未来悟飯に憑依した男の大冒険   作:ただのトーリ

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奮闘

 宿屋を飛び出した悟飯は街中を空から見下ろし、早鐘を打つ心臓を押さえて深呼吸をしていた。

「大丈夫だ、やれるはずだ。無我夢中だったとはいえ舞空術や気の開放もできたじゃないか。力の使い方は身体が覚えてる。あとは俺次第だ」

 1人言い聞かせるようにつぶやいていると、鳥型のモンスターが悟飯の存在に気づき襲い掛かって来た。

 

「クケー!」

「こいつは確か……キメラか!」

 胴体は蛇のようで、翼とハゲワシのような頭部をもつモンスターが口を開くとそこから炎が噴き出す。

「くっ」

 まだ自由自在とはいかない舞空術で辛うじてよけると、その勢いのままキメラへ突進する。

 すれ違いざまに拳で殴りつけると、キメラは予想より軽くあっという間にロモスの町外へ落ちていった。

 

 殴った拳を見つめる。

(初めて生き物を殴った。けど、拳は痛くないし捻った感じもしない。……行ける!)

 

 短いながらも初戦闘を熟したことで覚悟が決まった悟飯は町の中にある、大きな噴水のある広場に降り立ち声を張り上げる。

「ここは俺がモンスターを担当します! 皆さんは守りやすいようにどこか1か所に集まってください!」

 

 その言葉に逃げまどっていた人々は噴水広場に面した大きな建物の中に駆け込んでいった。

 

(一番頑丈そうな建物に入ってくれた。あれらならそう簡単に壁を崩されることもないはずだ。あとは入り口を守るだけだ!)

 およそ50人ちかくの女性や子供、そして老人たちをちらりと見ると不安で身を寄せ合っている。

 

 

(こんな時、孫悟飯なら……)

 

「安心してください。俺は孫悟飯、必ず皆さんを守り抜きます!」

 

 宣言し、気を高める。

 直後、オークやオオアリクイといったモンスターらが一斉に襲い掛かって来た。

「はぁぁぁ──ー!」

 

 迫りくる攻撃を躱し、蹴りや掌打で次々と打倒していく。

 不慣れな上に乱戦という状況で不意打ちを受けることもあったが、サイヤ人として鍛え上げられた肉体にとってそれは致命傷にならず浅い傷で済んだ。

 時折、戦いを知った兵士の応援や避難民を連れて建物に誘導されていく内に気が付けば建物にはかなりの人数の人々や兵士たちが集まり始めていた。

 

「メ・ラ」

 モンスターの一体が呪文を放ってきた。

(こいつ! 俺じゃなく後ろの建物その物を狙いにっ)

「させるか!!」

 身体が自然と動き、右腕を飛来する火炎に向ける。

 すると手のひらから黄色い光が放たれ、それに飲み込まれた火炎は消滅してしまった。

 

 兵士たちや民間人たちから歓声が上がる。

「すごい!」

「見たことない技だ!」

 

 それによりモンスター達はさらに勢いを弱め、逆に兵士たちは気勢を上げて反撃に出る。

「彼にばかり任せるなー! ロモス兵の底力をみせてやれー!」

「「「「おお────!!」」」」

 

 暫く、時間にして30分ほど戦っているとロモス王の方から獣の断末魔が上がった。

 それを聞いたモンスター達は怯えるようにして一斉に森へと逃げ去っていく。

 

 

「……ふぅ」

 息をつくと、兵士や民間人たちがわっと声を上げる。

「たすかったぁ!」

「兵士さんありがと──!」

「武道家さんもありがと──!!」

 

 生き残った人たちの言葉を受けて、自分の頑張りが認められた気がした悟飯は思わず胸をぎゅっと締め付けられる思いになった。

 

(よかった……()()()みんなを守れた)

 

