神の騎士団の強ロリ枠 (本編完結)   作:ハセカズ

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008:色々な経験と運命の日

 

この世界には革命軍と呼ばれる組織が存在する。

それは『世界政府』の打倒を目的とする反政府組織。

 

2年前までは目立った活躍を見せなかった彼らも、ここ最近では本格的に動き出していた。

具体的には聖地マリージョア内の居住地に掲げていた『天駆ける竜の蹄』の旗を焼いて宣戦布告し、更に可能な限りの奴隷達を解放した後、食糧庫を破壊し兵糧攻めを行うなどの快進撃を見せている。

 

これにより天竜人並びに世界政府を着実に追い詰める事が出来る筈であったのだが……上手くいっていないようだった。

 

「そうか……やはり兵糧攻めの効果は薄いか……」

 

部下からの報告を受けて険しい顔をするのは

革命軍総司令にして世界最悪の犯罪者と

言われる男 ”モンキー・D・ドラゴン”。

 

「分かってたことだけど”鳳凰の羽”の効果は本物みたい」

「でも、効果が全く出てないわけじゃ無い。僅かでも物資の支給を遅らせる事はできてる」

 

幹部コアラが敵の強大さを再認識し、参謀長サボが革命軍の策略が完全に無駄ではないことを周囲に伝える。

 

”四皇”黒ひげ海賊団から総本部バルティゴの襲撃を受けて以降カマバッカ王国のモロイロ島を新たな本拠地としていた彼らは革命軍のこれからについて話し合っていた。

 

「マーカス・アマテラス……まさか、こんな幼気な

お嬢ちゃん1人に俺たちの動きがここまで制限される事になるとはな……」

 

新聞を片手にそう言うのは革命軍の”南軍”軍隊長のリンドバーグ。その新聞にはアマテラスが政府管理のもと、またもや非加盟国を”鳳凰の羽”の力により救ったという内容が記載されている。

 

ドフラミンゴが堕ちてからは彼女の記事ばかりが発行されていた。

 

モルガンズの新聞により名前も能力も表に出ることになったアマテラス。

当然、革命軍も新聞に記載された事に対する事実確認を行なっている。政府が名声を上げる為に嘘の報道をでっち上げている可能性も否定できないし、革命軍としてもそんな力が本当に存在するのかを確認する必要があったからだ。

 

新聞で報道された国に向かい現地の人々に調査を行った結果は白。報道されてることは全て事実だと言うことが明らかになった。

無論、天竜人の被害者達が多数在籍してる革命軍の中にはそれでも信じないものもいるし、政府の陰謀だと疑わないものも少なくはない。

 

とはいえ、政府の考えはともかく”鳳凰の羽”の力は紛れもなく事実。その為、食糧を不足させて相手を追い詰める策略は効果が薄いようだった。

 

それだけならまだ良かったのだが……マーカス・アマテラスを調べていく過程で、ある恐ろしい事実が明らかになった。

 

それは彼女の見聞色が「()()()()()()()()」を読み取れるという前代未聞の域にまで到達していることだ。

これが事実なら革命軍のメンバーが1人でも政府に捕まれば、他のメンバー全員の居場所がそのまま割れる可能性があるということ。

 

革命軍の本拠地や総司令官のドラゴンの居場所は一部の幹部クラスにしか知らされていない。

 

しかし、政府によって捕らえられたのが主要な情報を知らされていない末端のメンバーだとしても、そのメンバーから得られた情報を使い別のメンバーを捕まえて、そこから得られた情報を元に更なるメンバーを捕まえて……というように芋づる式で情報が割れる可能性が十分にありうる。

 

革命軍は一人一人が打倒政府の志を掲げ戦う者達だ。

そのため誰であろうと口を簡単に割る事など無いのだが心の中を、ましてや過去を見透かされるのであればどうしようもない。

というか最悪の場合はアマテラスに視認されるだけでも全てを曝け出される可能性すらある。

 

おまけに見聞色の効果範囲も広大な国を余裕で飛び越えてしまう程に広いとも聞いている。

そのため、革命軍の活動もこれまで以上に慎重に行う必要があった。現在、行ってる兵糧攻めを含めた物資の妨害についても即撤退ができるような距離から消極的に行わざるを得ない。

 

その為、兵糧攻めや物資支給の妨害は効果が全く出ていないわけでは無いのだが政府に十分な打撃を与えたとは言えない結果になっていた。

 

