単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか?   作:一般通過害悪

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ということで2月になりました。
投稿です。
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一話の加筆修正を行いました。
変更点として、アルの身体についての言及ですね。
変更理由としまして、設定の辻褄合わせだと思ってください。
一応、生々しい描写は避けて軽くしています。
気になる方は、一話を確認してどうぞ。

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前回のあらすじ
レグナントとアニスの会話。
アルはヘラと会話。
レグナントとの定期的な模擬戦。
この三つ。

今回は中層へ行きます。
一部グロ要素があります。残酷な描写タグはこう機能してます。


少年、中層へ踏み入る。

ヘラ・ファミリアへの訪問から数日後。

 

アルはダンジョンに挑むべく、バベルへ向かっていた。

 

上層(1〜12階層)は、もう十分に理解したため。

あと、怪物進呈を受ける前の目標として中層に降りるつもりだったので何ら不思議なことではない。

 

中層に向けての情報はこの数日で頭に入れている。

中層(13〜24階層)は。最初の死線(ファーストライン)と呼ばれている階層域。

ギルドの定めている適正基準はLv.2。

 

上層との違いとして。

モンスターの強さや遭遇率が格段に上がり、更に出現するモンスターも徒党を組み襲ってくるタイプや魔法に近い遠距離攻撃を繰り出してくるタイプも出現すること。

 

確認されているモンスターの情報を挙げる。

ミノタウロス

アルミラージ

ヘルハウンド

ライガーファング

ダーク・ファンガス

ガン・リベルラ

バグ・ベアー

バトルボア

等など。

 

17階層では、階層主ゴライアス出現する。

18階層には、安全階層「迷宮の楽園(アンダー・リゾート)」と呼ばれる〝リヴィラの街〟が存在。

 

要注意事項として。

 

15階層から、レベル1では勝てないミノタウロスが出現する。複数パーティーであっても危険な為、注意しよう。

また、逃げも選択肢の一つとしてある。

 

 

(……肩慣らしは数日でやったし油断せずに行くとしよう)

 

アルは、そう思いながら新たな階層へ向かっていく。ということで、あっという間にダンジョン12階層まで降りてきた。

 

ここまでの道中でモンスターと邂逅すること数十回……戦闘せずにここまで来た。

不自然な所は特になく。

 

(さて、ここを降りると13階層だが、振り返っとくか)

 

大前提として、アルは単独であり万が一にも、命に届くほどの重傷をもらった場合、誰かの救いの手は望めない。

 

加えて、スキルの効果によって、レベル2相当に押し上げられている事によるズレの修正も把握している訳ではない。

 

この、〝誤差〟と言うのは、〝スキルが発動していない時の自分〟と〝スキルが発動している自分〟についてだが、今はいい。

 

さて、中層を潜る上で注意すべき点は三つ。

 

1自身の限界を正確に把握する。

2手持ちの物資を逐一確認する。

3逃げという手段を持つ。

 

挙げるならこれだろう。

 

「フゥー……………行きますか」

 

 

 

過去の自分を振り返りながら、アルは、中層への入り口に踏み入れる。

 

ゴツゴツした岩肌が続く下り坂。

その先が『最初の死線』と呼ばれている『中層』が待っている。

しばらく、するとじめついた空気が頬を撫でた。

 

(予想以上にじめついてるな………まぁ、コレが本来の洞窟だから想定通りだが)

 

 

至る所に灰色の岩石が転がっており、壁や天井も同じ色の岩で形作られている。

 

上層と比べると通路こそ、広いが暗く、壁際には所々縦穴が見える。

 

(地形は情報通りだな。縦穴に落ちると真っ逆さまだから気をつけよう。それにしても)

 

上層は、人工っぽさがあったが中層は明らかに、天然っぽさがある。

 

だから、何かあるというわけでないが。

話は反れるが、中層では、鉱石の発掘が可能となっている。

ダンジョン産の鉱石は武器や防具は勿論、記念品として加工しても良く、結構な値段になるものが多い。

 

それ故に、冒険者ギルドで受注している依頼の中では、現状、鉱石の採取の依頼が最も多くなっている。

 

もちろん、中層は危険度が高い為報酬も非常に良いと言ってもいい。

 

中層からは、ルームとルームの間隔が長くなる。

さっさと、進んでいこう。

全身の感覚を研ぎ澄ませ、周囲の気配を探る。

 

(……いる)

 

前方、約二十メートル先に三つの気配があり、こちらに向かって来ている。アルは鞘に手を置いた。

 

「グルルルル……」

 

低い唸り声が、前から響いた。

四足歩行の影が3つ。

現れたのは〝ヘルハウンド〟。

 

『ガアアアアアア!!』 

 

ヘルハウンドが鋭い牙が生えた口を大きく開けて吠えた瞬間、アルは縮地を行いトップスピードを維持して眼前に迫る。

 

中央にいたヘルハウンドを間合いに抑え一瞬の居合を抜き放つ。

 

シュッ!

