単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか?   作:一般通過害悪

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四十年前にアドバイザーとかそう言うのない設定です。
新人冒険者が死にまくって、仕方なくギルド側が配慮して制定したのがアドバイザーという認識です。
アドバイザー設立については、原作を0年として10年前に出来た?感じです。
受付さんはあくまで受付さんで終了です。
名前?ありません。


少年、始めてのダンジョンへ

オラリオの中心、八つの大通りが交わる広場に面したギルド本部は、朝から冒険者でごった返していた。

 

入り口は少々、威圧的で、一般人からすれば少し入りづらさを感じてしまうだろう。

内部はさらに騒々しく、受付カウンターの前には長蛇の列ができていた。

 

アルは革袋を肩に掛け、一人で列の最後尾に並ぶ。

オオクチノマカミは「面倒くさいから」と拠点を出ない旨を伝えられた。

 

ファミリアの登録は眷属一人でも可能であるらしいので問題はない……だろう。

三十分ほど待って、ようやく順番が回ってきた。

 

受付の耳の長い……エルフの若い職員は、カウンター越しにアルを見下ろし、一瞬言葉を失った。

 

「……ファミリアの登録? 一人で?」

 

「はい。昨日の恩恵を貰いまして、ファミリアの申請を……と」

 

職員は眉をひそめたが、すぐに深呼吸をつき、奥の棚から書類を取り出す。

 

「冒険者登録に年齢制限はないけど……十歳で来るのは珍しいですね。しかも、言葉遣いが……」

 

「問題はないでしょう?」

 

「……えっと、うん。はい。これから簡単な質疑応答を行います。嘘偽りなくお答えください」

 

数分程度、質疑応答の後、判子を押して職員は言う。

 

「はい、無事オオクチノマカミ・ファミリアを探索系ファミリアとして登録できました」

 

「ありがとうございます。それで、ダンジョンの事前知識を入れたいので教本とか見れたりしませんでしょうか?」

 

「えっ、あっ、はい」

 

職員は面食らってしまう。というのも、登録が終わったら直ぐにダンジョンへと行くのが冒険者に成り立ての人物が行う行動だから。

 

こうやって聞いてくるのは稀も稀。

命が掛かっているということを目の前の少年は理解している。そう職員は判断する。

 

「教本については一応用意していますね。基本的な知識と上層のモンスターの知識は載っています」

 

「なるほど、でしたら数日間の貸し出しとかは可能だったりしますかね?」

 

「すみません。原則としてギルド内のみとなっていますのでそちらのソファでどうぞ」

 

そのまま、アルはソファに座り読み込んでいく。恩恵の影響か元々の聴力が高いこともあり、自然とひそひそ声を拾った。

 

「おい。あのガキ。何処かで聞いたことねぇか?」

 

「いや、俺ぁ知らねぇが」

 

「私は聞いたことがあるよ」

 

「えぇ? 何なの?」

 

「オラリオ外の噂で恩恵を持たずに魔物を狩る子供の話だよ」

 

「なにそれ? 小人族(パルゥム)じゃないの?」

 

「いや、それが人間の子供らしいよ? 各地に目撃証言があるから違いないと思う。ソファに座ってる少年の容姿が目撃証言から見てなんか。似てない?」

 

「いや~、流石にねぇだろ」

 

といった声が聞こえてきた。アルはそれに何ら関心を示さずに基本的な知識を頭に詰め込んでいく。

その噂はアルも心当たりがあると言うより、大凡、自分のことだろうと分かっている。

 

何処に恩恵無しで魔物を打ち倒す子供が居るだろうか。

 

失礼。ここに居ました。

無論、オラリオ外の魔物は迷宮産のよりも遥かに弱いが、大の大人でも死にかねない程度には強力である。

そんな魔物を小さな身体で倒すとなるとまぁ、噂になっても仕方ない。

 

その経験から情報は大事だと把握しているため、教本を読んでいる訳だ。

 

『良いことを教えといてやる。知は力だ。知ってるのと知らないでは雲泥の差だ。先ずは知る努力を怠るな。怠った奴から死んでいく。知りたいと言う気持ちを強く持て。良いな?』

 

まぁ、ある知り合いからの受け売りでもあるのだが。

少し懐かしさを感じる。あの人、元気だろうかと。

過去を思い出しながら教本を閉じ、立ち上がる。

受付で教本を返し、石畳の道を歩き向かう。

何処へ?

 

もちろん、ダンジョンである。

 

 

 

 

 

バベルの地下へ続く螺旋階段を、アルは一人降りていく。

石壁は冷たく、湿った空気が肌を刺す。足音だけが響き、遠くで水滴が落ちる音がする。

 

 

第一階層「始まりの階層」。

 

薄暗い通路に、ゴブリンが二匹、棍棒を振りかさって襲いかかる。

腰の打刀を抜き、踏む込み。一閃。首が飛ぶ。

魔石がぽとりと落ち、死体は霧のように消える。

 

(……簡単だ)

 

旅で相手にした魔物より、動きが鈙い。だが、それ以上に――体が軽い。剣が速い。視界が広い。

スキルの補正が、すでに体に染みついているようだ。

 

 

第二階層。

コボルトが吠えながら飛びかかる。

アルは足を一歩踏み出し、首を横薙ぎに払う。

血飛沫すら見えず、魔石だけが残る。

 

 

第三階層。

フロッグ・シューターが舌を伸ばして襲う。アルはそれを余裕で避け、舌を斬り裂く。怯んだ隙に、首を一閃。

 

 

