未来悟飯に憑依した男の大冒険   作:ただのトーリ

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お久ブリーフ博士
ちょこっとずつかけてきたので投稿しました。
エタってないよ。ただすごく遅いだけだよ。


総戦力

 翌朝、突然声が洞窟の外から響いた。

 

『聞こえてるかぁ!? アバンの使途どもぉ!』

 既に起きていたダイ達が顔つきを変えて反応する。バダックが補足してくれるが、この声の主が魔王軍幹部フレイザードであると知り警戒心を高める。

 

『いつまでこそこそ隠れてやがるッ、さっさと殺されに出てきやがれ!

 てめぇらは姫様がいつまでも無事だと思ってるようだがそれは考えが甘いぜ! 俺の氷はこうしている間にも着実に生命力を奪ってんだ! つまり、お前らには時間は残ってねぇんだ!』

 

「くっ……!」

 歯噛みをするダイを抑えつつ、言葉の続きを待つ。

『姫様の命は持って明日の日没、それを過ぎたらお陀仏だぜ! 急がねぇとパプニカ王族の氷像が魔王軍に飾られちまうぜ! ヒャハハハ!』

 

 その言葉に全員の顔つきが変わる。

 そんな中、口を開いたのはマトリフだった。

 

「明日の朝、仕掛けるぞ。おい、バダックの爺爆弾は出来てるんだろうな」

「もちろんじゃ! 2つどでかいのが出来たぞい!」

「よし、なら早朝寝静まったころにお前らを島へと送り込む。二手に分かれて結界の外側から爆弾で氷炎の塔をぶっ壊すんだ。火薬なら能力低下の影響を受けねぇが、その代わりお前らも巻き込まれたらただじゃ済まねぇ。気をつけろよ」

 

 夜明けまでは修行の仕上げと肉体を休めることに集中するようにと指示を受け、それぞれは準備に入る。

 

 

 気合が入っているからか、ダイの修行の入りようはすさまじく昨日よりもより高い精度での気の察知をして見せていた。

 悟飯もダイとマァムを相手にした組み手の中で手ごたえを感じていた。

 

(ブロキーナ師匠とは違って技は拙い。けれど気迫と力、そして目標のために頑張る二人と修行してるとどんどん力が馴染んでいく。……ただ体格が近いせいか、トランクスを鍛えている気分になってしまうな)

 

 修行で傷ついてはマリンとエイミに回復してもらい、再び組み手という繰り返し。

 そのハードという言葉では片づけられない過酷さに、ついには賢者二人の方が先にダウンしてしまったことで修行は終了となった。

 

「残りの時間は肉体を休めて作戦に備えよう」

「わかった、ありがとう悟飯!」

「礼はお姫様を助けてからにしよう。それよりちょっと俺は出てくるよ」

「どこに行くの?」

「ここじゃできない修行さ」

 

 

 

 

 悟飯はマトリフの拠点からさらに離れた無人島に降り立つ。

 

「ここなら問題ないかな」

 周囲を見回し人工物が無いことを確認しつぶやく。

(次の戦いは間違いなく過酷なものになる。そんなところに経験不足な俺が参加しても足を引っ張る可能性だってある。そんな場所に生半可な力で行くわけにはいかない。……だから、ここで使いこなす。──(スーパー)サイヤ人を!)

 

 

 両足を肩幅ほど開き、腰をわずかに落とす。

「まずは……はぁ!」

 気の開放を行う。

 白いオーラが身体から立ち上り、足元の地面がひび割れ欠片が重力を逆らい浮かび上がる。

「ここから、さらに……ぐぐぐぐ」

 拳を強く握り込み、腕にも力が入る。

 高まりすぎた気がスパークを起こし、その頭髪が僅かに金色に染まりだす。

 しかしその先の変化は進まず、一度変身を中断する。

 

「はぁっ……はぁっ……、くそ、なんで変身できないんだ! この頃の悟飯ならできてたはずなのに!」

 地面を殴りつけると大きく陥没する地面を苦々しく見つめる。

(いや、わかりきってることだ。俺がこの身体を使いこなしていない事もそうだが、なにより()()()()()()()()という経験がないからだ)

 

 この推察は正しかった。

 彼は肉体こそ孫悟飯であり、気を操る事を掴んでいるが元々喧嘩すらしたことのない温厚な性格だったのだ。それが悟飯の精神と混ざり合いつつある事で戦いに対する忌避感が薄れ、気功波などを放てるようになっているに過ぎないのだ。

 しかしサイヤ人の特性である超サイヤ人に関しては本能にまつわる部分が強く、理性の強い彼にはそれ操るのがより困難になっているのだ。

 

