聖地マリージョア───『権力の間』にて。
五老星の1人であるマーカス・マーズ聖が手元にある複数の新聞を忌々しそうに見つめていた。
「モルガンズめ……余計なことを」
その内の一つの見出しには天竜人であるマーカス・アマテラス宮の寝顔、そしてドンキホーテ海賊団の船長ドフラミンゴが倒れ伏している姿と腰を抜かしている最高幹部のディアマンテの様子が写し出されていた。
『ドレスローザに起きた悲劇を天竜人の少女が救う!?国を救ったヒーローの名はマーカス・アマテラス宮!!7歳の子供にして王下七武海を圧倒した少女は何者か!?はたまたこれは政府の陰謀なのか!その実態に迫る!』
そんな内容が記載された新聞の反響は過去最高レベルで大きいといってもいい。
外道さが服を着て歩いている筈の天竜人が王下七武海を堕としたのだ。おまけに見出しにデカデカと乗せられたアマテラスの寝顔写真。
アマテラスは子供にも関わらず容姿がとびきり優れている。その写真だけで新聞の売れ行きが普段よりも爆上がりしたとかなんとか。
そのため記事の内容でもアマテラスの容姿でも色んな意味で大きな反響を呼ぶことになっていた。
本来ならドフラミンゴ討伐の功績は海軍大将である藤虎に押しつける予定だったのだがこうなってはそれも難しい。
なお許可なく七武海と交戦した挙句、倒してしまったアマテラスはマリージョア帰還後に神の騎士団 最高司令官のフィガーランド・ガーリング聖からガッツリ怒られることになった。
2時間に及ぶお説教を受けた上に反省文まで書かされたアマテラスはドフラミンゴとの戦いよりずっとダメージを受けた様子だったらしい。
とはいえドレスローザの件だけなら五老星達もそこまで問題視はしていなかった。今回の記事では世間一般に広く知られるべきでは無い「神の騎士団」では無く「天竜人」としてアマテラスの記事が載せられている。
ドレスローザという国一つを救ったぐらいなら「ドフラミンゴの悪行に気がついた政府が食い止めるための戦力を派遣した」と世間には答えれば良いだけだ。
その後はアマテラスを暫く謹慎させて世間の話題から消えるまで待てば解決する。
そのため新聞がドレスローザのものだけであれば対処は簡単だった。
しかし問題は……これ以降の記事にあった。
『荒れ果てた土地を蘇らせ国を救った少女の名はマーカス・アマテラス宮!その力は奇跡を呼び起こすのか!』
『不治の病をも根治する鳳凰の羽!これぞ人類が夢見た万能薬!まさしく神の所業か!?』
『マーカス・アマテラス宮、政府非加盟国の食料問題をも解決していた!天竜人の少女が起こした奇跡!これは政府の策略か!?はたまた無垢な心が生んだ慈悲か!?』
モルガンズはどこから情報を入手したのか連日のようにアマテラスの記事を発行していた。この記事によってアマテラスの鳳凰の力まで世に知れ渡ることになってしまったのだ。
鳳凰の羽には荒れ果てた土地を蘇らせ、病や毒を浄化し、飢えを凌ぎ、僅かだが若さをも取り戻す作用がある。
世界政府はこれまで海軍の人間や政府所有の土地に対して鳳凰の羽を使っていた。それに加えて試験的にではあるが一部の政府加盟国や富裕層などにも振舞っていた。
これだけの効力を持つ羽なのだ。
生み出す利益は計り知れない。現に政府の財務、農務、環境分野の利益や実績はアマテラスの騎士団加入前とは、もはや比較するのも馬鹿馬鹿しい程に向上している。
それにこんな力を持った羽なら欲しがる人間も必要とする人間も五万といる。
そのため「鳳凰の羽」をチラつかせて他国を支配することで政府の力をさらに向上させることも可能。
その一環として羽を一部の加盟国に試験的に振舞っていたので、その存在が完全に秘匿されているというわけではないが少なくとも出所を世間に周知するつもりはなかった。
だがモルガンズの新聞でそれも割れてしまった。
おまけに非加盟国を無償で救助したという事実と共に。
アマテラスは誰であれ、お願いされるとそれに応えてしまう傾向があり結果として加盟国、非加盟国問わずに助けることがあるという事実は五老星も把握していた。
