単独でダンジョンに挑むのは間違っているだろうか?   作:一般通過害悪

9 / 15
面会は始と終で分けます。

前回までのあらすじ。
アルは武装と武器を手に入れたぞ。

ーー


少年、ゼウス・ファミリアへ赴く(始)

あれから一週間後。

オラリオ北東の高台へ続く石畳の坂道をアルは一人、登っていた。

 

淡い空色の陣羽織、『嵐乱』を羽織り、腰には『竜風』を差し懐には『掌珠』を隠している。

 

(道は……こっちだな)

 

彼が向かっているのは、ゼウス・ファミリアの拠点(ホーム)である『雷鳴の館』。

因みにオオクチ様についてはベットから起き上がることもなく枕に顔を押し付けてながら「がんばってねぇ〜」と言って見送ってくれた。

 

十中八九、二度寝を決め込んでいることだろう。

すっかり、ぐーたら、怠惰、酒カスに戻ってしまった。

 

さて、アルの手には、土産である高めの良い酒(酒の目利きはドワーフのガンズイに教えられた知識を活用)とツマミになりそうなもの一覧、あとは、高いまぁ、そんな感じ。

 

二日前に色々と見て買ったものでありアルとしては結構自信がある。

坂を登りきると、やっと、見えてきた。

 

(おぉ………)

 

オラリオの入城門と比べるとやや見劣りするものの、立派な小さな城が見えてきた。

大派閥となるとこれぐらいの大きさが通常なのだろうか……そう思いながら、真っ直ぐに進んでいく。

門前に到着。門前には、これまた、ガタイの良い屈強そうな男が二人、居るのが見えた。

 

(うん。勝てねぇ)

 

アルは直感的に、二人の門番の強さを感じ取った。

推定レベル5ぐらいはありそうだ。アルから見て……の話だ。

アルは後に知ることになるが、彼らは想定通りレベル5の冒険者たちである。

 

これでも、ゼウスという派閥の中では2級だというのだから、層が厚いったらありゃしない。

右側の男は上半身裸で腕を組み、こちらを見下ろしていた。左の方はちゃんと服を着ている。

 

「止まれ。ふむ。貴様は何用でこの地に踏み入る?」

 

アルから見て右に居る人物が気難しそうな言葉を使いながら値踏みするように見てくる。

 

その視線はアルにとって慣れっこであるため、何ら反応をすることもなく言う。

 

「本日、午前九時に面会をお約束を頂いているオオクチノマカミ・ファミリアのアルと申します」

 

左の男が、右の男に目配せ。

二人は一瞬、アルの装備を舐めるように見つめた。子供にしては流暢な口調、良い装備、そして、()()()()()()()

 

そうして、何処からか出したメモ帳で確認。

 

「うん。ちゃんと書いてあるね。グライ。この子は入れて良いんじゃない?」

 

「うむ。であるなら、一人ぐらいあの爺の場所まで案内する者が居るだろう?」

 

「うーん。それじゃあ、僕がこの子を案内するとしようかな。僕が戻るまでお願いできる?」

 

「問題はない」

 

左の男がニヤリと笑い、アルの肩に軽く手を置いた。その手の重さに、思わず身がすくむ。

大きな門が開く………という訳ではなく、側に設置された小門から入るという。

察するに大門は大規模な遠征とかそんな感じの時に開かれるのだろう。

 

「良し、付いて来て」

 

先導しながらそう言う門番の指示に従う。

外観から一通り察せれたが、内部も結構な広さがある。昔訪れたことのある国の王族の館と同じような荘厳さだ。

 

「あっ、そうそう。僕の名前はセブクル。好きに呼んで。聞きたい事があるなら、ある程度なら教えれるよ」

 

そうして、通路を歩くたびにすれ違う団員全員が筋肉の塊だった。

 

比喩ではない。

全てが鍛えられた筋肉で身に固めている。

 

彼らの筋肉とは美しいもので、無駄なものは一つもない、動きと利便性を追求した肉体美と言って良いだろう。

加えて、全員が身長が高いのだ。

見る限り、全員180はある。

 

アルとしても内心驚きであり少しの羨望の気持ちもある。

十歳の子供故にもう少し身長が欲しいと思っている。

リーチとかそんな感じのことも意識してだが。

 

(……筋肉しか、いねぇ……?)

