単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか?   作:一般通過害悪

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そう言う感じで投稿です。
前回の振り返り
・黒いミノタウロスに勝った。
・闇派閥らしき男
・新たなスキルを手に入れた。
ーー
軽い今回の説明。
前回の冒頭から始まります。
18階層に降りたアルを待ち受けて居たのは、先日、別れた男だった。男は、アルに何か提案があるようだが………

ということで、本編どうぞ


少年、男とパーティーを組む

 

「やっほ。昨日ぶりだね」

 

18階層にある安全階層、『リヴィラの街』に降りたアルを待ち受けていたのは、昨日、別れた黒いローブの怪しい男だった。

 

石造りの街並みが広がる安全階層。冒険者たちが行き交い、商店が軒を連ね、酒場からは笑い声が聞こえてくる。その雑踏の中、男は壁に寄りかかり、まるで待ち合わせをしていたかのように立っていた。

 

アルは足を止めた。

 

(……待ち伏せ?)

 

警戒心が一気に高まる。だが、不思議と男に()()()()()()()()()

 

「こんにちは」

 

アルは短く返した。

男は壁から身体を離し、アルに近づいてくる。フードの奥から覗く紫色の瞳が、じっとこちらを見ていた。

 

「ハハッ、そんな警戒しなくても大丈夫さ。言っただろう? すぐに会うことになる……ってね」

 

だからと言って、出会うのは早すぎるだろう……そう愚痴りながら男に言う。

 

「それでなんの用でしょうか?」

 

「いや、ね?昨日は君が途中で寝ちゃって楽しくお喋りが出来なかったじゃん?」

 

「そうですね」

 

「だからさ、今日は改めて自己紹介しようかなーって思ってね」

 

男はフードを捲った。

やや長めの黒髪と整った顔立ち。肌は異常な程に白いので、どこか病的な印象を受ける。そして、覗かせていた深い紫色の瞳。

控えめに言っても若々しい好青年のように見える。

 

「俺はヴェイン・アッシュ。アッシュが家系でヴェインが名前さ。気軽にヴェインと呼んでくれると嬉しい。よろしくね、少年」

 

「……ヴェイン・アッシュですか」

 

アルは家名を聞いて何処か引っ掛かりを覚える。アルの反応を待つまでも無くヴェインは続ける。

 

「………あっ、君の自己紹介は大丈夫さ。()()()()()()()()()

 

アルは眉をひそめた。

 

(こっちのことは調べられている……当然か)

 

「さて、ここで、君に二つの選択肢を与えよう。」

 

そう一方的に告げるヴェイン。

 

「一つ、このまま僕を無視してリヴィラの街に入る。二つ、俺に付いて来てこちらの用件を聞く……って、ところかな?」

 

人差し指と中指の二つを立たせながらヴェインはアルに選択を迫る。

 

「どちらでもいいけど………二つ目が俺的にはおすすめ。なんてったって、()()()()()()()()()()

 

ヴェインは、妙に含みを持たせた言葉を発してアルにそう告げた。

その選択肢は、拒否権があるように見えて明らかに無い。それは、なぜか。

 

この男から感じる気が、へラとゼウスにて確認した第一級冒険者相当であるからだ。

 

加えて、隠す気がないのか、あからさまに闇派閥の関係者だ。

ここで自分が提案を断りでもすれば、何をするのか、分かったものではない。

 

「……分かりました」

 

アルの判断に、ヴェインは、にやりと笑った。

 

「おっけー。じゃ、付いて来な」

 

二人が向かったのは、街の外れにある小さな酒場だった。冒険者で賑わう大通りの店とは違い、ここは静かで落ち着いている。客もまばらで、奥の席なら人目を気にせず話せそうだ。

 

ヴェインが店員に軽く手を振り、奥のテーブルに案内された。この事実から、アルは小さく舌打ちをした。

 

二人は向かい合って座る。

 

「何飲む?」

 

「……水で」

 

「マジで? つまんないなぁ。まぁいいけど」

 

ヴェインは店員に水とエールを注文した。

しばらくして、飲み物が運ばれてくる。

 

アルは水の入ったコップを傾ける。無論、飲んだふりである。

アルからすれば、知りもしない男の連れてこられた場所だ。

故に、疑い、慎重になるのは自然なことだろう。

 

「それで、要件は?」

 

「おっと、せっかちだねぇ」

 

ヴェインはエールを一口飲んで、ふぅ、と息を吐いた。

 

「まぁ、いいか。単刀直入に言うよ」

 

紫色の瞳が、アルを捉えた。

 

「パーティー組まない?」

 

「……は?」

 

アルは、一瞬、何を言われているのか理解できなかった。

 

(パーティー……だと?)