だがアマテラスが不死身の契約を交わしているということもあり「鳳凰の羽」はほぼ無限に採取できる。
従って政府の取り分が減るわけでもない。
それにアマテラス本人が善意で下々民を気にかけているわけでも政府に反感を抱いているわけでもなかったので特に気にしていなかった。
しかし新聞のせいで世間からはアマテラスが聖人のごとく慈悲の心を持って「鳳凰の羽」を他者に恵んでいるように受け取られてしまっている。
そして非道を極めている天竜人がここまでの所業を成しているという話題性から新聞は売れに売れて発行部数も爆上がり状態らしい。
もちろん天竜人の被害者や革命軍の中には「これは政府の陰謀だ!」と声を荒げるものや政府の狙いを推測しようとするものもいたし、鳳凰の羽の効力に関しても「いくら悪魔の実の力とはいえそんな事あり得るのか?」と疑うものも多い。
だがそういう声も含めて、いまや世間の話題はアマテラス一色で持ちきりという状態だ。
これでアマテラスが一般的な天竜人のように
『今日は楽しい楽しい人間狩りの日アマス♡』などの鬼畜な台詞を言ってそうな容姿であればここまで話題になることもなかったのだろうが、いかんせん世間一般がイメージしている天竜人の容姿とあまりにもかけ離れていた。
しかもまだ幼い子供。購入された新聞からアマテラスの写真だけ切り取られるというケースも珍しくなかった。
この様に色んな意味でのギャップも反響を呼んでいる要因の1つだろう。
そして、これだけの反響を呼んだからにはアマテラスが世間から忘れられるには相当な時間がかかる。
「やってくれたな……。ここまで話題になっては揉み消すことも難しい」
「うむ。今後アマテラスに課せる任務も慎重に検討しなくてはなるまい」
ため息をつきながら険しい顔をするマーカス・マーズ聖とシェパード・十・ピーター聖。
神の騎士団の1人としてこれまで数多くの地区の制圧を行ってきたアマテラスだが一般市民や罪なき人を脅かしたことは一度もない。
しかし、それはアマテラスの力が必要になる様な制圧対象地区は極悪な海賊が支配しているケースが多いため結果的にそうなっているというだけだ。
当然ながら命令を出す五老星も最高司令官のガーリングも「まだ幼子のアマテラスが一般市民には手を出さないようにする」などの配慮をすることなど皆無といって良い。
政府への利益しか頭に無い彼らは制圧対象地区に一般市民がいようとも躊躇うことなくアマテラスに命令を出すだろうし善悪に関心のないアマテラスもその命令を淡々とこなすだろう。
しかしモルガンズの新聞でアマテラスの存在が世間に知れ渡った。それも政府の光の側面として。
本来それは海軍が担うべき役割なのだ。
一般市民の虐殺ですら任務に含まれることのある「神の騎士団」の役割では断じてない。
もしも今の状況でアマテラスに一般人を手に出す必要のある命令を下して万が一それが漏れてしまった場合……政府の評判はガタ落ちするといってもいい。
話題性というのは高ければ高いほど汚点がついた時の失速具合が激しくなるものだ。
そうなれば政府が被る被害も計り知れない。
これまでも不都合なことはなんでも闇に葬ってきた世界政府だが、それでもリスクが高まったことに変わりはない。
下界の人間を虫ケラとしか認識していない彼らも決してバカではない。政府繁栄のためこれからの行動は慎重に行わなければならなかった。
「過ぎたことを気にしても仕方がない。今回の報道で我々が得た利もある。今はそれをどう活用していくかを考えるべきだろう」
「確かに……鳳凰の力を目当てに政府に救援を求める声が飛躍的に増大している。その中には我々の支配下におけば有益となる非加盟国も多数存在する」
資料を取り出しながら答えるトップマン・ウォーキュリー聖の言葉をジェイガルシア・サターン聖が肯定する。
「もともと他国支配のため試験的に振舞っていた鳳凰の羽。その宣伝として今回の報道はこれ以上ない効果があると言えよう」
イーザンバロン・V・ナス寿郎聖の言葉通り新聞は政府にとって不都合な点ばかりではなかった。
枯渇した大地の復活、飢饉への対応、かつてのフレバンスのような不治の病の完治。そんな冗談じみた効力を持つ鳳凰の羽の宣伝効果としては有効であった。
