あんたら、見ない顔だねえ。
『ワンピース』を探しにきた口かい?
………ああ、やっぱりそうなんだ。
住まいはどこから?
ほう、南の海からかい。
そこからこの海域にまで来れただなんて、なかなかやるじゃないかい。
航海士に操舵手、その他にも優秀な人材がいるみたいだねえ。
おまけに運にも恵まれていそうだ。
ちなみにどこへ行くつもりだい?
………え、ワノ国だって?
確かあそこは長いこと鎖国状態だって話だけど……。
なに、『百獣海賊団』の傘下に入りたいのかい?
ああ……確かカイドウが戦力を募集しているって噂があったけど、あんたらもそれが目当てなんだね。
でもその………やめたほうがいいと思うよ。
いや、傘下に入るのがダメってわけじゃないさ。
カイドウはかの『ロックス海賊団』の生き残り、これからの伸びしろを考えれば大海賊にもなれるだろう。
なら早いうちに縁を結ぶっていうのも、賢明であるのはわかるさ。
じゃあ何がダメなんだって?
………俺が話したってことは、言わないって約束してくれるかい?
実はさ………ワノ国の近海には、幽霊が出るって噂があるんだよ。
そう笑わなくてもいいじゃないかい、実際そう言われているんだからさ。
どんな幽霊か、ねえ。
まずこのままログポースに従ってワノ国に向けて船を進めていくと、最初は穏やかな波と晴天がお出迎えしてくれるのさ。
その絶景は本当に美しくてさ、芸事に秀でた者なんざ涙を流して感激するほどだって言うんだよ。
どこが幽霊なんだよって? まあまあ、話はここからさ。
そこで引き返せば何事もなく帰れるけれど、それでもワノ国に向けて進んでいくと、段々周りが深い霧に覆われていくんだよ。
なに、まるで『魔の三角地帯』だなって?
ああ、こないだ来たやつも同じことを言ってたな。
そんなに似てるのかい? 俺は見たことないからわからんけど。
まあこれだけなら『偉大なる航路』では珍しくないことだろうけどさ、それでも構わず進んでいくと………霧の向こうから声が聞こえてくるんだよ。
どんな声かって? そいつは俺も知らないよ。
だって聞いたやつら全員、死んじまったらしいからな。
海賊王の秘宝を求め、南の海から出発した彼らの名はヴァーミリオン海賊団。新世界の荒波を超えてここまで辿り着ける分には、強豪海賊足る実力を持つのは間違いないだろう。しかしここからは大海賊達と戦うか従うかの二択しかなく、自分達の戦力ではとても戦い続けるのは無理と判断したのは船長のヴァミリだ。
今後の方針をどうすべきか仲間達と話し合う中、あの百獣のカイドウ率いる海賊団が人員を募集しているという噂を耳にし、これはまたとないチャンスだと判断した彼らは現在進行系でワノ国に向かっている。
ワノ国は世界政府非加盟国。
そのため海軍の管理下になく、拠点としても申し分ないはず。当分はカイドウの傘下として活動することになるが、長い尾に巻かれるのも新世界での処世術の一つだ。それでもしもカイドウが将来大海賊になれば、僥倖というものである。
さらなる野心を胸に抱くヴァミリは、ワノ国を示す指針の通りに進んだ末、ついに近海にまで辿りついた。
気候は晴れて波も穏やかで実に幸先が良く、つい鼻歌を口ずさんでしまう。
「………船長、本当に行くんですかい?」
穏やかな空模様を眺めていたヴァミリに、ここでふと傍らの航海士が不安そうに話しかける。