 

ヴェインは、絶えずにこにこと笑っている。

 

「いやさ、君、ソロで潜ってるでしょ? それって結構危ないと思うんだよね。だから、俺が一緒に行ってあげようかなーって」

 

「……断ります」

 

即答だ。

アルにとって、ソロは絶対条件。

スキル【孤高の道標】は単独行動時に真価を発揮する。誰かと組めばその恩恵は失われてしまう。

それとは別に、背中を預けるに足りるほどの信用が目の前の男に持ってない。

 

無論、旅でこう言う手合いとは何度も共にして来た勘がこう言っている。

 

コイツだけはダメだと。

 

「あっ、やっぱり?」

 

ヴェインは全く動じなかった。

まるで、最初からこう言われていることが想定していたというように。

 

「まぁ、そう言うと思ったけど。でもさ、俺にも事情があるんだよ? もちろん、君とっても悪い話じゃない筈だ」

 

「…………続けてください」

 

「おっけ。実はね、俺の主神様から命令されてるんだ。簡単に言えば、君を監視しろってやつね」

 

アルの目がわずかに鋭くなった。

ヴェインは変わらず軽薄な笑みを浮かべている。

 

「そこで俺はこう考えたんだ。どうせ監視するなら、近くにいた方が楽じゃんって。………君とっても悪い話じゃないだろ?……君も知らないところで見られてるより、目の前にいた方がマシじゃない?」

 

「……」

 

アルは、黙って考えた。

ヴェインの言う通り、知らないところで見られているよりは、目の前にいた方がまだマシである。少なくとも動きは把握できるのだから。

 

繰り返すようだが。

アルは、素性の知れない者と利害関係だけで行動を共にしたことは一度や二度ではない。

故にある程度の立ち回りは経験がある。

 

「それにね。パーティーと言っても、君の戦闘には関与しない……あくまで、傍観者として同行するってだけさ。それに、ここに付いて来た時点で、君が取れる選択なんて限られているんだよ」

 

さらに煽るような声に、アルはゆっくりと返答の言葉を行う。

 

「……条件があります」

 

「おっ、イイね」

 

煽ってくるヴェインを無視して淡々とアルは言う。

 

「一つ目、アナタ自身が言ったように俺の戦闘に関与しないこと」

 

ヴェインは、にやりと笑った。

 

「おっけー。それでいいよ。君の邪魔をする気はないしね」

 

「もう一つ」

 

「うん」

 

「魔石やドロップアイテムは分配はなし。つまり、アンタが倒した魔物の魔石やドロップアイテム等は俺に寄越せ。それで良いならパーティーを組んでやっていい」

 

ヴェインは一瞬信じられないものを見るような目でアルを見て、心の底から面白いのか深い笑みを零した。

 

「ハハッ、良い性格してるね!」

 

「それで? どうしますか?」

 

アルの言葉にヴェインは戸惑うことなく言葉を繋げる。

 

「いいよ? 別にお金には困ってないからね」

 

そのまま、明日の打ち合わせを行い解散となった。

 

 

 

翌朝。

 

リヴィラの街の宿屋を出たアルは、約束の場所へと向かった。街の中央広場、噴水の前。ヴェインは既にそこにいた。

昨日と同じ黒いローブ姿で、フードを深くかぶっている。

壁に寄りかかり、軽く手を振った。

 

「よう、おはようさん」

 

「おはようございます」

 

アルは軽く会釈した。

 

「準備はいいね?」

 

「問題ありません」

 

「おっけー。じゃ、行こうか」

 

二人は、19階層へと続く階段へと向かった。

階段を降りる。

石の壁が続く螺旋階段。魔石灯の光が、わずかに道を照らしている。

 

(今のところ違和感はないな)

 

アルが気にしているのは、『孤高の道標』が発動しているかどうかだ。

ただ、今のところの違和感は皆無に等しい。ここから考えるに、真の意味で信頼や信用が出来てない相手では発動するという事実が分かった。

 

(まぁ、戦ってみれば分かるか)

 

「そう言えばさぁ」

 

アルの思考を乱すようにヴェインが言葉を発する。

 

「うちのファミリアについての愚痴なんだけどね」

 

「……聞いてもいいものなんですか?」

 

咄嗟のことに、ふとそんな言葉が漏れてしまう。謎だらけの男の素性を知れる機会なのだからそんな無意味なことを聞かずに黙って聞けばよいものをと自分自身で思いながら失言に呆れる。

