モンスターハンター~狩人レナードの軌跡~≪改稿版≫   作:ATA999

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依頼人:瞳を輝かせた行商人
良質なセクメーアパールを見つけちまった! 俺も大概目敏いとは思ってたが、全く自分の才能が恐ろしいね……。
だが問題が一つある、帰る道が丁度あの盾蟹の縄張りと被っちまうって事だ。
流石の俺も、狩猟の才能は持ち合わせちゃいない。……という訳で、よろしく頼む!



第七話 砂上の盾蟹

寒冷期も後半に差し掛かり、昼間。とは言え未だ肌寒いこの時期に、レナードは村長やパティと共に酒場で先程まで他愛無い談笑をしていた。

 

「ところで、村長」

「ん、何だい?」

「そろそろ砂漠に行かせてくれませんか?」

「砂漠に行かせろだって!?」

「いや、まぁ行かせろとは言ってませんが。行かせてはくれませんかと、ついでに沼地なんかもあったら嬉しいなぁと」

 

レナードも今まではそう焦ってはいなかったが、流石に余ったドスランポスやドスファンゴの素材を村長に渡しているにも関わらず未だ新たな狩り場である砂漠や沼地が解禁されてはいない事で焦り始めていた。どうゲームの知識から逸脱してもいいように心掛けてはいるものの、やはりいざその瞬間が訪れれば動揺してしまうのは心掛けている『つもり』という事であろう。かつてのゲーム知識がレナードにとって非常に有用なのは間違いが無いのだから。

 

「……驚いた。パティから聞いたのかい? オイラが方々動き回って新たな狩り場の情報を掴んだ事を。驚かせてやろうと思ってたのに、逆に驚かされちまったな! それに沼地か……うん、考えた事も無かったけど確かに色々と貴重な素材がありそうだ! でも、一体どこでそんな情報を持ってたんだい?」

「いや、まぁ……前にいた村のハンターの人が、そういう所に行ってたんで」

 

嘘だ。レナードが以前いた村では村周りの狩り場だけでも十分収支が取れていたし、ハンターが少なかった為に近場を放ってそんな遠出が出来る程の余裕は無かった。新たな狩り場を、と言うのは現在のジャンボ村のように、実力のあるハンターが『複数』存在して初めて可能な話なのだ。

 

「うん、オイラもまだまだ知らない所がたくさんあるって事だな! 何だか、楽しくなってきた!」

「あっ、村長! ……行っちゃったよ」

「行っちゃいましたね。……まだ書類仕事が残ってるのに」

 

何やら瞳を輝かせた村長は、村の反対側へ駆け抜けて行ってしまった。本当に落ち着きの無い人だなぁ、レナードやパティは嘆息しつつもそう思う。

 

「うしっ! それじゃ、今日は準備に時間使って明日砂漠に向かうかっ!」

 

応える声は無い。傍らに、短い時間ながらも存在していた弟子の姿が無い事を思い出し、レナードは一抹の寂しさを感じた。

 

「あんなんでも、いなくなったら寂しいモンだなぁ……」

「え、ホントですか?」

「……嘘。勿論、冗談」

「またまた~! 師匠ったら、恥ずかしがり屋さんなんですから~! このこの」

 

何やら見覚えのある緑髪が、3m程もある馬鹿みたいに大きな荷物を背負ってレナードの脇を肘でこのこの、とやっているような気がしたが、それはあくまでレナードの気のせいである。

 

「んもぉ、ししょおったら照れちゃって~! この、てーれーやーさんっ!」

 

何故ならレナードの知り合いである緑髪の弟子は、今は彼女の村で元気にハンターをやってる筈なのでこれは幻聴や幻視の類である。あるいは見知らぬ緑髪が偶々コチラを自分の師匠と勘違いしてじゃれてきているのか。だとしたら全く、面識のない者にこんな態度などと実に失礼な事この上ないだろう。

 

「ねぇ~ん。し、しょ、お~ん♡」

 

(あ、無理だこれ。これ以上はもうムリ。生理的に受け付けない)

 

レナードは静かにそう心中で呟く。

何故なら、人には色々と耐えられる限界というものがあるのだ。

 

「……なぁ、セイディ。本当にそれで良いのか?」

「え、何がです?」

「最期の言葉がそれで」

「死亡確定っ!?」

 