というのも彼らはここへ来る途中、浮島で1人釣りをしていたローブと仮面の男に出会ったのだが、その男が言うにはワノ国の近海には幽霊が出るという噂があるらしい。
男の話を聞いてから、怪談話が苦手な一部の部下達は目に見えて震え上がっている。
「何を怖気づいてやがる。くだらねえ幽霊話なんぞ真に受けることはねえんだよ!」
航海士のビビリように、ヴァミリは情けないと喝を飛ばす。
「船長! 見てくだせえ!」
すると見張り台から周囲を警戒していた下っ端が叫ぶ。
彼が指差す方に全員の視線が向くと、雲一つない晴天の向こうにキラキラと鮮やかな色彩を放つ大きな虹が掛かっていた。
今までに見たことがないその幻想的な光景を前に、航海士は男の話が脳裏を過る。
「確か……ここから引き返せば、まだ間に合うとか」
「まだ抜かすか! このまま進めー!!」
いまだうじうじする彼の尻を蹴り飛ばし、操舵手に命じた。
この時、この瞬間まで、ヴァミリは己の天運が最高潮に達していたと確信していたし、実際そうだったに違いなかった。
それは虹の出現から数時間経ってからのことだった。
先ほどの快晴が嘘のように、船の周囲が濃い霧に覆われていくことに気づいたのは航海士だ。
「霧が……」
「ま、まさか……本当に幽霊!?」
男の忠告通りの出来事が起こり、船員達の間に不安と恐怖が膨れ上がるもヴァミリは鼓舞するように叫ぶ。
「狼狽えんな! これぐらい珍しくもなんともねえ!」
実際、新世界においてこの程度の天気の移り変わりは日常茶飯事ではある。今更恐れることはないと言い聞かせるヴァミリだったが、
『………』
「ん?」
ふと、かすかな声が聞こえた。
船員の1人がキョロキョロと辺りを見てから隣の仲間に聞く。
「お前、なんか言ったか?」
「いや、何も……」
その会話を聞いてしまった航海士はビクリと青褪めて首を振る。
「や、やめてくれよ! 縁起でもない!!」
『ひしゃく………』
『ひしゃくを……くれぇ……』
「ひいい!!」
そして、また声がした。
今度ははっきりと聞こえる。
背筋が凍りつくほど不気味な声に、船員達の間に再び恐怖が広がっていく。
「敵襲ー!」
そんな中、唯一ヴァミリは船員達の恐怖心を払拭するように力強く叫んだ。敵襲を警戒し見聞色で周囲を把握しようとするが、何かおかしい。彼の見聞色の範囲圏内には船の気配が全くないのだ。
そこでヴァミリはふとあることに気づく。
声は船の下から聞こえてきたことに。
(まさか、いや……そんなバカな!)
過った可能性に心臓が早鐘を打つ。
違ってくれと祈りながら船から真下を見渡すと………
そこには夥しい数の骸骨達が、船を押し留めるように船体にしがみついていた。
「ぎゃああああああああ!?」
眼下に広がる恐ろしい光景に、航海士を始めとする船員達の何人かは、情けない声を上げて腰を抜かしてしまう。そんな彼らをよそに骸骨達は互いを足場にしあい、あろうことか船を登り始めてきたではないか。
「ボサッとすんな! 撃て、撃ちまくれ!」
真っ先に平静さを取り戻したのは船長のヴァミリで、腰のマスケット銃を引き抜くと頭蓋骨目掛けて狙い撃つ。
弾丸を受けた骸骨は力なく海に落下するが、いかんせん数が多すぎてきりがない。
その間も骸骨達はよじ登っていき、船の手すりに手がかかると一気に甲板に乗り込んできた。
「うわああああああ!!」
死体が動くというあり得ざる光景に船員達は錯乱したように剣を振り回すが、骨の外見の通り一体一体は非常に脆いようで、軽い手応えで敢え無く崩れてしまった。
