旗折りの転校生 作:がおられ好きの物書き
シャーレに戻った先生と旗立颯太、今回の事件を振り返り、キヴォトスでの「旗折り」の難しさについて語り合う
ミレニアムサイエンススクールの広場を後にしてから数十分。颯太は先生の車に揺られ、シャーレへと戻ってきた。
執務室はいつも通り静かで、壁一面にあるモニターには、キヴォトスの各学園の活動状況が淡々と表示されている。先ほどの戦場のようなカオスとは、あまりに対照的な空間だった。
先生はコーヒーメーカーの前に立ち、二つのマグカップを手に取った。
「お疲れ様、颯太くん。少し、今回の反省会をしようか」
「ありがとうございます、先生」
颯太はソファに深く腰掛けた。体の疲労よりも、精神的な疲労が重い。今日一日で見た旗の数は、彼の人生で見た総数よりも多かったかもしれない。
先生がマグカップを差し出す。湯気から漂う甘い香り*1は、彼の知る世界のものだった。
「今回のミッションは、君にとって初めての、キヴォトスの理不尽さとの遭遇だったね。どうだった?」
颯太はマグカップを受け取り、その温かさを両手で感じながら言葉を選んだ。
「その……予想を遥かに超えていました。僕の『
「悪化させた?」
「はい。僕の警告は、モモイさんの『ゲーム完成フラグ』を傾けましたが、同時にアリスさんの『最高のゲームを作りたいフラグ』を、暴走フラグへと変えてしまった。因果律が、あんなにも不安定だとは思いませんでした」
先生はデスクに寄りかかり、コーヒーを一口飲んだ。
「それが、キヴォトスという街の厄介な特性だ。生徒たちの純粋な『願い』や『情熱』が、時として予測不能なカオスを生み出す。それは、君の知っている世界の因果律とは根本的に違うものなんだ」
先生の頭上には、前回よりもわずかに色が薄くなった『破滅フラグ』が立っていた。しかし、その根は依然として大地に深く突き刺さっている。
「僕は、
「そうだね。だからこそ、君の仕事は『旗を折ること』ではないんだ」
先生は静かに言った。
「君の能力が示唆してくれたのは、君が『折る』のではなく、『導く』ためのヒントだということだ」
「導く……ですか?」
「うん。今回の君の行動は正しかった。君はアリスの『暴走フラグ』を直接折ろうとはしなかった。代わりに、彼女の心の中にある『ゲームを完成させたい』という最も強い願い、つまり『プライドの旗』を使って、より大きな『破滅の旗』を上書きした」
颯太は目を見開いた。
「上書き……」
「そうだ。キヴォトスの生徒たちは、非常に純粋だ。だからこそ、彼女らの強い『願いの旗』の力を利用して、より良い方向へと『物語を修正する』必要がある。君の仕事は、バッドエンドの分岐を指摘し、彼女たち自身に『ハッピーエンドへの新たな旗を立てさせる』ことなんだ」
先生は優しく微笑んだ。
「君がミレニアムの広場で叫んだ言葉は、まさにそれが実現した瞬間だった。君が指摘したことで、アリスはプログラマーとして、そしてゲーム開発部員として、自らの意志で最悪のエンディングを回避した」
颯太は、コーヒーの甘さを改めて感じた。自分の行動が、単なる因果の操作ではなく、誰かの「意志」に働きかけることだったと知った。
「先生……僕の行動で、先生の『破滅フラグ』がわずかに揺らいだのを見ました」
颯太が恐る恐る告白すると、先生はわずかに目を見開き、そして深く頷いた。
「やはり、君は特別な存在だ、颯太くん。連邦生徒会長が君を呼んだのは、君の持つ『旗を見る力』が、この街を覆うという『巨大な破滅の旗』に干渉できる唯一の力だからかもしれない」
先生はデスクから立ち上がり、颯太のそばに立った。
「君のフラグを折る仕事は、始まったばかりだ。次は何が起こるか、私にも予測できない。だから、私たちは二人で、この街の生徒たちが、少しでも笑顔になれる『未来の旗』を立て続けるんだ」
「はい!わかりました、先生。僕、頑張ります」
颯太は立ち上がり、特別所属の腕章を強く握りしめた。彼の心の中で、『キヴォトス協力者フラグ』が、確固たる信念と共にまっすぐ立ち上がったのだった。
やはり書くのは難しい⋯
がおられもうろ覚えだから読み返さなくちゃ能力の詳しいこともほとんど忘れてしまっている⋯