マブラヴガールズガーデン外伝 月ヶ瀬ちゆる~マルチバースの流儀~ 作:マブラマ
その後、アイリスディーナとベアトリクスはテオドールと協力し、ちゆる達は勿論、他に飛ばされた衛士達―――ユウヤ・ブリッジス、ヴァレリオ・ジアコーザ、ステラ・ブレーメル、レオン・クゼ、シャロン・エイム。そして1998年9月24日での佐渡島防衛戦で戦死したはずの坂崎都を確保していった。
冥夜は、静かに剣を握りしめながら、傍らの少女――カラフルブーケのリーダー、生駒葵に視線を向けた。
「そなたは衛士ではないのか?」
葵は、穏やかに首を振る。
「私ではないな」
そして……武は、周囲を見回し、拳を握りしめて息を吐いた。
「よし、これでひとまず全員揃えたな! あとは……」
アイリスディーナが、冷徹に言葉を継ぐ。
「全員、元の世界へ送り返すだけだ」
ドクター・ストレンジは、マントを翻し、第三の目を細めて虚空を睨む。
「急ぐぞ……!もう時間が」
ピシッ
空気が、乾いた音を立ててひび割れた。皆の視線が一斉に上空へ向く。
ユウヤが、顔を青ざめさせて呟く。
「な、何だ? 空が……」
ストレンジの声が、慌てたように響く。
「いかん! 想定よりインカージョンが異常に早い!まさか、ヴェノムメイズシフターの存在が歪みを助長したのか……!?」
都が、撃震のハッチから身を乗り出して叫ぶ。
「どう言うことだ? 何が起きるんだ!?」
ドクター・ストレンジは、黄金の円環を展開し、空中に歪みの幻影を映し出す。無数の糸が絡まり、裂けていくタイムラインが、皆の胸を締めつけた。
「このままでは……白銀武やテオドール・エーベルバッハ、ユウヤ・ブリッジスにほんの少し縁のある存在……それこそヴェノムメイズシフター以上に無関係な者達がこの世界にやって来てしまう。……最早、世界そのものが融合しつつある。手遅れだ。既に送り返すことも出来なくなっている」
ユウヤが、拳を握りしめて叫ぶ。
「じゃあ、どうすればいいんだ!?」
ドクター・ストレンジは、静かに、しかし重く告げた。
「今、世界は大量の衛士達が引き寄せられた結果、インカージョンが進行している。原因である複数の衛士を送り返すことが出来ない以上……白銀武、テオドール、ユウヤ。その他諸々以外の衛士達を消滅させて元の世界に戻せば……」
ユウヤが、目を丸くして後ずさる。
「おいおい、嘘だろ……」
武は、頭を抱え、苦しげに顔を歪めた。
「俺はまた一人になってしまうのか……クソ! こんな……ごめん、純夏……冥夜……彩峰……タマ……美琴……委員長。俺は」
テオドールが、唇を噛みしめて呟く。
「アイリスとベアトリクスも消える……だと……」
その時、明るい声が広場に響いた。
「みんな、困ってるようだね!」
ちゆるが、目を丸くして振り返る。
「―――! 生徒会風紀委員会!?」
リリー・ラヴォアはザルトゥーム学園生徒会風紀委員会所属の女性パイロット。
元々は内気で臆病な少女だったが、『超機神ジャスティオン』という作品を読んでから
ヒーローに憧れるようになり、明るく正義感の強い性格になった。
ヒーローについては一家言あり、同好の士を見つけるとつい話が止まらなくなる。
テオドールが、怪訝な顔で尋ねる。
「誰だ?」
リリー・ラヴォアは、笑顔で手を振る。
「ザルトゥーム学園生徒会風紀委員会のリリー・ラヴォアだよ」
テオドールが、突然声を上げて身を乗り出す。
「リリー!? まさかアンタ……リリー・レーヴィットか!? 612中隊の」
