単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか?   作:一般通過害悪

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アドバイザーについては十五年前に設立された。
なので、四十年前には無かった。
そんな感じで、進行していきます。
情報ありがとうございます。
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感想の返信は出来ませんが、しっかり見ています。
モチベに繋がるので気軽にお願いします。


少年、拠点の掃除をして、過去を語る

朝六時半。廃教会の裏手は、まだ薄闇に包まれていた。

 

「……あ?」

 

頬に当たる柔らかい感触で、アルは目を覚ます。見れば、オオクチノマカミの足が頬を押していた。

 

(……分かってたけど、寝相悪いな。この神)

 

昨日の夜まで、顔があったはずの場所に足があり、内心でそう思う。

体を起こす。神はベッドの端で丸くなり、尻尾を顔に巻きつけて寝息を立てている。

アルはため息をつき、立ち上がる。埃と酒瓶と食べかすが散乱する床。

 

「さて……」

 

近くに立て掛けている箒を手に取り、掃除に取り掛かる。埃を払い、酒瓶を片付け、食べかすを纏める。窓を開けると、朝の冷たい風が吹き込む。埃が舞い、朝陽が差し込む。

 

床を拭き、机を整え、鍋を洗う。オオクチノマカミはまだ寝ている。

 

「……朝飯、作るか」

 

小屋の外にある井戸で水を汲み、昨日買った魔石を使用した魔道具に火を入れる。パンと卵と野菜。簡単な朝食。されども、香ばしい匂いが小屋に広がる。

 

「……ん~……」

 

オオクチノマカミが目をこすりながら起き上がる。

 

「おはよ〜……あるぅ………美味しそうな匂いだねぇ」

 

「おはようございます。そこに置いてある水とタオルで顔を拭いて椅子に座ってください」

 

神はよたよたと起き上がり、顔を洗い拭いて、椅子に座る。それと同時にアルは皿を並べる。

 

「……いただきます」

 

「いただきま〜す」

 

二人で朝食。外では、朝の鐘が鳴り始めた。飯を食いながら、アルは今日の予定を伝える。

 

「今日はダンジョンに行かずに掃除を行います。お金は昨日稼いだ分が残っていますので、夜は外食にしましょう」

 

「ん〜、おっけー。手伝わないから頑張ってぇ」

 

(……想定はしていたが、ぐーたら過ぎないか。この神)内心で愚痴りながら、アルは無言で頷いた。

 

皿を片付け、箒を再び手に取る。小屋の内部を隅々まで掃除する。壁の蜘蛛の巣を払い、床を磨き、タンスの中を整理。

酒瓶は外に積み、食べかすは燃えるゴミに。

 

次に、外へ。瓦礫と雑草が生い茂った庭。石を拾い、雑草を抜き、土をならす。季節は春に近いためそこまで暑くもなく寒くもなくのちょうどいい気温である。

 

昼頃になり昼食を作るために、小屋に入れば、オオクチノマカミはベッドに寝転がり酒をちびちび飲んでいる。朝から飲む酒癖の悪さにため息を吐きながら昼食の準備に移る。

 

 

昼食を食べ終えた後に、再開。

数時間後、全体を一通り見回す。

小屋の周囲を整え、井戸の周りを掃き、ゴミを纏めて市場のゴミ捨て場へ。

 

夕方。

小屋の周りと外観、内部は、見違えるほど綺麗になっていた。

床は磨かれ、窓は拭かれ、家具は整頓されている。

庭には、小さな花壇の跡が残る。何か花などを植えるのも良いかもしれない。

 

「……ふぅ」

 

アルは軽く背筋を伸ばして、地面座ると背中をたんと叩かれる。

 

「おつかれ~。見違えたねぇ。本当にアルは良い子だよ」

 

そう言いながら、オオクチノマカミが頭をガシガシと撫でてくる。酒臭いがまぁ、悪い気はしない。

 

『よくやった』そう言って、ガシガシと頭を無遠慮に撫でてきた赤い長髪の老いぼれを思い出すから。

 

「それはそうとして、夕食にしよう?外食なんでしょ?オオクチノマカミはお腹が空きました」

 

オオクチノマカミは自身の腹に手を乗せそんなふうに言ってくる。

 

(ある意味、ブレない(ひと)だ)

 

「ええ、行きましょうか。夕飯を食べに」

 

金の入った袋を持って夜の街に歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

「ねぇ。アル」

 

いつも通り、何処か抜ける声を出しながらオオクチノマカミはアルを見つめていた。彼らを遮るテーブルには皿に盛られた肉や野菜が見える。

 

彼らが居るのは酒場である。

 

「なんでしょうか?」

 

「いんやぁ………会ってまだ三日だからキミについて色々知りたいなぁ……って思ってさ」

 

肉を突き刺したフォークでアルを指しながらオオクチノマカミは繋げる。

 

「聞きたいんだけど……オラリオの外でどんな生活してたの?」

 

「……放浪です」

 

「放浪?」

 

「はい。物心ついた時から、一人で」

 

オオクチノマカミはジョッキを煽り、ぷはぁっと息を吐く。

 

「へぇ〜……一人で? 寂しくなかった?」

 

「寂しい、とは思いませんでしたね。それが普通でしたから」

 

アルは肉を切り、口に運ぶ。

 

「生きるために、何でもしました。言葉にするのも躊躇うこと……例えば」

 

言葉を切り、静かに続ける。

 

「殺人も」

 

オオクチノマカミの狼耳がぴくりと動く。

 

「……へぇ」

 