 

だが、ヴェインはこちらの気を知っていて無視しながら独り言のように続けた。

 

「とある日に、夜更けに叩き起こされたんだ。……あっ、主語が抜けてるね。叩き起こしてきたのが、うちの団長様なんだ。んでね。なんで俺を起こしたと思う?」

 

「………なんか重要なことでもあったのでは?」

 

突然話を振られて面白みのない返答をしてしまうアル。それに、ヴェインは首を横に振る。

 

「単純さ。枕元に虫が出たんだ。ああ、もちろん出たのはみんなの嫌われてる黒いアレね」

 

思い出し笑いをしながら、ヴェインは続ける。

 

「こっからが本質なんだけど。俺が不満なのは、その団長様がやった行動が問題なんだ。なんと、俺をつまみ上げて廊下に放り投げ、俺のベットを占領しやがったんだ。アレは婚期を逃すタイプの女だよ。間違いない」

 

ヴェインは肩をすくめた。

 

「んで、俺は仕方なく廊下で寝たわけ。石の床で、毛布一枚。朝起きたら身体バッキバキ。最悪だったよ」

 

「……大変でしたね」

 

アルは無難に返した。

ここから、訳が分からない会話を永遠と投げてくるヴェイン。

なんか思惑があるのか、それとも単純に人と会話が慣れておらずに、一人語りになっているのか。

アルは、おそらく後者であると結論付けた。

 

「そ〜、マジで、うちのファミリアって大変なのよ。この前だって下がヘマを尻拭いしたり、幹部勢が調子乗って爆破しようするのを止めたり………主神に至っては威厳も理念も持ってるくせに結構行き当たりばったりで人使いの荒いし。ほんとめんどい」

 

愚痴を言いながらも、ヴェインの声には怒りも恨みも感じられない。自分のことをまるで他人事のように語っている。

 

(こいつ………)

 

アルは、男の風体を着実に肉付けを行えていく。

 

そんな、ヴェインの愚痴吐きを聞きながら数分程度歩いていくと、モンスターが現れた。

それはバグベアー群れだ。

 

数は十五。結構な多さだが、こちらに気付いては無さそうである。

バグベアーとは、クマ型の魔物である。全身が毛皮で包まれており斬撃に於いて高い耐性を持っている。ミノタウロスを少し強くした感じの魔物である。

 

「あ〜らら。結構多いね。大丈夫? 手伝おっか?」

 

「……いりません」

 

アルはそう言いながら、『疾風』身体に纏いながら鞘に手を掛け群れに向けて突っ走る。

 

先ずは、一匹の懐に潜り込み〝神威〟を使用することで首を跳ね飛ばした。

 

他、バグベアーはやっと反応して、アルに向けて襲いかかってくる。

 

「シュ………」

 

右、左、正面、背後、アルはその全てを回避する。

 

(集中力を上げろ)

 

既に、行動パターンは脳に叩き込んだ。

斬撃についても通用する。

 

カウンターを一切の迷い無く行う。

 

六角………暗器を使わないのは、単純に毛皮相手には刺さりにくいという判断からだ。

 

「やっぱり、凄まじいねぇ」

 

ヴェインはアルの戦いを見ながら、壁に寄りかかったまま呟いた。

 

その声には、感嘆も驚きもない。ただ、観察者が、興味深い実験結果を眺めるような冷めた響きだ。

 

(レベル1であの動き。……()()()()()()()()()()()()()()()()()。加えて、あの魔法の連発…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なるほどなるほど……と言うか、隠す気がまるで感じないよね。彼。僕にとっては都合が良いんだけど……なーんか引っかかる。まぁ、これで主神さまでドヤされることは無いし…………うーん。まぁ、いっか)

 

 

アルは戦闘に集中している。

二匹目のバグベアーが巨大な爪を振り下ろすが、アルは半歩だけ横に踏み込むことで爪を躱す。

そのまま、流れるように『竜風』を抜き放つ。

 

「二つ目」

 

バグベアーの首が宙を舞う。

 

三匹目、四匹目が同時に襲いかかる。

アルは、地を蹴り、3匹目と4匹目に向かって身体を発射する。

 

「〝双牙〟」

 

一瞬の居合で、一匹の首を跳ね飛ばし刃を翻すことで斬撃を放ち、首を跳ね飛ばす。

 

五匹目、六匹目が咆哮を上げながら突進してくる。

冷静に間合いを測り、回避とカウンターを両立させる。

無駄な動きは一切ないと言っていい。

 