「キレるってどうやればいいんだ。くそ、こんなことで悩むなんて思いもよらなかったぞ!」

 

 その後も何度も繰り返すが結局、超サイヤ人になることはできず僅かに気の総量が大きくなるだけに留まった。

 

 

 洞窟に戻ってくると丁度ポップがボロボロになりながら帰ってくるところだった。

「よお、そっちも随分な格好だな。修業か?」

 修行で道着がところどころ破けた悟飯をみて彼は笑みを浮かべる。その表情は先日までの気弱な顔つきではなくなっているあたり自信をつけて戻って来たのだろう。

 

「ああ、お帰りポップ」

「ちょうど突入部隊について話し合ってるみたいだからよ。俺たちも名乗り出ようぜ」

「そうだな」

 

 2人で洞窟に戻り、ポップの帰還を喜ぶダイ達。またボロボロになった悟飯に驚いて魔法で身体を癒すマリン。

「あまり無理しないで悟飯君」

「すみませんマリンさん」

「いえ……本来私たちがやらなきゃいけない事のために頑張ってくれてる君にこんなことをいうのは筋違いだってわかってるの。でも、恩人である君には傷ついて欲しくないのよ」

 

 マリンの真剣な目に頷く。

「ありがとうございます。ただ無茶はしないというのは難しいです。魔王軍がいる限り心休める場所がないんですから、奴らを倒したらその時こそゆっくり休むつもりです」

「もう……でもそうね、じゃあ私は貴方が傷ついた時に支えられるように魔法の腕を磨いておくわ」

「はは、十分今でも頼りにしてますよ」

 笑って告げるとマリンは頬を赤くしてうつむいてしまった。

 

 

「さて、突入メンバーが決まったぜ」

 マトリフは三派から買ったようなタイミングで話しかける。

 

「まずダイ・ポップ・マァムの3人は固定だ。そして爆弾に何かトラブルが起きたときの対応として製作者のバダック爺さんだ。俺が持ってる釣り用の船はこの4人で精いっぱいだからここで打ち止めだが、悟飯は空を飛べるからお前は空を飛んで同行でいいな?」

 

「はい」

「ポップも一応跳べるんだが、いかんせん覚えたてで今回の速度についていけねぇから船乗りだ」

「ちぇっ」

 引き合いに出されて面白くなさそうなポップが独り言ちるが、マトリフは構わず続ける。

 

「組み合わせはポップとマァムペア、そしてダイとバダックペアだ。こっちに悟飯が入ってもらう」

(バダックさんはあくまで補助、戦闘要員としてはカウントしてないってことか。俺たちのチームは炎魔塔を破壊、ポップたちは氷魔塔か。全力でかめはめ波を打てば結界の外からでも確実に破壊できると思うけどそのあとの戦いを考えると気をむやみに使うのは危険だ。ここぞというタイミング以外は控えよう)

 

 

 その後、打ち合わせをした後仮眠を取り、早朝に出発することになった。

 

 

 

 

「じゃあ行くぞ、振り落とされんなよ。むぅぅぅぅん!」

 マトリフが魔法力だけで4人が乗り込んだ小舟を浮かべると、弾丸のようにバルジ島目掛けて海面すれすれに飛ばした。

「行ってきます!」

「おう、派手に暴れてこい!」

「悟飯さん、頑張って!」

 

 マトリフとマリンの言葉を背に小舟同様に水面ギリギリを飛んで追いかける。

 

 追いつくと船が大破していたが何とか彼らは上陸に成功していた。なぜかゴメちゃんがいることに気づいたが、来てしまった以上帰れとは言えないので見過ごすことにした。

 

(それにしても……止めることを考えてなかったんだな。俺は飛べてよかった……)

 

 二手に分かれ、炎魔塔に向かう。近くにはフレイムが大量にうろついていたがそれらはダイと悟飯に蹴散らされていく。

 2人の間を守られながらバダックが走り、射程に入ったところで爆弾に火をつけ炎魔塔目掛けて投擲。

 

 ……が、それは着弾より離れた位置で何かに貫かれ空中爆発してしまった。

 

「ああ!!」

 

 バダックが声を上げると、どこからともなく癇に障る笑い声が聞こえてきた。

「キィーヒッヒッヒ!! 残念じゃったな人間ども!」

 そう言って現れたのは小柄な老人だった。突き出された手からは僅かに煙が上がっており、爆弾を打ち抜く魔法を放った当人であると察することができた。

 

「わしの名前は魔王軍妖魔師団団長ザボエラ! 貴様らを殺す者じゃ!」

 ザボエラが名乗るとその背後が歪み、そこから白いローブで顔の見えない男が現れた。

「この男は無口での、わしが変わって紹介しよう。こやつは魔王軍魔影軍団長ミストバーン!