政府にとって利のある非加盟国に対して羽を使った救援と引き換えに加盟させるなどの駆け引きも今の状況ならかえってやりやすくなったとも言える。
アマテラスの存在と鳳凰の力が割れてしまったがこの状況をうまく活用できれば世界政府の支配範囲を一気に広めることも可能だろう。
「では……アマテラスの力を今後どう使っていくかを検討しよう」
マーズの言葉に5人の老人が頷き政府繁栄のための話し合いを始めた。
□◆□◆□◆
マーカス・アマテラス宮。
天竜人である少女の朝は早い。
「ん……」
早朝のまだ薄明るい時間に目覚めた少女がそのまま軽めのシャワーを浴びる。その後は着替えや部屋の清掃、歯磨きなどを済ませてから寝室を出た。
そんなアマテラスを側近SPであるガネリエが迎える。それに倣い奴隷達もアマテラスに挨拶をしていた。
「アマテラス宮、本日のスケジュールになりますが……今から40分後に非加盟国のサヒン王国に出向き公害病および死滅した土地の復活を行なっていただきます。その後はエッグヘッドに出向きペガパンクに羽と炎の提供。その後は加盟国のネムール王国にて……」
つらつらとアマテラスに今日の予定を連絡するガネリエだが、仕事だけで一日が終わるんじゃないかと思えるような膨大な量の業務内容を聞いていた奴隷達がヒソヒソと話していた。
「アマテラス宮、大丈夫なんでしょうか?ここのところ毎日忙しいような……。昨日も深夜に帰って来たようですし」
「例の記事のせいよ。あれが出てから政府は「鳳凰の羽」を使った他国との交渉を本格的に開始したって噂を聞いたわ。あんな幼気な子供を利用するなんて信じられない……!」
「私たちに何か出来ることはないかしら……。そ、そうだ!疲れているあの娘にマッサージとかしたら名前覚えてくれるかも!実は奴隷になる前に整体師をやっていたの」
「えっ、ちょっとずるい!私もやる!」
天竜人の奴隷は一般的には主人のことを恐れる事が多いのだが、ここの奴隷達は殆どがアマテラスのことを心配しているようだった。
「マッサージなら俺に任せておけ。元エステシャンの腕がなるぜ。俺の手がアマテラス宮の柔肌に……ぐひっ、グヒッヒヒヒィィィ!!」
「休みもろくに取れていないみたいだぜェェオイィ……オレもちょっちぃ……いってくるわぁぁぁ……」
「あんた達はアマテラス宮に近づくな変態男どもォ!」
この中のリーダー格である女性のリロネオが男性奴隷であるコリンロとヘイタドンをゴンっ!と殴るいつもの光景を若干呆れながら見ていた他の奴隷達。
眠ることが大好きなアマテラスは元々起きる時間も遅くお昼付近に寝室から出ることも珍しくなかったのだがモルガンズの記事が出てからというものの課せられた任務量が激増して最近は早起きする事が多かった。
それからは「奴隷がアマテラス宮より遅く起きるとは何事か!」というガネリエからの言葉もあり奴隷達の起床時間もアマテラスに合わせられたものになっている。
ガネリエから今日やることを聞いたアマテラスが部屋から出ていき、最初の目的地に向かう。
船に乗るよりも飛んだほうがずっと速いため、アマテラスは能力による飛行を任務地までの移動手段としている。
こうしてアマテラスの忙しい一日が始まった。
□◆□◆□◆
最初の任務地は世界政府 非加盟国のサヒン王国。
サヒンでは国のとある地層からしか採取できない極めて希少な資源のおかげで非加盟国でありながら最も栄えた国の一つとされていた。
しかし採取できる資源には毒素が含まれており過度に掘り起こすことで人体に悪影響を及ぼしてしまう闇も抱えていた。
そして国の上層部達が巨万の富に目が眩んでしまった結果、掘り起こしを進めて公害病が国中に蔓延してしまったのだ。おまけに人伝いに拡大した毒が農地も駄目にしてしまい食物が育たないのである。
しかし、その資源に目をつけた世界政府が今回、加盟と引き換えに「鳳凰の羽」を提供することを約束した。
鳳凰の羽はどんな病気をも癒やし、毒や汚れなどの不浄なるものを浄化し、死滅した大地を蘇らせ、飢えをも凌ぐとされている。だが翼から採取した直後の羽でなければ、そこまでの効力は発揮できない。
