黄昏時帰郷物語   作:明日朝明日

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1.あの日あの時あの場所で

もう少し前の話、私がただの学生として過ごしていた時の話。

 

あの時私は中学二年生で、進路とか恋愛とかに踊らされていた、そういう時期だった。

 

私は兄のVRを譲り受けた。私はゲームが好きではなかったが、私は暇だったので、とても暇だったので、何の気なしに遊んでみることにした。

 

兄はVRを使ってゲームを作っていたらしく、その内容としては、ゲームの中にもう一つの世界があり自由に過ごすだけの内容だった。

 

私は正直よく分からなかった。わざわざ世界をもう一つ仮想の世界に作らずとも現実の世界があるのではないか、私はそう思った。

 

私はその世界の中でずっと何もせず歩いていた。ずっとずっと歩いていた。何か目標とか目的とかもなく歩いていた。

 

そんな時に女性かも男性かも分からない人を見つけた。

このゲームを遊んでいる同じ世界にいる人。

 

私は手を振ったり声をかけたりしたけど、何も返ってこなかったので引き続き歩こうとした。

 

「貴方はこの世界の人ですか?」

 

不意にそう聞こえたので少し驚き私は返事した。

 

「貴方と同じ世界の人間です」

 

「そうですか、そうですか。私の名前は北川です」

 

その声はなんというか、変というか、やっぱり男性か女性かよく分からなかった。

 

「私の名前は、あの、ここではあまり本名を使わない、と聞いたのですが」

 

何故だかは分からないけど、こういう世界ではニックネームを使って互いを呼び合うらしい。

 

「そうですね、貴方の言うとおりですね、では貴方の名前は東さんです。貴方の名前は東、です」

 

「はぁ、ではそういうことにします」

 

変わった人だなあ、と私は思った。でも、声の感じからして私と同じくらいの年の人であると感じた。

 

「少し歩きませんか?」

 

北川さんはそう言って返事を待たず歩き出した。

私は無言でついていった。

 

歩いて歩いて、ある一軒の民家のような場所に着いた。

 

「東さん、ここの中へ入ってください」

 

北川さんが入っていったので、私も入った。

 

家の中はどこか懐かしく、寂しく、美しいような所だった。

 

「あのう、北川さんは何故このゲームをしているんですか?」

 

「私は、私は現実から逃げるためにこのゲームをしています」

 

「現実から逃げるために? どういうことですか?」

 

「私はもうすぐに死ぬからです。つまり、私は病に伏せており寿命がもう無いからです」

 

そう言った。

 

それは本当だろうか、本当に本当なのだろうか。

 

私の人生において、偶然にも縁のなかった出来事である死というものを、私は理解できずに、

 

「北川さん。失礼を承知で尋ねるけど、そのお話には何も嘘がないのですか?」

 

そう聞くと、

 

「失礼ではないから気にしないでください。

そして、今の話は本当、本当ですよ」

 

呆気に取られた。

その話自体にも、当人の態度にも、まるで緊張感がなく、明日の晩御飯の話をするようなその話し方にも。

 

「ともかく、私の話はともかく、貴方の話を聞きたいです」

 

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