神の騎士団の強ロリ枠 (本編完結)   作:ハセカズ

3 / 11
003:奴隷と仲間

 

世界基準で見ても豪華で煌びやかな作りの家。

そんな豪邸の中である一人の男性が頭を抱えていた。

 

「あぁ、お終いだ……お終いだっ……!」

 

それは聖地マリージョアの敷地に建つ豪邸。即ち天竜人の住まう場所。そこに奴隷として連れてこられたブモと呼ばれる男性がある天竜人の家で頭を抱えていた。

 

事業の失敗により多くの借金を抱え首が回らなくなった彼は奴隷としてヒューマンショップに売り飛ばされてしまい……こうして聖地に連れてこられたのである。

 

天竜人の奴隷になること。

それが何を意味するのかを彼は知っていた。奴隷となった者は天竜人の紋章である焼印を焼き付けられ、およそ人と思われないような扱いを受けることになる。

 

────曰く奴隷にされた子供が憐れな姿で帰って来て一言も喋らずに3日後に自害した

────曰く遊びで両目を奪われた

────曰く妻を焼き殺された

 

などなど……ロクな噂を聞かない。

彼が知っている噂を羅列しただけでも、これなのだ。これから死んだ方がマシと思えるほどの仕打ちをされることになると考えるのも無理のないことだった。

 

「う、あぁ……」

 

あまりのプレッシャーと恐怖に動悸は高まり息遣いが荒くなる。涙と嗚咽を漏らしているその有様は、まだ何もされていないのにも関わらず今にも倒れてしまいそうだった。

 

「大丈夫よ、落ち着いて」

 

そんな彼に優しく声を声を掛けたのは、

この家の奴隷……即ちブモの先輩でもあるリロネオという名前の女性だった。

 

「お、落ち着いていられるか!あんたも奴隷なんだろ!?なら、知っているはずだ!俺がこれからどんな目に遭うか!」

「大丈夫よ。あなた運がいいわ……他の天竜人の奴隷じゃなくてアマテラス宮の奴隷として連れてこられたんだもの」

「は、はあ?何を言って……」

「とにかく落ち着きなさい。あの娘の奴隷でいる間はあなたが想像しているようなことは一つも起きない。何なら奴隷を辞めたければすぐ下界に帰れるんだから」

 

だから心配しないでと言われるが当然そんな言葉を鵜呑みにはできない。

そんな不安と恐怖が心中を満たす中でブモの奴隷生活が始まったが……結論から言うと心配していたようなことは起こらなかった。奴隷になってから数日が経つもリロネオに言われたように想像していた仕打ちを受けたことは1度も無かったのだ。

 

ブモがまず最初にされること恐れていた奴隷の烙印もされていない。そしてそれは、アマテラス以外の奴隷を経験している者を除いた他の奴隷達も同じだった。

基本的にやることは部屋の掃除や皿洗いなどの単純作業だけ。それも埃一つ付けてはならないなどの無茶振りを求められているわけでも無い。勤務時間も1日4時間ぐらいと短く、それも2日に一度やればいいというレベルだった。

 

「そこの窓拭きが終わったら今日の仕事は終了ね」

「あの……アマテラス宮の寝室と専用の浴槽は掃除しなくていいんですか?寝室に専用トイレもあるんですよね?それに大広間のソファーの掃除もまだやってませんけど……」

「それは大丈夫。あの部屋と浴槽はアマテラス宮が自分で掃除するから私たちは入っちゃ駄目って言われているの。それに大広間のソファーも仮眠でたまに使うから同じく触っちゃだめよ」

「え、アマテラス宮自らですか……!?」

 

リロオネ曰く、自分の生活圏内の場所の清掃は自分でやっているらしい。

驚くブモではあるが実は天竜人の中でもそういう者も極小数ではあるが存在する。もちろん奴隷たちに苦労をかけたくない……などの殊勝な考えなどでは無く単に大切な場所を他人に触れさせたくないという、ある種の潔癖症ともいえる考えからくるものだが。