聞くに堪えない声音を使っていた馬鹿を矯正する為、レナードは泣く泣く愛弟子に向かって失意と慈愛の込められたデコピンを解き放つ。「いだっはぁっ!?」と色気の皆無な悲鳴を上げつつ後ろに仰け反り、大きな荷物に負けてまるで雪だるまのようにゴロンと転がるセイディを見て、ようやく先程の気色の悪い声音で上がった溜飲を下げるのであった。

 

「おぉ、今「んべっ!」って言ったな。カエルが潰されたような声なんて、実際初めて聞いたわ」

「し、師匠……。感心、してないで……。助けて、もらえませんかねぇ……! 荷物が、重すぎて……。私だけじゃどうにもならないんですけどっ……!」

 

一瞬、(孫悟空みたいだな)と思ったレナードだったが、別に五百年も放置しておくつもりも無いので、セイディの背負う荷物を嘘のように簡単にひょいっと片手で持ち上げる。怪力の面目躍如である。

 

「全く、酷いですよ! 女の子の顔を何と心得てるんですか、全く!」

「……で? 何でお前ここにいるんだよ。村は? あんだけ俺も苦労して何とかなった村は、どうしたのよ」

「あ、はい。それがですね。あれから私の父が快方に向かいまして、もう少しハンターを続けていけるそうなんです。こちらの事は気にするな、お前は勉強の為にジャンボ村でお前に知識と経験を与えてくれたあの若者を師事して素晴らしいハンターになりなさい、との事です」

 

実際は、『勉強の、為にッ!!』『ハンターにッ!!』と殊更に強調していたのだが、得てしてその発言が重視されないのはセイディが鈍いのか、男親の定めか。

 

「そうか、あの人回復したのか。良かったな……何か俺には若干厳しかったのが腑に落ちんが」

 

男親なら、愛娘に寄ってくるどこの馬の骨ともしれない輩に厳しく当たるのは仕方が無い事だろう、とレナード自体は理解を示している。それもこれもセイディの父親が善人であり、レナードに対しても試すように厳しい言葉を吐く程度で後は複雑そうな顔を見せるだけだったからだろう。もしもそれを盾に悪質な行為でもされていれば、流石にレナードもセイディの父親を嫌っていた筈だ。

 

「それで……えー、村長さんからは……」

 

途端に、モゴモゴとはっきりしない口調で喋りだす。モジモジとした動作も相まって、どうにもいつものセイディとは全く違う印象を受ける。

 

「何だ、はっきり言えよ」

「その……師匠を。……男女の仲になって籠絡しろ、と」

「……あぁ」

 

吐いた溜息にレナードが不機嫌になってると考え、セイディはアタフタと言い訳を重ねる。しかしそうではない。レナードはただ先程のセイディの奇行に合点がいった為に吐いただけなのだ。

 

村長の行動は、村の存続を考えればおかしい事では無い。十分に理解が出来る行為だ。

個人の実力だけでも村の周りを単独で綺麗にしてしまえるだけの実力を持ち、更には他者に対しても、セイディを指導によってイャンクックを狩れるようになるまで導いたハンター。

はっきり言って、辺境近くの村にとってはどんな大粒の宝石よりも貴重な存在なのだ。

 

それが、奇しくも村の一員と親交がある? 年もお互いお年頃の、異性? 彼女の為に疲れ切りながらも村一帯の大掃除を剥ぎ取った素材のみと言うほぼ無償で行う程度に、悪印象も抱いていない? むしろ好印象気味? 行くだろう。そりゃもう、グイグイと押して来るだろう。少なくともレナードが指導者ならば間違いなく行う。

 

夫婦となって村へ迎え入れると言うのは、自分達の村へ襲来有望な頼れるハンターを引き入れる為には正に打って付けの方法と言える。何せ上手くいけば村とレナード、双方損をしないのだ。遠慮する必要など皆無である。

 

故にレナードは、生きる事に必死なだけで悪気は無いあの村の人達を嫌いになる事は無かった。ただ、良くやるよと呆れる事こそあるものの。

 

「さっきの……あれやこれやはですね、その。村の奥様達に聞いた男を落とす技と言う奴で、その。わ、私も恥ずかしくって嫌だったんですけど、断りきれなくって……。うぅ……」