 貴様らの稚拙な作戦などお見通しよ。われらが魔軍司令殿は備えとして軍団長を招集し、貴様らを待ち受けておったのよ!」

 

「な、なんだって!? じゃあポップやマァムたちも」

「あちらはハドラー様直々に戦っておられる。今頃死体になってるであろうて!

 ……さて、自己紹介も終わったことだしそろそろ始末させてもらおうかの。こんな子供と死にぞこないの老人どもを殺すだけで功績になるとは安い仕事じゃ。キィーヒッヒッヒ!!」

 

 、その言葉に呼応するように黒い渦が発生し、その中から大量のモンスターが大量に表れた。

 

(悪魔神官にさまようよろい!? ……そうか、妖魔師団ってのはいわゆる魔法使い系の集団で魔影ってのは主に非生命体のモンスターたちか!)

「ダイ! よろいを任せていいか!? 俺は片方を対応する! バダックさんはダイの援護を!」

「っ、わかった!」

「任せるんじゃ! パプニカにこの人ありと言われた剣豪の冴え見せてやるわい!」

 

 

 ダイ達は囲まれる前に前に出て、さまようよろいたちへと突撃した。

 対する悟飯は跳躍し、魔法詠唱を始めていた悪魔神官たちに気弾を連続で放った。

 

「させるか!」

「ぎゃああああ!!」

 

 一気に間合いを詰め、打撃で確実に倒していく。

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 次々倒されていく手下にザボエラは慌てた様子で声を上げる。

 

「何者じゃあやつは!? 報告にないぞ!」

「……」

 

 慌てふためくザボエラに対し、沈黙を守り観察するミストバーン。

 

(さまようよろいは無限と思われるだけ追加で補充されるが、悪魔神官の方はそうもいかないらしい。ならさっさとこっちを片付けてしまおう!)

 

「だぁ────!!!」

 気合と共に空へ飛びあがる。

「とんだ!? 奴は戦士ではないのかッ、なぜ飛べるんじゃ!?」

「…………!」

 

 空から見下ろしたタイミングで大声で叫ぶ。

 

「ダイッ、飛べ!」

「―ッ、はぁ!」

 

 言葉に気づいたダイはバダックを抱えると、ゴメちゃんと一緒に空へと大きく飛び上がる。

 

 右手に気を集中し、突き出すと同時に炸裂させる。

 

「爆力魔波!!!!」

 

 放たれた気の塊は地面に直撃すると激しい衝撃と共にモンスター諸共炎魔塔を吹き飛ばして見せた。

「はぁ……はぁ……」

 やや荒れた呼吸を整えつつ地面に降り立つと、吹き飛んだ地面をみてダイたちは驚く。

「すごいや、みんなふっとんじゃった」

「なんちゅー威力じゃ! でもこんなことができるなら爆弾を使わなくてもよかったんじゃないのか?」

「そうはいきませんよ。炎魔塔の結界で弱体化されてしまうので、通常より多めに気を込めなきゃいけないんで……結構きついんです」

 

 疲労を感じさせる悟飯に二人が気づいて驚いていると……。

 

「よくもやってくれたなぁ! 貴様だけでも殺してやるわぁ!」

 防衛すべき炎魔塔を破壊されたことに怒りを覚えたザボエラがメラゾーマを放つ。

「あっ!?」

 まさかの生存と不意打ちに一歩動くのが遅れ、悟飯へと灼熱が迫る。

 悟飯は片腕で耐える姿勢に入るが……直撃する前にかき消されることになった。

 

「うなれ、真空の斧よ!!」

 

 突然巻き起こる竜巻の壁にメラゾーマは阻まれ散らされる。

「なっ」

 悟飯は思わず驚いて固まる。なんせ、自分の前に現れたのはロモスで大暴れしていたあのリザードマンだったからだ。

「クロコダイン!!」

 

 しかし、ダイは喜色満面といった様子で彼に駆け寄り抱き着く。

「来てくれたんだね!」

「うむ、間に合ってよかった。お前、無事か?」

「……」

 

 無言で立ち上がる悟飯だが、その顔つきは険しい。

 すぐにでも問い詰めたい気持ちはあったが、敵前ということもあって背を向けザボエラたちに向き合うと、数秒のにらみ合いの後ミストバーンが闇に溶けるように消えていった。ザボエラも味方が引いたことに慌てて消えていく。