第四階層。

ダンジョンリザードが壁から奇襲。だが、殺気を感じて身を翻し、首を斬り伏せる。

 

 

第五階層。

パープルモス大群が毒の鱗粉を撒き散らす。

疾風(エアリアル)」風が渦を巻き、鱗粉を吹き飛ばす。アルは風に乗って踏み込み、斬り伏せ。

 

さらに奥。ウォーシャドウが影から現れ、爪を振り下ろす。

アルは頬を掠め、血が滲む。「治癒(ヒール)」光が傷を包み、瞬時に癒す。

 

間合いを計り、動きを読む。隙を見つけ一閃。これを繰り返す。

 

ゴブリン、コボルト、フロッグ・シューター、ダンジョンリザード、パープルモス、ウォーシャドウ。

 

全てが、首を一閃を叩き込み絶命する。

魔物と言えども首は急所と言うのは変わらない。

まぁ、稀に違うのも居るには居るのだが。

 

魔石と、稀にドロップアイテム、小さな牙や鱗、粘液の袋が革袋に詰まっていく。数時間後。袋はもうパンパンだ。

 

(……これ以上は無理か)

 

アルは踵を返し、来た道を戻る。

 

階段を上り、地上へ。

 

バベルタワーの出口から、夕陽が差し込んでいた。革袋を肩に、アルは静かに呟く。

 

「……案外楽だったな」

 

 

 

 

 

ギルドの換金窓口は、夕方の混雑を避けて空いていた。アルは革袋をカウンターに置き、中身をざらりと出す。魔石が山のように積まれる。

 

牙、鱗、粘液袋も数個。

受付嬢、朝のエルフ職員は目を丸くした。

 

「……五階層まで? しかもソロで?」

 

「はい」

 

換金機が数字を弾く。

 

12000ヴァリス。

 

「……稼ぎすぎですよ……?」

 

不思議そうな目で見られたが、アルは気にせず金を受け取る。

 

「ありがとうございます」

 

革袋に金をしまい、ギルドを出る。

 

帰路の市場は、夕暮れの灯りで賑わっていた。

今晩の飯、鶏の丸焼きとパン、野菜のスープ。オオクチノマカミ用の酒、安酒だが三本。

 

日用品――石鹸、櫛、獣人用ブラシ、鍋、簡易調理器具。

そして、組み立て式のベッド。

結構な荷物を抱え、小屋に戻る。

 

 

 

 

「……ただいま帰りました」

 

「おっかえり〜! 腹減った〜!」

 

オオクチノマカミは凄い勢いで突撃してくる。

危うく買い物したモノを落としそうになる……なんてこともなく、受け止めることが出来た。

 

見れば尻尾をぶんぶんさせていた。

 

飯を食わせ、酒を注ぐ。

 

「んぐ……んぐ……! うまい!………でも、もう、ちょっと高いお酒が良いかなぁ……」

 

「考えておきます」

 

食事が終わり、ベッドを組み立てる。

 

次は風呂。桶に井戸水を汲み、原始的な方法で沸かす。

たちまち、湯が立ち上る。

 

「先にどうぞ」

 

「………一緒に入らないの?」

 

「遠慮しておきます」

 

鋼の意志で断った。

 

安いシャンプーを手に取り、髪を洗う。

 

ボサボサだった灰色の髪が、泡とともに均等に流れる。

 

狼耳がぴちゃぴちゃと泡を立て、尻尾が水面を叩く。

 

「んっ………ぁぁ」

 

「……変な声、出さないでください」

 

「んふ〜……気持ちいいんだもん」

 

身体も洗い終わり、湯に溶けるように沈む。

 

「色々とめんどくさいけど、キミがやってくれるなら毎日入れるよぉ」

 

「出来れば、一人で入ってくれると嬉しいんですがね」

 

湯から引き上げ、タオルで身体を拭く。

 

髪を櫛で梳き、尻尾を獣人用ブラシで整える。

 

「……うへぇ〜、最初の眷属がキミでよかったよぉ」

 

「ええ、良かったですね」

 

軽い会話を終えて、風呂に入る。熱い湯が、疲れを溶かす。

 

「ふう……」

 

風呂から上がり、組み立てたベッドにうつ伏せに寝転ぶ。

 

「オオクチ様。ステイタス更新をお願いします」

 

「ん〜、おっけー」

 

背中に指が這うと、熱が走る。数分後に、紙を受け取る。

 

アル

Lv.1

力:H 150

耐久:H 105

器用:H 150

敏捷:H 155

魔力:H 165

 

《魔法》

宿願を此処に(イテル・アンソロジー)

省略

 

《スキル》

孤高の道標(インサニア・ループス)

・単独行動時に全アビリティに超高域補正

・単独戦闘時のみ発展アビリティ『剣士』『魔導』を一時発現。

・戦闘時、技術技能技量最適化

・戦闘後、獲得経験値増加

・思いの丈に応じて補正。

 

ーーー

 

最初の頃は伸びやすいのと〝スキル〟のお陰だろうと言われる。

 

ーーー

・戦闘後、獲得経験値増加

ーーー

 

納得しておく。

 

うつ伏せから仰向けに戻り、そのまま、明かり消して数分後。

オオクチ様は隣で既に寝息を立て始めている。

旅の路銭稼ぎを思い出す。

 

あの頃は、魔物を狩っても数百ヴァリスがいいところ。

今は、一日中で12000。

実に金稼ぎのいい職業だ。

 

アルは小さく微笑んだ。

外はすっかり夜。廃教会の裏手から、虫の声と風の音が聞こえてくる。

 

さて、今日はもう寝るとしよう。

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