アマテラスもそれと似たような考えを持っており、そのため浴槽は豪華ではあるものの自分だけで掃除ができるように天竜人のものにしては狭いつくりになっているらしい。

 

そのためブモ達が掃除するのはアマテラス宮にとってあっても無くてもどちらでも良い……奴隷達が使う用の浴槽やトイレ、それに大広間の掃除などがメインだった。

 

それが終わればあとは自由時間。

なんと奴隷たちの休憩部屋にもゲームや高価なテレビ閲覧用の高価なでんでん虫など娯楽用品がフル完備されており自由時間は奴隷同士でゲームを楽しんだり、お菓子を食べ寝転がりながら本を見たり、マッサージチェアで体を癒したりと全員がストレスなくリラックスしている様子だった。

 

しかも奴隷に割り当てられた個室もそれなり広く綺麗な作りになっており食事もかなり豪勢なものだ。

 

「ほ、ほんとうに俺たちが食べていいんですかこれ……!?」

「ええ、もちろん。近くのシャボンディ諸島では今海鮮ブームが起きているらしいし海鮮丼を出してもらえるように今度アマテラス宮に打診してみるかしら」

「いや、天竜人にそんな要求をしたら……」

「大丈夫よ。よっぽどの要求じゃなければあの娘は決まって『いいよー』というから。まあ、側近SPのガネリエさんは『奴隷の分際でアマテラス宮になんという口の利き方ですか!』ってうるさいけどね」

「え、えぇ……?」

 

ブモの主人となったアマテラスの話を聞けば聞くほど困惑するばかりだった。

まだ7歳の子供ではあるがとんでもない強さを持ち、曰く”神の騎士団”という組織に所属しているとは聞いていた。だが、いかに子供であろうとも天竜人であるなら奴隷に対して非道な対応をするのは変わらないというのが彼の認識だ。

 

しかしブモが見てきたアマテラスはそのイメージに全く当てはまらなかった。

これまでに何度かその姿を見かけたが子供ながら非常に容姿が整っており邪悪さが全く感じられないふわふわとした雰囲気は彼の知る天竜人のイメージからはあまりにもかけ離れていたのだ。

 

ここに来てからの数日間ブモが理不尽な仕打ちを受けたことはただの一度もない。

 

ブモは誤って水をこぼして、アマテラスの服を濡らしてしまった事が一度だけあったのだが、その時もアマテラスはそれを気にした様子もなく「気をつけてねー」の一言だけだった。

もちろん同じ奴隷の仲間や側近SPのガネリエからは凄く怒られたがアマテラス本人からは怒られた事がない。というかアマテラスが怒っているところすら見た事がなかった。

 

「あの娘は良くも悪くも奴隷に対して無関心なの。それに大人しい性格だし悪趣味な嗜虐思考も持ち合わせていない。本当に天竜人の血を引いているのか疑わしくなるほどにね」

「無関心ですか……?そういえば、ここに来てからアマテラス宮から話しかけられたことが一度もないような……」

「私だってそうよ。ここに来てもう2年も経つけど未だに名前すら覚えられてないんだから。多分だけど自分の奴隷の数すら把握してないわよ」

 

夕食の時間にビフテキを齧りながらリロネオが愚痴をこぼした。

リロネオの言う通りにアマテラスの奴隷に対する見方は無関心だ。だから彼女は奴隷を虐げたことが一度もない。奴隷を思いやり大切に思っていると言うわけではないが無関心なことには関わらないというのが彼女の考え方なのだ。

 

更に自分の手で新しい奴隷を連れてきたと言うこともなかった。

今回新しく連れてこられたブモもあくまでも別の天竜人がヒューマンショップで競り落とし、それをアマテラスにプレゼントしただけだった。

まだ子供であることに加えて非常に可愛らしい顔立ちであることからアマテラスは同じ天竜人からの人気が高く今回のように贈り物として奴隷が届けられるのも珍しいことではない。そのためアマテラスが所持している奴隷は他者から与えられたものばかりであり今後も奴隷に無関心なアマテラスが自分で奴隷を買うということはないだろう。