 

 それを見届けた後、悟飯は厳しい目つきのまま振り返る。

 

「ダイ、どういうことだ? なぜ魔王軍のそいつがここにいる」

「え、あ、ちがうんだよ! クロコダインは仲間になったんだよ!」

 

 その言葉にピクリと眉を動かしリザードマン、いやクロコダインを見つめる。

「本当か?」

「……ああ、失礼だがお前の事は知らない。どこかで会ったのか?」

 

 見た目に反し理性的な態度で話す彼に悟飯は深呼吸して応える。

「ロモス王国にいた」

「っ、そう、か」

 

 短い返答だが何を思っているか伝わったらしく彼の顔は暗くなる。

 

「ご、悟飯……」

「ダイ、お前は黙っててくれ。こればかりはお前でも邪魔させないぞ。ロモスは復興こそしたが、失われた命は戻ってこないんだ。……クロコダイン、あの戦いで何人が犠牲になったかわかるか? その家族が何人いたかわかるか? 100人近い人間が、あのわずかな時間で失われた。生き残っても後遺症を抱えることになった奴だっている」

「……」

 

 悟飯の脳裏に破壊された南の都や北の都が浮かび上がる。

 人造人間たちによって滅ぼされた街には小さな子供や老人と様々にいた。それが奪われた家族の涙を何度となく見てきた怒りがふつふつと湧き上がってくる。

 

(落ち着かなければ……。悟飯の記憶に引っ張られて冷静さを欠くことだけは駄目だ。ああくそっ、次から次へと怒りやら悲しみやらで頭の中がぐるぐるする!)

 

 

「お前が心を入れ替え、ダイの仲間になったのはこいつを見れば事実なのだろうとすぐ理解できるよ。ダイは嘘をついたりするような奴じゃない、なにより人を見る目は確かだ。だけど……戦いが終わったら俺と共にロモスに来てもらうぞ。そして皆の前でしっかりと謝れ……どんな責め苦を受けるかは分からんが、命を奪った以上はこの義務からは逃がさないぞ」

「無論だ、この身はダイ達のために使うと決めた。だが自分の犯した罪からは逃げるつもりもない」

「……なら、今はこれ以上言わない」

「感謝する」

 

 背を向けて、島の中央にあるバルジの塔へと向かうことにした。

 道中、ポップたちのほうにも助っ人が向かっていると聞いてダイはほっとしていたが、何やらこちらをちらちらとみている。

 

「どうした?」

「あ、いや……そのさっきの悟飯ちょっと怖い顔してたからさ」

「──ああ、悪かった。ちょっと思い出してね」

「え、悟飯記憶が戻ったの!?」

「全部じゃないけど、そうだな、戦いが終わったら俺の事を話すよ。今は作戦に集中しよう」

 

 その言葉にハッとした様子で頷くと、少し話し合った結果バルジの中央にある塔へ向かうことにした。

 

 

 バルジの中央塔付近に到着すると、同じタイミングでポップ達も到着した。

「2人とも無事だったんだね!」

「そっちもな! すげぇ音がしたから心配したぜ!」

 ポップとダイが喜び合っていると、マァムが気になることを言っていた。

「ヒュンケルが生きてたの! 彼が私たちを助けてくれたのよ!」

 その名前を聞いたダイたちは喜びを分かち合う。

 しかしマァムたちが来た方角から何やら激しい光が放たれた。

 

「い、今のは……まさかヒュンケルの身に何かが!?」

 マァムが来た道を戻ろうとするが、それを止めるダイ達。きっと心配なのだろうがここで戻るのは足止めのために残ったヒュンケルの思いを無駄にする行為だとクロコダインに諭され、辛そうにだが納得して進むことを選んだ。

 

(……複雑な気分だな。ロモスにとって敵と言える相手なのに、その言葉や性格は非常に好ましいやつだってわかってしまう。かつてのピッコロさんやベジータさんを許した孫悟空(お父さん)はすごかったんだ……いや、孫悟空(お父さん)の場合は単にもう一度戦いたいっていうシンプルな物だったけど。──、何か居る!?)

 

 地面の下に邪悪な気配を感じ、咄嗟にマァムを抱えて飛んだ。

 

「きゃっ!?」

 

 皆が驚く中、地面から声がする。

 そこには先ほどまでマァムが立っていた場所から生えた炎の腕だった。

 

「ちっ、勘のいい奴がいるな」

 そう言って地面から這い出てきたのは右半身が氷、左半身が炎で構成された魔人だった。

 

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