鳳凰の羽は翼から抜けた後は時間経過とともに効力が落ちていくのである。そのため能力者であるアマテラス本人が直接王国に来訪して「鳳凰の羽」を提供していた。
政府としてはアマテラスを現地に行かせることで新聞により明るみになった力を更にアピールして政府の支持率を上げる効果も狙っているのだろう。
ある意味ではサヒン王国は運が良かった。
かつて珀鉛という資源が取れながらも資源に含まれる毒により発生した公害病や世界政府の所業が原因で滅んでしまったフレバンスという王国がある。
フレバンスは最終的には公害病を伝染病と思い込んだ周辺諸国から他国へ通じる通路を八方から封鎖されて隔離処置を取られてしまっていた。このままだとサヒン王国もフレバンスと同じ末路を辿っていた可能性は十分にあり得た。
だが、アマテラスが政府の任務を受けて来た以上、それが起こることはない。その病に犯された人たちの肌には特有の痣が出ていたのだがアマテラスから受け取った鳳凰の羽を摂取した途端、魔法のように消えていった。
「あ、あざが……!助かったのか俺たち!?」
「駄目になっていた土地も復活したぞ!」
人々からは公害病が消えていき、荒れた大地は水を得たスポンジのように潤いを取り戻していく。
それだけにとどまらず、「鳳凰の羽」を取り込んだ地層内の資源に含まれた毒素をも浄化して無害なものに変えていく。
その所業を見た人々が『神の御業だ!』と歓喜の声を上げた。
「ありがとうございます、アマテラス宮!」
「あなたは生き神様じゃ……!」
何時間もかけて公害病に犯された市民への羽の提供と駄目になった土地の復活を終えたアマテラスの元には市民達と国の代表者達が集まっていた。
「おれいなら世界政府にいってねー。わたしは任務で来てるだけだからー」
「ええ、勿論です。このご恩は忘れません……」
周囲の人達からの感謝を受けるアマテラスであるが本人はそれを気にすることも無く、後のことは一緒に来ていた政府の関係者達に任せて次の任務をこなす為に飛び立つ。
次の任務地は未来島エッグヘッドだった。
サヒン王国のように世界政府にとって利害のある国に鳳凰の羽を振る舞うばかりが任務ではない。
鳳凰の力は科学的な視点からみても非常に価値のあるもの。海軍の科学者達に翼から抜いたばかりの新鮮な羽や炎を提供するのも任務の一つだった。
「うーむ、何度見ても不可思議な物質。現代の化学では再現が難しい……」
受け取った羽や炎を興味深そうに解析していた男が呟く。彼こそは海軍特殊科学班の班長にして、「世界最大の頭脳を持つ男」と称される天才科学者 Dr. ベガパンク。
鳳凰の羽も炎もこれまで何度かベガパンクに提供されており科学分野への応用するために現在もエッグヘッドにて研究中だった。
「だが、私は諦めんぞ!鳳凰の力を解析して人工的に再現できれば人類の夢がまた一つ叶う!”どんな病も治す薬”、”無限のエネルギー”。その実現もきっと可能じゃ!」
「そうなのー?」
「うむ……アマテラス宮。お前の鳳凰の力がいつかきっと人類を救ってくれるはずじゃ」
最初は天竜人ということもありペガパンクはアマテラスに対して腰を低くした態度で接していたのだが、アマテラスの人となりを知ってからは普通の子供を相手するような気軽な態度で接するようになっていた。
それはペガパンクの分身体である”
「ね、ねえ!それより天竜人の話をもっと聞かせてよ!」
「んー……」
彼女は目をキラキラさせながらアマテラスから天竜人達の私生活の詳細を聞いていた。
アマテラスから話を聞くたびに彼女は「キャー」と歓喜の声をあげている。本人はアマテラスの鳳凰の力を解析するための一環だと言ってるらしいが。
そんなこんなで鳳凰の羽と炎の提供が終わったアマテラスは次の任務地へと向かう。
それからいくつかの国に赴き任務をこなしてから……やっと休み時間に入ることができた。
仕事はまだ残っているのだが次の任務開始までそれなりに空き時間があるという事と任務地がシャボンディ諸島から近い場所にあるということで一旦、聖地マリージョアに帰還していた。