 

そしてアマテラスは天竜人にしてはかなり人が良くお願いされるとそれに応えてしまう癖があった。それは同胞である天竜人や神の騎士団だけでなく奴隷や下々民も含まれる。

 

例えばだが……

 

「アマテラス宮……か、体の調子が悪くて……薬をいただくことはできないでしょうか?」

「お願いします、アマテラス宮!あなたの能力で息子の病気を治してください!他の病院では匙を投げられてしまい貴方しかいないんです!お願いします!」

「私の娘が人攫いに捕まったと聞きました!お願いします、どうかアマテラス宮の力で娘をお助けください!」

「土地がダメになり食料が取れない上、流行り病でこのままでは国が滅んでしまいます!あなたの奇跡の力をお貸しください!」

「アマテラス宮……そのーこのチラシの化粧品が欲しいなーなんて……駄目ですかね? あと、アマテラス宮の羽も一緒に。若返りの効果があるって聞いちゃって」

「おい、小娘ワシを誰だと思っている!?元貴族のワシに相応しい部屋を用意せんか!食事もこんなチンケなものではなく最高級品を用意しろ!なに!?調理に使われている塩はアスパッチ岩塩ではないだと!?使えないやつめ!ワシはグルメなのだ!もっと気を利かせんか!」

 

などなど奴隷や下々民から要求を受けても大抵は「いいよー」の一言で受け入れるケースが多い。善意でやってるわけではない。

 

ただお願いされたから応えているというだけである。

 

ちなみにケースの最後の例に出てきた男性はお願いの様子を他の天竜人に見られてしまい「キサマ、虫ケラの分際で神に向かってなんて態度だえ!アマテラスに代わってこのわちしが処刑してやるえ!(パンッ」となってしまっている。

 

このように世界政府に被害がでたり、アマテラスのポリシーに反するようなお願いでなければたいていは聞き入れてもらえていた。極端な話、「奴隷は嫌だ。下界に返して欲しい」とお願いすれば彼らはいつでも下界に帰ることができる。

アマテラスの奴隷の数は現在20名ほどだが、アマテラスの家に残っているのは自らの意思でアマテラスの奴隷であることを選択した人だけだった。

 

実際にアマテラスにお願いして下界に帰った人も大勢いるというのに、残った彼らがなぜ奴隷という立場を選んだのかブモは彼らに聞いてみた。

 

「だって下界に帰っても、また極貧な暮らしが待っているだけだしね。ここなら仕事も楽だし豪勢な暮らしも出来るし」

「ち、父親が飲んだくれで借金を作ったせいで私と弟は毎日ゴミを漁って暮らしていて……突然やってきた海賊に弟が殺されて私は犯されて……!逃げ出したあとでも人攫いに捕まって前の主人には遊び半分で拷問されて……!もう、嫌なの!あんな暮らしは!」

「まあ聖地であるここなら海賊なんてまず来ないから安全だよな。おまけにアマテラス宮の能力なら病に怯える必要もないし。俺も抱えていた心臓病を治して貰ったから」

「僕は元から借金まみれで頼れる人もいないから……また人攫いに捕まってヒューマンショップに売られでもしたら最悪、他の天竜人の奴隷になる可能性もあるし……それならここで生活していたほうが安泰かなって」

 

反応は様々だったが、どうやらブモと同じく奴隷になる以前から貧困層だったものが打算的にアマテラスの奴隷でいることを選択しているケースが多いようだった。

 

「な、なるほど。そういう考え方もできなくもないか……?」

 

ブモも奴隷でなくなったところで多くの借金を抱えて家も家族も頼れるものもいない身だ。あんな極貧生活に戻るくらいならここにいたほうがいいか、と彼もアマテラスの奴隷として残る決断をした。

 

「ここに残るなら歓迎するわ。でも、一つだけ注意点があるわ。アマテラス宮以外の天竜人には絶対に目をつけられないようにすること」

 

