マブラヴガールズガーデン外伝 月ヶ瀬ちゆる~マルチバースの流儀~ 作:マブラマ
スカラ校舎の広場に、午後の陽光が柔らかく差し込み、遠くメイズの低く響く振動が空気を震わせていた。
ユリア・バーンズの明るい笑い声が響く中、ストレンジの幻影が消え、皆の視線が集中する。
だが、その緊張の余韻を破るように、広場の端から足音が近づいてきた。制服の裾を翻し、凛とした表情の少女――風紀委員会の姜小花だ。
彼女の瞳は、名家の血筋を思わせる鋭く、しかしどこか柔らかな光を宿していた。
スカラ地区の華連というコミュニティの名家出身で、様々なコネクションを有し、その全貌は知られていない。
四天王神楽を尊敬し、彼女のためなら多少の無理も押し通す。
辛いものは苦手で隠しているが、周知の事実となっている。姜小花は、アイリスディーナたちの戦術機――
MiG-21PFバラライカ(指揮官仕様)、テオドールのMiG-21バラライカ、ニコラのMiG-23チボラシュカ、そしてベアトリクスのMiG-27アリゲートル――
を一瞥し、冷徹に言い放った。
「これは没収します」
アイリスディーナの眉がピクリと動く。
テオドールが即座に反発の声を上げようとしたその時――
地響きが広場を襲った。空気が歪み、黒い霧のような影が地面から湧き上がる。
ヴェノムメイズシフターの出現だ。
毒々しい触手がうねり、周囲の空気を腐食させるように広がる。
それと同時に、異様な光の渦が開き、光線級BETAが姿を現した。
赤く輝く眼球が、広場を睨みつけ、レーザーのような光線を吐き出す。
「――!」
悲鳴が上がる中、ザルトゥーム学園のMG(メイズガーダー)たちが次々と出撃を試みるが、
シフターの毒霧に触れただけで機能不全を起こす。
軍と警察の部隊が急行し、重火器を浴びせるが、光線級のビームが一閃し、車両を溶かすように蒸発させる。
歯が立たず、後退を余儀なくされたその時――爆音が轟いた。コトハ率いる犯罪組織『双頭の斧』のMG12機が、広場に躍り込む。
違法改造された機体が、シフターに肉薄し、援護射撃を浴びせる。
「援護するわ!双頭の斧、出撃よ!」
コトハの声が回線に響くが、
シフターの触手が一機を絡め取り、光線級のビームが残りを薙ぎ払う。
12機は次々と墜落し、全滅と思いきや――残骸の煙が晴れた瞬間、ベアトリクス・ブレーメの咆哮が響いた。
「そこまでだ!」
彼女のMiG-27アリゲートルが、獣のように低空を疾走し、シフターの触手に短剣を叩き込む。
アイリスディーナのMiG-21PFバラライカが指揮官仕様の精密射撃で光線級の眼球を狙い、
テオドールのMiG-21バラライカが近接で翻弄、
ニコラのMiG-23チボラシュカが援護射撃で乱れ打ちした。
「怪異が好き勝手暴れて……貴様等の好きにはさせない!」
アイリスディーナの声が鋭く、機体が優雅に旋回する。
ベアトリクスが回線で号令を下す。
「総員突撃せよ! アローヘッドワンで叩く!」
「了解しました!」
ニコラの機体が即座に応じ、テオドールもナイフを閃かせる。
「了解だ!」
姜小花は、自身のMGを展開し、ユリアとヒイロの機体を従え、戦線に加わる。
ユリアのMGが陽気な射撃を浴びせ、
ヒイロのMGが冷徹な精密攻撃を繰り出す。
姜小花の機体は、華連のコネクションを思わせる洗練された動きで、シフターの弱点を突く。
「全く……我々の脅威は排除しなければなりませんね」
間一髪の攻防の末、ヴェノムメイズシフターの核が砕け、光線級BETAの眼球が爆散した。
広場に静寂が戻り、皆の息が荒く響く。姜小花は機体から降り、戦術機たちを一瞥し、静かに言った。
「没収は……保留にします。ですが、次は許しませんよ」
ベアトリクスが、機体のハッチを開け、笑みを浮かべる。
「ふん、助かったわね」
テオドールが、汗を拭いながら呟く。
「マジで……ギリギリだったな」
純夏が、武の袖を握りしめ、安堵の息を吐く。
だが、ストレンジの第三の目が、遠くの空を睨むように輝いていた。
48時間の砂時計は、容赦なく落ち続けている。