「よう、アマテラス。任務帰りか?」
「あ、ソマーズ」
アマテラスに声をかけたのは同じ神の騎士団であるシェパード家のソマーズだった。
「ギハハハ。ここのところずっと忙しそうだな。最後に休暇とれたのいつだ?10日くらい前だったりしてな」
「えっとー……20日くらいまえ?」
「は……?」
アマテラスの言葉を聞き固まってしまうソマーズ。そんなソマーズの様子にアマテラスは首を傾げていた。
「……そ、そうか。その……あれだ。無理はしないようにな」
「うん、だいじょうぶー」
「あっ、そうだ。これを見ろ。滅多に手に入らない限定品の饅頭だ。餓死寸前の奴隷達に見せながら食う予定だったんだが……お前にやるよ。疲れた時は糖分が一番だ」
「ん、ありがとうー」
饅頭を受け取り、そのまま去っていくアマテラスの背中をソマーズは唖然と見つめていた。
「あいつ……過労死するんじゃね?」
ポツリと呟く彼の視線には同情と憐れみが含まれていた。
□◆□◆□◆
次の任務開始は3時間後なので、それまでは自由時間となる。
これだけの自由時間を得られるのは久しぶりだったので暫く出来ていなかった散歩を付近のシャボンディ諸島で数十分ほどしてから仮眠をとるかなと考えていたアマテラスだったが……今回は無理だった。
「ああ、無事でよかった!」
「ママぁ!」
アマテラスの目の前ではある親子が泣きながら抱きしめあってる。
数日ほど前に人攫いに捕まり島の端でやっていたヒューマンショップに売り出された12歳の少女をアマテラスが見つけ出した上で購入をして母親のところに連れてきたのだった。
シャボンディ諸島内を10分ほど歩いていたところで母親が突然アマテラスの前で土下座して「娘を助けて下さい!」と懇願して来たのだ。
その娘の写真を受け取り、それを見ながら見聞色を使って同じ顔の人物がいないかをシャボンディ諸島中探し回り……数時間の作業の末にやっと見つけることができた。
基本的には頼まれたら応えてしまうアマテラス。
彼女の力や性格を知るものから助けを乞われることは前からあったのだが最近はその頻度が極端に増加していた。それは加盟国、非加盟国関係なく各地でおきている。
あるものは病気を治してもらうために。あるものは飢餓を凌ぐために。あるものは土地を救ってもらうために。あるものは今回の親子のように奴隷に堕ちた親しい人間を救ってもらうために。
間違いなくモルガンズの新聞により鳳凰の力とこれまでやってきた事が明るみに出てしまった影響だろう。
「天竜人がこんな事をするはずがない」と新聞を信じないものも少なくはないが、それでも藁にも縋りたい状況の人達はいざ本人を目の前にするとアマテラスに助けを求めてしまうケースが多い。
色んな意味で天竜人らしさが無いアマテラスの雰囲気や見た目も影響しているのだろう。
もっとも善意でやってるわけでもないのでヒューマンショップに売られていた他の哀れな奴隷達を助けることをしていない上、親子の顔はおろかお願いをしてきた事実すらも既にアマテラスの頭から消えかかっている有様なのだが。
「ふわぁ……もういくね」
娘を抱きしめながら何度も頭を下げてくる母親にそう言い残して去っていくアマテラス。探す作業にかなりの時間を取られてしまい次の任務開始まであと少しとなってしまった。
「ん……ねむい」
少しでも仮眠をとって休むかなと考えながら歩いていたところで周囲の異変に気がついた。
周りの人々がヒザをついていたのだ。
このシャボンディ諸島ではアマテラスが奴隷を連れずに歩いている事や服装などの理由から天竜人だということは新聞が出るまで知られていなかった。
現に人攫い達がアマテラスに襲いかかったこともあるし、市民達にヒザをつかれることも無かった。
周りの人達の認識は「この辺りを1人でたまに散歩している子供」だったので、親しげに話しかけてくる大人もいた。
そして新聞が出て天竜人だという事が知られた後も天竜人らしさが感じられない雰囲気のせいなのか、あるいはやっていることのせいなのか戸惑いの視線でこちらを見るばかりでヒザをつかれることは少なかったのだ。
