勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
ありがとうございます!
〔クロガネSIDE〕
「…ッ。ここは……研究基地か?」
[モダニア]…それともマリアンか。
俺は彼女が起した爆発によって意識を失い、過去を夢で見たかと思えば、目の前にはルドミラ達が常駐している研究基地の客室だった。
起き上がりつつ俺の視界だけ見える網膜ディスプレイを起動、体の状態を見る。
《身体機能の状態。修復及び危機的状況から回復完了。修復の際、ラピ、アニス、ネオン、スノーホワイト、ルドミラ、アリス、トーブ、ネヴェに体構造を視認されました》
そう情報が綴られた。
そうだよな…こんな長時間の気絶は俺の身体の中身が見えるレベルの損傷を受けた時だけだ。
アーセナルの状態は―――
《[X MACHINA]》
《頭 部:ロスト》
《胴 体:ロスト》
《両 腕 部:ロスト》
《両 脚 部:修復可能》
《背部スラスター:修復可能》
《[武装]》
《グリムリーパーⅡ:修復可能》
《タイラントハンマー:ロスト》
《デッドリードライブ:ロスト》
《サテライトシールド:修復可能》
《ウィングシフト::修復可能》
散々だな。
アーセナル自体が脚部とスラスター以外が全滅。
武装に至っては[タイラントハンマー]と[デッドリードライブ]は完全ロスト。
他の武装も軒並み修理が必要だ。
修復に必要な[エクスマター]も無ければ、再生産に必要なアーセナルを作れる機器がある工房も無い。
望みは各地にある非常用の工房だけだが正直100年も経過している以上使える施設があるかどうかも怪しいところだ。
後は―――
そう考えていると客間の扉が開いてラピ、アニス、ネオン、が入って来た。
「クロガネ少佐!」
「クロガネ様!」
「師匠!!」
俺が起き上がったところを見て駆け寄る3人。
「心配かけたようだな」
「バイタルはそのクロガネ少佐の自己治療で問題ありませんでした」
「うん。でも治っても全然目が覚めなかったから心配したんだよ!」
「そうですよ! 完全に治った見た目なのに8時間寝ていたんですから!」
片腕欠損した上でヤバい爆発を至近距離で喰らって8時間で元気になる方がおかしいと思うんだが…。
まあ、俺の中身を見た以上は人間扱いする事は無理になったという事か。
ともかく聞こうか。
「目覚めた余韻に浸りたいのは察しているが1つだけ聞かせてくれ―――
「……ッ」
「そ、それは…」
「えーと…そのぉ…」
判り易い反応だな。
「視たんだろう? 状況的にスノーホワイト、ここが研究基地なら[アンリミテッド]もだな?」
「……はい。私達[カウンターズ]及び[アンリミテッド]総員及びスノーホワイトはクロガネ少佐の身体の中身を見ました」
「そうか…」
いつかは見られると思ったが、よりにもよって問題が増えた矢先か。
とりあえず言い訳は考えてある。
「ラピ。[アンリミテッド]とスノーホワイトをここに連れてきて欲しい―――少しだけ俺について話そうか」
「それには及びません」
「どういうことだ?」
「私達や[アンリミテッド]はクロガネ少佐の中身について視た事を問いかけるのはしないという事です」
「聞きたくはないのか?」
「気にならないと言えば嘘になります。現にスノーホワイトは貴方について知りたがっていました」
「彼女は?」
「既に研究基地を離れて行方をくらませています―――ヘレティック[モダニア]と戦う為の準備をすると言い残して」
「そうか…。それでラピ、アニス、ネオン。そして[アンリミテッド]が俺について聞かない理由は?」
そういうと扉が再び開いて2人のニケがきた。
1人はルドミラ、2人目はトーブとは違う保温スーツに頭部には白熊をかたどった被り物を着たニケ―――[アンリミテッド]分隊の隊員である“ネヴェ”だった。
「起きた様ね、クロガネ」
「おはようございま~す、そして久しぶりですね~、ヒグマさ~ん」
「ああ。ここまで俺を運んでくれたみたいだな。ありがとう」
「ええ。といっても貴方達が身を潜めていたバンカーを見つけて、クロガネを運んでくれたのはネヴェだけどね」
「派手な戦闘だったから来てみればルドミラ達がヒグマさん達を探していたので手伝っただけですよ~」
「そうか…。それで俺については聞かないのか? アリスが見たら色々とまずい気がするが…」
「そこは私が色々と保管したから安心しなさい。そして貴方の身体についてはあえて聞かないわ」
「中央政府に報告しなくていいのか?」
「ええ。貴方には色々とお世話になっているのも。それに誰だって秘密の1つや2つあるものよ」
