勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
指揮官に為った悪魔
〔主人公SIDE〕
時々自分の過去をふと振り返る時がある。
特に初めて人の身体を吸収してからそれが顕著になった。
いや、
俺は人間ではなく人の形をした化け物として生れた。
人類の英知が集った宇宙進出を目指す[ガーデン]という組織。
そんな組織で生み出した、あらゆる技術で作られた無機物子宮にエブラ粒子で満たされた子宮から生まれた人の形をした異形なる存在。
エブラ粒子と空想上の超能力を駆使し宇宙空間に適応した改造人間―――[アウター]として生まれた。
俺の誕生は俺を生み出した者たちから祝福された。
俺が生み出された理由は人からアウターになる際に失われる生殖機能を持ったアウターを生みだす事。
人から改造されたアウターではエブラ粒子に完全に適応できないのを完全適応した存在。
有機物と無機物の利点を持ち双方の弱点を相殺。
宇宙以外のあらゆる環境に適応し進化し続ける最高な生命体を作り出す計画。
そんな俺のような存在を生み出そうと
俺は666番目の存在。
この計画の唯一の成功作というわけだ。
そんな俺は赤子、幼子、少年、青年の時代を過ごすことなく生体として生まれ戦った。
そして俺を複製しようとさらなる計画が発足されたが、本来の宇宙への進出からずれた事に計画の主導者の内2人がこの計画の歪さを知り離反。
さらに[ガーデン]の最高戦力部隊であり数ある人から改造された中でも完成度が高い9人で構成された精鋭部隊である[ノイン]も離反した主導者2人に賛同。
そして離反側が元の組織を壊滅させ新生[ガーデン]として発足。
俺はノインの10人目として名前を与えられ、新生ガーデンの一員として新しい人生の幕が―――開くことはなかった。
人類が約100年前に[ラプチャー]と呼ばれる機械生命に侵攻という人類が地上を奪われる物語の幕が開いた。
突如として人類を襲ったラプチャーは既存の兵器では歯が立たずに人類文明は追い詰められた。
しかし人類はそのラプチャーに対抗する為に人間の女性を俺が生まれた技術とは異なる技術で改造した人型生体兵器―――勝利の女神の名を冠する[ニケ]が生まれた。
ニケは人間の脳を戦闘用の機械義体に移植した者でありサイボーグではなくアンドロイドに近い。
そんな最初に製造されてから生まれた原初のニケたる“リリス”。
そして相方であり最初のニケの指揮官でありゴッデス指揮官―――俺が“アンデルセン”と呼んだ男。
この二人の登場からゴッデス部隊のニケ達が集まり正式なゴッデス部隊が結成。
ゴッデス部隊の活躍でラプチャーに次々と人類に勝利の兆しを見せた。
そんな陰でガーデンは宇宙進出の邪魔であり脅威であるとラプチャーを認定。
元々宇宙活動用である大型パワードスーツを対ラプチャー兵器に改造し[アーセナル]を生み出した。
ガーデンは当時の連合軍の協力要請に従い、ニケ達が多く生まれるまでの繋ぎとして。
ラプチャーの侵攻が収束した際に宇宙進出を全ての国家において支援しニケ達に自由を与える事を条件として。
ゴッデス部隊は華々しい祝福がもたらされる中、アウター達で構成された部隊[ノイン]は畏怖の対象とされていた。
ゴッデス部隊の戦いとは対照的に、ラプチャーに対して容赦ない戦いを繰り広げると同時に人から外れた容姿である事が原因であった。
俺は最初から人ではなくアウターとして生み出されていた存在だから気にすることはなかったが、元が人である9人の仲間達には厳しいものがあった。
更に追い打ちをかけるように、アウターとアーセナルに関する技術を独占しようと暗躍した一部の人間が俺達を裏切った。
ガーデン本部を見つけた裏切った人間共は[ガーデン]に大量のラプチャーを仕向けた。
ゴッデス部隊とは引けを取らない俺達でも、圧倒的な数の前にノイン以外のアウター達は全員死亡。
残ったのが主導者…俺と父と母のような存在二人と俺達ノインだけ。
どんなに倒しても減らないラプチャー。
俺以外のノインの皆も終わらない戦いで疲弊し、もはや抗う術は俺のみ。
俺は俺を対等に扱ってくれた父と母、ノインの皆の為に戦い続けようとした。
だが父と母、ノインの皆は俺に未来を託すために俺を一時的に無力化しガーデンから遠ざけた。
そしてこの裏切りで自分達の技術を悪用されない為に俺の未来に必要なものだけを遺して、全てを消滅させるように迫りくるラプチャーと共に自爆。
俺はそれを見届けるしかなかった。
たった一人俺だけが生き残った。
最初は俺達を裏切った人間に復讐しようとした。