「それにしても過去を見透かす見聞色なんて、とても信じられないわ。見聞色を極めれば未来が見える事なら分かっているけど……」

「捕まえたCPや政府の役人から得た情報よ。ヴァターシは信憑性が高いと思うけど……ヴァナタはどう思う、サボ?」

 

アマテラスの力を信じきれない”西軍”軍隊長のモーリーと “グランドライン軍”軍隊長のエンポリオ・イワンコフがこの中で唯一、アマテラスとの戦闘経験があるサボに話を振った。

 

「真偽は分からねェけど、それが出来てもおかしくない力を持っていたことは確かだ。正直、あの娘とはもう戦いたくねェな……」

 

苦々しい顔をしながらサボが思い出すのはドレスローザにおける”メラメラの実”を賭けた試合。

サボは、あの戦いで優勝して”メラメラの実”を得ることは出来たが、アマテラスに実力で勝てたとは到底言い難い。あの時は運が良かっただけで実力勝負では手も足も出なかったと言っていい。

 

おまけに、つい先日アマテラスが四皇カイドウを相手に互角以上にやり合っていたという情報を”和の国”近辺に滞在していたメンバーから報告を受けている。

サボとて自然(ロギア)の力を得てドレスローザの時よりもずっと強くなっているが、それでも追いついたとは到底思えなかった。

 

「”神の騎士団”の話は聞いているが……どいつもそんな化け物みたいに強ェのか?」

「いや、騎士団全員がそのレベルなら政府はとっくに世界を掌中に収めてる。流石にこの娘は別格だと思いたいが……」

 

リンドバーグの言葉をドラゴンが否定する。

とはいえ仮に騎士団の中で、アマテラスが別格だとしても革命軍が動きづらいという事実には変わりない。

現に先日の世界会議(レヴェリー)中に行った、宣戦布告や天竜人の奴隷となってしまったバーソロミュー・くまの解放などもアマテラスが任務中で聖地にいないタイミングを狙って実行していた。

 

その実力も厄介なのだが、何よりも過去や心を見透かす見聞色がある以上、幹部クラスのメンバー達は彼女の前に、おいそれと姿を見せるわけにはいかないのだ。

そのため聖地に襲撃を掛けられるタイミングも限られていた。

 

「厄介な……世界政府も馬鹿ではない。この童が聖地にいないタイミングを予測して狙うにも限度があるぞ」

「確かにそうね。まずは、マーカス・アマテラスを何とかしないと……」

 

革命軍の兵士であるハックと “東軍” 軍隊長のベロ・ベティが意見を交わす中で幹部のコアラがおずおずと口を開いた。

 

「ねぇ……この娘って本当に政府側の人間なの?政府とは関係ない非加盟国の救援もしてたんだよね?天竜人だけど革命軍側に引き込めないかな」

「いや、それは無理だな。俺もあの娘が悪いやつだとは考えていないが、仲間や所属している組織を裏切るような人間じゃ無いと思う」

 

革命軍はアマテラスの調査を進める過程で彼女が政府の利益に繋がらないような非加盟国の救援や難病に苦しむ人を救っていたという事実も確認している。

現地の人に確認したところ、アマテラスに懇願したら”鳳凰の羽”を恵んでくれたのことだ。

 

だからこそ、コアラはアマテラスが政府の所業に心を痛めている善良な人間で、子供故に無理やり従わされているだけでは無いかと考えたのだが、サボがそれを否定する。

 

サボも優れた見聞色の使い手だ。

対峙した相手がどんな人間なのかを見極めることぐらいは出来る。だから、アマテラスが天竜人特有の邪悪さが無いということも良さそうな奴だということも分かってはいる。

革命軍の中にはアマテラスの救援行動について「何か狙いや打算があってやっているに違いない」と考える者が多い中でも、サボはそのようには思っていなかった。

 

しかし同時に政府を裏切ることが無いとも考えている。

政府に仕えながら、その所業に心を痛める人間は葛藤や悩みを抱えるものだ。例えば正義を抱える筈の海軍が政府の命令で悪事に加担せざるを得ずに苦しむ様をサボはこれまで多数見てきた。

だが、アマテラスからは、そのような者達が抱える感情を全く感じられなかったのだ。それにあの手の人間は仲間を裏切ることがない。

 

だから……衝突は避けられない。

 