ブモに対して指を指しながら念を押すリロネオ。アマテラスが奴隷に手を出したことは一度もないがアマテラスの奴隷達が必ずしも安全かと言われればそうとも言い切れない。

 

例えばの話だが以前ここに連れてこられたある1人の少年がいた。

まだ13歳ほどの少年は最初こそ怯えていたものの1週間も経たないうちにここの環境に慣れて生来の明るく活発的な姿を見せるようになった。

何よりも少年がアマテラスに惚れ込んでしまったと言うのも大きいのだろう。容姿がとびきり優れているアマテラス。おまけに天竜人の中では……というより普通の一般人と比較しても気性が非常に大人しく、しかも年下の女の子。

 

少年は目をハートにしながらことあるごとにアマテラスに近づこうとしていた。しかし少年はかなりのドジっ子であり良かれと思って色々とやらかしてしまうタイプの人間でもあった。

 

例えばアマテラスに頼まれてもいない自家製ブレンドコーヒーを出そうとしたところ手を滑らせ、そのままアマテラスの頭にコーヒーをぶっかけてしまったり、チョコレートケーキをプレゼントしようと考え良かれと思って入るなと言われているアマテラスの寝室に入り込んだ挙句ケーキをお気に入りの布団にぶち撒けて駄目にしたり、寝室内の私物をドジを踏んで壊しまくったり、サプライズの花火で私服を悉く燃やしてしまったりと相当なやらかしをしていた。

 

それでもアマテラスは怒るわけでもなく「つぎは気をつけてねー」の一言で済ませていた。そんなアマテラスの態度に慣れきってしまった少年が他の天竜人にも同じような対応をとった結果……その場で射殺されてしまったのだ。

 

このようにアマテラスという少女に慣れてしまった結果、他の天竜人の対応を間違えたり粗相をしてしまったりで殺されてしまうという事が稀にではあるが起こる。

短気である事が多い天竜人といえど流石に他の天竜人の、ましてや神の騎士団の奴隷を許可なく手にかけるというのは滅多に無いが……それでも基本的に考えなしの彼らは少しでも怒りを感じると自分を制御できずに手を出してしまう事が多い。

 

しかもアマテラスの奴隷に対する考え方は無関心。そして同じ天竜人は同胞扱いなのだ。だから自分の奴隷が殺されても、その天竜人相手に怒るということも報復するということもまずありえない。

そもそも奴隷の名前や顔はおろか人数すらも覚えていないのだ。従って自分の奴隷が殺されていなくなっても、それに気が付かない可能性すらある。

 

頼まれたら応えるのがアマテラス宮ではあるので他の天竜人に殺されるような場面で、その場にいれば助けてくれるだろう。

しかし睡眠と散歩が趣味なアマテラスが都合よく、その場にいてくれる可能性は非常に低い。そのためアマテラスの奴隷達は他の天竜人に関わることは勿論のこと、アマテラスの家の敷地から出ること自体避けていた。

 

「いい?とにかくアマテラス宮で安心しきるのはダメ。他の天竜人には基本的に関わらないのが一番。まあ関わること自体滅多にないけど、もしそうなっても最大限の礼儀を持って接すること。粗相なんかしたらその場で射殺なんてこともあり得るんだからね」

「そ、それはもちろん気を付けます……!」

 

こくこくと頷くブモ。

そんなやりとりをしていると玄関のドアが開く音がした。

 

「おかえりなさいませ、アマテラス宮」

「ただいまー」

 

眠たそうな顔をしながら入ってきた少女こそがブモ達の主人でもあるマーカス・アマテラス宮。

趣味である散歩から帰ってきたアマテラスを側近SPのガネリエが手慣れた手つきで迎え入れていた。奴隷達もそれにならい頭を下げる。

 

「本日のご夕食は如何されますか?」

「夕食はだいじょうぶー。このあとはソマーズとの約束があるの。すこし寝てからまたでかけるから。もどるのは21時ぐらいだとおもう」

「承知しました。それではその時間に合わせて入浴の準備をさせていただきます」

「うん、ありがとうーガネリエ」

 

