勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
今回はクロガネの独り回想となります。
〔クロガネSIDE〕
今でも思い出す。
―――「たの…み…ます…ッ! 私達が……敵に……なってしまう前に…!」
―――「コロ…シテ……モウ…ラク…ニ…シテ……」
―――「ご、めんな…さい……あなた…に…つ…らい…やく…めを…」
人類の為に戦う勝利の女神たちの瞳が怪しげな赤い光に染まり、苦しみながら俺に介錯を求める姿を。
どうにか助けられないか。
俺の中にある[ガーデン]が保有する技術で彼女達を助けられないのか。
しかし、ニケに関わる技術と[ガーデン]に関わる技術は違いすぎた。
俺が解決方法を探すよりも、侵食されたニケ達が守ろうとした者たちに仇名す存在になるのが早い程に。
俺が出来る事といえば、彼女達が勝利の女神でなくなる前に殺す事だけだった。
俺は殺した。
侵食されたニケ達を。
1…10…100……まるで俺の足元に勝利の女神の遺体の山が築かれるように。
彼女たちが俺が放つ銃弾によって散っていくたびに悲しみと憎悪に満ち溢れた。
己の人生を捨ててまで勝利の女神となった彼女たちがこんな運命を辿らなければならないのか?
なぜ、味方であり自分達を護ろうとする勝利の女神たちを人類は簡単に切り捨てられるのか?
なぜ、ラプチャーは彼女達にこのような吐き気を催す邪悪ともいえる[侵食]という攻撃手段を生み出したのか。
俺は侵食されたニケ達を殺していくたびにラプチャーへの憎悪が増していった。
―――元々ラプチャーへの憎悪はあった。
俺の家族ともいえる[ガーデン]の夢を悉く破壊した。
そして、ニケ達を苦しめる侵食。
まるで命がけで戦う勝利の女神達を嘲笑うかのような攻撃。
俺は誓った―――ラプチャーは全て根絶やしにする。
たとえどんな事情があろうが、奴等は超えてはいけない一線を踏み越えた。
そして侵食を生み出した元凶たる存在は最も苦しみ、最も絶望させながら蹂躙して滅ぼす。
そんな思いで活動し続けながら時は過ぎ[ゴッデス部隊]が最初に現れたラプチャーに寝返ったニケ―――[アナキオール]が顕現。
俺もその場に立ち会い、ゴッデス部隊を逃がす為に殿として戦った。
凄まじい強さだった。
元はゴッデス部隊の性能を凌駕した次世代型[フェアリーテイルモデル]のニケである“シンデレラ”。
なぜ彼女が侵食されたか…。
そんな謎も解決されないまま、[ゴッデス部隊]は[アナキオール]を討伐。
その際に俺は[アナキオール]が万が一目覚め暴走した際の処理要員として[アナキオール]を研究する施設に常駐する事になった。
それから[アナキオール]は様々な実験が施される中、[ゴッデス部隊]指揮官であるアンデルセンの血によって生成された新物質[アンチェインド]が投与された。
[アンチェインド]が投与された瞬間に、今まで動かなかった[アナキオール]―――否“シンデレラ”が復活した。
俺もその現場に立ち会わせた。
覚醒したシンデレラは何が起きたか分からなかった。
どんなに説明を求めても[アナキオール]に同胞や味方を殺された人間達には何も通らなかった。
それは事実でありその時の俺もまだ目の前の彼女が[アナキオール]であると警戒していた。
だが、彼女を見続ける度過去の自分を思い出した。
最初から兵器として生み出され、地獄のような実験を繰り返さる日々。
心や感情を殺しながら実験と称して人間達を殺していく日々。
まるで過去の自分と
それを感じてから俺は彼女を解放する事にした。
その行為は人類を裏切ることになる―――いや、元から[悪魔の契約]は[
俺はシンデレラが研究されている施設に偽物のラプチャーによるコーリングシグナルを発した。
当然研究所から人間達は逃げた。
その際に俺は[アナキオール]をラプチャーに奪われない為に破壊すると残りつつシンデレラを回収。
自らが死んだと見せかけたように研究所も自爆させた。
シンデレラを匿おうと場所を探していた際に、彼女を作ったとされるニケ―――“エイブ”と彼女が創った他の第二世代[フェアリーテイルモデル]のニケ達と鉢合わせた。
最初は[V.T.C.]所属だと知った時は警戒した。
俺が連合軍に入ってから[V.T.C.]の連中は敵だとわかったからだ。
だが、エイブは懸命に俺を説得した。
そして俺が匿っているシンデレラが彼女なら信じても良いと言ってくれた。
そもそもニケの知識が無い俺にエイブの持っている知識は必要でもあった。