「何にせよ、おれ達が本格的に動き出したことは政府も気がついている筈。マーカス・アマテラスを含めた”神の騎士団”が動き出したら……戦いはそれからだ」

 

ドラゴンの言葉に場の緊張感が高まる。

革命軍と世界政府。

そう遠くない未来に両者が激突する事になると皆が感じていた。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

聖地マリージョアにて。

アマテラスは自分の奴隷達に”鳳凰の羽”を渡していた。

 

「もう食べものがないのー。しばらくはこれで我慢してねー」

 

現在マリージョアは革命軍の兵糧攻めにより危機的な食糧難とかしていた。

しかし、それを解決したのが神の騎士団であるアマテラスとキリンガムの力だ。

 

キリンガムは幻獣種 “リュウリュウの実” モデル“麒麟”を食べた夢具現人間。

夢を具現化できる能力により天竜人でも満足できるような美味な料理を実現可能だ。しかし、それは所詮夢でしかないので食べてもエネルギーが0であり、それだけだと餓死してしまう難点もある。

 

だが、そんな飢えもアマテラスの”鳳凰の羽”の力を使えば回避することができる。

そのため、天竜人には夢具現能力で生み出された食料と”鳳凰の羽”が、そして奴隷達には政府が貯蔵している”鳳凰の羽”のみが支給されていた。

 

「下賎な奴隷の身でありながら神の施しを受けられるのです。身に余る光栄に感謝をしながら頂くのですよ」

 

近くにいた側近SPのガネリエがそんなことを奴隷達に言い残して、その場を去る。

奴隷の1人であるブモが自分達を見下す事を隠そうともしない態度のガネリエに内心、愚痴るがそれを表情に出さないまま”鳳凰の羽”を口に入れた。

 

「お、おおぉ……!?」

 

その瞬間、羽がアイスクリームの様に口内に溶け込み全身に活力が漲ってきた。

 

「す、凄い。確かにこれなら数日間は飲まず食わずでいけるかも……」

 

初めて鳳凰の羽を食べたブモがそんな感想をこぼす。

ただ、飢えは凌げても羽自体に味は無いので少し物足りさを感じていた。

 

「ハァー……”鳳凰の羽”も良いんだけど、ビフテキやパンケーキが恋しいわ。キリンガム聖の夢具現料理を分けて貰えるようアマテラス宮にお願いしてみようかしら」

「やめておきなさい。他の天竜人に知られたら何されるか分かったもんじゃ無いわ。それに新鮮な羽が貰える分、私たちは恵まれてる方なのよ?」

 

愚痴をこぼす女奴隷の1人を嗜めるのは奴隷のリーダー格であるリロネオだ。彼女の言葉通り、天竜人の中には支給されてるはずの羽ですら奴隷に与えないものもいる。

そんな中で翼から抜きとった直後の1番効力のある羽を貰える立場にいるブモ達はだいぶ恵まれている方とも言える。

 

「ア、アマテラス宮の羽……!これ一本だけで何千万もするって聞いたわ……じゅるり」

「あなたねぇ……羽を懐にしまってどうするつもりよ?」

「だってガネリエさんなんて、アマテラス宮から何百本と羽を貰って大儲けしてるって話よ?こ、これで私も億万長者に……!」

「全く……()()と同レベルになりたいの?」

 

奴隷達の中でもガネリエの次に守銭奴な性格のキスネマーに呆れるリロネオ。

よく見ると受け取った羽を口に含まず、キスネマーの様に懐にしまう奴隷達もチラホラといた。

 

男奴隷のコリンロに関しては羽を鼻につけながら、ブモが引くレベルの激しい深呼吸をしている。

 

「オレちょっちぃ……トイレいってくるわぁぁ……」

 

ヘイタドンに至っては羽を握りしめ、涎を垂らしながらトイレに向かっていた。

そんな2人を汚物を見るような目で見ていた女性奴隷達だったが、不意にリロネオがポツリと呟いた。

 

「……もうすぐ革命軍との戦いになるのよね。そうなったらあの娘も……」

 

その言葉に周囲が静かになる。

無我夢中で羽を嗅いでいたコリンロですら、その手を止めていた。もし戦いになった場合、アマテラスは立場的にも強さ的にも前線に駆り出される可能性が高い。

 

「だ、大丈夫さ……四皇のカイドウ相手でも押していたって噂を聞くぐらいだし」

「あぁ、アマテラス宮が負ける筈が無い。彼女に忠実な愛の奴隷である俺が保証するんだ、間違いない」

 