そういうなり大広間のソファーに腰掛けて、そのまま眠るアマテラス。

ソファーで寝るのは軽めの仮眠を取る時だけなのでアマテラスがここで寝るのは結構レアだったりする。そんなアマテラスの寝顔を奴隷達が覗き込む。

 

「は、はあああぁぁぁんっ!!なんて可愛い寝顔なの!うぅ、見た目も性格も本当に天竜人とは思えない可愛さ……天使、この子は天使の生まれ変わりよ!もしくは月から舞い降りたお姫様、女神よ!」

「ちょ、ちょっとリロネオさん。静かにしてください……!アマテラス宮が起きてしまいますよ」

「あ、ごめんね。この娘を見てるとついテンションが高くなっちゃって。猛烈に庇護欲が掻き立てられるのよね……!わたし可愛いものに目が無いから」

 

鼻血を垂らしながらはあはあと息遣いを

荒くするリロネオにうんうんと頷くのは女性の奴隷達だ。

 

「ほんっとに別嬪さんよね……天竜人の性奴隷や王族のお姫様でも見たことがないレベルよ。大人になったらヤバいわねこれ。もはや顔面兵器よ顔面兵器」

「ああ、この娘をぎゅって抱きしめながら一緒に寝るのを毎日夢見るわ。女神様、天使様、アマテラス様!天竜人は神だって言われてるけど、この娘だけは本当に女神様としか思えないわ!」

「あぁ、本当だぜ……!た、たまんねぇ……!じゅるり……」

「ちょっと、あんたは男でしょ!アマテラスちゃんに近づくな変態ロリコン男!」

 

そんな感じで寝ているアマテラスの寝顔を見ながらワイワイと騒ぐ奴隷達はテンションが舞い上がっているのかアマテラスのことをアマテラス宮では無くアマテラスちゃんと呼んでしまっていることに気がついていない。

 

そんな彼らのテンションはどんどんヒートアップしていき、

あろうことか女性の1人が天竜人でもあるアマテラスの頬をツンツンしはじめた。

 

「す、すごい!柔らかくてぷにぷにしていて……!こんな華奢で柔らかい身体のどこにあんな力があるのかしら」

「訓練で大将にも勝ったって話だし……本当に不思議よね……うう、このちっちゃい手で撫で撫でされたらもう死んでもいいわ……!」

「くんくん……た、たまんねぇ。アマテラスたん、すげぇ良い匂いがするぜぇぇ……!ブヒヒ……お、俺を専属性奴隷にしてくれないかなぁ……!」

「アマテラスちゃんに何してるのよ!この変態クソ男ォ!」

 

そんな感じでどんどんエスカレートしていく彼らの行動を流石にヤバいとブモが感じたところで側近のガネリエが止めに入った。

 

「何をしている!今すぐアマテラス宮から離れなさい!」

 

ガネリエからの怒号を受けたことで奴隷達がようやく我にかえり謝罪をしながら慌てて、その場から離れる。

 

「奴隷の分際で……天竜人あっての人間の命だということを忘れないように」

 

そう言い残しガネリエが去っていく。

ガネリエが居なくなったのを確認してから奴隷達がホッと息をついた。

 

「さ、流石にどうかしてたわ……」

「頬っぺたツンツンはやり過ぎよね。もし他の天竜人に見られていたら殺されていたかも」

「俺もどうかしていた。明日からはアマテラス宮に仕える忠実な愛の奴隷として精進していくつもりだ」

「いや、あんたは2度とアマテラス宮に近づくな。そして一回死んでおきなさい、ロリコン男」

 

冷静になった仲間を見てホッとするブモ。もしかして彼らがアマテラス宮の奴隷を続けている理由は金銭的な事情ではなく単にアマテラス宮本人が目当てなのでは、と考える中でふとある事に気がついた。

 

「そういえば、ガネリエさんってアマテラス宮に名前を覚えられているんですね」

「あの人はアマテラス宮とは付き合いが長いらしいから。羨ましいわ……」

 

