今回はノットハートフル
気がつくと私は、赤子のギルガメッシュが寝かされているゆりかごにそっと近づいた。
隣には、世話をしていたらしい女の人が慌てて戻ってきたようだった。
「どなたですか、あなたは? ここは王族の――」
女の人の言葉を遮るように、私はギルガメッシュを抱き上げた。
「大丈夫。私が、この子の未来と可能性を守るわ。」
そして、私はギルガメッシュに、お母さんが私にしてくれたように、溢れんばかりの愛情表現を試みた。優しく抱きしめる。頬を撫でる。歌を歌う。
しかし、その抱きしめる力は強すぎたり、歌声はどこかへたっぴで、私の動きは不自然だった。
私はお母さんとエレシュキガルお姉ちゃんの愛しか知らない。一番良く知っている愛の形は、お母さんの全てを包み込み、決して離さない、絶対的な愛だけ。お母さんの愛を模倣することしか、愛情表現がわからなかったのだ。
その歪な愛を、赤子のギルガメッシュに注ぎ込む。
この子を、絶対に失わない。この子の可能性を、私が守り、育て上げるのだ。
「――ギル。大丈夫よ。ミーナラが、あなたの未来を護ってあげるからね。」
私の復讐しかなかった心に、ギルガメッシュへの愛も加わった。その愛が、のちに英雄王を育み、ウルクの歴史を決定づけることになるとは、まだ知る由もなかった。
「おい、何をしていた?」
真後ろから、アヌ様と呼ばれる方が声をかけてきた。その声は、空の権能を持つ最高神ならではの、静かで圧倒的なものだった。
私は震えながら、イシュタル様がいつもより早く私を「愛でる」のを終えて帰ったことを伝えた。
アヌ様は顔を顰める。
「イシュタルの奴め、また怠慢か。いいだろう。お前の状況、あいわかった。しかし、お前の不完全な権能を考えれば、この宮殿から出すわけにはいかぬ。イシュタルに言い、お前が不満を抱かぬよう、部屋に閉じ込めるのではなく宮殿内での行動の改善策を取らせてやろう。」
私は喜びのあまり震えた。あんな小さな部屋に閉じ込められなくていいのだ!
「何か望みがあるか? 申してみよ。」
私の望みは復讐。しかし、それは最高神であるアヌ様の前では口にできないだろう。
だから、私は最大の希望を口にした。
「はい、アヌ様。わたくしに、毎日ギルガメッシュに会うことをお許しください。この子の未来の可能性を、見守り育てることが、今のわたくしの生きる希望なのです。」
アヌ様はしばし沈黙した後.「分かった。その願い許そう」と告げた。
私の最愛のギル。
あなたはお母さんのように私を置いて死なないでね。
あれから数年の月日が流れた。
私の最愛のギル。あなたは、あんなにも小さかったのに、もうこんなに大きくなってしまった。
今、私は宮殿の中庭で、遠ざかるギルガメッシュを追いかけている。
「待って、私のギル。一人では何かあった時どうするの? 私も連れていって!」
私の切実な声は届かない。ギルガメッシュは苛立ちを露わにし、私を振り返って怒鳴った。
「黙れ! いつまでも子ども扱いするな。我はこの国の王だぞ」
一人でいるとギルはかっこいいからイシュタル様に目を付けられるかもしれない。その時私が近くにいることができれば囮になって、イシュタル様の「愛でられる」対象になってあげることができる。そうすればギルは悲しい思いをせずに済む。
最近のギルは、そばに置いてくれない。
その上、彼の我儘は激しくなっている。初夜権なるものを作り、ウルクの娘たちを奪っているらしい。詳しいことは私にはわからない。だけど、ギルが作ったのだから、きっとこの国の未来のために必要なことなのだろう。あちこちから反感を買ってはいるが、私のギルは間違っていない。
私の頭を悩ませているうちに、使者がやってきた。急な来客である。
使者の名はエルキドゥ。
彼は、ギルガメッシュの傍若無人を止めるために来たという。
ギルが傍若無人なわけないのに。言いがかりも甚だしい。
ギルと使者が決闘をする羽目になった。ギルを危ない目に合わせるなんて許せない。
しっとり系か
今回は