「あーはいはい、分かったから。そんな事より、お前これからはこの村に住むんだろ? その馬鹿みたいな荷物の量は何だよ、家一軒分丸々荷物詰めて来たんじゃ無いだろうな?」

 

普通、大量の荷物を運ぶなら全てを人力で運ぶ必要など無い。それこそアプトノスに曳かせた馬車ならぬ、アプトノス車は辺境であるこの辺りでも流通においては十分にその力を発揮している。

 

「は、はいはいで流された……!? ほっとしたんですけど、なんか乙女としては複雑……。荷物については節約の為、です。はい」

 

セイディは照れ笑いを浮かべながら、後半を告げる。レナードは、その反応で直感した。アプトノス車は広く普及しているだけあって、コストパフォーマンス的にも悪くは無く非常に安価と言える。それを使うのを躊躇うという事は……。

 

「……お前、今一文無しか」

「いやっそんな事は!!」

「無いのか?」

「40ゼニーほど……」

 

顔に手を当て嘆息する。それでは契約金も払えないでは無いか、と胸中で苛立った思いをこねくり回す。

 

「イャンクック討伐で手に入れた金が、まだそれなりにあっただろうが。何に使ったんだ? 怒らないからお兄さんに言ってみろ、ん? んー?」

 

これでハンター稼業に必要な消耗品や武具を買うのにと言えば、多少の計画性の無さも許してやろう。レナードはそう、弟子に対しては珍しく寛大な心で考えていた。

 

当然、そんな訳が無いとも思いながら。

 

「え~と……街から、非常に珍しい事に嗜好品やらの類を沢山積んだ行商人さんが村にやってきまして。もー、見た事の無い物ばかりだったので村中半分お祭り騒ぎでっ! ……それで、まぁ。私も、見た事無い食材とか綺麗な髪飾りや宝石を幾つか買ってる内に……。エヘっ!」

「…………」

「あ、ちょ、師匠!? そんな無言でゴツゴツ額を突かないで、痛いっ!? 額を突かないで~!?」

 

びすびす、と無言で数発お仕置きをする。最早何も言う事も無かった。

 

(何でちょっとした近況報告でこんなにも疲れにゃならんのだ……)

 

うんざりした表情で弟子を見ると、血も出てないのに額に包帯を巻いている。どうやら変な具合に赤くなっているのが恥ずかしいらしい。包帯の方が目立つのではないかと思うのだが、そこまで踏み込んで聞く事をレナードは諦めた。何より面倒くさい。

 

「ああ、それでな。お前、明日から数日空いてるか」

「え……それってまさか……! い、いやいやダメですよダメッ!? 私と師匠はそんな仲じゃ無い訳ですし、そりゃあさっきはあんな事しちゃいましたけど、でも師匠ならきっといきなりあんな事やそんな事はしないだろうという信頼の元にと言いますか――」

「……違ーう。ったく、いつまで盛ってんだお前は」

「さかっ!? と、年頃の女の子に何て事言うんですかっ!?」

 

セイディの抗議も、耳をほじりながらそっぽを向いて聞き流す。

 

「で? どうなんだ、予定は空いてるのか」

「……はぁ、まぁこっちに来たばかりなのでそれなりに立て込んでますよ。村長さんの言ってた新しい家に荷物を置いたり、必要な物を買い揃えたりして整理しなきゃとは思ってますけど」

「うん、暇なんだな。それは丁度いい」

「話聞いてましたよねぇ!? 私の予定は最初っから無視ですか!?」

「実は俺もつい今しがた村長から聞いたんだが、密林だけじゃ無くて砂漠が新しい狩り場になったようでな。初めての狩り場に、どうせだからお前もどうかと思ってな」

「うぅ……ツッコんだのに話、続いてるし」

「で、どうだ? 一緒に行くか?」

「……分かりました、一緒に行きますよ」

 

諦めたようにセイディは了承する。が、何か懸念があるような、不安気な表情をレナードに向かって浮かべる。

 

「でも私、砂漠なんて行った事無いから師匠の足引っ張るかもしれませんよ……?」

 

何せ、セイディはこの辺りの狩り場しか行った事が無かった。自然、気候その他も似通った雰囲気の場所でしか狩りを行った事が無い。≪砂漠≫、などという場所はセイディにとって聞いた話では『砂がたくさんある、暑くて広い場所』という認識しか無かった。