だが現在、周囲の人達がヒザをついている。
つまり別の天竜人が近くにいると言うことになる。とはいえここは聖地が近いので何も珍しいことではないのだが。そんなアマテラスの予想通り奴隷に乗った天竜人の男性がアマテラスに向かって真っ直ぐとやってきたいた。
アマテラスも初対面の同族なのだが何やら様子がおかしい。
「んな……!!」
彼はこの中で唯一立っているアマテラスを見るなり身体を震わせながら驚愕の表情を浮かべていた。
「どうしたのー?」
アマテラスがそう言った瞬間に……何とその天竜人は憤怒の表情なまま、アマテラスに目掛けていきなり発砲してきたのだ。
突然の出来事であったがアマテラスは素手で全弾受け止めていた。
「なにするのー?」
その様子を見た天竜人の表情が更に怒りで染まるが……不意にその視線がアマテラスの顔に向く。
怒りに満ちた表情から品定めするかのような表情に切り替わった彼は数秒ほどアマテラスを見つめていたのだが、やがてとんでもないことを言い出した。
「よし、将来の妻候補として聖地に連れてってやるえ。成長するまではわちしのペットにするえ」
その言葉に周囲が騒めく。
それも当然だろう。天竜人が気に入った異性を問答無用で連れていくのはよくある話だが、それはあくまでも下々民が相手の場合だ。
「お、お待ちください!チャルロス聖、このお方は───」
「きさま!わちしに逆らう気かえ!?」
「ぐあっ!?」
付近にいた護衛SPが急いで止めに入るも、そのことに激昂した天竜人───チャルロスが護衛の肩を撃ち抜いてしまう。
一方でアマテラスは首を傾げていた。
自分をペットやら妻候補やらで聖地に連れていくという発言が理解できないからだ。
「なにいってるのー?」
「何だ、お前もわちしに文句があるのかえ?」
チャルロスが再びアマテラスに銃を向けたところで先ほど撃たれた護衛SPが肩を抑えながら再度止めに入った。
「そのお方はマーカス・アマテラス宮!御身と同じ天竜人でございます!」
「天竜人……?何だ、それならそうと早く言うんだえ」
それを聞いたチャルロスがやっと銃を下げた。その様子を見て護衛SPも土下座をしている下々民もホッと息をつく。
「それにしてもお前はなんで下々民みたいな格好をしているんだえ?」
アマテラスはこの後また任務があるのだが久しぶりの散歩なので任務用の軍服から私服のワンピースに着替えていた。そのため格好だけなら一市民に見えないこともない。
素材自体は高級仕様ではあるのだが宇宙服を思わせる天竜人の正装ではないし、シャボンのマスクもつけていない。
チャルロスはアマテラスのことを同族から噂だけなら聞いていたのだが最近は新聞もろくに読んでおらず初対面だったこともありアマテラスのことを下々民と勘違いしていたようだ。
「こっちのほうが動きやすいからー」
「そうなのかえ?変わったやつだえ」
チャルロスはそれでアマテラスへの関心が失せたのか部下と奴隷を連れてそのまま去っていった。
「あ……」
そんなやり取りをしてる間に自由時間を全て使い切ったことに気がついたアマテラスは私服のまま急いで集合場所に向うことになった。
□◆□◆□◆
「グンコ、だいじょうぶー?」
「ああ、この程度なら問題ない。すぐに再生する」
そう言いながらパキパキと腕の傷を再生させていくのはサングラスをかけた軍帽、そして口元を包帯のような物で隠している女性。
神の騎士団────(マンマイヤー家) 軍子宮
現在、彼女はアマテラスとの共同任務で海底大監獄インペンダウン LEVEL6の元囚人達が支配していた島の制圧にあたっていた。
2年前に麦わらのルフィや黒髭海賊団が起こしたインペンダウンの大量脱獄。そんな脱獄者達の中にはインペルダウンの最下層LEVEL6に収監されていた囚人達も含まれていた。
彼らは存在を政府によって揉み消されるほどの怪物達。王下七武海クラス、或いはそれ以上の超大物や伝説級の危険人物なのだ。
そんな彼らの何人かが徒党を組み、脱獄後は広大な無人の島を拠点としていた。
その後で政府も無視できないほどに勢力を拡大させたことや政府加盟国に甚大な被害を出してしまい、その存在を政府が隠しきれなくなった等の理由から今回制圧対象に選ばれた。
