真夜中、のび太の家の居間にて。
「ザー……、ザー……。」
のび太のパパ「ぐぅ……、ぐぅ……。」
パパは布団にも入らず、テレビをつけっぱにしたまま眠ってしまっていた。机の上に置いてあるビールの瓶を見るあたり、大方よって寝たのだろう。
居間にあるつけっぱなしのテレビからは雑音が聞こえてくる。
すると、次の瞬間。
「ザー…………、よし、繋がったぞ。」
という声と共に、テレビの画面がノイズから切り替わり、緑の帽子をつけた水色の髪をした女の子が写った。
「えーと、ここがのび太の家か。 とりあえずあのスキマ妖怪に言われた通り、これを向こうに転送してっ……と。」
女の子が画面の向こう側からボタンを押したあと、テレビから強い光が発せられ、画面にはカタカナで「テンソウカンリョウ。モトノジョウタイヘモドリマス。」と、表示されたあと、跡形もないように元のノイズへと戻った。するとその後、階段からのび太のママが降りてきて居間に向かってきた。
のび太のママ「あら、電気がついてる……、もう、パパったら! こんなところで寝ないでくださいよ。それに、またテレビつけっぱなしで!ちゃんと寝ないと風邪ひきますよ?」
のび太のパパ「んあ……、分かった〜、分かった。今布団に行くよ。」
そう言うとパパ、ノイズばかり写っているテレビを消し、布団へと向かい始めたのだった。
「ドラえも〜ん!!」
ドラえもん のび太の幻想龍優録
こんなこといいな、できたらいいな♪
あんなゆめ、こんなゆめ、いっぱいある〜けど〜♪
みんなみんなみんな、かなえてくれる♪
不思議なポッケでかなえてくれ〜る♪
そ〜らを自由に、飛びたいな〜♪
『ハイ! タケコプター!』
あんあんあん、とってもだいすき♪ ドラえ〜もん♪
あんあんあん、とってもだいすき♪ ドラえ〜もん♪
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時は昼。のび太達は下校しながら夏休みの予定について話し合っていた。
ジャイアン「え、しずかちゃんもハワイ旅行行くのかよ! 俺も行くんだ!商店街の福引で当たったんだぜ!」
しずか「もしかしたら私たち、向こうで会えるかもしれないわね! 」
スネ夫「ふふん、僕ちゃんはフランスへ行くんだ!」
各々が予定を話す中、ただ1人、のび太だけが何も言わず俯いていた。
スネ夫「で、のび太はどこか行くの?」
のび太「ぼ、僕は……。」
ジャイアン「おいおい、スネ夫! のび太に聞いても無駄だぜ! だって予定がないんだもんな!」
のび太「むっ!」
しずか「2人ともやめなさい。のび太さんが可哀想よ!」
しずかがカバーしてくれたが、のび太は怒りを抑えることが出来ず、カッとなってこう言ってしまった。
のび太「なんだいなんだい! 僕なんかみんなが行ったことがないような所へ行ってやる!」
そう言うとのび太は、急いで家へと帰ってしまった。後ろでは、ジャイアンとスネ夫が大笑いする声が聞こえたが、のび太にとってはそんな事どうでもよかった。
のび太「(絶対に見返してやる! ぜーったいに!)」
そう言いながら玄関の門を曲がりドアノブをひねってドアを開けようとした時、足になにか引っかかった。
のび太「な、なんだこれ。トランク……? 野比のび太様宛……? あ、もしかしてドラえもん! タイムテレビで見て僕のために何か道具を用意してくれたんだ! そうと決まれば早速!」
のび太は脇にトランクを抱え、急いで階段をかけ登り、部屋へと飛び込んだ。ママの「廊下は走っちゃ行けません!」という怒号も無視して。
のび太「それにしても、これどう使うんだろう? う〜ん……」
のび太が部屋にトランクを置き、触ったり、鍵を開けようとしてみたり、睨めっこしていると引き出しが突然開いて……。
ドラえもん「やぁ、ただいまのび太くん。」
ドラえもんが引き出しから帰ってきた。
のび太「あ、ドラえもん! これ、君のだろう?」
ドラえもん「のび太くん、どうしたのさ、帰ってくるなり……、ってなんなのこのトランク! ……のび太くん! また僕がいない間に未来デパートで勝手に注文したなぁ!」
のび太「僕知らないよ、こんなトランク。ドラえもんが頼んだんじゃないの?」
ドラえもん「え〜……、そんなトランク頼んだ覚えないんだけどなぁ。」
のび太「でも、ここに『野比のび太様宛』って書いてあるよ?」
ドラえもん「え、あ、本当だ……。」
のび太とドラえもんは謎のトランクを怪しみながらジロジロ見ていた。何しろ2人ともこのトランクについてなんにも身に覚えもないのだから。
のび太「ん? ドラえもん、このトランク、手紙が着いてるよ?」
のび太がジロジロ見つめていると、宛名の裏に手紙が着いていることに気づいた。
ドラえもん「あ、本当だ。え〜と、なになに……!? のび太くん、のび太くん! これ、紫さんからの手紙だよ!」
のび太「えっ!?」
のび太は目を丸くした。何しろ、ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の5人はついこの間まで「幻想郷」という、のび太たちのいる世界とは隔離された忘れ去られたものたちの楽園でひと夏の大冒険を過ごしたのだ。そして、その幻想郷にてお世話になったのが「八雲 紫」。そう、この手紙の主だったのだ。
ドラえもん「えーと……、今度、幻想郷で宴会をするのであなた達をご招待します。 そのトランクには河童に頼んで作らせた幻想郷と外の世界を繋ぐゲートが入っています。 この手紙に同封されている鍵を使うと開くので、用意ができてから来てください……、だって。」
のび太「てことは……、また幻想郷に行けるってこと!?」
ドラえもん「そういうことだよ!」
のび太「こうしちゃいられない! あ、ドラえもん。しずかちゃんも誘ってくる!」
ドラえもん「あ、のび太くん!」
ドラえもんが止めようとしたが、のび太は聞く耳を持たず家を飛び出した。
〜数分後〜
のび太「ドラえも〜ん……。」
ジャイアン「ドラえもん、話は聞いたぜ! 幻想郷に行くんだろ!」
なんと、のび太はしずかちゃんの他にジャイアンとスネ夫も連れてきてしまっていた。大方、しずかちゃんに幻想郷のことを話しているのを聞かれたのだろう。
ドラえもん「はぁ……、やっぱりこうなるんだから。 ま、みんな上がって。」
ドラえもんは玄関でいるのも狭いと思い、部屋へと上げることにした。
ドラえもん「じゃ、トランクを開けるよ。えいっ!」
ガチャリ ウイーン……!
ドラえもんがトランクを開けた途端、鳥居が勢いよく出てきた。その風貌は、かつてブリキンホテルへと行くために使ったゲートと瓜二つであり、強いて言うなら、鳥居とゲートの違いだろうか。とにかく、河童が作ったと思われるゲートはそのくらい酷似していたのだ。
だが、次の瞬間。のび太たちは予想もしてなかったトラブルに襲われた。なんと、鳥居がブラックホールのように吸い込みを始めたのだ。のび太たちはたまらず悲鳴をあげながら各々物に掴まり、吸い込むのに対抗しようとするが、鳥居の吸引力はそれほど生易しくもなく。
「「「「「うわぁーっ!!」」」」」
その場にいた全員は、吸い込まれてこの世界から跡形もなく、消えてしまった。