不安になる奴隷達を勇気付ける男性奴隷の2人。

そのうちの1人であるコリンロは鼻の下に強く押し付けていた羽がくっ付いていて何とも締まらない感じになっていたが。

 

「何であんな幼い娘が……」

 

任務のため部屋から出ていくアマテラスを見送った後で女性奴隷の誰かがポツリと呟き、それを聞いた他の奴隷達の表情も暗くなる。

 

…………なお、ヘイタドンはまだトイレに籠っていた。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

世界政府にとって()()()()()()となる、運命の日。

 

その日が訪れるまでアマテラスは色々なことを経験していた。

例えばその一つが戦闘訓練。

 

強大な戦闘力を持つアマテラスではあるが、まだ7歳の子供。

その力は未だ発展途上のものでしか無い。そのため、力を更に磨くための訓練を五老星のマーズによって指示されていた。

今回、手配された訓練相手は「海軍の英雄」とまで謳われた男、ガープ中将。

 

ガープに連れてこられた大将・黄猿も訓練の様子を静かに観戦していた。

 

「”無限拳骨(インフィニトゥムエクスプロージョン)”!!」

「”はい・くろっく”!」

 

ガープとアマテラス。

お互い拳に纏わせた覇王色がぶつかり合い、その度に頑丈な素材で出来てる訓練室がひび割れて行く。そして、30分程の時間が経過した後に訓練も終了となった。

 

訓練後に息を荒げ、傷だらけのガープに対してアマテラスには目立った傷がついていなかった。

床に尻餅をついているガープをアマテラスは心配そうに見ていた。

 

「だいじょうぶー?」

「ああ、大丈夫じゃ。強さに益々磨きが掛かっているのう、アマテラス。もうワシでも、歯が立たんわい」

 

ぶわっはっはっと笑うガープがアマテラスに向ける視線は優しい。

アマテラスが赤子の頃から世話や訓練などで呼ばれ、付き合いのあったガープにとって、アマテラスのことは実の孫のように思っていた。

 

ガープは子供も孫も全員が男で負けん気が強い。

そんな中、女の子かつ素直で大人しいアマテラスには目をかけてやりたくなる気持ちだった。

過去にアマテラスから訓練のお礼として財布をプレゼントされた時は大いに喜び、孫達にもこの素直さを見習わせてやりたいと思ったものだ。

ちなみにガープと同じく訓練に付き合ってる黄猿なんかも過去アマテラスにコートを貰ったことがあり、プライベートでは、それを愛用している。

 

屈指の天竜人嫌いで有名なガープは聖地に来ることすら彼らの顔を見る事になるとして嫌がっているのだが、アマテラスの訓練で呼ばれた時だけは意気揚々と聖地に訪れていた。

 

「ガープ、訓練に付き合ってくれてありがとー」

 

ペコリと頭を下げて礼を言うアマテラスを見たガープの頭の中には彼が最も嫌悪する存在が頭に浮かんでいた。

 

「(全く……あの天竜人(ゴミクズ)共にアマテラスの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわい)」

 

そんなことを内心で考えるガープ中将ではあるがそれを口に出す事はしない。

アマテラスが同胞や仲間を大切にしているという事はガープもわかっているので彼女の前では天竜人を貶すような発言は控えるようにしていた。

 

最もガープが考えていることを黄猿……ボルサリーノは察して少なからず共感しているみたいだったが。

 

「よし……次はお前じゃ、ボルサリーノ!」

「ガープさん……アマテラス宮との訓練のたび、わっしを連れてくのやめてくれませんかねェ?」

「バカ者!のされるのがワシ1人だけだとカッコ悪いじゃろうが!!お前も道連れじゃ!!!」

「そんな理由で連れ出さないでくださいよォー……わっしも暇じゃないんですよォ?」

 

黄猿は口ではそう言うも、顔は嫌がってはいない。

彼もアマテラスを赤子の頃から見てきた1人。彼女を可愛がる気持ちがあるのだろう。

無論、大将という立場上、それを表には出さないのだが。

 

「このあとは予定があるから、ボルサリーノとの手合わせはできないのー。だから、もういくねー」

「予定……また任務かの?」

 

若干、警戒しながら確認するガープに対してアマテラスは首を横に振った。

 

「ガーリングやシャムロックとの訓練があるのー」

 