「はい~。私にとってヒグマさんはヒグマさんですから~。まあ、ヒグマさんのくまさんを超えた力に納得がいったのもありますが~」
「私もよ[カウンターズ]も私と同じ理由よ―――誇りなさいクロガネ。貴方がニケを兵器ではなく一つの存在として対等に接し続けた結果なのだから」
「そうね。私も気になるっちゃ気になるけど、他人がそう簡単に踏み込んで良い秘密じゃないのはわかるわ。それに私にとってクロガネ様は最高の指揮官だし今の暮らしが一番好きだから」
「私は…そうですねぇ。このことを社長に報告すべきか迷いましたが、どちらかといえば師匠と秘密を共有できることの方が嬉しいですし、今回見たことで師匠と離れるのは嫌なので秘密にします。あ、これって二重スパイって奴ですよね! なんかいい感じがしてきました!」
「私はクロガネ少佐の部下であり仲間です。あの時見た光景がなんであれ私は今まで見て来た貴方をみて信じてついていきます」
「そうか…ありがとう」
どうやら俺の秘密について誤魔化す必要は無いらしいな。
俺は最高の勝利の女神達との縁を持っているようだ。
◇
あれから研究基地で一泊して前哨基地に帰還。
そのままアークにあるアンダーソンの副司令官の執務室で、スノーホワイト、[DAEMON]、ヘレティックと接触したことを報告した。
「ここ最近の君は激動の日々を送っているようだな」
「まあな。正直問題が増えるばかりで色々と悩みどころだ」
「そのようだな。それで―――スノーホワイトはどうだったかね?」
「どうといわれてもな…。地上奪還を目指す勝利の女神としか言いようがないな」
「そうか」
俺がスノーホワイトをそういうと、
まるでアンデルセンが笑っている時のように。
もしかしてアンダーソンは………いや、ここでこれを考えるのは止そう。
「とにかくご苦労だった。今回の作戦で君の昇進はほぼ決まったようなものだろう」
「俺としては少佐のままで良いんだがな。中佐とか大佐とか柄じゃない」
「確かにな。私の知る昔の友人も同じような事を言っていた」
「そうか。その友人とは気が合いそうだな」
「どうだか。彼はかなり気難しいんだ。それにあまり他人を信用しなくてね」
「そうか」
「私も彼と仲良くなるために頑張ったものだ」
「アンタが他人と仲良くなろうとするなんて珍しいな」
「私にだって友人を作りたいと思っていた時期がある。なにせ指揮官時代はニケという美女ばかりで、男として気軽に話せる同性の友が居なかったからな」
「意外だな」
本当に俺と関わった経緯がアンデルセンと俺が友人に至るまでの関係と似ているな。
距離を置こうとしてもレッドフードと一緒にしつこく絡んできては騒がしかったな。
あの時は最高に楽しく騒がしかったな。
「ともかくご苦労。しばらく君には任務が来ない様にしておこう―――少しは休みたまえ」
「ああ」
◇
アークで報告を終えた俺は前哨基地に帰って来た。
今日から一ヶ月間[カウンターズ]は完全休暇状態。
それぞれ有意義な休暇期間を楽しむようにと伝えてある。
そんな初日に俺は前哨基地にあるラプチャー迎撃用の要塞壁に来ていた。
どうやら俺に来客らしい。
「お疲れ様であります!クロガネ陛下!」
「「「「お疲れ様であります! クロガネ陛下!!」」」」
到着するや否や、かつて地上にあった極東にある国家の旧軍時代の軍服を彷彿とさせる強化戦闘服に身を包んだ人間の兵士達―――前哨基地対ラプチャー戦闘部隊[ニホンヘ]達が出迎えてくれた。
「出迎えは嬉しいが、その陛下はやめてくれ……柄じゃないだろ」
「いえ!我々に取ってクロガネ陛下は陛下と呼ぶに値する存在であります!」
「陛下がいなければ我々はアウターリムで無残な死を遂げていました! そんな時に陛下が見返りを求めず救ってくれたご恩は決して忘れません!!」
「その通りです!! クロガネ陛下万ァァ歳!!!」
「「「「「クロガネ陛下万ァァァ歳!!!」」」」」
はぁ…彼らと会うたびいつもこんな調子だ。
彼らと会った経緯はアウターリムで義賊をしていた時に過激派の[エンターヘブン]の策略で死にかけて居た時に偶然出会って助けた。
それから彼らは俺の事を崇拝に近い形で部下になった。
ちなみに隊長の名前は“ダイホンエイ”を筆頭に隊員に“カネダ”“カオモジ”“イバラキ”だ。
何故か俺とフォージで共同開発したニケ用武器を扱えるどころか銃剣を装備して接近戦でラプチャーを撃破するという、ウチのニケスタッフも驚くような占領能力を持っている。
ちなみに銃剣で突撃するときは必ず、カネダがラッパを吹きながら「突撃!!」っと叫ぶ。
それに影響されたというか感化されたウチのニケスタッフの数人が同じ強化戦闘服を着て行動を共にしている。
そんな個性あふれる仲間達に出迎えられて壁の面会室に入ると―――。