「おい、こいつら思ってたより弱いぞ!」
仲間が容易に倒せたことで、船員達の精神にもやっと余裕が生まれていきすぐさま迎撃に移っていく。
各々の武器でねじ伏せるも、次々と船に這い上がり続ける骸骨達はいかんせん数が多く、倒しても倒しても終わりが見えない。
一方の骸骨達は不思議なことに、横で同族が砕かれているにもかかわらず船員達には注意を向けていない。彼らはしばしウロウロと何かを探すように周囲を見やっていたが、ふと甲板の端に乱雑に置かれていた樽に気づくとそちらに群がり始めた。
骸骨の一体が樽を手にすると骨の上体だけを捻って隣の同族に渡し、渡された骸骨もさらに隣へと規則正しいテンポとタイミングで樽を船の下へと渡していく。
しばらくすると海水で満たした樽が下から手渡され、受け取った骸骨はあろうことか中の海水を甲板にぶち撒け始めた。
「お、おい! なにしてやがるんだ!?」
船員の一人が慌てて樽を持つ骸骨を蹴り飛ばすも、別の骸骨が樽を拾い上げてまた汲み上げていく。
いや、樽だけではない。空き瓶、ジョッキ、果ては調理器具まで……水が汲めそうな器を手当たり次第にかき集め、バケツリレー方式で手渡していく。
「やめろ! やめろこの化け物があ!」
次々と船上に海水が流し込まれていく。
このままでは船が浸水してしまうかもしれないと、ヴァミリ達は必死に器を運ぶ骸骨達を殴ったり蹴り飛ばしたりして妨害するも、彼らは次々と船に這い上がってくる。
ゴウッ!!
「っ!?」
するとここで一際強い暴風が吹き荒れて、船体が大きく揺れだす。船員達は振り落とされないように船にしがみつくも、なおも雨風は彼らを襲う。
「うわあああ!!」
どうにか踏ん張ってはいたが、何人かは雨で手が滑り海に落ちてしまった。その中にはヴァミリもいた。
「がっ………ごばっ!」
海に叩き落されて一瞬パニックになるも、長年培ってきた船長としての判断力がすぐさま彼に冷静さを取り戻させる。
まず肺に水が入らないように息を止めてから状況を確認。幸い自分は能力者ではないので問題なく泳げる。船員達の安否も気がかりではあるが、今はまず生き残ることを優先するべきだろう。早く海中から出なければと、水面に向けて泳ごうとするが………
『あぁああぁあああぁぁ……』
寒気がしそうなほど不気味が声が耳元で囁かれたかと思えば、何かに両足を掴まれた。
ヴァミリがゆっくり下を見れば、夥しい量の骸骨達が彼の足を引っ張っていたのだ。
(ひっ……!?)
ヴァミリは恐怖から口が開きそうになるも、手で口を塞ぎなんとか耐えて自身を掴む白い手をカットラスで叩き落とそうとする。骨の手は一回叩かれただけで粉々になるも、叩いたそばからまた別の手に掴まれてしまう。
『オイデェ……』
『ココは冷たクて……気持チイいよォ……』
不気味な笑い声が耳元で囁かれ、海水の冷たさとは別の悪寒がヴァミリの精神を追い詰める。
(い、嫌だ……!)
そのせいでほんの僅かな瞬間に手が止まってしまい、ヴァミリの身体が凄まじい勢いで海底へと引きずり込まれていく。
(こんなっ、こんなところで………死にたくない!)
自分には海賊王になるという野望があるのだ。
海の怪物達から逃げ延び、ノックアップストリームを超え、やっとここまで来たというのに、こんなあっけない最期でいいはずがない。
底へ底へと落ちていくにつれ、水深の深さゆえか身体が圧迫されていく。
(だれかっ……たす、け………!)
