単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか? 作:一般通過害悪
アルくんは、普通よりも
酒場での自分語りから三週間が過ぎていた。
アルは小屋のベッドに腰掛け、ステイタスの書かれた紙を眺めていた。
アル
Lv.1
力:F 380
耐久:F 350
器用:E 494
敏捷:F 385
魔力:E 492
主戦場は5階層から7階層。ゴブリン、コボルト、ウォーシャドウを繰り返し狩り、魔石を換金し続けた。
だが、最近
(……伸びない)
ステイタスの伸びが鈍い。
同じ敵を狩り続けると経験値は頭打ちになるようだ。
「……オオクチ様」
直ぐ隣で瓶酒を飲むオオクチ様に声をかける。
「ん〜?」
「八階層に降ります」
オオクチ様は瓶を置き、尻尾をぴょこんと動かした。
「良いんじゃない? 好きにやってよ」
「……了解しました」
決断は早かった。
八階層へ降りるなら、防具を新調する必要があるだろう。アルは袋に金を詰め、小屋を出る。
バベルの塔。
巨大な円筒形の塔は、朝日を浴びて白く輝いていた。
正面をくぐり、内部へ。
上階へ向かう昇降機――魔導器で動く巨大な円盤に乗り込む。
数分後、ポンッと音がして扉が開く。
八階フロア。
商業系ファミリアのテナントが並び、鍛冶の音と商人の呼び声が響く。
アルが向かうのは、ヘファイストス・ファミリアの新人鍛冶師工房。
新人たちの工房は、品質も低いが価格も低い。
当然だ。〝鍛冶〟のアビリティを持っていない新人の作品なのだから。
所持金は20000ヴァリス。
(……目利きのやり方は確か……)
爺さんに教わった知識を総動員。
棚を回り、良いライトアーマーを見つける。
黒革ベースに、胸と肩に薄いミスリル板。
動きやすさと防御力のバランスが良い。
(15000ヴァリス……悪くない)
会計カウンターで金を払い、袋に詰める。
外はすっかり夕焼け。
今日は潜らずに装備の使用感を試す感じである。
小屋に戻り、防具に着替える。
結構、軽く動きやすく良い感じである。
「
風で体を包み動きを試すもそこまで、違和感はなかった。
アルは1階層から7階層を、風のように駆け抜けた。
階段を蹴り、通路を跳び、モンスターの気配を避1〜7階層の魔物は無視して最短で8階層まで降りていく。
螺旋階段を駆け下り、足音だけが石壁に反響する。
8階層は、これまで通りの洞窟タイプではあるが、壁面には苔がまとわり付いた岩石地帯に変わる。
ルームの間を繋ぐ通路が短くなり、逆に各ルームが非常に広い。天井の高さも10メートル近くになる。
最初にアルを迎えたのは5匹のキラーアントであった。
既に何度も見たため、苦戦もなく倒すことが出来た。
首を一閃。
魔石がぽとりと落ち、霧散する。そのまま、道を進んでいく。
新たに出るモンスターなどはなくに進んでいく。
体内時間で二時間程、歩き出現したモンスターを倒していく。
広大なルームに出た。アルは近くの岩に座り、チラリと周囲を見れば、ちらほら冒険者のパーティーが見える。
比較的、敵が近くに見えないからか自然と休憩スペースとして最適と考えられた。
今、周囲にいるパーティーは四つ。
その内二つはアルから離れようとしているが、残りの二つが妙にアルや離れようとしているパーティーをチラチラと見て、微妙な距離を保っている。
嫌な予感を思い始め……最悪のパターンが起こった。
「「うわぁぁぁ!!!」」
「!?」
目を丸くしてそちらを見れば、不審な動きをしていた二組の冒険者達が居る。
瞬間、前後の通路から、夥しい、ドドドド!と地響きのような音が聞こえ、地面が揺れる。
怪物進呈とは、他のパーティーにモンスターを押し付ける、または巻き込むことで、自分達が逃げる隙を作るか、倒せない敵を倒す戦力にするものだ。
直ぐ様、岩から飛び降り耳を澄ませ、その二組に視線を泳がす。
不可思議なことに叫んだ二組の冒険者達は、自分からモンスターの群れへと突っ込んでいく。
まるで、死を望むかのように。
アルの視界の端で首の後ろに、光る紋様が一瞬だけ見えたような気がした。
次の瞬間――ルームの前後から、モンスターが押し潰すと言うように向かってくる。
ゴブリン、コボルト、キラーアント、ダンジョンリザード、夥しい数の上層の魔物がこちらに向かってきている。直ぐ様、行動に移す。
「
風を纏う。そのまま、モンスターに備える。
一瞬、パニックに陥っているパーティーを助けようかと思ったが割に合わなすぎる。
単独という、スキルの効果がどれまで有効なのかも分からない。
各々、生きるために行動するしかないのだ。数分も立たず、モンスターの群れが前後から挟撃。
直ぐ様、悲鳴が聞こえる。
「やめっ………やめてくぇぇ……」
「いっ、いや!……死にたくないよぉ!!!…………」
「誰か……たすk……」
ブチッ、グチャ……ゴリッ。
肉が途切れ、潰れる音が聞こえる。深呼吸を行う。上層の魔物とはいえ、数で来られれば簡単に人間は潰される。
抗えるのは……まぁ、第一級冒険者ならあり得るかもしれないが普通は不可能であろう。
人が死ぬなんて外では普通のことだったし、まして、自分で殺ることもあったため特段気にした様子はアルにはなかった。
まぁ。そんなに余裕がなかっただけかも知れないが。思考を明瞭に、力を最小限に、技術を総動員して斬り伏せる。
(多いなぁ)
目の前の群れに向けて刀を振るう。
一瞬で10体の首を跳ね飛ばした。
だが………数が多すぎる。
10を斬っても、20が現れ。
20を斬れば、30が現れの以下ループ。
「奴さん。やっぱり来ますか……」
それと同時に、8階層に居るはずが無いモンスターが現れる。
オークにインプ、そしてシルバーバックであった。
瞬時に、進み行き、オークは首を跳ね飛ばす。インプも同じく。
シルバーバックが大きな図体を動かし腕を振り落としてくる。それを髪一枚で避け、一気に懐に潜り込み胸を一刺し。
そのまま、胸を足場に刀を抜く。
地面に着地と共に、襲いかかってくる魔物の群れ。
幾ら、スキルの補正もあるとは言え基本的アビリティはまだレベル1下の方だ。
魔力の底が見えてきた時だった。
正面に〝迷宮の孤王〟が現れたのは。
インファント・ドラゴン。
その数、五体。
内、一匹はなんと
「アハハ………」
自然と微笑が溢れた。
無論、絶望や悲観と言ったモノではない。
一種の歓喜に近い笑み。
それと同時に、アルの口元が上がっていく。
『お前さぁ、もっと、嗤えよ』
『あ?』
『いや、あ? じゃなくてさぁ。感情表現つうの苦手だろ。一緒に居て、もうすぐ数カ月になるがよ。お前が自己表現した所見たことねぇし。まだ、私の方が…………チッ、ああもう面倒くさい!ピンチの時ほど嗤って見ろ!私が言いたいのはそれだけだ!』
アルは極限の状態で
ーー
一応、死んじゃった二組の冒険者パーティー生存IFもありますが主人公補正が強すぎるし、ご都合主義が過ぎてたので没になりました。
オオクチノマカミがここまで軽薄なのは、主人公が死ぬかもなんて一ミリも考えて無いからです。
まぁ、最初の眷属がクソ強スキルと万能魔法が発現したら驕っちゃうのも無理はないからね。