未来悟飯に憑依した男の大冒険   作:ただのトーリ

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 切りのいいところで切ったんでちょいと短め。


ひとかけらの勇気

 偽勇者たちと食事に行くことになってから彼らの名前が判明した。

 剣士の名前がでろりん、僧侶の名前がずるぼん、戦士がへろへろ、魔法使いがまぞっほ。

 

(なんというか、すごい名前だ。いや……ドラゴンボールの世界も負けちゃいないけど)

 

 因みに宝石や黄金、貴金属の買い取りを済ませた。その額は10万ゴールド。

 この額にはダイ達もかなり驚いていてかなりの大金であることは疎い悟飯でも察せられた。

 大金ではあるが、これっでもまだカプセル内には大量の財宝が残っている為暫くは安泰である。

 

 

 

 そんな悟飯は現在、テーブルの上に運ばれてきた大量の料理を前に格闘中だった。

 普通であれば10人前を優に超えるその量が、次々と彼の胃袋へと消えていく。

「す、すげぇ……」

 

 ポップのつぶやきはその場にいる全員の気持ちを代弁している。

 メンバーの中で一番食事量の多いダイですら、悟飯の半分にも満たないのだからその多さに閉口するしか無い。

 

「よくそんなに食べれるわね……」

「自分でも驚いてるよ。ただ無理してるとかじゃなくて本当にお腹空いてたんだ」

(サイヤ人の胃袋ってすごいな。食べても食べてもその端から消えてるんじゃないかってくらいだ)

 

 

「それで、そちらの兄さんもアバンの弟子なのか?」

「いや俺は行き倒れてるところを彼らに助けられたんだ」

「ひどい怪我だったんだぜ? 見つけるのがあと少し遅れてたら死んでたんじゃないかってくらいだったんだ」

「そんなにか。何と戦ったんだ? そんなやばいモンスターがロモスの周りに居たっけかなぁ」

 

 気が付けば最初の険悪なムードは打ち解けて、すっかり雑談をして食事を楽しんでいる一行。

 結局過去のわだかまりについてはダイも掘り返す気はないらしく、今後悪さをしないのならばと見逃すことに決めたらしい。

 

 その会計は一番多く食べた悟飯が責任もって支払ったのだがその合計が3万ゴールド。

(暫くは残った貴金属もあるから平気だとは思うけど、自活する範囲を作るかお金を稼ぐ手段を見つけないとな)

 

 夕暮れ頃、店を出て外を歩いているとなにやら遠くで何かがうごめくような気配を感じた。

「……」

「どうしたんだ悟飯?」

 ポップが不思議そうに声をかけるが、悟飯は先ほど感じた気配が気になって仕方がなかった。

 

(この感じ、なんだろう……すごく気になる。何となく嫌な感じが集まってきてるような……まさか、これは「気」なのか?)

 

 Z戦士たちは気を操る技術に長けている性質上、無意識下でも邪悪な気などを感じ取る癖がある。悟飯は今感じ取っている違和感もそれではないかと検討をつける。

 

 でろりん達はすでに宿に帰って居ないが、目の前にいるダイ達にだけでも伝えようと足を止める。

 

「もしかすると明日当たり、何かが起きるかもしれない」

「なにかって?」

「わからない、ただ良くない気が向こうに集まってる感じがするんだ」

「気って……なんでそんなことわかるんだよ」

「うまく言えないんだ、ただそう感じるんだ」

「しかもあっちって……悟飯が倒れてた森の方じゃねえか? まさかお前をボロボロにした奴がロモスに攻めてくるとでもいうのかよ」

 

 ポップはいまいち信じきれないようだが、何か思い当たるのかダイと何かを話し始める。

「まさかクロコダインが?」

「あり得るよ。あいつ、やられっぱなしで終わるような奴じゃないと思うんだ」

 その言葉にマァムも神妙な面持ちで頷く。

「せめて兵士さんたちに伝えましょ。信じてもらえるかわからないけど、何もしないよりはましだわ」

 その言葉に二人は頷き、ひとまず悟飯の言葉を信じるかはともかく森の中でクロコダインという強い魔王軍幹部と戦った事を伝えることにした。

 

(……というより、それは真っ先に兵士に伝えるべき案件だと思うんだけど……今更言っても仕方ないか)

 

 悟飯は肩を竦めながら彼らとともに兵舎のある方角へ同行した。

 

 

 

 

 案の定兵舎でそのことを伝えたら「もっと早く教えてくれ!」と怒鳴られた。

 これには3人も反省すべき点だと思ったらしく、素直に謝っている。

 

 悟飯に至っては「感で人を怯えさせるのはやめてくれ」と注意を受けた。

(まあ、無名の俺が言った所で信用できないもんな。こっちで気を説明しても伝わるかわからないし)

 

 

 ひとまず兵士たちは警戒態勢で様子を見ると答えて、悟飯たちは宿に返された。

 そのころにはすっかり夜遅くで眠りにつくだけだった。

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 地の底から響くような雄たけびと共に、破砕音と衝撃がロモスを襲った。

 跳び起きた4人は顔を見合わせ身支度を整える。

 

 窓を開けて外をみると街中に入り込んだモンスターたちが兵士たちと戦っていた。

(ど、どれも見覚えのあるモンスターばかりだ! いや、それにしても街中にこいつらが来てるってことは……)

 周囲を探るとひときわ大きな気の塊が空を飛んでくるのがわかった。

 見上げると、巨大なガルーダを背にロモスの王城へと向かうリザードマンがいた。

 

「ダイよ早く来いっ、でなければロモス王の命はないと思え!!」

 

 怒りに我を忘れたような怒声に周囲のモンスターは呼応するように攻勢を増し、兵士たちは追い詰められてく。

「くそ、行かなきゃ!!」

 