側近SPのガネリエは天竜人でもないのに名前を覚えられている数少ない1人だ。

基本的にアマテラスは同胞である天竜人、仲間である神の騎士団、そして自身が世話になっている者と恩人以外の名前を覚えることがない。

そしてアマテラスは自身に必要なこと……自分の寝室やよく使うソファーは自分で掃除なり片付けなりをしており、さらに食事に関しても奴隷の世話になることがないのでアマテラスにとって別にやってもやらなくてもどちらでも良い勤務に従事している奴隷達には世話になっているという認識が無い。

 

ただ、そんなアマテラスの従者達の中でもガネリエはアマテラスの育て主でもある五老星のマーズによって、アマテラスが物心つく頃からアマテラスの側近として配置されアマテラスに必要なものの手配や要望を聞くなどの業務をこなしている。従って「自分がお世話になっている人」に分類されているため名前を覚えられ身内扱いになっていた。

 

そんなガネリエはサングラスをかけ金髪に七三分けの髪型をした男性というSPの典型例のような風貌ではあるが奴隷達との仲は良いとは言えない。

アマテラス宮は怒ることがないのだが代わりにガネリエが怒るのだ。おまけにかなりねちっこい上に奴隷を見下している節があるので奴隷達からの評判はあまり良く無い。

 

「私たちがアマテラス宮に近づくたびに奴隷の分際でって毎回ぐちぐちと言ってくるんだから。そのくせ本人はあの娘の無垢な心を利用して甘い汁をたくさん啜っている守銭奴のくせに……」

「はぁ……私なんてもう2年の付き合いになるのに名前を覚えられていないのよ?せめて、この家で食事を取るようになってくれれば元料理人の私が胃袋を掴んで見せるのに……!」

「え、アマテラス宮ってここで食べないんですか?」

 

ブモが来てからの数日間、

確かにアマテラスが食事をとっている姿を見たことがなかった。

 

「なんでも悪魔の実の力で長期間飲まず食わずで生きていけるらしいわ。……本当に神様なんじゃ無いかって思っちゃう」

「だよな。おまけにアマテラス宮の出す羽はどんな病気でも毒でも治す効力があるからな。それに飢えも凌げるらしいし……凄いよな悪魔の実。俺も食べれたら、大物になれるのかな」

 

とんでも能力のオンパレードについていけなくなるブモだがやっぱり凄いんだアマテラス宮と思いながらソファーで眠る少女をチラリと見ると、ふわぁと欠伸をしながら起き上がっていた。その近くにはガネリエもいた。

 

「そろそろ時間だからソマーズのところにいってくるねー」

「いってらっしゃいませ、アマテラス宮」

 

奴隷達はガネリエと一緒に頭を下げてアマテラスが出ていくのを見送った。

 

とあるショーの誘いをソマーズから受けたアマテラス。ソマーズ曰く至高の芸術とのことだがアマテラスは芸術にまったく関心がない。それでも頼まれたら応えるという性質なのでアマテラスは受けた誘いを了承していた。

 

 

□◆□◆□◆

 

 

時刻は午後7時30分。

聖地のとある一室にて美しい音楽が奏でられていた。

高価な楽器を演奏するのは、それに相応しき技量を持つ音楽のプロ達。

 

そんな音楽家たちの顔に宿る表情はプロとして自信に満ち溢れたものでもなく。そして自身が奏でる演奏を客達に聴かせていることへの満足感でもなく……ただひたすらの恐怖だった。

命でも握られているかのように鬼気迫る雰囲気の中、そんなプレッシャーに耐えかねた1人の男性が普段はしないような失敗を犯してしまった。

 

それはバイオリンを少しズラして弾いてしまうという音楽に精通しているものでなければ気が付かないような、ほんの小さなミス。だが、それをめざとく察知した観客の1人が悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「ギハハハ……お前いまミスしたよな?」

「ひっ……!?お許し、お許しください!ソマーズせ、ぎゃああ!!」

 

パンという発砲音が辺りにこだまする。

その無慈悲な銃撃の犠牲者となった男が血を吐きながら床に倒れ伏す。どくどくと血を流すだけの死体とかした仲間を見て奏者達が恐怖で凍りついた。

 