バグベアーは戦闘方法は、連携などはなく全てが力任せ。

そのため、見えやすく分かりやすい。

 

バグベアーを屠りながら、一つ確信が持てた。

 

(……やはり、発動している)

 

それは、『孤高の道標』のスキルの発動だ。

特に違和感無く、いつもと同じように動けているから。

 

(ヴェインが近くにいても、スキルは機能する)

 

つまり、

 

(ヴェインは『仲間』として認識されていない、ということか)

 

スキルの発動条件を知ることが出来たということは、今後の動きも考えれる。

利害関係で繋がっただけの、一時的な協力者であれば一緒に潜って居ても問題無いと言うことなのだろう。

 

十匹目、十一匹目。

アルの刃が、容赦なく首を刎ねていく。

 

残り四匹。

バグベアーたちは、明らかに怯え始めていた。

後退し、距離を取ろうとする。

 

「逃すかよ」

 

アルは、追撃を緩めない。

温存していた六角に疾風を纏わせバグベアーに向けて投擲。

寸分の狂いもなく、六角は吸い込まれるように残る4匹のうち、2匹の目に突き刺さった。

 

その痛みに、悲痛な叫びを行う2匹のバグベアーの間合いを掌握する。

 

「うるせぇな」

 

アルは慈悲も容赦もなく、首を薙いだ

最後の二匹が、同時に襲いかかってきた。

どう見ても、捨て身の突撃だ。

 

その苦し紛れの一撃をもらってやるほどアルはお人好しではない。

所要時間は3分。十五体のバグベアーは全て物言わぬ骸と化した。

 

残ったのは、首を失った胴体と霧散したモンスターから取れたのだろうドロップアイテムだ。

 

アルは、静かに息を吐いた。

 

「ふぅ……」

 

疲労は、ほとんどない。

ダンジョン産のモンスターとの戦闘に慣れてきたからか、20階層の群れとの戦いであっても効率的に身体を動かすことが出来、疲労は最小限に済んだ。

 

(これなら、まだまだ行ける)

 

「おっけー、お疲れさん」

 

ヴェインが、手を振りながら近づいてきた。

 

「いやぁ、見事見事。十五体を一人で片付けるとは………お兄さんびっくり。やっぱり、君さぁ、ランク詐欺してない?」

 

その声は、相変わらず軽薄だ。

 

「それに加えて、アレだね。君。戦闘中は口が悪くなるんだね。とってもいいと思うよ」

 

そうやって、煽ってくるが無視すると、やれやれ、といったように肩をすくめながら言葉をつなげた。

 

「で、魔石回収するんでしょ? 手伝おっか?」

 

「……いえ、一人でやります。アナタはなにも触らないでください」

 

「手厳しい。じゃ、見てるね」

 

ヴェインは再び壁に寄りかかった。

アルは、一つ一つ魔石を回収していく。

ドロップアイテムも忘れずに拾う。

剛毛が数枚。

牙が三本。

 

「ねぇ、アル」

 

ヴェインが、唐突に話しかけてきた。

 

「なんでしょうか?」

 

「いやなに。戦ってる時、すっごく楽しそうだよね」

 

アルの手が、一瞬止まった。

 

「……何が言いたいんですか?」

 

「いや、別に。ただの感想」

 

ヴェインは、にやりと笑った。

 

「君、殺すの好きでしょ?」

 

「……」

 

アルは、何も答えない。

ヴェインは、構わず続けた。

 

「いいと思うよ。俺も、結構好きだし」

 

紫色の瞳が、じっとアルを見つめている。

 

「でもさ、それって結構、危ないんだよね」

 

「……どういう意味ですか?」

 

「ん〜、どう言えばいいかな」

 

ヴェインは、少し考えるように首を傾げた。

 

「戦うのが楽しくて、殺すのが楽しくて、強くなるのが楽しくて………そういう奴ってさ、最後はだいたい自滅するんだよね」

 

「……」

 

「そして、歯止めが効かなくなって、どんどんエスカレートして、最後は()()()()()()()()()()()()()()()

 

ヴェインは、肩をすくめた。

 

「なに、難しく考えないで良いとも。ただの先輩冒険者の私言だとも」

 

「………忠告どうもありがとうございます。が、余計なお世話というやつですよ」

 

「ハハッ、余計なお世話は英雄(ひーろー)の本質なんだぜ?」

 

「アナタは、そっちではないでしょう?」

 

「おっと、そう言われちゃ立つ瀬がないな」

 