その言葉を聞いたガープが安堵したように息をついた。少なくともアマテラスが無辜の民に危害を加える事はなさそう、だと。

 

よく見ればボルサリーノも同じ反応をしていた。

 

「それじゃあねー」

 

そう言って訓練室を去っていくアマテラスをガープは心配そうに見つめていた。そんなガープの心境を察してか黄猿がガープに声をかけた。

 

「モルガンズの新聞でアマテラス宮の名は世界に広まりました。今の状況下で、あの娘に汚れ仕事をさせるのは悪手だと政府も分かってる筈ですよォ」

「そうじゃな……」

 

初めてアマテラスの顔が新聞に出て、その所業が明らかになった時はガープも大笑いをしたものだ。

頼まれたら応えるというアマテラスの性格は知っていたが、まさか国をいくつも救ってるとは思いもしなかったのだ。

 

連日のようにアマテラスの起こした奇跡が新聞に載せられ今や政府もその波に乗っている状態。これからもアマテラスの力は多くの人や国を救うことになるだろう。

 

だが、ガープも安心はできなかった。

黄猿の言う通り、いまの状況でアマテラスに汚れ仕事をさせるのはリスクが高い。しかし、それでも必要になれば政府は躊躇わずやるだろう。

 

()()()()()()()()のように不都合な事は隠せば良いというのが政府の考えなのだから。

 

いまだに殺生の経験が無いアマテラス。

ガープも黄猿も彼女の手が綺麗なままでいられることを願うばかりだった。

 

そうして戦闘訓練を終えたアマテラス。

 

その後の彼女は聖地内のとある一室にて、ある2人の人物と向き合うことになった。

1人は三つ編みハーフアップの長髪の男。

そして、もう1人は三日月と十字架を重ね合わせた様な髪型と髭が特徴的な老人。

 

───神の騎士団 団長(フィガーランド家) シャムロック聖

───神の騎士団 最高司令官(フィガーランド家) ガーリング聖

 

騎士団の団長と最高司令官が集まり、尋常では無いほどの重苦しい雰囲気が漂う中でガーリングが口を開いた。

 

「アマテラス……お前は政府の許可なく七武海ドフラミンゴと交戦したか?」

「……してない、よ?」

 

途切れ途切れに言いながら目を泳がせている有様は顔に「嘘をついています」と書いてあるようだった。

そんなアマテラスを見ていたガーリングとシャムロックがため息をついた。

 

「ここまで酷いとは……」

 

思わず頭を抱えてしまうガーリングと呆れたようにアマテラスを見ているシャムロック。

現在、団長と最高司令官が直々にアマテラスの訓練に付き合っていた。といっても戦闘訓練ではなく「嘘をつくための」訓練である。

 

見聞色においてアマテラスの右に出る者はいないと言ってもいい。アマテラスの見聞色は未来だけでなく相手の過去や思想……そして心の奥深くにある潜在意識ですら読み取ることができる。

 

そのため五老星はアマテラスの力を制圧任務だけでなく、政府にとって重要な情報を引き出すためにも利用している。

例えば海賊から隠した財宝や兵器の隠し場所等を引き出したり、政府と深い繋がりのある人物が政府に反抗心を持っていないかを確認させる等、本来であれば諜報機関CP達がやるような任務を下すこともあった。

 

ただ、そんなアマテラスにも一つだけ問題がある。

それは嘘がつけないという点であった。

 

従ってアマテラスは潜入任務などが致命的に向いていない。

誰にでも向き不向きはあるものだが、モルガンズの新聞によりアマテラスの存在が世間に知られてしまった以上、そんなことも言ってられない。

 

いまや彼女の言葉一つが政府の信頼に関わりかねない様な状況なのだから。

そのため嘘をつくための訓練を受ける事になったアマテラス。騎士団の中でも心の内を隠し通す演技力に自信のあるガーリングと、上官としての付き添いでシャムロックが同席していたのだが……期待していた成果は得られていない様だった。

 

「嘘をつく時に目が泳いでいる。まずはそこを直した方がいい」

「そうなのー?」

「自覚も無かったとは……まあいい、訓練を再開する。次はシャムロックの指摘を踏まえた嘘をつくのだぞ」

「うん、がんばるー」

 

元気よく答えるアマテラスに対して「本当に大丈夫か?」と内心疑いながらもガーリングが再度、質問をする。

 

「お前は政府の許可なく四皇カイドウと交戦し、私に迷惑をかけたか?」

「えーと、うーん……」

 