リリー・ラヴォアは、首を傾げて微笑む。
「多分、私とは縁もゆかりもない女性だね」
めるが、驚きの声を上げる。
「リリーさん、何故ここに!?」
リリー・ラヴォアは、肩をすくめて答える。
「生徒会長の命令で君達を助けに行ってこいって言われただけだよ。で? 何に困ってるの?」
めるが、息を整えて説明を始める。
「リリーさん……実は」
めるはリリーに事の経緯を全部話した。リリー・ラヴォアは、腕を組んで頷く。
「成る程ね。状況は把握したよ」
ユウヤが、すがるように尋ねる。
「リリーさんよ。俺達はどうすればいいんだ? 教えてくれ!」
リリー・ラヴォアは、目を輝かせて拳を握る。
「ふふん♪ それは……合体だよ! 戦隊ヒーローシリーズやメタルヒーローシリーズとかそうだけどZZガンダムみたいにAパーツ、Bパーツ、そしてコアファイターを合体するみたいに一つになれば良いと思うよ」
武が、目を丸くして叫ぶ。
「合体!?」
ユウヤが、呆れたように首を振る。
「お前な……アニメや特撮じゃあるまいし」
テオドールが、突然目を細めて手を上げる。
「いや、待てよ―――俺達が一つになれば良いんだな?」
ストレンジが、興味深げに尋ねる。
「そうだが……何をする気だ?」
テオドールが、拳を握りしめて宣言する。
「合体だよ! 全員を合体させて一つにすればもしかしたら……」
武が、慌てて声を上げる。
「合体!? どうやってするんだよ!」
テオドールが、ストレンジに視線を向ける。
「そこは魔法で……ストレンジさん出来そうか?」
ストレンジは、第三の目を輝かせて頷く。
「悪くないアイデアだ。ひとまずインカージョンは止められる。世界が安定した後は分離させて元の世界に送り返せばいい。問題はあそこのイロモノの衛士達と融合した結果……統合された衛士がまともな白銀武、テオドール・エーベルバッハ、ユウヤ・ブリッジスでいられるかという点だ」
純夏が、心配そうに武の袖を引く。
「タケルちゃん……」
アイリスディーナが、テオドールに尋ねる。
「テオドール、お前はどうするんだ?」
テオドールはぐっと拳を握りこう叫んだ。
「俺は国家人民軍地上軍第666戦術機中隊シュヴァルツェスマーケンのテオドール・エーベルバッハだ!“黒の宣告”を舐めるな!アイリスディーナと一緒に戦った俺がたかが並行世界の自分やBETAと合体したからって俺じゃなくなるわけがねえ!!」
武が、テオドールの言葉に勇気づけられ、頷く。
「そうだな……そうだよな!何たって俺達は衛士だよな!……やってくれ!俺達が元の世界に戻れるなら」
ユウヤが、肩をすくめて苦笑する。
「しょうがねえな……付き合ってやるよ」
ナタリーが、拳を振り上げて叫ぶ。
「よおし、皆の力を合わせるわよ!」
テオドールが、呆れた顔で突っ込む。
「アンタは衛士じゃないだろ……」
美琴が、明るく肩をすくめる。
「ボクはどうせ帰っても消えるだけだし、ずっと合体してもいいけどね」
ヴァレリオが、笑みを浮かべて言う。
「俺は帰るぜ。かわい子ちゃんが俺を待ってるからな」
ユウヤが、決然と頷く。
「俺は帰るぞ。元の世界にはイーニァが待ってるからな」
ベアトリクスが、静かに微笑む。
「私も帰るわ。カタリーナとロザリンデが待ってるからね」
ニコラが、熱く叫ぶ。
「何処までもついて行きます。少佐!」
ドクター・ストレンジが、マントを翻して宣言する。
「よし! すぐに合体を始めるぞ!」
テオドールが、力強く応じる。
「頼んだ!」