 

アルの居合は、そのまま中央に居たヘルハウンドの首を容易く刎ねた。

無論、右と左のヘルハウンドが行動を起こす。

カパッと口を開けた。

 

(火炎放射……)

 

アルは直ぐ様、両袖に忍ばせて置いた六角を両方のヘルハウンドの開けられた口に目掛けて放つ。

 

『ギャン!?』

 

完璧なタイミングで放たれた六角は正確にヘルハウンドの喉元に突き刺さった。

 

それは、ヘルハウンドの十八番である火炎放射の実行が中止されたことと同義。

そのまま、困惑しているヘルハウンドの首元をアルは流れるように跳ね飛ばした。

一段落して、残ったのは3体のヘルハウンドの魔石と六角である。

それらを回収をしてアルは息を吐く。

 

「ふぅ………」

 

(やっぱり、遠距離型にはこう言う小細工が効くな……)

 

拾った六角を再び、袖に忍ばせながら、アルはそう思う。暗器の使い方は外での旅の合間にある使い手に教わっている。

 

暗器は良い。

相手の意表を突くことができ、いざという時に忍ばせておくことが可能であるため。

 

他には、魔法の使用を控えることが出来るので精神疲労の対策としてもってこいである。

 

これは、これまでの上層での戦いとは違い、中層のモンスターとの戦いでは、遠距離型が増えてくるため拵えていくとする。

そんなことを思いながら、ルームに到着。

 

と、同時に劈くような鉄の臭いが鼻に香った。

そこには、何かを取り囲むように複数の影が存在している。

 

(小さな角に二足歩行の兎………アルミラージだな)

 

手には、天然武器である手斧の他……モンスター風情には不釣り合いなほど手入れがされている剣や杖がある。

 

ぐちゃぐちゃ、くちゃ

 

ナニカを咀嚼する不気味な音がルーム内で木霊する。

数は10。

音から察するに、アルミラージは肉を貪っているように思えた。

それが、何の肉かは定かではない。

 

だが、旅の合間で多くの戦場を渡り歩いたからこそ、アルにはそれが何の肉かが分かってしまう。

幸運なことに食事に夢中である為か、アルミラージはコチラに気づいていない。

 

(……こっちには気付いてない………だとすると)

 

アルは、雑念を取り除くために深呼吸を行う。

自身を落ちつかせる為に。

 

そして、自身が有する短文魔法を行使する。

 

疾風(エアリアル)

 

全身に風が纏われる。

アルは、一瞬で加速した。

 

最初の一体の間合いを侵略し打刀を抜き放ち、首を斬り飛ばす。

灰が舞い散る間もなく、次へ。

 

二体目、三体目。

 

横薙ぎの一閃。二つの首が宙を舞った。

 

「ギ!?」

 

ここで、ようやく、アルミラージたちがこちらに反応する。

しかし、遅い。

 

四体目が剣を振り上げる――その手首を、斬り飛ばし流れるように、胴を両断。

 

四体目のアルミラージは悲鳴を上げる暇も与えられずに灰と化す。

 

五体目、六体目が同時に襲いかかってくる。

地を蹴り右へ跳躍。

 

そのまま、壁面を蹴り、空中で体勢を整え袖から六角を二本、投擲。

 

二本とも、正確にアルミラージの眼球に突き刺さった。

 

『ギャアアアア!!』

 

疾風(エアリアル)

 

怯んだ隙に、空中で魔法を纏いながら突貫、首を刎ねると同時に着地。

 

七体目が杖を構える――魔法の詠唱か。

 

迷わず先程、拾った六角を投げた。

六角は正確に喉元に突き刺さる。

 

そのまま、一瞬で間合いを詰め打刀で首を斬り裂いた。

 

残り二体が、こちらに向かってくる。

 

アルは、冷静に間合いを測った。

一体が手斧を振り下ろす。

横に避け、カウンターで首を刎ねる。

 

最後の一体が、背後から襲いかかってくる。

アルは、振り返りもせず、袖から六角を逆手に取り、後ろに突き出した。

 

ズブリ。

 

アルミラージの喉に深々と突き刺さる。

 

そのまま、手を六角から離して、振り返りながら右手で打刀を抜き放ち、首を斬り飛ばした。

 

十体全てが、灰となって消えた。

アルは、静かに息を吐いた。

 

魔石を回収しながら、奥に目をやった。

そこに、あったものは。

 

「やっぱりか」

 

四人の冒険者。

全員が倒れている。血溜まりが広がっている。

 

アルは感情を押し殺し、冷静に観察した。

 

一人目、前衛なのだろう。重装の鎧を着ているが、胸から腹にかけて大きく裂かれている。

内臓が覗いており、既に息はない。

 

二人目。中衛だろうか。

片腕が肩から千切れ、顔の半分が潰れていた。

武器は見当たらない。

察するに、アルミラージたちが持っていた武器の中にこの人物の得物があるのだろう。

 

三人目。後衛だろう魔導士の装束を身に纏っている。

致命傷は――喉。深く抉られ、即死だったと思われる。

 

四人目。

軽鎧とからおおよそ弓兵だろうことが分かる。

腹部に深い裂傷それにより血が流れ続けている。

 

だが、他三人に比べて、命に届くほどのものではないように見える。

 