「あの時ぶりだな―――クロガネ」
そこにはスノーホワイトが座っていた。
「ラプチャーの進行経路からニケが来たと来てみればお前だったとはな」
「ああ。本当はこそっりお前の自宅まで行こうとしたが、そうすると彼らと敵対する事になるからな。それは避けたいから正面から来て面会を求めた」
「我々は地上で孤軍奮闘する勝利女神であるスノーホワイト殿に出会えて大変光栄であります!」
「なぜかこうも歓迎されて美味しいごはんまでご馳走になっている。ここの人間達はみんな親切で良い奴だな」
「それはよかったな」
道理でスノーホワイトの口に色々と食べかすが着いていて目があの時のスノーホワイトになるわけだ。
雰囲気や表情的に満足してくれたのは管理者として嬉しいが。
「それで俺に面会したいことはなんだ?」
「
その件か。
「悪いがスノーホワイトと2人っきりにしてくれ。カメラの録画も切ってくれ」
「は!」
俺の指示に面会室に居た兵士達全員が出ていくと同時に、部屋にあるカメラの電源が切れる。
「これで問題ない。それで聞きたいことは?」
「ああ。あのヘレティックが語った事―――まるでお前と[アナキオール]がクィーンと戦った事があるようだった。それは本当か?」
「ああ―――本当だ」
「ッ!! どうなった! クィーンは!!」
「結論から言えば引き分けだ。
「という事はクィーンの居場所も知っているのか!」
「正確な位置はわからない。クィーンとの戦いで引き分けになった際に“シンデレラ”と俺が最後の力を振り絞って軌道ステーションと軌道エレベーターを破壊した。恐らくだが奴は地上ではなく成層圏を彷徨っている可能性がある」
「それは本当なのか…ッ?」
「そうとしか言いようがない。クィーンと引き分けた際に共闘したシンデレラを護るために死ぬ一歩手前レベルだった。肉体もコアと頭の一部だけで、ここまで再生するのに1世紀ほどかかった。証拠は―――これでどうだ?」
俺は自分の記憶からクィーンとの戦いを映像化、座っている机に投影して戦闘映像を見せた。
「これがクィーン……ッ! それに[アナキオール]!? なぜ奴がクィーンと! それにお前と共闘してクィーンと戦っているだと!?」
「正確には“シンデレラ”だ。
「ヘレティックがニケに戻ったというのか…?」
「正確には肉体は[アナキオール]のままだ。アンチェインドを投与された影響でヘレティック共通の驚異的な再生能力は失っているがな。だが、戦闘能力はそのまま、
「そんなことが…。するとアナキオ―――いや、シンデレラは?」
「わからない。だが無事な可能性が高い。俺が復活した場所でシンデレラを制作したニケが無事に回収して復活させると書置きを残していたからな」
「私たちの脅威にならない保証はあるのか?」
「それは俺の全てを賭けて保証しよう。[アナキオール]という
「そうか。お前がそういうなら信じよう」
「随分とあっさり信じるんだな」
「お前には借りがある。あの時お前がいなければ私は確実に死んでいた。それに―――不思議と親近感が湧くんだ」
「………」
スノーホワイトが俺に対してそうなっているのか。
記憶ではなく、思い出として俺を覚えているのかもしれないな。
「そうか。それで満足のいく回答だったか?」
「情報の重さがかなりあるが問題ない。このことを仲間に共有しても良いか?」
「ああ。アンタ達の目的に貢献できるのであれば活用してくれ」
「わかった。必ず役立てよう。それと―――」
スノーホワイトはそう言いながら俺に1発の銃弾を投げて来た。
一般的な45口径の銃弾。
いや、この弾頭の物質まさか―――
「これはアンチェインドか?」
「やはり知っていたか。私が持っているよりもお前が持っていた方が良いと判断した。あの時のヘレティックにどう使えるかはわからないが、お前の役に立つはずだ」
「良いのか? アンチェインドを生み出せる技術は―――」
「私達よりもお前が持っていた方が良いと判断した。問題ない」
「わかった。この弾丸は必ず地上奪還に役立てよう」
「そう言ってくれると助かる。では私は帰る」
「気をつけてな」
それからスノーホワイトは[ニホンヘ]に護衛されながら前哨基地を去った。
その後[ニホンヘ]達が美味しそうにご飯を食べるスノーホワイトを見て母性というか変なのに目覚めたのか―――
「お前たち!!勝利の女神であるスノーホワイト殿にもっと満足のいく料理をふるまうぞ!!」
「了解であります!!」
「茨城県人ここにありだぁ!」
「カネダはどこだぁ!」
「ただいま参りまーす!!」
「イクゾー」
とまあ、今度は野外炊事にも熱心になった。
次回から原作でのチャプター8と9になる話に移ります。
では!
感想お待ちしております!