勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
引き続きよろしくお願いいたします!
今回は少しばかりある作品のBGMのオマージュを入れています。
読む際のBGMも脚注で曲名を記載したのでぜひ聞きながら読んでみてください。
「お前が喋るタイラント級特殊個体―――トーカティブだな?」
俺はトーカティブにそう問いかけた。
そして奴は気色の悪い笑みを浮かべて答え始めた。
「ああ―――しかし、それにしても運がいい。探し物がこうも簡単に見つかるとは」
「探し物? 俺の事か?」
「ああ。人間、共に行こう。そうすれば逃がした人間モドキは追跡しないしお前に危害を加える事はない」
トーカティブは俺を探していたようだが、あいにく俺はコイツと今日初めて会った。
俺が100年前に[機械の悪魔]でありそれを知っていたら人間とは呼ばないはず。
そうなると、俺ではなく数年前に俺が復活するきっかけとなった死体の人間という事になるな。
俺の血液型が[Rh X]に変質した事………どうやら俺はラプチャーにとって何か重要な人間を取り込んだようだ。
その重要な内容はさっぱりだが今は置いておくとしよう。
「言っておくが俺はお前のような気色の悪い見た目の奴の知り合いは居ないんだ。誘う相手を間違えてないか?」
「お前が知る必要は無い。それに勘違いをしているぞ人間」
「なんだ?」
「生殺与奪の権利を握っているのは俺だ。
「そうか。なら―――」
俺はアウターとしての人間を超えた身体能力を解放。
全身の筋肉が瞬時に隆起し瞳の白い結膜が真っ黒に染まると同時に体に赤く光る幾何学模様が全身に出現。
そのまま俺はトーカティブの懐に入り奴の腹にストレートパンチを喰らわせる。
「オラァッ!!」
「ゴホァッ!?」
俺のパンチを喰らったトーカティブは6mほど後退して、その場で右で腹を抑え細い足で膝をついた。
「意外に硬いな。骨折は覚悟していたが、まさか手の骨全部がズタズタになるとはな」
俺はトーカティブを殴った右手をみた。
肉はズタズタになり骨は荒く折れ見るも悲惨な状態。
ディアボロスの弾丸が効かないから硬いと思ったが、その予想以上とはな。
だが奴も無視できないダメージを負った感触があったのも確かだ。
「な、なんなんだ!? 今の攻撃は!? 明らかに人間が出来る打撃の領域を超えている…ッ」
「どうだ? 俺を人間と勘違いして受けた攻撃は?」
《font:》「バカな…ッ。いくらアレとはいえその体の変化に、俺にダメージをあたえられるほどの身体能力はないはずだ!!」《/font》
「俺の―――この体の過去を知っているようだな? なるほど、お前―――
「…グッ」
沈黙は問いかけが合っていると言っているようなものだと分からないのか?
こいつ頭は多少回るが思考に関してはあまりよくはないようだ。
「喋るくせに舌戦が随分と拙いな。ほら、勝利の女神に勝ち誇れるくらいなんだろ? さっさとかかって来いよ―――お喋りラプチャー」
俺は再生した右手で人差し指でトーカティブを招くように挑発する。
◇
〔語り部SIDE〕
「最初は健全な状態で持っていこうとしたが仕方がない―――腕と足を多少破壊してもその機能に問題はないだろう」
そうクロガネに告げると同時にトーカティブはクロガネによって与えられた腹部のダメージを修復。
「さっきは油断しただけだ。だが、次はない。四肢を失う恐怖を味わってもらおうか」
トーカティブはその巨体に似合わない速度でクロガネに肉薄。
そのまま彼の足目掛けて左剛腕を振りかぶる。
「遅い」
クロガネはトーカティブの攻撃を余裕でかわし、奴の側頭部に右踵で回し蹴りを喰らわせる。
「ガハッ!? だが俺は再生する! そしてお前の足はさっきの攻撃で使い物にならない」
トーカティブは攻撃を受ける瞬間、自身のダメージを感じていたがそれと同時に攻撃に使ったクロガネの右足がズタズタになる瞬間を見逃さなかった。
「どうやら体のリミッターを外して肉弾戦をしているようだが、そんな諸刃の剣で俺に勝てるなど愚かな事だな人間」
「そうか。だったらこれを見ても同じことが言えるのか?」
クロガネはそういった瞬間に、自身の攻撃でズタズタになった右足が映像の逆再生を思わせるかのように再生した。