「ギハハハ!どうした!?演奏を続けろよ!言ったはずだぜ?ミスしたやつから処刑だってな!さあ、奏で続けろ死の旋律(メロディ)をなぁ!」

「ひ、ひぃぃぃ!」

「そうだ、その表情だ!それがショーにおける最高のスパイスになる!ギハハハハハ!」

 

そう言って高笑いするヒゲを生やし眼鏡をかけた壮年の男性。

彼こそが「奴隷の音楽家達に生演奏をさせて失敗したものから射殺していく」という、この悪質極まりないショーの開催者。

 

神の騎士団────(シェパード家) ソマーズ聖

 

彼は借金を抱え奴隷に落ちぶれてしまった音楽家達を集めて、この見せ物を開催していた。観客者達は彼と交流のある天竜人や同じ騎士団のメンバー達。彼らもこのショーを目を爛々としながら楽しんでいた。

 

あるものはソマーズと同様に高笑いしながら。

あるものは彼らの恐怖心を酒のつまみにしながら。

彼らの愉悦と共に人の悪意というものを凝縮させたかのような悪魔の催しが続いていく。

 

「ギハハハ!見ろよ、あいつらの必死な顔!死を前にして奏でられる芸術!そして生への渇望が生むエネルギー!これぞ、まさに至高のメロディー!」

 

感涙極まったかのように立ち上がったソマーズはそう言うなり今回のショーを見せるために連れてきた、ある騎士団メンバーの方に身体を向けた。

 

「なっお前もそう思うだろ?アマテラス……って寝てるー!?」

 

少しオーバーなリアクションを取るソマーズ聖の視線の先には神の騎士団最年少であるアマテラスがソファーの上でスヤスヤと寝息をたてていた。

 

ソマーズのような嗜虐趣味を持ち合わせていないことに加えて、そもそも音楽などの芸術に全く関心を示さないアマテラスは演奏が始まってから10秒と持たずに眠りこけてしまっていた。

 

「おい、起きろアマテラス!せっかくいいところなんだからよ!おねんねはまだ早えぞ!?演奏を子守唄代わりにするな!」

「ん……ぅ……」

 

ソマーズにガクンガクンと揺さぶられたアマテラスの目が少しづつ開いていく。

まだ、眠たいのか目を擦っていた。

 

「せっかくのショーを無駄にする気か!?せめて感想ぐらい言え!」

「ん……ソマーズのソファー……すごく……寝れるよ……」

「ソファーの感想聞いてるんじゃねえよ!?」

 

ソマーズと同じ騎士団の団員でもあるアマテラスだが、まだ7つの幼子。だからこそソマーズは先輩として天竜人に相応しい趣味をアマテラスに教授してあげようという考えのもと今回の演奏会に招待していたのだ。

 

だというのに出てくる感想はソファーの寝心地やら部屋の温度やら睡眠に関わるものばかり。この演奏には全く関心を示していなかった。というか演奏を聴いてすらいない。

まがりなりにも神の1柱だというのにアマテラスには遊び心というものが全く足りていない。これは同じ神の先輩として自分が一肌脱がなければならないとソマーズは内心決意を固めていた。

 

「かー!そんなことで”神の騎士団”やっていけると思っているのかァ!?寝るばかりじゃなくて、もっと神らしい趣味を持ち合わせてだなぁ!」

「ふわぁ……べつにいいー。ねむい……」

 

変わらず無関心のアマテラスではあるが尚もソマーズは諦めずアマテラスの肩に手を置き、もう片方の手で奏者達の方を指さした。

 

「まあまあ、そんな悲しいことを言うなよ。ほら、アマテラス。あいつらの顔を見てみろ。あの恐怖に満ちた顔に迫真の音楽……面白いだろ?」

「えー……つまんなーい!」

「ぐっ、はっきりと言いやがって……!」

 

尚も諦めずになんとかアマテラスに嗜虐趣味を持たせようとするソマーズであるがそれを別の騎士団が待ったをかけた。

 

