未来悟飯に憑依した男の大冒険   作:ただのトーリ

9 / 10
大地を斬り、海を斬り、空を斬る。そして――

「フレイザード!!」

 ダイは敵を見るなり剣を抜き戦闘態勢に入る。

 マァムを地面に下ろし、構えを取る。

 

「助かったわ」

「ああ、気を付けてくれ。あいつ、勝つためなら手段を択ばない奴らしい」

 

 そんな悟飯の言葉に反応した様子で笑う。

「手段を択ばない!? あったりまえだろうが! どんな戦いだろうと勝てなきゃ意味がねぇタダのゴミだ! そこの負け犬みてぇに誇りだの武人だのと喚こうが、結局負けたら敗残兵だろぉが!」

 

「何っ!?」

 クロコダインが斧を手に構えるが、それを無視した様子で指を向ける。

「ひい、ふう、みい、よ……6匹か。いや、ちいせぇスライムもいるがどうでもいいか。しかしまぁ、魔王軍総出でお出迎えしたってのに誰一人倒せちゃいねぇじゃねぇか。かーっ、ハドラー様も情けねぇなぁ」

 

 ニタニタと笑いながら仲間の事すらあしざまに笑うフレイザード。

 その様子に悟飯は言い知れない気味悪さを感じた。

 

(なんだこいつは……。追い詰められているっていうのにどうしてこんなに余裕なんだ?)

 

「まあ、それだけの敵を俺が仕留めたとありゃあバーン様もさぞお喜びになる事だろうさ! 勝利により一層の箔が付くってもんだぜぇ! ひゃっはぁ!!」

 

 

 突然走り出し、襲い掛かった相手はダイ。

 まさかの行動にダイも驚いて飛びのくが、それを予想してたかのように蹴り上げを腹部に受けて吹き飛ばされる。

 

「ぐあっ!」

 

「ダイ!!」

 

 たたきつけられるダイの元へ駆けつけようとするが、それよりも早くフレイザードの方が早かった。

「でてこい、フレイム! ブリザードども!」

 

 その言葉に合わせて、バルジの塔から無数のモンスターが飛び降りてきた。

 

「くっ、伏兵を忍ばせていたか!」

「当たり前だろうクロコダインさんよぉ! あんたらが救援に来たって情報を集めた時点で、散らばってた手下どもを潜ませていたのさぁ!」

 

 あっという間にあたりをモンスターたちに囲まれ、油断をすると死角から炎や吹雪が飛んでくる危険地帯に早変わりしてしまった。

 

(しかも皆がバラバラなのも最悪だっ! 運よくクロコダインの近くにいたバダックさんは平気そうだが、代わりに彼を守りながら戦うクロコダインは動けない。

 ブリザードはともかく非実態のフレイムを相手にするにはマァムは魔弾銃を使うしかない……けどあれは回数が限られている以上、ポップの援護が必要だ)

 

 しかしクロコダイン・バダックペア以外は皆がバラバラになっていて互いフォローができないでいる。

 ダイはみんなのピンチが気になって戦いに集中できていない。

 徐々にダメージを負っているのがわかる。

 

 

(ここに来る途中で結界の効果は解けてるのは確認済みだ。なら俺が一気に数を減らせれば……けれど、どうしたら……そうだ、クリリンさんのあの技を使えば!)

 

 悟飯は近くのモンスターを蹴散らし空へと舞い上がる。逃がすかとばかりに炎が飛んでくるが、それを振り払って高所へ向かう。

 

「みんな、うまく避けてくれよ!」

 

 腰付近で手を構え、気を高める。

「か……め……は……め……」

「やらせるかあ!」

 

 フレイザードが口からつららのような鋭い氷の刃を放つ。

 それと悟飯の技が放たれるのは同時だった。

 

「波ァ!!!」

 放たれたエネルギー波は非常に大きいが速度があまりない。つららを飲み込み消し去ったのをみるとフレイザードが馬鹿にするように笑う。

「なんだそりゃあ! そんな遅い技、当たるわけ──なんだとぉ!?」

 ダイを追い詰めながらあざ笑うが、言い切る間もなく驚きに固まる。

 

 ノロノロとしたエネルギー波は分裂するとまるで意思を持ったかのように複数のモンスターへと襲い掛かったのだ。

 分散した途端弾速を上げたエネルギー波はモンスターたちに急速に迫る。

 

 

「え……ぎゃ──ー!?」

 

 まさか分裂するとは思っていなかったらしいモンスターたちはモロに受けて消え去っていく。

「こ、これは……」

「すげぇ!」

 

 その時、どこからともなく鋭い衝撃波がフレイザードに向かったことで、それを避けるべく大きく飛びのいたことでダイもまた体制を立て直すだけの時間が稼げた。

「ちぃ! お次はなんだってんだ! ……ゲェ!?」

 フレイザードが目を見開いて固まった先には、頭部だけを出した全身を鎧に身を包んだ銀髪の剣士の姿だった。

「ヒュンケル!!」

「無事だったのね!!」

 