「やはり再生能力もあるか…。だが、そこまでの再生能力は人の形を保って得られるはずがない」
「まるでこの体を知っているようだな。まあ、前の身体と比べて再生能力が跳ね上がっているのは驚いたがな」
「前の身体? 何を言っているんだ…人間」
「お前に応える義理はない。だが―――もうすぐその身で言葉の意味の一端を知ることになるがな」
「調子に乗るな!」
トーカティブは自身の尻尾を伸縮させて亜音速の速さでクロガネの両足目掛けて振った。
「ようやくまともな速度を出せるようになったか。だが、動きが単調だな」
クロガネは余裕そうにトーカティブが放った尻尾を器用に両腕に絡めとった。
トーカティブの尻尾の刃部分で皮膚が切り裂かれ大量の血が流れるが、クロガネは顔色一つ変えずに両腕に力を込めて自身に向けてトーカティブを引っ張った。
「なんだ…この力はッ! この俺が人間如き抑えられているだと!?」
「この程度で力自慢とは程度が知れるな―――吹っ飛べ」
クロガネはさらに力を入れてトーカティブを自身に引っ張りあげる。
「舐めるな!! その勢いで貴様の四肢を粉砕してくれる!」
トーカティブは引っ張り上げられた反動を利用して右拳に赤色のエネルギーをチャージ。
もはや人など遺体すら残らない威力の攻撃を仕掛ける。
相手にしているのは只の人間ではない。
自身と同等の耐久性と再生能力、何より力があるあの計画の人間。
自身を生身で追い詰める強さがあるなら欲しい内容物は傷つくことはない。
そう確信してトーカティブは全力の攻撃を振りかぶった。*1
そんな様子にクロガネは―――
「それを受けるのは生身じゃ厳しいな―――仕方がない」
クロガネはトーカティブの攻撃の脅威を認識し、思考内でアーセナル起動を実行。
そのまま両足と右腕部を展開すると同時に、両手で持っていたトーカティブの尻尾を左腕に纏め、右腕部にタイラントハンマーを装備。
そのまま右腕部を引き殴り返す態勢に入り―――
―――ドォォォォォォォォォォォォンッ!!!
トーカティブとクロガネのタイラントハンマーが衝突。
そしてクロガネのタイラントハンマーによる攻撃と衝撃により、トーカティブの拳と下半身全てが吹き飛ばされた。
そんな戦いが繰り広げられる中、白い使いこまれた外套を纏い、純白のロングヘアーをなびかせる存在がいた。
後ろ腰部に巨大な大口径ライフルと異なる武装が搭載された2種のセントリーユニットを携えている。
更に特徴的なのは白い使いこまれた外套に装着された右肩部装甲には、
そんな容姿のアークに属していない巡礼者たるニケが数百メートル離れた位置にある廃墟屋上で観察していた。
「あれはなんだ……
目の前の光景は信じられないと言わんばかりに声音に動揺が見えるニケ。
顔面を覆うバイザーから検知されて計測には、トーカティブの攻撃よりも人間がどこからともなく展開した拳形状の近接武装の威力がはるかに上回っている。
「トーカティブを捕まえるつもりが、こんな状況に出くわすとは……それにあの人間の異常な再生能力。服はアークの指揮官の様だが……」
自身が知る人間とかけ離れた力と現実を魅せる謎の人間の出現。
本来の目的であったトーカティブを追跡し捕縛、そのまま自分や仲間たちの目的である大敵の情報を掴むという意識が薄れる程の衝撃だった。
そして、クロガネの攻撃によって下半身全損、右腕部消失し残った部分も攻撃の衝撃によってほぼ機能していない状態トーカティブ。
そんな様子のトーカティブにクロガネはゆっくりとアーセナルを纏いながら近づく。
「……!?」
クロガネの全身にアーセナル[X MACHINA]が纏われていく度に、戦いを見ていた巡礼者たるニケにぼんやりとある光景が浮かび上がる。
―――「毎回戦闘を見ていて思うんですが、このパワードスーツや武装はどうなっているんですか!? 連合軍でもこんな技術は見たことないです!」
―――「これは人から離れた技術の結晶だ。言っておくがコイツや俺に関して詳しく教える気はないぞ」
―――「えー。私も技術者として気になるんですよ! 少しだけでもいいので! それか素顔だけでも!」
―――「ダメだ。俺が精々教えられるのは戦い方くらいだ。それに俺を素顔を見たところで後悔するだけだ」
―――「ムー。〇〇〇〇兄さんのケチ!!」
―――「子供のように駄々をこねても何も出ないぞ。ていうか兄さん呼びはやめてくれ」
