マブラヴガールズガーデン外伝 月ヶ瀬ちゆる~マルチバースの流儀~   作:マブラマ

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第5話 ヴェノムメイズシフター

食堂街の喧騒が、遠雷のように戻ってきた。

純夏は、ぽっかり空いた空間を見つめたまま、指を握りしめる。

温もりは、もう残っていない。

「……タケルちゃん?」

振り返ると、いつもの武が、アイリスディーナたちと談笑しながらこちらに歩いてくる。

いつもの、ちょっとだらしない笑顔。

ボサボサの髪も、制服も、すべてが「こっちの世界」のものだ。

武が手を振った。

「おーい、純夏! どこ行ってたんだよ?」

純夏は瞬きを繰り返し、首を振る。

「……ううん、なんでもない」

だが、胸の奥に小さな棘が残った。

まるで、別の世界の欠片が、こっそり刺さったみたいに。ドクター・ストレンジは、黄金の円環を閉じながら、静かに告げた。

「――残り47時間47分。あの少年は、すでに『裂け目』の向こうへ還った。だが、次は……」

彼は純夏を見た。

第三の目が、少女の心臓を覗き込む。

「君の番かもしれない」

純夏はリボンを握りしめ、小さく息を呑んだ。

「……え?」

次の瞬間――

ヴェノムメイズシフターが出現し、純夏を襲いにかかる。

黒い霧のような影が、地面から湧き上がり、毒々しい触手を伸ばす。

純夏の悲鳴が、食堂街に響いた。

「……!」

ドクター・ストレンジは即座に反応し、武達をスカラ校舎にテレポートさせた。

黄金の光が一閃し、周囲の景色が瞬時に変わる。

スカラ校舎の広場に、皆の姿が現れた。

「こっちだ!」

武達はスカラ校舎に移動したものの、目の前にはカオスメイデンのユリア・バーンズとインスカーレットの榊野ヒイロがいた。

ユリアは日向ぼっこを楽しむようにベンチに座り、ヒイロは下着集めのノートを広げていた。

二人は突然現れた集団に、わずかに目を細める。ユリアは明るく指揮官に話しかける。

「ヤッホー、指揮官。誰なの? その人。でも面白そうじゃん♪」

アイリスディーナが、苛立たしげに呟いた。

「全然面白くない……」

武が頭を押さえ、苦しげに顔を歪める。

「うぅ……また頭痛が」

冥夜が、剣の柄を握りしめながら、武を睨む。

「いやはや、鑑がこれほど酷い目に遭ったとは……タケル、鑑の事ちゃんと見ておけよ」武が肩を落とし、謝る。

「悪かったよ……」

テオドールが、腕を組みながら武をからかう。

「アンタ、トラブル多過ぎだろ……」

武が即座に反論する。

「そんなことねえよ。テオドールさんと比べて俺は少ない方だぞ」

ユリアが、興味津々に首を傾げる。

「何々? 何の話してるの?」

指揮官が、頭を抱えて呟く。

「俺達には理解出来ない領域だ」

ドクター・ストレンジが、虚空を睨みながら、重く告げる。

「『ヴェノムメイズシフター』想像以上の化け物だな」

ちゆるが目を輝かせ、興奮気味に言う。

「こんなメイズシフター、見たことないよ! 調査していいかしら?」

アイリスディーナが、即座に警告する。

「死ぬぞ?」

ユリアとヒイロは状況を把握できてないため、ドクター・ストレンジは事の経緯を全部話した。

黄金の光を指先から放ち、空中にタイムラインの幻影を映し出しながら、

異世界の来訪者、歪みの原因、インカージョンの脅威、そしてヴェノムメイズシフターの出現までを、淡々と説明する。

二人は最初こそ驚いた顔をしたが、ユリアはすぐに笑みを浮かべ、ヒイロはノートを閉じて真剣に耳を傾けた。

 

 

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