 そう思っていると、一人の兵士が駆け寄ってくる。

「ご協力感謝します。貴方のお陰で皆を守ることができました」

 初めての戦闘だったこともあり、少なくない傷を負っていた悟飯を見て兵士が避難していた人々に声を上げる。

「誰か、回復魔法か薬草を持っている人はいないか!?」

 その言葉に応えて前に出てきたのは子連れの若い夫婦だった。

 奥さんの方がホイミを使えるらしく、治療をしてくれるとのことだった。

 

 マァムのホイミにくらべるとやや治りが遅く感じるが、この世界に来た時の大怪我とは違って軽傷ばかりだったことも相まって、それほど時間もかからずに完治した。

「ありがとうございます」

「こちらこそありがとうございます、貴方のお陰で妻も娘も無事です。本当にありがとうございました」

 

 夫が深く頭を下げると、一緒に来ていた小さな女の子が悟飯を見上げて「ありがとう、お兄ちゃん」と笑った。

 その笑顔に守った物を改めて実感し、自然と彼も笑顔になった。

「俺も、ありがとう」

 

 

 

 それから町の中に残ったモンスターがいないか、気を探りつつ回っていると城から帰ってきた兵士たちによって「ロモス王を狙っていた魔物の親玉は、小さな勇者ダイによって打倒された」と発表された。

 すると城のバルコニーがみえる広場で勇者たちのお披露目があるらしく、そこに悟飯も出てほしいと呼ばれる。

 

 最初は遠慮していた悟飯だが、兵士たちの強い要望で引っ張られるようしてロモス城へと案内される。

 そこには新たな装備を身に包んだダイ達一行が待っていた。

 

「「悟飯!」」

「悟飯さん!」

 

 彼らがこちらに気づいて声を上げると、兵士やロモス王も互いに知り合いだったのかと驚く。

 

「悟飯殿は街に入り込んだモンスターの群れから民たちを一か所に集めて守り、兵士たちと共に戦ってくれたという。あのクロコダインと戦ったわけではないが、彼もまたロモスを守ってくれた勇者の一人として民たちに紹介したいのだが良いだろうか」

 ロモス王の言葉にダイたちも驚きつつも歓迎した。

 

 悟飯のボロボロになった道着を見て、その戦いの激しさを理解した彼らはその無事を心から喜ぶ。

 ダイは兵士たちから聞いた戦いの様子を詳しく聞きたがり、ポップは一人でモンスターの群れと戦った悟飯に驚き、マァムは完治したとはいえ他に傷はないかと心配していた。

 

 

 

 

 

 バルコニーに四人が並ぶと、一斉に声が上がる。

 多くの人から守ってくれてありがとうと言葉が上がり、時折悟飯の名を呼ぶ人もいた。

 

 

 お披露目の後、休息を取りつつ彼らは今後の予定を立てる。

 宿のベッドよりはるかに柔らかなシーツの上で寝転がりつつ、話を聞く悟飯。

 

(どうやら彼らはパプニカという国に渡るらしい。ダイの知り合いがいるのか……俺はどうするべきだ? この国だってまだ復興の手が必要だし、また魔物に襲われたら大変だ。

 この力は戦いだけじゃなく力仕事にも向いてるはずだしやれる事はたくさんある)

 

 暫く考えたのち、一つの答えを出した。

「俺はもうしばらくロモスに残るよ」

 

 その言葉に彼らは驚く。

「な、なんでだよ!? お前ほどの戦士ならパプニカだって活躍できるはずだぜ!」

 ポップの言葉にダイやマァムも頷く。

「ああ、聞いた話だと魔王軍に攻められてて大変なのはわかってる。だけど、まだ復興が落ち着いていないロモスを放っておけないんだ」

「あ……たしかに、それもそうだよな。街を守ってた壁も崩れちまっててまた襲われたら大変だしな」

 彼らもロモスの事を引き合いに出されると強く出られないようで、落ち込んだ様子で静かになる。

 

「だから代わりにこれを持って行ってくれないか」

「ん?」

 差し出したのは石となってしまったドラゴンボール。

「え、でもこれってすごく大事な物だって……」

「ああ、だけどこれはもう一つ秘密があってな」

 