―――「教えてくれるまでやめません!」
白髪の巡礼者たるニケは突然浮かび上がった光景に困惑した。
今の自分には全く身に覚え無い記憶。
もしかすると、仲間の1人が言っていた思考転換する前の記憶。
そう考えたが、今は自分の使命と目の前に起きた事に集中すべきと切り捨てた。
◇
時は少し巻き戻り、クロガネとトーカティブの攻撃が激突して数秒後。
「な、なんだ…突然あの人間が変な武器を出したと思ったら、俺がここまでやられていた…?」
トーカティブは自分の惨状を見て困惑と恐怖を感じていた。
先ほどの放った攻撃は巡礼者でも危険視するほどの威力。
そんな威力の攻撃を人間が腕部装甲と籠手形状の拳近接兵装の一撃で自身を大破させられた。
たかが、アレしか持たない脆弱な人間が出来るはずがない芸当。
トーカティブ自身未知に未知を重ねた状況に感情が困惑から恐怖へと移り変わっていった。
そんなトーカティブに機械音と金属音が同時になるような足音が聞こえた。
残った首を音の聞こえた方向に向くと、ゆっくりかつ着実に自身に向かって連れて行こうとした人間が迫っていた。
自身に近づくたびに人間の姿からどんどん装甲が纏われていく。
それは纏うというより変身という言葉がふさわしいと思えるような異質さを出していた。
「ク、クソッ!!」
トーカティブは最後のあがきといわんばかりに何とか機能している背中のミサイルを数発発射、更に残った左腕部をレーザー発射口に変形させて、おぼつかない照準で迫りくる人間だと思っていた異質なナニカに放つ。
だが、既に全身にアーセナルを纏ったクロガネは両手にグリムリーパーⅡを装備してミサイルを全て破壊。
レーザー射撃は全て最小限の動きで回避しつつ、右腕部にあるグリムリーパーⅡでトーカティブのレーザー射撃口を射抜いた。
「グァッ!?」
もはや抵抗する手段はない。
体の自由は効かず、ただ迫りくる人間と思っていた異質なナニカに対しての恐怖と脅えが増すばかりだった。
そしてトーカティブが壊れた視界センサーでアーセナルを纏ったクロガネを捕えたと同時に思い出した。
ラプチャー1次侵攻の際に現れた
その集団は結局人間の醜さで一人を残して全滅。
だが、残った一人こそ他の集団を超えた存在だった。
どのニケよりも、どんな兵器よりも、ゴッデス部隊の誰よりもラプチャーを破壊し尽くした存在。
ラプチャー1次侵攻が起きた時代、ラプチャー、クィーン、ヘレティック、ニケ、当時の人間達に[ラプチャーの天敵]と呼ばれた存在。
自分が先ほどまで相対し戦い、一方的に攻撃され、己に畏れ、恐怖、怯えを強制させる存在。
自分をクィーンへと導く存在たる“ミラー”が最大の警戒を示し最終的に滅ぼすべき存在だと語っていた。
かつてヘレティックの呪縛から解放されたシンデレラと共にクィーンと戦い、クィーンが唯一恐れる完全なイレギュラーだと。
しかし、その悪魔はクィーンとの戦いで完全に滅んだはずとミラーが語っていた。
故にこれから行う事になんの支障も無く恐怖も怯えも無く自分の望みを叶えるだけだった。
だが、こうして目の前にクィーンが―――全てのラプチャーが恐怖する[機械の悪魔]がいる。
『俺がいる事に驚いているようだな? いや恐怖していると言った方が正しいな』
「!?」
目の前にただ仁王立ちするアーセナルを纏うクロガネ。
この状況を見届けている白髪の巡礼者にはそうみえるが、トーカティブには別のナニカにみえていた。
恐怖という形が人型の機械になった存在。
まさしく悪魔そのものだと。
『俺がシンデレラと共にお前らの
そう語りながらアーセナルを纏ったクロガネはトーカティブを乱暴に踏みながら、奴の顔面を見下ろせる位置まで来た。
『そんな幻想を100年持ち続けてさぞ幸せだっただろうな。数多の意思を踏みにじり我が物顔で地上を支配したのはさぞ楽しかっただろう。だが、全ては―――
そうクロガネは声音に力を入れながら語り始める。
『
『
クロガネの言葉にトーカティブは体を震わせた。
誰がどう見てもわかる、目の前の悪魔に怯え恐怖したと。
「人間……如きが……」
『人間?違うな。俺は―――[
この日、全てのラプチャーとヘレティック、そして衛星軌道でただ漂うクィーンは本能で感じた。
―――悪魔がこの世に蘇ったと。
次回、ヘレティックが来る。