そしてとうとう息が限界になり、ガボリと大きなあぶくを吐いてしまい………彼の意識は、そのまま遠のいていくのだった。
………とある小島の地下洞窟。
「………今日も回収できたな」
小高い丘ほどの大きさの氷の中、氷漬けにされた水死体をモモンガは眺めていた。
「ご苦労だったな、船頭霊」
後ろを振り返れば先ほどヴァミリ達に忠告した男がモモンガに跪いており、彼はおもむろに仮面を外す。
その下から現れた素顔は、深海のように深い青色の塗料で塗りつぶされた骸骨であった。
「至高の御方のお役に立てたならば本望です」
船幽霊。
ユグドラシルではとある海エリアにのみポップするモンスターで、プレイヤーを攻撃しない代わりに乗る船に水を汲んで沈めようとしてくる。
このアンデッドの厄介なところは、司令塔である船頭霊を倒さないとアンデッド達を全滅できない点で、それゆえかプレイヤーからは忌避される存在でもあった。
そんな船頭霊だが、現在のモモンガの目的からすると実に適任な存在だ。
「して、これからはいかがいたしますか?」
「ん〜、しばらくは大人しくしていようかな」
頭を垂れた姿勢のまま主の判断を待つ船頭霊を横目に、モモンガは眼下に広がるアンデッドの軍勢を眺めながら答えるのだった。
光月城に居候させてもらっている身として、おでんに借りを返さなければならないと考えていたモモンガは、打倒黒炭&カイドウに向けて準備を進めていた。
オロチはカイドウという強大な海賊と手を組み、ワノ国の民を事実上の人質に取る形でおでんに道化を強制している。
巷では『バカ殿』と呼ばれて失望と嘲笑の的となり、おでんの評判は地に落ちる一方であり、これではカイドウ達が戦いを挑んだ時、他の領主に援軍を要請するのが難しくなるだろう。光月の威厳と戦力を削る実に嫌らしい策だ。
このままではいけない……何か手はないだろうかと悩むなか、モモンガは自身のアンデッド作成スキルで、おでんの援軍を量産する計画を立てたわけである。
シス子の件から、死体一体を触媒にすることで上位のアンデッドを一体消滅させずに手元に置けることはすでに立証されている。ならばこれを利用しない手はないと、まず死体を集めていくことにした。
ワノ国には地域によっては死体がぞんざいに放置されていることもあり、それらを余すことなく有効活用していく。
素体にする人間の技量は反映されるのか、上位アンデッドならば何体作れるのか、実験も兼ねて様々なアンデッドを量産していく。
とはいえカン十郎の一件から、オロチのスパイがどこかに潜りこんでいる可能性もあるため、モモンガは慎重に監視の目を掻い潜る必要があった。
だがここで、天はモモンガに味方する。
百獣海賊団の情報を集めるべく、浮浪者に擬態したエルダーリッチに周辺の海を探索させたところ、なんとも都合がいいことにカイドウが海賊を募集しているという情報を掴んだのだ。
これを聞いたモモンガが考えたのが、その餌に釣られた海賊達を捕まえることである。カイドウの戦力強化を阻止しつつモモンガのアンデッド実験のサンプルを増やす、まさに一石二鳥の作戦だ。
とはいえあまり捕まえすぎるとカイドウに怪しまれるかもしれないからと、弱そうな海賊を中心に何組かは見逃しておく。
それでもまだまだ足りない。
まだ約束の時まで期間がある以上、モモンガはギリギリまで頑張りたいのである。
(………それまで待っててくださいね、おでんさん)
チラリと鏡に視線を向け、そこに映る褌姿で踊るおでんを見つめるのだった。
あり日のユグドラシル
茶「また船に穴開けられたー!!」。゚(゚´Д`゚)゚。
ペロ「うっぜ! こいつらマジうっぜぇ!!」( ゚Д゚)
弐「柄杓は全部破壊できました!;」
ぷに「よし! ここからザコ幽霊を倒しつつ、船頭霊を探して……」
武「ぎゃあああああ!? こいつら今度は空き樽使いだしたぞ!!;」
ウル「だったらいっそ最初からそっち使えよゴラァ!!」
やま「モモンガさんが海に引きずり込まれたー!!;」
るし「あ〜あ、モモンガさんまだ水泳スキル取得してなかったのに」
タブ「アンデッドって溺死判定はしないんでしたっけ?」
たち「良いから助けに行きますよ!」
水中
モモ(このっ………糞運営があああああああ!!!!)