 

アルが内心で呟く。

聞くに、噂通り、このファミリアは男だけで構成されているらしい。

というと、主神のゼウスの妻であるヘラの関係性の為であるが、長くなるので割愛。

 

「っと、アルくんも大変だよね。こんな大派閥に一人で来るなんて。見た所、十歳くらいだろ?」

 

どうやら、門番と言っても怪物進呈の件は聞かされてないらしい。

軽い会話からある程度、このファミリアの事が聞けた。

やがて、雷鳴の紋様が刻まれた重厚な扉の前で立ち止まる。

 

「っと、ここだな。じゃあ、あとは君だけで頑張ってな」

 

そう言って門番さんは持ち場に戻っていく。

 

ここで置いていくのか……と思いながら、アルは扉が開く。

 

中には、主神であるゼウス、現団長、その他、同年代の団員が二人が居た。

 

「お〜〜、来たな!ほれ!さっさと、座らんか!」

 

そのゼウスの言葉は、威厳も何もあったものではない。

ただただ、楽しそうな爺さんだった。

アルは一礼し、堂々と円卓に向かって歩み寄る。

 

席に座ると軽い自己紹介が行われた。

右から、ゼウス、現団長ケルサス、五人の団員、新人らしい、マキシム、ザルド。

 

話を聞く感じ、魔石の回収の流れは、五人の団員さんが付き添い新人教育の一環で中層に潜っていた→良い感じなので帰宅の道で確認。

 

ヘラの眷属(レグナント)が戦い終わったと言う時に遭遇→重症な本人に「魔石とドロップアイテムの回収をしろ」と言われたので。

 

とのこと。

 

つまり、ゼウスファミリアが回収した理由は()()()()()()()()()()()()()()()()という。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

そんなことを理解し寒気がする。

 

(行きたくねぇ………)

 

アルは会話の相槌を打ちながらそう心の底から思う。

 

まぁ、それは良いとして土産を渡す。

反応的に掴みは良い感じである。

 

はてさて、ゼウスがごほんと、大きく咳払いをした。

 

「さて、そろそろ、ここに呼んだ本題に入ろうかのう」

 

 

やっと本題と言った所。

 

「おぬし……うちにこんか?」

 

突然の勧誘に、アルは一瞬だけ目を丸くした。

 

「……改宗して、ゼウス・ファミリアに入れ、ということですか?」

 

ゼウスはにやりと笑って頷く。

ケルサス団長が腕を組み、五人のLv.5団員が興味深そうに身を乗り出し、マキシムは目をキラキラさせ、ザルドは無言でこちらを見据える。

 

理由は言うまでもない。

十歳で千五百の魔物を単独で屠り、小竜四体を仕留めた化け物。

 

将来有望どころか、すでに“逸材”の域を超えている。

 

アルはゆっくりと息を吐き、静かに口を開いた。

 

「……確かに、利点は大きいです」

 

ゼウスが「ふむ?」と片眉を上げる。

 

「地位、名誉、力、金……上げだしたらキリがありません。オオクチノマカミ様の眷属では到底得られないものが、山ほどあるでしょう」

 

正直に、嘘偽りなく認める。

神の前だ。ごまかしは通用しない。

喉から手が出るほど魅力的だ。

 

ここにいれば、第一級冒険者に鍛えられ、安全に中層・下層・遠征で深層にだって行ける。

 

レベルアップも一人よりは遥かに上手く行けるだろう。

 

背中を預けられる仲間がいる。

 

金も腐るほど入る。

 

「けれど」

 

アルは静かに首を振った。

 

それで俺は、本当に強くなれるのか?

 

先輩におんぶに抱っこで安心安全にレベルを上げたとして、

 

それは俺自身の力と言えるのか?

 

一度も、二度も、数えきれないほどの死線をくぐらない。それは果たして“冒険”と……否、()()()と呼べるのか?

 

(それに……孤高の道標は単独でこそ真価を発揮する。

大派閥の団体行動じゃ、俺のスキルが死ぬからな)

 

加えて。

 

「オオクチノマカミ様との約束があります」

 

ゼウスが片眉を跳ね上げる。

 

「恩恵を授かったその日に誓いました。()()()()()()()()()()()()()()()、と」

 

淡々と、しかし揺るぎなく告げる。

 

簡単に言えば、養わないといけないのだ。

 

自分は提示された条件を呑んで恩恵を貰った立場。

 

だからこそ、改宗とは、裏切りに近い行為であると勝手にアルは思っている。

 

無論、強制力など存在しないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

故に。

 

「零細でも、不自由でも、これが俺の選んだ道です。だから、ゼウス。俺はアンタの眷属にはなれない」

 

 

室内が静まり返った。

 

次の瞬間。

 