 懐から取り出したのは手のひらサイズの懐中時計型レーダー、通称ドラゴンレーダー。

 

「それは?」

「ドラゴンレーダーといって、その球から発せられてる微弱な力を感知して場所を探る道具だ。本来なら石の状態じゃ使えないはずなんだけど、試してみたら反応があったんだ。それで別行動をとるならこれが役に立つとおもったんだ」

 

 その言葉にダイは首をかしげるが、察しのいいポップがなるほどと声を上げる。

「つまりそのレーダーとかを使って、あとから俺たちに追いつく時の目印にするってわけだな!?」

「そういう事、こちらもある程度復興が落ち着いたらそちらに行くから先に行ってくれ。すぐ追いつくから」

「追いつくって……どうやって?」

 

「あ、そうか。みんなには見せてなかったね。実は戦ってる最中にいろいろ思い出して、空を飛べるようになったんだよ」

「「「えぇ!?」」」

 驚く三人の前で、舞空術を使い天井にぶつからない高さまで浮かぶ。

 

「すごいや、ほんとに空飛んでる」

「魔法使いならまだしも戦士で空飛ぶってそんなのありかよ」

「すごいわ悟飯さん!」

 盛り上がる彼らに、追加で渡すものがあると提案する。

 

「これを持って行ってくれ」

 

 差し出されたものを見て三人は目を見開く。

「仙豆じゃねーか!? しかも三つも!」

「いっしょに行けないからせめてこれくらいは受け取ってくれ」

「でもあなたはどうするの。あまり数はないんでしょう?」

「ああ、でもまだ手元に三つ残るし一人ならそう簡単に使い切ることはないさ。そっちは激戦区に行くのだから回復手段は多いに越したことはないだろ?」

「……だけどよぉ」

「ホイミも便利だけど、あまりにも深い傷を負った場合は間に合わないこともあるかもしれない。そんな時仙豆を食べれば、生きてさえいるならほぼ確実に助かる。これは君たちに必要なものだ」

 

 これだけは譲れないと提案すると、彼らもそれを理解した様子で大事そうに一つずつ受け取り、布の切れ端を使い作った巾着を用意するとアバンと印と一緒に並ぶ小さな袋が彼らの首に下げられる。

 

 

 

 ドラゴンボールはダイが受け取り懐に入れる。

 

「それでさ、噂で気になってたんだけど手から光を出したって言ってたけどなんなんだ?」

 空気を換えようとしたのか、ポップが悟飯の戦いについて話題を上げた。

 

「あ、俺もそれ気になってたんだ。見た人たちは全員知らない技だったって言ってたし」

「悟飯さんって魔法も使えるの?」

(ちょうどいいから、軽く説明しておくか)

 

「俺が使ったのは気だよ」

 

 言葉の意味が理解できなかったらしく三人は首をかしげる。

 

「生きてるものが持つ生命エネルギーみたいなものだっていえばわかるか?」

 

 

 その言葉に彼らは声を上げる。

「それって闘気じゃないか?」

「ああ! 先生が言ってたやつだ!」

「勉強で聞いたけど、見るのは先生以外だと初めてですっかり忘れてたわ」

 

(闘気? もしかしてこちらにも似たような力があるのか。だとしたら今後は闘気と説明したほうがわかりやすそうだな)

「俺はその闘気をより精密にコントロールして戦いに生かすんだ。お父さんや師匠の流派が混じってるから純粋な物じゃないけど」

「へえ、師匠と親父さんはなんて流派だったんだ?」

(うーん、ピッコロさんの流派って明確にはないんだよな。たぶん、ピッコロ大魔王時代のスタイルをそのまま継承して鍛えてる感じなんだけど……こっちの世界でピッコロ()()()とかいったら色々問題だよな)

 

「お父さんの方は亀仙流だね。修業は結構ハードだけど教えが「よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む 人生を面白おかしく張り切って過ごせ」っていう、かなり伸び伸びとした所なんだ」