 

「大丈夫だ、安心しろ! 俺も初めてだ」

「そこにどう安心要素があるんですかっ!? 懇切丁寧な説明を要求しますっ!!」

「そこは、ほら。お前の親友であるパティとの話で知識補えって。あの子、相当その辺り凄いじゃん」

 

顔見知り以上友人未満程度の親密度なレナードは彼女の受付嬢として会得した豊富な知識の事を指し、非常に仲の良い友人でより詳しく彼女の事を知っているセイディはその知識を基にした妄想の事を頭に浮かべたが、特に齟齬も生まれなかった為に話はそのまま続いていく。

 

「まぁ……確かに。それと、一体何を狩りに行くんですか? それ知らないと、どうしようもないじゃ無いですか!」

「……カーニ」

 

じゃ、明日な。セイディが妄想逞しいパティの事を思い浮かべている間に、レナードは指を二本立てチョキンチョキンとしながら去るのであった。

 

 

 

 

 

 

「「着いた……」」

 

ジャンボ村を出港してから2日。ジャンボ村から南エルデ地方の脇を横切りながら海を渡り、一行はセクメーア砂漠に無事到達した。

日帰りで行ける近場のテロス密林とは違い、セクメーア砂漠は狩る時間や往復を考慮すれば平均として一つのクエストで一週間と少しはかかる。

 

「おい、弟子……リューズはどうしてる?」

「はい、師匠……確か、あっちの方でぶっ倒れてます……」

 

セイディの指す方向には数人は入れるベースキャンプが敷設されていた。

慣れぬ大所帯に、必要以上に精神的な疲労をしたレナードとセイディであったが、付け加えるならここまでで最も疲労していたのはそれらをここまで運んできたリューズであった。

年若い彼は今まで流れのゆったりとした河しか漕いでこなかったのだが、砂漠へ行くルートは完全に海を通らねばならなかった。密林に行く際に比べ波にひっくり返されないよう一回りも二回りも大きな船を用意されたのはいいが、勝手が色々と違うのは当然の事。更に言えば、ハンター程の体力も無く適応力も並み程度。慣れぬ環境と命を預かっているという緊張感を二日間続けた事で、リューズは心身共にかなりの疲弊をしていたのだ。

 

更に更に言えば、疲労の最大の原因は別にあった。チラリ、とレナードは横を見る。

 

「ミャ~! いい景色だミャ! ご主人様、これはもう狩りなんか中止にしてニャーの作ったお料理を持って、二人きりでピクニックをするのはいかがですかミャ!!」

「する訳ねーだろ」

 

無駄に鼻息の荒い駄猫が一匹、レナードの足元でピョンピョンと飛び跳ねていたりする。その光景を見て、再度溜息を吐く。これでも相当、言い聞かせて大人しくなったのだ。

 

レナードとセイディが砂漠に今までのように日帰りで無く向かうという事を知ったネコニャーの判断は、ハンター顔負けな程に迅速であった。むしろその時のネコニャーは別の意味でハンターであった。その際は、彼女の再三の要求に結局レナード達が折れる形となっていた。

 

(どいつもこいつも……色ボケしやがって)

 

実はセイディとの再会のシーンを、ネコニャーは視認していた。つまりは、あの失笑すら誘うセイディの誘惑シーン(笑)の事である。家に帰ったレナードに対し、『メラルー女許すまじ!!』とばかりに燃えたネコニャーの気迫は凄まじく、いつもならネコニャーの攻めを捌き切れていたレナードですらも押切り、結局狩り場にまで着いてきたという訳であった。

 

「あのー……ベースキャンプの点検、終わりました」

「ああ、お疲れ。……悪いね、ここまで騒がしくって。疲れちゃっただろ?」

 

先程から、ベースキャンプ周りの確認作業を行っていた少年が遠慮がちに声を掛けてきた。

彼の名前はアルト、ここに来るまでの間に話をするようになったハンター志望の少年だ。年の頃は13。このまま順調に2年程も行けば、晴れてレナード達の後輩という事になる。

 