また島にはあまり多くの人間に知られるべきではない非常に希少価値のある資源が眠っていることも確認された。
そのため可能な限り情報を外に漏らさないよう迅速な制圧が求められる為、今回は海軍ではなく神の騎士団であるアマテラスと念の為の補佐役として軍子が出向くことになった。
この島を支配していた海賊達は元は伝説の大物達ではあったのだがアマテラス達には手も足も出ずにあっという間に制圧された。
軍子には多少のダメージを与えられた様だが、それがかえって彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。
既に白目を剥いて地面に倒れ伏している海賊の頭を軍子は容赦なく踏みつけていた。
「非礼者が。下々民の分際で神を傷付けるなど……身の程を弁えろ」
「うぎっ……!」
「ふん、お前は私の奴隷として生涯地べたを這わせてやる。覚悟するのだな」
既に意識を失っている海賊達を一通り足蹴りした後で彼女は
「グンコもソマーズとおなじで音楽がすきなのー?」
「ソマーズ……?一緒にするな。ヤツとは趣味が合わん」
「そうなんだー」
芸術関連に疎いアマテラスにはソマーズがよく開いている演奏会も軍子が聴いている音楽も違いはよく分からないのだが、そういうものなのかと納得した。
そしてアマテラスも仮眠して時間を潰そうとしていたところで軍子が思い付いたかの様に予備の
「ちょうど良い機会だ。お前も聴くといい。”NEW WORLD”。私の好きな曲だ」
「んー……わたしは音楽のことよくわからないよー?」
「まあ、そう言うな。お前も神の一員。これを機に神に相応しき趣味を持つのだ」
そう言いながら半ば強引にアマテラスの耳に
そんな様子のアマテラスに軍子がため息をつく。それと同時に島に大きな船が近づいてきた。
どうやら迎えが来たようだった。
それを確認した軍子はチラリとアマテラスを見る。何とも気持ちよさそうにすやすやと眠っている。
アマテラスがここのところ激務続きだということは知っていたので今回はまあ許してやるかと軍子はアマテラスをおんぶしながら迎えの船に向かっていった。
※この物語の着地点について
今更ですがエルバフ編までやった後に「世界政府敗北エンド」か「世界政府勝利エンド」のどちらかに分岐します。
・世界政府
所業も労働条件も色々と真っ黒。
アマテラスに過重労働させてるというのは自覚してるが、それでも新聞によって生まれた波に乗り遅れるわけにはいかないとして決行した。アマテラスが文句を言うことも嫌な顔もしていないというのも大きいけど。
・五老星
アマテラスが騎士団に加入してから財務、農務、環境分野の利益が爆上がりしているので、それらの分野を担当しているマーズ聖、ピータ聖、ナス寿老聖は内心ほくほく顔だったりする。
科学分野での貢献はもう少し後になりそう。
ウォーキュリー聖?彼は法務武神だから……
・アマテラス
現時点だと間違いなく政府に一番貢献してる。
モルガンズの新聞により忙しい神の騎士団ランキングも1位に輝くことになったが。なお、本人は気にしていない模様。
なんか色々あって休みが取れない状況。
栄華を極めた天竜人の姿か?これが……
・ソマーズ
アマテラスの状況にちょっと引いてる。
・軍子
なんだかんだでアマテラスのことを気にかけている。
下々民の子供?もちろん黒光りしてカサカサ動いてる例のアレに見えてるよ。
・鳳凰の羽
翼から抜いた後の時間経過によって効果が劣化する。
鳳凰とはこういう生き物らしい。
▪️抜いた直後〜30分未満
→不治の病も完治+毒など不浄なものの完全浄化+死滅した土地の復活(羽一つにつき効果範囲は500mぐらい)+数日間の飢えと乾きを凌げる+若干の若返りと老化防止(限界あり)
▪️30分〜3時間未満
→難病クラスの完治+強めの浄化作用+土地の活性化や回復促進+1日分の飢えと乾きを凌げる
▪️3時間以上
→病、毒、土地の回復を少しだけ手助けする+1食分の飢えを凌げる
・時間軸
ルフィの懸賞金が15億になった頃と思われる。