「そんな生活が続けて……多分ですが、六歳の時、油断して深手を負って、追ってきた魔物に殺されそうになっていた時に赤髪の鍛冶師に拾われました」

 

「鍛冶師?」

 

「はい。その鍛冶師は、実の孫のように接してくれまして……具体的に言うと戦闘と家事を叩き込んでくれました」

 

アルは思い出しながら懐かしさを感じる。

 

『何度言ったら分かンだァ手前ェ!刀はそう使うンじゃねぇって言ってンだろうがァ!』

 

『教えが悪いんだろうが!なにが!ブンッとやってシュッっだ!分かるわけねぇだろ!!』

 

自然とアルの口元が緩んだ。

 

「何かを教えるのは大凡、向いてない様子でしたが真剣に教えてくれました。あの人のもとに居たのは二年程度でしたね。倫理観もそこで教えて貰い、手に届く範囲までなら善行と呼べることをしようと思えましたね」

 

そんなアルを見ながらオオクチノマカミはクフフと笑う。それにアルは不思議そうに首を傾けた。

 

「何でもないよ。続けて」

 

「ああ、はい。8歳になって鍛冶師のもとから離れました。理由は単純に外の世界を見たいからでした。あの人は自分勝手な俺を止めることもなく、この〝打刀〟を打ってくれました。最後は、一言、〝またな〟でした」

 

アルは腰の打刀にそっと手を置く。

 

静かに、しかし確かに。その言葉は、今も胸の奥に残っている。

 

「そこから、二年間。再び旅を続けました。見える限りの善行を行いながら、色んな人達と出会いを重ねました」

 

たった2年されども、アルにとって掛け替えのない旅路。

 

「記憶に残っている方を挙げるとすれば……戦闘狂いのアマゾネス、小人族(パルゥム)の学者、気前の良いガッチリとしたドワーフ、無愛想で現実主義の獣人の傭兵。これぐらいですね」

 

オオクチノマカミはジョッキを置き、肘をついて身を乗り出す。尻尾がぴこぴこと揺れる。

 

「へぇ〜、どんな奴ら?」

 

「そうですね………先ずは、戦闘狂いのアマゾネス……ライナについて話しましょうか」

 

アルは記憶を辿る。

アマゾネス……ライナとの初対面を。

 

「初対面は最悪でした」

 

あれは、アルが路銭を稼ぐために砂漠の国へと向かう荷車を引く商人の護衛を請け負っていた時。灼熱の陽射しが照りつける街道。埃と汗と馬の匂いが混じる。

 

荷車を引く馬が疲れを見せ、商人と護衛のアルは一息ついていた。突然、砂煙が巻き上がる。

 

目の前に現れたのは、褐色の肌に赤い布を巻きつけただけの女戦士。腰に吊るした巨大な両手剣を、躊躇なく商人に向かって振り下ろす。

 

「チッ!」

 

アルは咄嗟に打刀を抜き、剣を受け流す。

 

金属がぶつかり、火花が散る。

 

「なんだ。お前」

 

女――ライナは、舌なめずりしながら笑った。

 

「へぇ………やんじゃん」

 

アルは眉をひそめる。

 

「……依頼人を殺す気か?」

 

「う〜ん。ぶっちゃけ、そこのおっさんは別にどうでもいいの。殺して奪ったほうが簡単だっただけ………でも」

 

ライナは剣を肩に担ぎ、にやりと笑う。

 

「気が変わった。私の剣を受け流す貴方が居る――殺すか、遊ぶか」

 

アルはため息をつき、打刀を構える。

 

「……引け。俺に人を殺させるな」

 

「まるで、私を殺せる口ぶりじゃない」

 

瞬間、ライナが動く。

 

剣が唸りを上げて振り下ろされる。

 

「そこから、紆余曲折を経て友人兼ライバルとして別れました」

 

「その、紆余曲折がオオクチ様的に気になるけどなぁ!」

 

次に語るのは小人族の学者、フェアレス。

 

小人族(パルゥム)の学者……フェアレスさんとは依頼を受けた時に出会いまして」

 

「依頼?」

 

「詳細は言えませんが探し物ですね」

 

あれは、路銭稼ぎの一環で依頼を受けた数週間。

 

「フェアレスさんには、丁寧な言葉と色んな言語の読み書きを教えて貰いました。あとは、考えることを止めるなということを。この言葉のお陰で今も俺は生きていると感じています」

 

胸元に手を当てながらそう答えた。

 

「ドワーフのガンズイさんとは集落の鉱夫として働かせて戴いた時に会いました」

 

次に話すのは、ドワーフのガンズイ。

ドワーフの集落。

稀に、臨時社員としての働き口をチラシがあったりする。

それに応募して一時期、働いていたのだ。

 

「最初こそ、人間と言うことで良い意味で見られませんでしたが話しかければ良い人で、とても良い経験をさせて貰いました」

 

無理矢理酒を飲まされたのは許さないが。

 

「最後に獣人の方……ルナリスさんとは、魔物討伐の依頼の一環として気の使い方を教えて貰いました」

 

オオクチノマカミは目を細め、笑う。

 

「ふ〜ん……キミは、()()()()()()()()()()()()()

 

「……良い出会い、かどうかは」

 

「いや、良い出会いさ。現にキミ。今、()()()()()()()()()()()

 

食い気味にオオクチ様は言う。それと同時に、もっとアルの話を聞いてみたいと思ったのだろう。

 

「ねぇ。もっと、聞かせてよ。アルのこと」

 

「…………ええ。是非」

 

案外、語るのは嫌いでないアルはつらつらと旅であったことを話す。

 

そうやって、1日は消えていく。

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