正義の魔法少女(恋愛脳)に迫られています   作:うろ底のトースター

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プリ○ュアみたいのを、目指したかったなぁ


第1話 正義の魔法少女(ジャスティスハート)

それは、突如として訪れた。

 

東京都上空に出現した黒い渦、そこから這い出た悪魔によって世界の平和は崩された。悪魔に取り憑かれた人は邪悪な心を増長され、正義の心を萎縮させられる。

 

結果、世界中で治安が悪化。国連によって対策組織が結成されるも、その成果は芳しくない。

 

誰もが悪魔による侵攻を受け入れるしかない、そう諦めたそのときだった。

 

「もしも!君にまだ強い正義の心があるのなら!僕と契約して、魔法少女になるんだ!」

 

「私は、この力でみんなを助ける!」

 

悪魔に抗する力が現れた。名を、ジャスティスハート。馬のような魔法獣と契約した、世界初の魔法少女である。

 

 

 

 

「そんなのナシ、だよナ」

 

暗い部屋を、人語を話すヘビが這う。黒い体表に赤い紋様を持ったそいつは、もちろんただのヘビではなく、悪魔。そして、私の契約者。

 

「こいつは誰でも構わず人を助ける。相手が悪人だろうがなんだろうがお構いナシにナ」

 

ヘビは嘯く。

 

「悪魔による邪心の増長、これを原因とする犯罪行為は全て無罪。だからこいつが昨日助けやがった強盗犯も無罪放免だってヨ。バカが、そりゃ()()()でやったことだってノ」

 

ヘビは怒る。

 

「許せねぇよナ。お前を殴ったあのクズも、この強盗も、みんなみんな仕方ないから無罪なんてサ」

 

「だから私がいる」

 

「その通りダ」

 

ヘビは嗤う。

 

「いい加減に正そうカ。計りの歪んだ天秤をヨ」

 

「それこそが私、ジャッジメントの存在意義」

 

さぁ、夜だ。私たちの時間だ。

 

未だ明るい街を見ながら、私は言う。

 

「壊れた世界に、公平な裁きを与えてあげる」

 

 


 

 

朝のニュース。私が正義の魔法少女になってからは、これを見るのが日課になった。目的は、悪魔の手掛かりだ。

 

悪魔関連の事件は、それが確定した瞬間に秘匿される。だから、昨日まで放送されていたニュースが突如放送されなくなれば、それに悪魔が関わっている可能性が高い。

 

「ユニ、今日は何もなさそうだね」

 

隣の、私の契約者に確かめてみる。ユニコーンの魔法獣であるユニは、カップの中のミルクをぺろぺろと舐めてから、首を振った。

 

「いや、怪しい事件があったよ」

 

「え?」

 

「行方不明さ。先週から続いて今日でもう8件。明らかに何かが裏にいる」

 

「でも、行方不明なんて、今はそう珍しくもないでしょ?」

 

そう。治安の急速な悪化のせいか誘拐事件は多く、行方不明も比べ物にならないくらい増えた。警察機関の頑張で、大抵2、3日で見つかるものの、既に亡くなっているケースも少なくない。

 

悲しいけど、こんなニュースも慣れっこになってしまった。

 

「いや、よく思い出すんだ。これまで行方不明になってきた人たちに見覚えはないかい?」

 

器用に私のスマホを操って、顔写真をいくつか表示する。多分行方不明の人たちなんだろうけれど────あ!

 

「これって、私が倒した悪魔に取り憑かれてた人たち?」

 

「その通り」

 

ユニが首肯する。

 

「でも、悪魔が関わってるって確証はあるの?」

 

自慢じゃないけれど、私、というかジャスティスハートは有名人だ。情報規制されようと、どうやっても私の活躍は世間に広がり、必然的に助けられた人たちの名前も広まる。

 

動機は分からないけれど、彼らが攫われても悪魔の仕業なんて証拠はない。

 

「確証ならある」

 

けれど、ユニはそれを否定する。

 

「黒い魔法少女の噂は知っているかい?」

 

「えっと、夜にだけ現れるっていう?」

 

「そう、それさ」

 

「うーん、でも噂は噂でしょ?」

 

「僕もそう思ってたよ。けどこれを見て。黒い魔法少女の、最初の目撃情報だ」

 

そう言って、SNSのある投稿を表示した。投稿日は、先週。最初の行方不明事件と一致している。

 

「この魔法少女の仕業?」

 

「だろうね」

 