アルは、すぐに駆け寄った。

脈を取ってみると………僅か、だが血液が流れている事が分かる。

 

一瞬、迷ってしまう。

ここで救助を選択すると、これ以上の探索が出来ない。

加えて、地上まで守りきれるのかが分からない。

 

数秒の思考のあとで、アルが出した結論は。

 

「……治癒(ヒール)

 

救助である。

回復魔法を発動させる。淡い光が女性の腹部の傷口を包み込む。そのまま、裂傷がゆっくりと塞がっていく。

 

傷口については、何とかなったが。問題はここから。

 

(俺の魔法じゃ。コレが限界だ。取り敢えず、探索はきり上げて地上に戻ることにしよう)

 

アルはそう、判断して、他三人の遺体から、身元が特定できるだろう背中のファルナが刻まれた皮膚を削ぎ取り、回収を行う。

一通り、回収を終えて、生存の可能性が高い女を米俵持ちにする。

 

救える相手は救う。これによって起こる利点は多くあることを、これまでの旅で既に知っている。

 

それに……()()()()()()()()()()()()()

 

それが、アルをこちら側に留めている最大の理念であるから。

 

 

 

 

 

あの後、アルは無事に地上に戻ることが出来た。

ここで、新たなにスキルの効果の発動条件が絞られた。

 

背に女を背負っていたのだが、スキルである〝孤高の道標(インサニア・ループス)〟は正常に発動していた。

 

これは、知人ではないからなのか、意識が無かったからなのか、定かでは無いが好都合この上なく、地上まで戻ることが出来た要因の一つである。

 

そのまま、治療院の一つであるディアンケヒト・ファミリアに女と他二人の身元が分かるだろう皮膚の入った袋を預け、拠点へと戻った。

 

 

「おっかえり〜」

 

拠点に戻るといつもと変わらない神の声が聞こえた。

 

「ただいま帰りました」

 

「今日は随分と早いじゃん…………どうしたの?」

 

ベットにてゴロリと、転がり体勢を整えこちらを見て……オオクチ様はアルの様子にそう質問をした。

 

加えて、夕方過ぎに帰って来るのがいつもであるアルが、昼頃に戻ったことを不審に思ったのだろう。

 

「簡潔に言いますと、他の冒険者を助けました」

 

「助けた……ねぇ?」

 

「はい」

 

そのまま、アルは軽く説明を行う。

オオクチ様は相槌を打ちながら聞いた。

 

「うーん。普通、ダンジョンでは他の冒険者たちとは関わらないのが鉄則なんだけど………まぁ、よくやったと思うよ」

 

そう、冒険者は、ダンジョンの内部での交流は基本的にしないことが一種の常識となっている。

というのも、ダンジョンの内部では、何があるかは分からず、正確な情報を仕入れる事が難しく。

 

言ってしまえば、要らぬ諍いなどを起こさない為と考えて貰っていい。

 

アルは尋ねる。

 

「えっと、一つ、確認なのですが、今後もこういった事が起こった際には助けようと思うのですが構いませんか?」

 

「ん? 無論さ。初日にも行った通り、このファミリアの全権は君が持ってる。君がこうだと言う方向に舵を切るといい。私はあくまで君に恩恵を与え、更新を行う窓口みたいなものだからね。だから、君がそう判断したならそうするといいさ」

 

そう言いながら、オオクチ様はベットから飛び降りて綺麗な着地すると、てちてちとアルの方向に歩み寄ってくる。

 

そのまま、アルの元に来る。

 

「それは、そうとして、その助けた女性について教えてもらっていいかな?何処のファミリア?」

 

「……それは、分かりません。なので、治療院の方に目が覚めたら連絡するように、ここの住所を書いた紙を渡したので連絡が来るかと思います」

 

「なるほどね。おっけ。じゃあ、それに関しては一応、置いておこう!………更新はどうしよっか?」

 

「更新は………そこまで、戦ってないので大丈夫です。今日は休みます。もちろん、夕食は作るので安心してください」

 

「あっ、うん。しっかり休みなよ?」

 




孤高の道標《インサニア・ループス》の効果発動条件について。
・三つの柱
物理的条件: 意識のある仲間、守護相手が近くにいない
心理的条件: アル自身が一人だと認識
状況的条件: 協力・共同作業をしていない
ーー
今回の、ダンジョンでの救助する描写を描いた理由としては、こんな感じでアルはある程度助けてますよ的な感じを見せたくてです。
こんな感じで描写しないだけで、いろんな人間を助けてるよと思わせたく。

因みに、この四人パーティーの壊滅理由としては単純に運が悪く……言い換えれば、ダイスで言うファンブルが積み重なったことによるものと考えてください。
この件に、闇派閥は何の関係もありません。
現実は残酷だね。
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補足として、アルミラージが杖を構え、アルが魔法か?と疑いましたが、アルミラージはそれっぽく構えただけで魔法を使えませんでした。所謂、アルの深読みの描写となっています。
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明日は、もう一話ぐらい投稿出来ると思います。
ダンジョンでのトラブルについてはその一話で描写させていただきます。
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