(……この反応からして、みんなの知り合いか! 残って足止めをしていたというのは彼の事だったのか)

「くそっ、てめぇは死んだはずだ!」

「貴様に借りを返すべく、地獄から舞い戻ったぞ。フレイザード!」

 

「……っ」

 

 フレイザードが静かになったタイミングで皆は走り出して1か所に集まる。

「ありがとう悟飯、助かったよ」

「警戒を続けてくれ。多分アイツはまだ何かを隠し持ってるはずだ」

「ま、まじか? 伏兵を倒されたんだからもう打つ手なしなんじゃねぇーの?」

 

 警戒しつつ様子を見ているとポップが思わずつぶやくが、クロコダインがそれを否定する。

「いや、彼の言うとおりだ。フレイザードは直情的に見えて冷静な男だ。勝つためならどんな手段も択ばない奴が手札を一つしか持たないとは思えない」

 

 その言葉が聞こえたフレイザードが肩を揺らしながら笑う。

「よぉぉくわかってんじゃねぇかクロコダイン! そうさ、俺は勝つためなら、いや、より大きな栄光のためならすべてを捨てることができる男だ! ……とはいえ、ここまでやられちまうってのは予想外だったがなぁ。こりゃ観念するしかねぇかもなぁ」

 

「か、観念だって!? 降参するってのかよ!」

「馬鹿言ってんじゃねぇ! 観念するってのは俺が無傷で勝つってことをあきらめるだけさ! これから仕掛ける技は俺にとってもすげぇ痛ぇからなぁ。できりゃ使いたくなかったが……バーン様、我に勝利と栄光を!」

 

 宣言すると同時に体に巻き付けられていた鎖とメダリオンを引きはがした。

 

「な!?」

 ヒュンケルとクロコダインがひときわ大きく驚いた。

「あれは奴にとって命よりも重たい名誉の証のはず! それを捨てるとは……!」

 

 その言葉を聞いた時、悟飯に恐ろしい光景が浮かんだ。

 それはあらゆるベジータやフリーザといった強敵が追い詰められた時、プライドなどをかなぐり捨てたとき見せる末恐ろしい勝利への渇望を思い出した。

 

「くそ、間に合え!」

 

 咄嗟に悟飯はダイ達の前に飛び出し仁王立ちして気を開放した。

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「弾丸爆花山!!!!」

 

 

 直後、フレイザードの身体が炸裂し、無数の氷と火山岩のかけらとなって飛び散った。

 その衝撃はすさまじく、全身を激しく殴り続けられるような痛みが襲っていた。

 

「ぐうぅぅぅ!」

「「「「悟飯!」」」」

「だ、ダイ……気をつけろ。まだ終わってない! 気を探れ!」

 攻撃を受けながら叫ぶと、彼はハッとして目を閉じて集中を始める。

 

「ほ、本当だ! フレイザードはまだ生きてる!」

「うっそだろ!? 自爆してもまだ生きてるなんて!」

 

 その声に反応するように、周囲からフレイザード声が響く。

 

「その通りさ! この一つ一つが俺だ! 今更お前らに勝つ見込みはねぇ!!」

「いや、ある!! ……アバン先生が言ってた、お前みたいな魔法生物は必ずどこかにコアを持っているって! それさえ壊せばお前を倒せるはずだ!」

「ひゃははは! それがわかったところで不可能に決まってる! この無数のかけらから小さな俺のコアを切るなんて出来っこねぇ!!」

 

 通り抜けた無数の氷炎弾丸が再び迫ってくる。

(こうなったらかめはめ波を全力で打ち込んでコアを巻き込むまで繰り返すか!? ……いや駄目だっ、氷漬けにされてるというパプニカのお姫様が砕けでもしたら最悪だ! ピンポイントでコアを狙わなきゃだめだッ……くそ、まさか一つ一つすべてに奴の気が宿ってるなんて予想外すぎる!)

 

 するとダイから声が挙げられる。

 

「悟飯! 少しだけ、少しの間だけ時間を稼いでくれ!」

「ダイ……!」

「もう少しで掴めそうなんだ!」

「──わかった!」

 

 悟飯は気を高める。負った傷やそれまでに技を使ったこともあり、やや気が減っているがそれでも時間稼ぎをするには十分な量があった。

 

「はぁぁぁっ!」

 迫る弾丸を拳や足で次々と打ち砕いていく。しかし砕けば砕くほどフレイザードの操れる物体の数が増えていく現状に、ひたすら生傷が増えていく。

 

 ポップやクロコダイン、そして助っ人だというヒュンケルという男も必死に応戦しダイへと迫る弾丸を身を挺して止める。

 すると、背後のダイが構えている剣に強い気が集まっているのを感じた。

(来る!!)