 飛び出していくダイとそれを追おうとするマァムだが、動こうとしないポップを見て声を上げる。

「何してるの、ダイが行っちゃうわよ!」

「え、いや、でも……俺なんかが行かなくても」

「何言ってんの!? ダイが心配じゃないの!?」

「……平気だって、それにいざとなりゃダイ一人で何とかするって」

 明らかに恐怖で弱腰になっているポップ。しかしそれを悟飯を責める気にはなれなかった。

 彼もまた、先ほどの巨大な気に充てられ内心ではすくみ上っていた一人だったからだ。

 

(……身体がサイヤ人だとしても、俺は俺なんだよ。戦ったり命を懸けるような真似がそう簡単にできるわけないんだ。怯えて足を止めて何がいけないんだ)

 しかしマァムは持ち前の勝気な性格も相まって、ポップの言葉に怒りを覚えた様子で掴みかかる。

「あなた……! ダイの親友でしょっ、ダイがどうなってもいいっていうの!?」

 その言葉から逃げるように顔を背けるポップ。それを見た彼女は彼の顔を叩く。

「見損なったわ!」

 そう言い残し、部屋を飛び出していった。

 入れ違うようにまぞっほがやって来た。

 

 まぞっほは部屋のテーブルに小包を出すと、そこにはなにやら貴金属がたくさん詰め込まれていた。

 

「な、なにやってんだよそれ!」

「いやなに、宿泊客たちが逃げる際に置いていったものをちょいとな? モンスターたちにやるのも勿体なかろう?」

 

 つまり火事場泥棒というわけである。

 これにはポップも顔を顰めて諫めるが、まぞっほはそれをカラカラと笑い飛ばしむしろポップと悟飯を仲間にならないかと誘い始める。

「お、俺はあのアバン先生の弟子だぜ!? そんな情けねぇまねができるかよ!」

 

 その言葉に悟飯は胸の奥が痛む思いだった。

(……そうだろうか。今の俺は、孫悟飯として胸を張れるだけの立ち振る舞いを出来ているだろうか。強い敵に怯え、仲間が戦いに向かうのにそれを追うこともせず……一緒に残ったポップの姿に安堵している)

 

 その心を読んだかのようにまぞっほはにやりと笑う。

「悩んで居るようじゃな? 大方、怯える自分が情けなくて、それでも動けない自分を正当化しての繰り返し……といった所かの」

 

 ぎくりとする悟飯。見ればポップも似たような顔をしている。

「勇気とは打算無きもの、相手の強さに応じて出したり引っ込めたりするものではなぁい!」

 

 その言葉に悟飯は思わず目を見開き固まる。

 まさしく今の自分にピッタリな言葉だったから。相手が強いから身を縮めて怯えている自分が如何に勇気のない姿をしているかを言い当てられた気分だった。

 

 しかし当のまぞっほは威勢よく叫んだあと、やる気をなくしたように貴金属をもてあそび始めた。

「わしの言葉じゃない、師匠の言葉じゃ。わしの師匠はこれでもかってくらいに正義の魔法使いでの、これが口癖だったんじゃ。いわゆる受け売りってやつだな。

 今じゃ小悪党になっちまったわしでも、その昔は正義の魔法使いを目指しておった。……しかしあかんかった。いざとなると足が震えて仲間を見捨てて逃げ出すなんてざらじゃった。そんなことを繰り返していたら今じゃこの通りよ」

 

 ポップも悟飯も視線を下に落としうつむく。

 

 まぞっほはゆっくりと歩き、並び立つポップと悟飯の間を通りその両手で肩をたたく。

「勇気がひとかけらでも残っとるうちに行け。わしのような小悪党にゃなりたくないじゃろ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ポップの、唸元が小さくきらめいた気がした。

 

 走り出すポップを見送ると、でろりんやへろへろたちが部屋に入って来た。

 

「あーあ、あいつ死んだな」

「もうまぞっほたら、なんであの子を焚きつけたりしたのよ? 見どころある魔法使いって目をつけてたの貴方じゃない」

「ほっほっほ、ちょいとしたおせっかいじゃよ。それよりもそちらの悟飯といったかの? お前さんはいかんのか」

 

 いまだに残っている悟飯を見てまぞっほは少しがっかりしたような顔をする。

 

「……まぞっほ、いやまぞっほさん。貴方には感謝するよ」

「ほう?」

「俺はずっと言い訳をしてた。『仕方ないんだ、俺は被害者なんだ。そこまでやる義理なんてない』ってずっと頭の中でぐるぐる回ってた」

「……」

 悟飯の独白に彼らは黙って聞いている。

「でもさっきの言葉、すごく響いた。勇気のかけらが残ってるうちに……今の俺にぴったりな言葉だよ」

 

 そう言って窓際に近寄る。

「行くのか?」

「いや、俺は俺のやれることをやるよ。街にはまだ逃げ遅れた人がいるはずだ。モンスターだってたくさんいる……なら、俺はみんなを守るよ」

「そうか、頑張れよ」

「ああ!」

 

 

 悟飯が応えると同時に身体から白いオーラが拭き溢れ、室内をまるで暴風が吹いたような衝撃が走る。

「「「「いい!?」」」」

 

 でろりん一行はまさかの光景に度肝を抜かれるが、悟飯は構わず窓から外へ飛びあがる。

 

「とんだ!?」

「あいつ魔法使いなのか!?」

「いやどう見ても格闘家でしょ!?」

「いやでも実際に飛んでるし……なんなんだあいつ」

 

 

 既に声の届かない距離に行ってしまった悟飯を見送った後、彼らは彼らの仕事をするのだった。

 

 

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