「へえ、聞いてたイメージと違って結構大らかなんだな。どんな修行するんだ?」

「俺が受けたのはその教えを学んだ父さんだからね。本場とは違うけど、聞いた話じゃ牛乳配達とかしてたらしいよ」

「はぁ? 修業がなんで牛乳配達になるんだよ。バイトか?」

 

 悟飯は彼の言葉に苦笑いを浮かべつつ、部屋に備え付けのピッチャーからコップに水を灌ぐ。それを九つ用意して御盆に乗せる。

「これ持って」

「おっと……これで?」

「走って、こぼさない様にしながらジグザグ走りしつつ、時間制限内にロモス国内の指定した人物に配ってきて。っていうのが亀仙流だよ」

(本当は牛乳瓶だからもう少し違うんだけどね)

 

 それを聞いたポップだけでなくダイやマァムも驚く。

「そ、そんなの出来るわけねぇだろ!?」

「でもお父さんや同門の人たちは重りを背負ってやってたらしいよ?」

「……まじかよ」

 

 マァムが御盆を受け取り部屋の中を歩く。

「──ッ、これは結構大変ね。でも走る際のバランスや速度の微調整、繊細な足運びが鍛えられるみたいだしこれはかなり理にかなってるわ」

「最初は牛乳瓶で蓋付けててもいいよ? 最初は瓶が割れないようにするだけでも結構大変だし」

「ふーん、そんなに大変なの?」

 

 受け取ったダイが走り出すと、あっという間に水がこぼれてしまった。

 

「うわわ、むずかしいなぁ」

「コツがいるんだよ」

 御盆を受け取り、水を注ぎなおした後悟飯は部屋の中を走る。

 室内とはいえ、王城の客室だけあってそこそこな広さをある空間を縦横無尽に走る悟飯。

 しかしダイ達の前に戻って来た彼の御盆には一滴も水がこぼれていなかった。

 

「え!?」

「まじか」

「すごい……」

 

「こんなふうに、できれば怪我人を背負いながら走っても怪我人に負担をかけずに済むかもしれないし、ほかにも使い道があるかもね」

(上手く行ってよかった。これだけ言った手前、失敗してたら恥ずかしいなんてレベルじゃない)

 

 それを聞いたダイは感心した様子で悟飯を見つめる。ポップはやや他人事のような態度だがそれよりも別の事に気が向いていた。

 

「その闘気ってのは他にも使えるのか?」

「ああ、室内だから見せれないけど手から闘気を放って相手を攻撃したりなんてこともできるな」

「手から闘気? なあ、ダイそれってあれじゃねぇか?」

「あ! クロコダインが使ってた獣王痛恨撃!」

 

「じゅうおうつうこんげき? 何のことだ?」

「ロモスに攻め込んできた魔王軍幹部の技だよ。そいつの使っていた技に手から闘気を放つ技があったんだ」

(……やっぱりこちらの世界でも気功波に近い技を持つ奴がいたのか。あまりうかうかしてられないな。もっと訓練してこの身体を十全に使いこなせるようにならないと、いざって時に後悔することになりそうだ)

「すげぇ威力だったんだぜ? 俺なんか、掠っただけでズタボロになっちまうほどだったよ」

「ええ……私も間近で見たけど恐ろしい威力だったわ」

 

(みんなの話を聞くからに、ただの気功波じゃないな。もしかしたら技レベルの気功波かもしれない。だとすると俺も油断してると大怪我を免れないな)

 悟飯は右手を見つめ、力強く握りしめる。

 

 その後、クロコダインとの戦いについて話を聞いてくとその中にダイの育ての親というブラスと話す機会を得た。

 まさかモンスターだとは思わなくて驚いたが、事情を聞くうちにダイの出生が孫悟空と似ていることに気が付いた。

 実の親と生き別れており、拾い上げた人物に育てられ人里離れた場所で暮らしていたという経歴なんか特にそっくりだと感じた悟飯は、知らず知らずのうちにダイに対して親近感のようなものを感じ始めていた。

 

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