「もし本当に私と同じ魔法少女なら、どうしてこんなことを・・・」

 

魔法少女は正義の味方。こんな悪いこと、しないはずなのに。

 

「それは、直接問いただすのがいいだろう」

 

「ってことは」

 

「うん、今日の夜から、この魔法少女の捜索を開始する」

 

「了解!」

 

絶対に見つけないといけない。そう心に強く刻んだ。

 

「ところで、学校はいいのかい?」

 

「え、あ!?」

 

時刻は8時半を過ぎた頃。

 

トーストを口に咥えて、行ってきますもまともに言えずに、私は玄関を飛び出した。

 

 

 

 

「急げ、急げ!」

 

走りながらトーストを食べ切った私は、通学路を全力疾走で駆け抜ける。魔法少女になる前ならすぐにへばっていただろうけれど、かなり体力のついた今、家から学校まで全速力で走っても多少息切れする程度で済んでしまう。

 

突然だけれど、私は少女漫画が好きだ。食パン咥えた女の子が、転校生の男の子と曲がり角でぶつかる、なんて物語が大好きだ。

 

今の私は、少女漫画の主人公みたいだと思った。食パンというかトーストは食べちゃったけど。もしかしたら、曲がり角でかっこいい男の子とぶつかるかも。なんて思っちゃったからか、無意識に速度を緩めていた。

 

「きゃっ」

 

「おっと」

 

曲がり角で誰かとぶつかった。スピードは落としていたとはいえそこそこ速かった私を、相手の方は勢いを完璧に殺して抱きしめてくれた。おかげでどっちも怪我をせずに済んだ。

 

危ない危ない。大変なことになるところだった。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい!その、ごめんなさい!」

 

思いっきり頭を下げる。怒るどころか心配してくれるなんて、すごくいい人なんだなぁ。

 

というか今、なんか少女漫画っぽくないかな。

 

朝に急いで学校に向かって、途中の曲がり角で人にぶつかって。こんなこと考えている場合じゃないけど、どうしてもそう思ってしまう。

 

「私こそ、ちゃんと前を見ていればこんなことにはならなかった。ごめんね?」

 

顔上げて、そう言われて恐る恐る支えてくれた女性の顔を見る。そして、思わず見惚れてしまった。

 

綺麗な人だ。一房にまとめられた長い黒髪はまるで絹みたいに滑らかで、少し切れ目だけど優しい笑みを浮かべているお顔が可愛くて、身長も私よりちょっと高くて、モデルさんみたいなプロポーション。

 

「・・・どうしたの?」

 

「は!い、いえなんでもないです!」

 

いけない、学校に急がないと。急がないと、いけないのに。遅刻しちゃうのに。

 

「あの、お、お名前は?」

 

もう少しだけこの人と居たい、そう思ってしまった。

 

 


 

 

お友達の項目に、先程ぶつかりかけた少女の名前が追加された。

 

治安の悪化に伴い荒んでしまったこのご時世、あんなに真っ直ぐで純粋な子は、見ていると心が洗われるようだ。

 

「相野ヒナタ。いい子ね」

 

遅刻する〜と駆け出していった新しい友人の背を見えなくなるまで眺めて、深呼吸をひとつ。

 

()()()()

 

「あいヨ」

 

ぬるりと、私の影からヘビが這い出る。視線はあの子に向けられていて、無感情ながらもどこか睨んでいるように見えた。

 

「本当に、あの子がジャスティスハートなの?」

 

「間違いないゼ。魔法獣の気配がしたからナ」

 

魔法獣。正義の心に目覚めた元悪魔。悪魔の力を失う代わりに、同じく正義の心を持つ人間と共鳴し、力を与えることができる。そうして生まれるのが、一般的な魔法少女だ。

 

今、日本で戦っている魔法少女は、ジャスティスハートただ一人。

 

必然、あの子がジャスティスハートということになる。

 

「で、裁定はした?できれば戦いたくないのだけど」

 

「したサ。あれに罪はなイ」

 

それは、つまりようやっと、私たちの敵が明らかになったということ。

 

「壊れているのは、社会のシステム。この国の裁定にあの子の意思は介在してなイ」

 

冷たい心を取り戻す。あの日のことを思い出す。恐怖を、屈辱を、悔しさを、再びこの身に宿らせる。

 

「なら正そう、この国を」

 

敵は国。やるべきは告発と執行。

 

「教えてやる。私が正義だ」





迫るとこまでいきたかったなぁ
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