アマテラスは目を泳がせないように頑張っているみたいだが、今度は身体が挙動不審になっていた。

モジモジしながら「やって……ないよ……?」と明らかに無理して嘘をついている有様を見た2人が同じことを思った。

 

────これは駄目かもしれない

 

親子揃って再度ため息をつく。

これまで政府の期待には何でも応えてきたアマテラスだが今回ばかりは暗雲が立ち込めている。

 

ガーリング式の嘘吐き訓練は夜遅くまで続いたが言うまでもなく成果はゼロだった。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

()()()が来るまで訓練、制圧任務、加盟国への羽の譲渡、仲間との交流……色々なことをアマテラスは経験していた。

そしてアマテラスだけでなく世界にも様々なことが起きている。

 

麦わらのルフィが四皇カイドウを堕として新たな皇帝として君臨した。ルルシアという王国が消滅する事態が起きた。

四皇となったルフィが「未来島」エッグヘッドにて立てこもり事件を起こしたと世界に報じられた。

 

そして……エッグヘッド事件後に五老星であるサターンが死んでガーリングが新たな科学防衛武神となった。

 

()()()()()()()に裁かれ骨とかしたサターンを埋葬するような遺族はいない。

本来なら骨ごと海の藻屑になるところだがサターンの死を知ったアマテラスは彼の骨を密かに回収していた。

 

そしてアマテラスの居住地内にサターンのお墓を作り、その中に骨を埋めた。

 

「サターン……またね」

 

サターンへの合掌とお祈りが終わったアマテラスが寂しそうに呟いた。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

サターンが死んでから更に幾ばくかの時間が流れた。

 

日も沈んだ深夜の時間帯。

その日の任務を終えたアマテラスは家のすぐ近くに立てられた2つの墓の前に花を添えていた。

墓には「マーカス・イザナミ」、「マーカス・イザナギ」の名前がそれぞれ刻まれている。

 

両親の墓石の手入れが終わったアマテラスはそのまま墓の前で合掌をする。

 

そして目を瞑りながら最近起きた出来事を両親に伝え始める。

任務をこなしてマーズに褒められたこと、嘘をつく訓練が上手くいかずにガーリングに呆れられてしまったこと、最近はお願いされる頻度が多くなったこと、仲間との交流の話などなど……アマテラスは色々なことを柔らかな笑みを浮かべながら話していた。

 

そして、それらを伝え終わった後に瞑っていた目を開いてポツリと呟いた。

 

「……もうすぐ()()()()()をすることになると思うのー」

 

それは決して遠くない将来に起こる。

アマテラスでも負けてしまうかもしれない様な戦いが。

 

もちろん根拠など無い。

単なる直感でしかないのだが……アマテラスの勘はこれまで一度も外れたことが無かった。

 

「もしそうなったら、しばらく来れないと思うー」

 

今は亡き両親に話しかけるアマテラスの表情はどこか寂しげだった。

 

「お父さま、お母さま……それじゃあね」

 

その言葉を最後にアマテラスはその場を後にする。

 

任務続きの毎日ではあるが明日は久しぶりの休日。

空中散歩、睡眠、仲間との交流、世話になった人達へのお返し等……やりたい事は沢山あるのだ。

 

これから先、何が起きても後悔しない様に今のうちにやりたい事はやっておこうとアマテラスは考えていた。

 

やがて再び日が昇り……政府の命運を分けることになる()()()()が訪れた。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

巨人族の総本山にして、新世界屈指の強豪国 “エルバフ”。

 

エルバフは大昔に新世界を制圧したことがある実績や100年以上前の『巨兵海賊団』の伝説などからも『世界最強の王国』とも称される程の戦力を保有している。

 

そんな歴史から、かつて戦争に明けくれていた時代もあるが、今のエルバフは違う。

戦いや海に出る事に関して消極的な考えを持つ物が多く、世代交代の結果、子供達の間では、喧嘩っ早い者は「乱暴者」として軽蔑の眼差しで見られることも少なくない。

 

そんな平和を目指すエルバフは現在、混乱を極めていた。

 

世界政府───神の騎士団がエルバフの戦士を自らの戦闘奴隷にする為に襲来してきたのだ。

子供を人質に取り、更に幾人もの巨兵海賊団を()()()して。その圧倒的な能力の前に猛者である筈の巨人達ですら歯が立たない。

 