「その辺にしとけ、ソマーズ。自分の好きを人に押し付けるもんじゃねェ」

 

アマテラスと同様にこの演奏にお呼ばれした

神の騎士団────(リモシフ家) キリンガム聖。

ボサボサの黒髪にギザ歯の彼は呆れながらソマーズに注意をしていた。

 

それを受けたソマーズは降参と言わないばかりに肩をすくめた。

 

「んあー悪かったよ。全く軍子といい女ってやつはどうしてこの芸術が分からねえんだ……」

 

ぶつくさ言うソマーズを置いてキリンガムは動物系・幻獣種 “麒麟”の夢具現化で取り出した毛布をアマテラスにかけていた。

 

「ほら、そのままだと寒いだろ」

「ん……ありがと……」

 

そのまま、すぐ眠りに落ちたアマテラスを

見たソマーズがため息を吐いた。

 

「怪物みてえな強さのくせして見てくれは別嬪なんだからよ」

「確かに容姿に関して言えば将来は超上玉になるのは間違いないだろうな」

 

アマテラスの寝顔を見ながら感想をこぼすソマーズとキリンガム。

 

「ハァ…ハァ…本当にたまらないんだえ……。可愛いんだえ、アマテラス。わ、わちしのコレクションに加えて侍らせたいんだえ……!」

 

そう鼻を広げながら荒い息づかいの男性はソマーズによって演奏会に呼ばれた天竜人の1人、タブモキ聖。天竜人屈指の幼女嗜好を持つ彼は涎を垂らし舌舐めずりしながらアマテラスの寝顔を見つめていた。

 

そんな様子の彼に若干引きながら、ソマーズとキリンガムが嗜めていた。

 

「おいおい……殺されるからやめとけって。こいつの化け物っぷりを知らねえのか?まあ、アマテラスが怒ってる姿は想像つかねえけどな」

「確かに。奴隷に粗相されても怒らないって話だからな」

「ほんとかえ?わちしなら直ぐに処刑するえ」

 

過去にアマテラスが奴隷にコーヒーをぶっかけられても、なお怒ることがなかったと聞いた時はソマーズも流石に呆れたものだ。こいつの怒りスイッチはどこにあるのだと。そんな対応だと奴隷に舐められかねないぞと。

 

「全く奴隷の扱いがなっちゃいねえな……。よし、こうなったら俺が手取り足取り教えてやるとするか」

「いい加減あきらめろよソマーズ……」

 

謎の先輩風を吹かせアマテラスを天竜人らしい天竜人にすることに燃えるソマーズ。

彼の心境的には幼い甥っ子に世話をしたくなる親戚のおじさん気分なのだろう。キリンガムはそんなソマーズを呆れたようにジト目で見つめていた。

 

「というかアマテラスに釣られて俺も眠たくなってきたな……」

「おいおいキリンガムもかよ……そろそろ演奏も佳境だぞ?」

「分かってるって」

 

アマテラス同様にうとうとし始めるキリンガム。

キリンガムとアマテラスは騎士団の中でも睡眠が好きなもの同士の睡眠仲間であり、お互いに睡眠グッズの情報を交換しあっていたりしていた。

 

「はぁ……たく……」

 

ソマーズのため息を他所に悪魔の演奏会は続けられた。

そんな演奏会の中でアマテラスはスヤスヤと眠っていた。




・ネームドオリモブキャラたち
全員「名が体を表す」キャラ

・ソマーズ
子供の世話を焼いてあげたくなるおじさん枠。やってることは鬼畜外道そのものだけど。

・キリンガム
騎士団の中ではアマテラスの次に眠るのが好き。
アマテラスとは趣味が合う。お互い寝ているだけだけど。

・アマテラス
今話では寝顔を見せることしかしていない。
因みに演奏中の奴隷たちはアマテラスに助けを求めれば
アマテラスがソマーズに口利きぐらいはしていたと思われる。
あくまでもソマーズの奴隷なのでそれ以上のことはしないが
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。