だが、俺を生み出した2人―――“ソーマ父さん”、“カルディア母さん”。
そしてノインの皆は自分達に報いる復讐に生きるのではなく自分の未来を―――ガーデンでもノインでもなく俺という個として生きる事を最期に教えてくれた。
俺は皆の遺志と教えを復讐心で染まらせずに自分の為に生きた。
一応人間に対して軽い復讐というか「お前らに簡単に従うか」って意地という名の契約は張ったがな。
それから俺はニケを知るようになった。
ゴッデス部隊の臨時隊員として戦い、ゴッデス部隊の面子と仲良く過ごしたり。
オールドテイルズの指揮官として、オールドテイルズのニケ達と共に戦ったり。
ラプチャーの首魁である“クィーン”をオールドテイルズ部隊の隊長である“シンデレラ”と共に戦ったりした。
ラプチャーのクィーンに関してはあと一歩のところで負けたけど最後のあがきで色々とやり返し、シンデレラ護るために人外の俺でも半世紀以上動けなくなるダメージを負い数十年ほど休眠した。
まあ、休眠前に同じく行動不能になったシンデレラを回収しに来るオールドテイルズ部隊の創設者である“エイブ”に、俺が予測したラプチャーに支配されたであろう地上での生き方、アークを信じず地上で生き抜くこと、俺が活動の合間に各地に秘匿したセーフハウスや研究施設などの座標データを残した。
そんで100年近く眠り続けた時に、アークの
その落ちて来たちょっとした衝撃で辛うじて意識を覚醒させた俺の視界には首のない軍服を着た男の遺体。
そして遠くから「指揮官!!」と呼ぶ女性の声。
恐らく遺体はニケの指揮官なのだろう。
だが、既に指揮官は頭が無い遺体であり指揮官として人として死んだ。
この時の俺は考えた。
まだ外で活動するには再生に時間を要する。
だが、俺の能力である他者を取り込む能力を応用すればこの人間の遺体を取り込めばすぐにでも外で活動できる。
だが、一度死んだ者の身体を乗っ取って生きて良いのだろうか?
それはこの男を侮辱する事になるかもしれない。
そう考えたが、ニケ達から悲鳴が聞こえる。
音や振動、気配から察するにタイラント級ラプチャーに襲われている。
そんな状況を知って俺はすぐに指揮官の遺体を取り込んだ。
俺は指揮官の遺体を吸収し体を取り込むことで肉体を急速再生させた。
体を取り込んだ際に
俺は遺体が来ていた服を着て身分を確認。
幸い名前も容姿も俺と瓜二つだったことが幸いし、俺はすぐさまニケ達の元にいきし器官として仕事をした。
結果、ニケ達は負傷しながらも任務を達成した。
そして俺はボロボロのアーセナルを量子変換して。ラプチャーに敗走した人類の最後の楽園たるアークに帰還。
この時の作戦が新人の指揮官では達成率0.01%でありそれが偉業とされた。
俺はアークでこの体の持ち主として振る舞いつつ、アークで自分のすべきことを探した。
そして俺はアークにおけるニケ達の扱いのひどさを見て、アークにあこがれていた勝利の女神たちを侮辱するような光景を目の当たりにした。
更にはアウターリムという現状や、アークとアウターリムの双方で発生する権力者たちによる暗躍での事件。
その事件でアウターリムの人間は人間ではない扱いで殺され、ニケ達も消耗品扱いで使い捨て去られていった。
これはゴッデス部隊やオールドテイルズ部隊、地上で戦い散っていった先人達やニケ達が守った成れの果て。
俺はそれを変える為に動いた。
指揮官として実勢を積み、あの手この手で迫るアークの権力者や闇と戦った。
そんな過程で色んな事件や、様々な立場や仕事を持つニケ達とも出会って仲良くなったり一時期は敵対したりなど色々あった。
最終的に俺は中央政府所属の指揮官でありつつ、アークにありつつ地上に近い[前哨基地]という
俺はこの立場を使い、アークにもアウターリムにも居場所が無いニケと人間、動物まで集めて出来る限りのことをした。
まあ、色々と権力者に美味いようにたてついたり一線を越えて干渉してくる奴らをいろんな方法で処理したおかげで黒い噂というかアークにまで[悪魔]扱いされている。
ま、俺としては称賛なんかどうでもよくて俺がやりたいことをちゃんと成す事の方が重要だ。
そんな人の形をした異形である俺―――“クロガネ”は、とある作戦で救援部隊を乗せた輸送機が撃墜。
その救援部隊のフォローをしてほしいと仲がいい副司令官に頼まれ該当の作戦地域に到着。
だが―――
「貴方は―――」
白と青を基調にした服を着て、量産型ニケとは異なるオリジナルの銃火器を装備したニケと―――ついさっき拳銃で自分の頭を撃って自殺した指揮官だった遺体が俺の視界に映っていた。