アルは魔石の回収を終えて、ヴェインを見た。

あいも変わらず薄笑いである。

 

ただ、忠告としてはしっかりと受け取っておくとする。

自分自身でも、ソレは少なからず考えていたことだから。

 

(狂気に呑まれる、ね)

 

戦うのは楽しい。

敵を屠るのは心が躍る。

強くなっていく実感は何よりも心地よい。

 

(この思いが間違いだと言うなら)

 

アルは心のうちで呟いた。

 

(俺はソレでいいんだがな)

 

 

 

 

何度か階段で階層を下りて行き22階層を越えた先に進んでいった。

 

ここまで、苦戦と呼べるほどの何かは無く、ただ、淡々と進んで行けている。

 

ただ、ここらで一旦、リヴィラの街に帰還することにした。

 

それは単純に荷物がかさばり出したからだ。

18階層の安全階層に戻ると、街は夕暮れに染まっていた。

 

冒険者たちが行き交い、酒場からは笑い声が聞こえてくる。

 

「じゃ、今日はここまでか。お疲れさん」

 

ヴェインが軽く手を挙げた。この感じはハイタッチでも求めてるのだろう。アルは、ソレに乗ることにした。

 

パチンと言う良い音が鳴った。

 

 

「……お疲れ様でした。………なんですかハトが豆鉄砲食らったような顔をしてますよ?」

 

「…………いや〜。乗ってくれる思わなくてな」

 

ヴェインの表情が、一瞬だけ硬直した。軽薄な笑みが凍りついている。

 

「そっちが、仕掛けてきたのにそんな顔をしないでいただきたい。あと、一応言っておきます」

 

アルはそう言って頭を下げた。

 

「改めて、感謝を。アナタという強者が後ろに控えているのは、安心感がありました。背を預ける………ことは流石に出来ませんが、これからもどうぞよろしくお願いします」

 

ヴェインの紫色の瞳が、わずかに揺れ口元が引きつっている。

まるで、想定外のことを言われて、どう反応すればいいか分からない子供のような顔だ。

 

「………………」

 

数秒間、ヴェインは何も言わなかった。

やがて、苦虫を噛み潰したような表情で、ぼそりと呟いた。

 

「……なんか、腹立つな」

 

「は?」

 

「いや、別に。なんでもないさ」

 

ヴェインは、ふぃっと顔を背けた。

 

「まぁ、とにかく。今日はお疲れさん」

 

その声は、いつもの軽薄さに戻っていたが、どこか投げやりだ。

 

(……なんか、怒らせたか?)

 

だが、深く追求する必要もないので、アルは話を進めた。

 

「それで、明日からの予定ですが」

 

段取りを共有する。

 

「俺は、一度、地上に戻ります。魔石とドロップアイテムの換金がしたいので………それに色々とありますので」

 

「ん? そうかい。まぁ、その方が良いかもね」

 

ヴェインは、アルの革袋を見た。確かに、限界まで詰め込まれている。

 

「ですから、明日は地上に戻ります。その後は……まぁ、数日は地上にいると思いますので」

 

「ふーん。じゃあ、しばらくお別れだね」

 

ヴェインは、軽く肩をすくめた。

 

「いつ戻ってくるか分かんないから、戻ってきたら声かけてよ」

 

「……分かりました。では、どこに行けばいいんですか?」

 

「ん? ああ、そうだねぇ、リヴィラの街の酒場……昨日行った店は覚えてる?」

 

「はい」

 

「あそこに大体いるから。もしいなかったら、適当に街をぶらついてれば見つかると思うさ」

 

「了解しました」

 

アルは、もう一度頭を下げた。

 

「それでは、また」

 

「うん。またね」

 

ヴェインは、軽く手を振った。

アルは、踵を返して地上への階段がある方に向かうのだった。

 




ーー解説パートーー
ヴェイン・アッシュ
もはや、隠す気があるかと言いたくなるほどの軽薄男。
団長である女からぞんざいな扱いを受ける程度には気安い関係を持っている………事から、上の立場と言ってもいいかも知れない。
一人称が、定まらないのは仕様です。
身長は175C
レベル6
今後も絡んでくるカス。

ーー技名ーー
〝双牙〟
軌道変化させて二連撃を食らわす、燕返しみたいな技。

ーー
中層探索はどうしても数日ぐらいは拠点を開ける必要があるんです。
その間の、アル任せの要介護者オオクチノマカミの行動は………お察しの通り。
次の展開はアルが地上に戻る感じで続いていきます。
ーー
感想はしっかりと見させて頂いていますのでお好きにお書きください。
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