世界政府の頂点にして、あの五老星が世界の創造主として敬う神───イムの力は絶大だ。

四皇をも凌ぐ覇王色に加えて、「悪魔契約(アー・クワール)」、「黒転支配(ドミ・リバーシ)」の力により巨人達を次々と支配下に収めていく能力の前には如何なる存在であれ無力。

 

そんなイムに付き従うのは神の騎士団

────(シェパード家) ソマーズ聖

────(リモシフ家) キリンガム聖

 

彼らは悪魔となり支配下に置かれた巨人達、そしてキリンガムの夢具現化能力で生み出したMMA(ムーマ)と共にエルバフの制圧に動き出していた。

 

このままであればエルバフはなすすべなく、世界政府の支配下に置かれる。そして彼らが目指す平和は踏み躙られ巨人達は戦闘奴隷として使役されることになるだろう。

 

しかしエルバフには救いのヒーローがまだ残っている。

 

「いたぞ、あそこだ!」

 

エルバフ3つの階層の中でも下層である「冥界」から彼らは現れた。

 

新巨兵海賊団の船員達、麦わら海賊団の両翼であるゾロやサンジ。

そして────エルバフ「呪いの王子」ロキ、新巨兵海賊団の船長 ハイルディン、四皇”麦わらのルフィ”も、その数分後に遅れながらも現場に到着した。

 

彼らの姿を確認した神の騎士団の1人、キリンガムは四皇の強大さを知っているが故に眉をひそめていた。

 

「麦わらのルフィ……」

「御大、如何いたしますか?」

 

イムはソマーズの言葉には答えない。

その視線は冥界から現れたルフィの方に向いていた。

 

「…………」

 

しばらくの間、無言だったイムだが、やがて手を地上に向けた。次の瞬間、大地には五芒星の形をした特殊な魔法陣が描かれる。

 

そして……魔法陣の中から黒い稲妻と共に桜色の髪の少女が現れた。

 

────(マーカス家) アマテラス宮

 

まだ年端も行かない子供であるアマテラス。

だが、そんな彼女は神の騎士団の中でもトップクラスの戦闘力を持つ。日々成長を続け、その力はもはや四皇以上のものになっていた。

 

「イムさま……?」

 

休暇中であり趣味の空中散歩をしていた彼女は突然呼ばれたことに困惑していたが直ぐに周囲の状況を把握し、自分が呼ばれた理由を理解した。

私服のワンピースのまま呼び出されたアマテラスは、まだ子供であることも相まって混乱を極めているエルバフにはとても合わない雰囲気である。

 

そんなアマテラスに向かってイムが命令を下す。

その目には狂気とも言えるような執着心が宿っていた。

 

「アマテラス……捕まえろ───”()()()()()()”を」

 

平和を目指す国エルバフ。

そんな国を混乱から救おうとするヒーローを捕まえる。

 

すなわち多くの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()行為。今まで一度も手を汚すことが無かったアマテラスにとっては、初めてとなる類の任務が冷酷に下された。




エルバフ編は2〜3話以内に決着させます。

・エッグヘッド編
五老星がアマテラスを呼んだかは謎。
原作でも明らかに余裕ない状況なのに騎士団を呼び出していなかったので、呼べたのかが分からない。
仮にアマテラスを呼んでいた場合は見聞色で配信の発信源を即突き止めて、放送自体は待機時間内に止まると思われる。
ただ「配信止まり緊急度が低くなったので他の五老星は呼ばれない+アマテラスはエメトの相手をしている+いざって時は使われる」などの要因により原作と同じく麦わら海賊団には逃げられ、ニカ(ジョイボーイ)を逃したとしてサターンがイムに処刑されて、アマテラスが墓を作る流れは変わらない。

・聖地
原作でイムが「聖地は今は火の海だ」みたいなことを言っていたが、アマテラスは空中散歩中なので、それを知らない。事態の沈静化に手こずっているなら仲間の騎士団がアマテラスを呼びそうなものだが、それはエルバフに麦わら海賊団がいると聞いたイムが一旦止めたということで。
また仮に革命軍が攻め込んでいるのだとしたら2回目になるので「アマテラスがいないタイミングを狙ってる?」と政府側も気がつくと思われる。

・アマテラス
名前を覚えてる人間が死んだかつ、墓を立てる遺族がいない場合は自分の居住区近くに該当者の墓(自作)を建てる模様。
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