 気配に合わせて跳躍し、ダイの正面から飛びのくと同時に彼は居合のように剣を抜き放った。

 

「ここだっ! アバン流刀殺法……空裂斬!!」

 迫りくる無数の氷炎弾丸を掻い潜り放った一撃は、見事にフレイザードのコアを切り裂いた。

 

「ぎゃあああああ!!」

 悲鳴を上げてもだえ苦しむフレイザード。本来相反する氷と炎をつなぎ合わせるコアが失われたことで、左右の身体が消滅しかけたのだ。

 そこで苦肉の策として分離させるが、そこをポップが熱閃魔法(ベギラマ)で追い打ちし氷の肉体を完全に消し去ってしまったのだ。

 

「く、うぅ……!」

「フレイザード、覚悟っ!!」

 

 形勢不利と知り慌てるフレイザードだが、仕留めるために切りかかったヒュンケルを弾き飛ばし奴の窮地を救うものが現れた。

 

 黒い渦から、まるでにじみ出るようにして現れたのは白いフードに顔が隠れた魔王軍魔影軍団長、ミストバーンである。

 フレイザードは恥も外聞もかなぐり捨てて助けを求めるとミストバーンは巨大な鎧を黒い渦から取り出して見せた。

 

「これを、使え」

「これは……」

「これは魔影軍団最強の鎧。貴様自身を暗黒闘気……つまり魔炎気と化す覚悟があるのならばこれをやろう」

「なにぃ!? それはてめぇの部下になれってことかよ! 俺ァ嫌だぜ!」

「要らないのならば、いい」

 

 そう言って立ち去ろうとするミストバーンに慌てて止めに入り、確認するようにつぶやく。

「これを使えば……勝てるんだな」

 

 その言葉にミストバーンは静かに、だが確かに頷いた。

「わかった、やってくれ!」

 

 その言葉に応えるようにミストバーンが手をかざすと、残されたフレイザードの身体の炎が鎧へと吸い込まれ、残された瓦礫がボロボロと崩れ落ちる。

 

 直後、鎧が激しい音を立てて組み上げられあっという間に2メートルを超える巨漢の鎧へと変わっていく。

 そのヘルムの奥にはフレイザードの凶悪な眼光が怪しく光る。

 

「すげぇ……力がみなぎってくるぜ!!」

 鎧の隙間から炎を溢れさせると、不意にバダックを襲う。

「危ない!」

 クロコダインが鎧化(アーマード)フレイザードの拳を両手で受け止める。

「ぐうぅぅぅ!?」

「そぉら!!」

 力で押し付けると、クロコダインの足場が崩れバダック諸共吹き飛んでしまった。

「ひゃははは! すげぇ力だ! あのクロコダインにも負けやしねぇ! ──お次はァ!」

 踵を返しポップとヒュンケルへと迫る。

「べ、ベギラマ!!」

 

 カウンターとばかりに魔法を放つがそれを受けてなお、フレイザードは突撃する。

「魔法が効かねぇ!? ……うわああ!」

「まさかこの鎧は! ……ぐあああ!」

 

 

 ポップを庇うがヒュンケルも共に吹き飛ばされる。

 

「魔法も効かねぇ上に早いと来たもんだ! この鎧は最高だぜミストバーンさんよぉ!」

 

 上機嫌に笑うフレイザード。

 

 すると空を飛ぶ悟飯と静かに身構えているダイに向き直り構える。

「今度はてめぇらだ。さんざんやってくれた仕返しさせてもらうぜ……!」

 ダイの隣に降り立ち援護をしようとするが、それよりも先に「ここは任せて」と告げられる。

「危険だ、ダイッ」

「わかってる。でも負ける気がしないんだ」

 

 その横顔に、記憶の中にある孫悟空の面影が重なった。

 自信に満ちた堂々とした横顔。それに悟飯は思わず言葉を失い、任せるように下がった。

 

「負ける気がしねぇだ!? どこまでも舐め腐ったガキだぜ! このパワー、魔法の利かない鎧、速度! ……これで負けたら、馬鹿だぜぇ!!!」

 

 

 殴りかかるフレイザードにポップやマァムから「危ない!」と声が上がる。

 

(いや、平気だ)

 間近で見ていた悟飯はダイの勝利を確信した。

 

 そしてそれはヒュンケルも同じだったらしく、ダイの動きが完全にフレイザードをとらえている事を口にする。

 

「地を斬り、海を斬り、そして空を斬る。……完成したんだ、あの技が!」

 

 

「くたばれぇぇぇぇぇ!!!!」

 足を止めたダイに殴りかかるフレイザード。

 対するダイは剣を逆手に持ち身体の後ろへと引く。そして一気に降りぬいた。

 

「アバンストラッシュ!!!」

 

 驚異的な力の奔流がフレイザードを粉砕したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。