「いえ、そんな事無いです! あの、憧れのレナードさんとお話が出来て凄く光栄でしたし。それに、役に立つ貴重なお話も聞けてすごく楽しかったですっ!」

「そ、そうか……? そこまで言われると、何か照れるな」

「あー師匠、照れてるー! かーわーい、痛いです……! しっ、師匠……! ワタクシのお頭を掴むのはおよしになって……!」

 

ぺいっ、と軽々片手で放り投げる。すぐに調子に乗る弟子を戒める為半分照れ隠し半分のその行為を見て、ひとりの少年の瞳がますます輝く。

 

狩り場においてハンターが拠点として用いるベースキャンプ。その点検作業や、必要ならば修繕作業を行うのは、多くは10~15歳程度のハンター候補の少年少女達であるのが慣例となっていた。利点は様々ある。筆頭はハンターと同行して向かうので比較的安全に狩り場の雰囲気を味わえるのだが、それだけでは無い。今回の様に、先輩ハンター達と上手くいけばコネを作る事も可能であるし、時に金よりも価値のある情報を教えてもらえる場合もある。ここでの経験は、若きハンターの卵達にとっては決して損にはならないものとなるのだ。

 

「あ、支給品は全部ボックスに入れておきましたので確認しておいて下さい!」

「ああ、ありがとう」

 

彼らの仕事にはもう一つある。ギルドの提供する支給品の運搬だ。テロス密林の様な村からの近場であれば、例えばギルド公認の運び手であるリューズが兼任で行っている。これは近いが故に少量を小刻みに物を運搬出来る為だ。独りで運べる程度の物品という訳である。だがセクメーア砂漠のベースキャンプは、片方は砂漠でもう片方は岩山という場所の中央にひっそりと構えられている。つまり、交通の便が悪いので出来得る限り一度で持ち運ぶ量を増やしていかねばならない。そして、その大量の物資は少人数では賄いきれない。

 

その為に駆り出される人手が、前述のような理由もあってアルトのようなハンター候補の少年少女が選ばれるという訳だ。

 

「あのっ! 僕もいつかは、レナードさんみたいなハンターになれるでしょうかっ!」

「うん? んー……そうだな、まぁ頑張っていればそれなりの成果は出て来るモンだけどな」

 

レナードとアルトの初対面の挨拶の後、最初の会話がこれである。

普段テロス密林に向かう時よりも大きな船に乗っていた時からそうだったのだが、アルトは純粋な気持ちでレナードに話をせがんでくる傾向にあった。その様子はまるで父親や兄にせがむ様子を彷彿とさせている。ネコニャーのように暴走したり、セイディのように生意気であったならばどうとでも対処する事が出来るのだが、余りに純粋な表情かつキラキラとした目で見つめてくる為、レナードもどう接していいか分からない。アクの無い人柄は日々濃い面々に相対しているレナードにとっては一滴の清涼水の様であり、決して悪い気はしないのだが。

 

「ミャ! アルトくん、ニャーが色々とご主人様の武勇伝を教えてあげるのミャー!」

「わぁ、ありがとうっ! 流石はレナードさんの家族だね!」

「ミャフフ……。そんな、まだ結婚なんて気が早いのミャ……。ああ、でもでもそこまでご主人様がニャーの事をお求めになられるのなら、ニャーはきっと拒めませんのミャ……! なんて罪作りなお・か・た! なのミャ~!!」

 

実はそこに拍車をかけたのが、ネコニャーだったりする。

最初はレナードも、(あれ、ニャーの奴が他人とこんなに長い時間一緒にいるなんて珍しいなぁ、善き哉善き哉)と言う風に考えていたのだが。もしその時点でネコニャーによる『レナードが凄いハンターだって事を広めよう計画』を知っていたなら、断固として阻止していた事だろう。

 

「とっとと正気に戻れ、バカたれ」

 

むんずと引っ掴み、軽く振り回す。「あぁミャ~!?」と涙目で叫びながらもどこか嬉しそうな点は触れない。

 

周囲にいる者達皆がその光景を見て笑っている。ケラケラ、クスクス、アッハッハ。声色は低く高く種々様々な、それでも『笑い』という共通した一つの要素が、不毛な土地に花開く。

 

「……早く狩りに行った方が良くないかー?」

 

そんな中、多少は体力も回復し人知れず別の場所でベースキャンプを修繕していたリューズの無粋な言葉は、残念ながら混ざる事も無く儚く消えたのであった。

 

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