それから条件を付けて共に行動する事になった。
その際にエイブが製造したニケ―――[レッドシューズ]がシンデレラと個人的に話し合いがしたいと言って俺を避けて個室で会話した。
俺はシンデレラに盗聴器を仕掛けて何を話すか聞くことにした。
そもそも[レッドシューズ]は最初に会った時にどうにも怪しいと感じていた。
そして
―――「改良された侵食能力を持つラプチャーが私の手元に届いた瞬間、私はまるで世界を手に入れたような気分でした」
嬉々として自分がやったことをシンデレラに話す[レッドシューズ]。
その前の話の時点で俺の思考は静かな怒りに満ちていた。
―――「もはや人類では分析しきれないラプチャー固有の技術となっていましたが機能は完璧でした」
こいつが……
「そしてその侵食を出撃前の貴女―――シンデレラに施す事によって完璧な存在―――[アナキオール]と語り尽くせない程、完璧な結果が誕生したのです!」
それを嬉しそうに…偉業として…望まれたものだとして語っていく。
奴の一言一句を聞いていくたびに俺の思考は怒りに染まっていった。
「それが私が送った平和協定に対するラプチャーの回答でしょう。そして[アナキオール]、貴女こそラプチャーと人類の平和を象徴する存在です」
それから[レッドシューズ]の独り語りが続いた。
それは話を聞かされるシンデレラの絶望と怒りを増長させ続けるように。
そして[レッドシューズ]はシンデレラ以外には侵食コードを埋め込んでいない事を明言した。
そして―――
「私達は歩むことができるのです。ラプチャーとの[共存の道]を!! そして[アナキオール]、貴女はただその象徴として君臨してればいいのです」
奴がそういった瞬間、俺は動いた。
2人が話している部屋の扉をこじ開けるように破壊。
俺は[レッドシューズ]を勝利の女神ではなく純粋な敵として認定した。
『おい―――[
「なんでしょうか? 扉を破壊して私と[アナキオール]の神聖な会話を邪魔するのは感心しませんね」
『神聖な会話? 何を勘違いしている。
「所詮は[ガーデン]の悪魔の死にぞこない…私の崇高なる教えを理解できないとは。貴方は私が目指すラプチャーと人類の共存を阻む邪悪な存在です。
そう言いながら[レッドシューズ]は己の武装である[赤い靴]の最高出力を俺に向けて蹴り放った。
俺はそれを[タイラントハンマー]を装備した右手で受け止める。
「腐っても[ガーデン]製の武器ですね。ですがエイブが作り出した赤い靴には―――ッ!? 動かない!?」
『何が楽しい…? 何が嬉しい…? 何が面白い…?―――勝利の女神の決意を…思いを…命を―――なんだと思っている……ッ!』
俺は[タイラントハンマー]を[レッドシューズ]の胴体に向かって振りかぶり地面に叩きつけた。
叩きつけられた[レッドシューズ]は胴体のコアごと潰されて動けなくなっていた。
「………ッ」
俺の行為に怒りに染まっていたシンデレラは呆然と見ていた。
その時の彼女には自分が[レッドシューズ]に抱いていた憎悪と殺意。
その負の感情は俺が[レッドシューズ]に抱いた殺意と憎悪でかき消され圧倒されたと言った。
コアを破壊した。
これで奴は動かない。
そう思った瞬間、奴の身体が操り人形のように動き始めた。
シンデレラは驚いたような様子だったが、俺はすこぶる冷静だった。
シンデレラをラプチャーに変えたのなら、己もそういった改造を施していると考えたからだ。
だから下手に暴れまわる前に、俺は奴の武装である[赤い靴]を真っ先に[デッドリードライブ]のビームで切断した。
そして切断された[赤い靴]はまるでワームホールに呑み込まれるかのように消えた。
[赤い靴]の行方も気になるが、俺は足が無くなり胴体ごとコアをつぶされた[レッドシューズ]を見た。
「あ…ああ……」
コアをつぶしたのにまだ生きている。
やはり脳をつぶさないと死なないのか。
[レッドシューズ]の知識を調べて[侵食]に対抗する手段や[侵食]の治療法につながる情報を模索したかったが、奴が生きているだけで勝利の女神たちの尊厳と誇り、命が弄ばれる。
俺は右手を[グリムリーパーⅡ]に持ち替え、[レッドシューズ]の頭に銃口を向けた。
「私も…ヘレティッ―――」
『―――死ね』
[レッドシューズ]が言い遺す前に俺は引き金を引き奴の頭を吹き飛ばした。
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では!