だぜ……?」

 

半ば以上、そんな事はしないとの確信の元そんな言葉を投げかける。既にクシャルダオラはレナードに見向きもせず、翼を広げ闇の中へと大きく羽ばたいていこうとしているところであった。

 

『…………』

 

消え行く意識の中、クシャルダオラの宝石の如く煌めく眼差しが自分の事をしっかりと見つめていたような気がしつつ、レナードは今度こそ全身を泥に塗れながら意識を落とした。

 

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