「ぶははははははははははは!!」

 

ゼウスが腹を抱えて爆笑した。

 

「女との約束を守る! それでこそ(おのこ)じゃ!!いやぁ~~! わし、おぬしのこと気に入っちゃう!!」

 

ケルサス団長も豪快に笑い、五人の団員が「やるじゃねぇかガキ!」と、マキシムが「かっこいい!!」と拳を握り締め、ザルドが小さく「……うまい生き方だ」と呟いた。

 

ゼウスは立ち上がり、アルの肩をごんごんと豪快に叩く。

 

「悪かったのう、試させてもらった!……で、ここだけの話にしてくれんかのぅ?おぬしの女の好み、教えてくれんか?」

 

唐突すぎる質問に、アルは一瞬固まる。

 

「……は?」

 

「いやいや! 参考までに聞きたいだけじゃて!容姿は? 顔か? 年齢は何処まで行けるんじゃ? ほれほれ、正直に正直に!」

 

ゼウスの目が本気でキラキラ輝いている。アルはため息をつき、素直に、しかし小声のトーンを少し落として答えた。

 

「……黒髪ロングで、同年代……でしょうか」

 

瞬間、ゼウスが「ほほう~~!!」と身を乗り出し、ケルサス団長が「ほう……」と意味深に頷き、マキシムが「へっ、へぇ〜!?」と赤くなり、ザルドが「……(じーっ)」と無言で見つめてきた。アルは顔を背けて、小さく呟いた。

 

(……絶対、変な方向に話が広がる……)

 

 

ゼウスの目がギラリと光った。

 

「黒髪ロングで同年代かぁ~~! なるほどなるほど!つまりお前は風がなびいた時にふわっと香るのがたまらんタイプだな!?」

 

「団長も昔は黒髪の娘に弱かったって聞いたぞ!」

 

「うるせぇ! あれは若い頃の話だ!」

 

五人のLv.5団員が一斉に口を開く。

 

「俺は巨乳派だな~」

 

「貧乳の方が抱きしめやすいだろ!」

 

「いやいや、腰のくびれが大事!」

 

「性格だろ性格! 俺はツンデレが好きだ!」

 

「俺は全部好きだ!!」

 

マキシムが真っ赤になりながら叫ぶ。

 

「わ、俺は……まだよくわかんねぇけど、笑顔が可愛い子がいいです!!」

 

ザルドは無言で頬を染めで「俺はおしとやかな性格がいい」と呟いて俯いた。

ゼウスが両手を広げて総括。

 

「ほら見ろ! 女の好みは千差万別!男のロマンは永遠じゃ!!」

 

大爆笑が雷雲の館を揺らす。

やがて、ゼウスが息を整え、にやりと笑った。

 

「……さて、話も盛り上がったところで、そろそろ次の話に行くとするかのう」

 

全員の視線がアルに集中する。

 

「アル。怪物進呈で生き残ったおぬしの力を確認したいのじゃ。因みに言っとくと、これはギルドから頼まれたことでもあるでな。公には伏せておるが、おぬしの実力を把握しておきたいとのことじゃ。将来の英雄候補を見極める、とでも言うかのう」

 

アルは、英雄候補と言う言葉に少し違和感を覚えたがスルーして軽く納得した。

 

(だから武装で来いって言われたのか)

 

指差す先は、マキシムとザルドが居る。

 

「まだ子供だが、将来はわしらのファミリアを背負う逸材じゃよ!」

 

マキシムが立ち上がって拳を握る。

 

「よろしくな! 全力でいくぜ!」

 

ザルドは無言で立ち上がり、大剣を担ぐ

 

「……喰わせてもらう」

 

ゼウスが満面の笑みで宣言した。

 

「場所は『訓練場』!武器は真剣の実戦形式!勝敗は戦闘不能、又は敗北宣言の話。さぁ、行くぞ!!」

 

全員が立ち上がる。

アルも腰の『竜風』を軽く叩き、小さく笑った。

 

(ゼウス・ファミリアの新人と今の自分の強さを比較するのに丁度いい)

 




次は、若き頃のマキシムとザルドとの戦闘です。
因みに、マキシムとザルドの年齢は共に13歳という感じで設定します。
現在のレベル
マキシムがレベル2の中位。
ザルドがレベル1の上位。
加入時期は5年前で同期という感じで。

ゼウスの口調が迷子です。

ゼウスファミリアの拠点が原作にないのは、暗黒期やらなんやらで闇派閥に壊され更地になったから。
と想定して、豪勢なホームであると描写させていただきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。