異世界ロケットパンチ! ~スーパーロボット乗りのアナザーライフ探索譚~   作:マフ30

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第5話 他人(ひと)に言えない(ジョブ)になりました

 

「合格おめでとうございます!」

 

 最初に色々と説明をしてくれた受付嬢のエステルさんが声を弾ませて、祝いの言葉を送ってくれる。実技試験をどうにか乗り切った俺は再び受付カウンターに案内されていた。これから探求者として活動できるように正式な手続きを行うのだという。

 

「それではユウゴさん、あなた専用のライセンスリングを作成しますのでこちらのプレートを手で触れてください」

 

 エステルさんはカウンター脇に設置された装置を指してそう説明をしてくれた。装置は卓上ジュークボックスのような見た目をした絢爛な装飾がされた金属製のもので中央に片手が収まるほどの大きさのプレートが嵌め込まれている。

 

「こんな感じでいいのか?」

「はい。そのまま少々お待ちください」

 

 俺の手を感知したプレートが淡い緑の光を放つと装置全体が起動したようでカタカタと小気味良い音が鳴る。よく見ると装置上部はクリアパーツになっていて内部の様子を見ることが出来るようになっているが中央に無地の銀色の指輪が装填されているようだ。

 

「ただいま装置がユウゴさんの身体能力や探求者としての素養といった様々な情報を読み取ってリングに記録させているんです。今後はユウゴさんのステータスや受注したクエストの進行状況など探求者として活動するのに必要な様々な情報をこのリングを通じて確認することが出来るようになります」

 

 それはすごいな!

 カルーニャが大きさに反して多機能で便利とは言っていたけど、元いた世界の携帯端末顔負けの便利さに聞こえる。

 にしても、ステータスとかクエストって単語を聞くと嫌でもゲームの世界に迷い込んだような感覚になるな。やはりレベルの概念とかもあるのだろうか?

 期待に胸を膨らませながらあれこれ考えていると光が収まり、クリアパーツ部分が抽斗を開けるように飛び出して、銀色の輝きが俺の目に映る。

 

 

「お待たせいたしましたユウゴさん、専用のライセンスリングが完成しましたよ。どうぞ」

「おお! もう指にハメちゃっても大丈夫ですか?」

「ええ、もちろん! 新たな探求者さんの誕生に祝福を」

 

 そう言ってエステルさんは微笑を浮かべて小さな拍手を送ってくれた。

 

「……ありがとうございます。こちらこそ、頑張らせてもらうぜ」

 

 眼鏡の奥の瞳はキリっとしていて第一印象は生真面目で堅い人かと思っていたけど、丁寧で誠実な仕事ぶりとこのささやかな気さくさが右も左も分からない新参者の俺にはとてもありがたい。

 

「ではユウゴさん、ライセンスリングの機能の説明と最初の職業(ジョブ)の選択を行っていきますがよろしいでしょうか?」

「お願いします!」

「まずはリングに触れてメニューと唱えてみてください。魔力で編まれた文字が現れる筈です」

「すぅー……メニュー。うおっ!?」

 

 言われた通りの言葉を唱えると数秒もせずにライセンスリングが小さな光を灯して、俺の目の前にまさにゲームのメニュー画面のようなものが浮かび上がった。

 こちらの世界の文字が並ぶが何故だか正確に読み解くことが出来る。

 俺の名前から体力や筋力に素早さなどステータスなんかも確認できるようだ。

 すごいと感心する反面、現実の世界で一個人の能力をこうもあっさりと数値化出来てしまうことに多少は背筋が寒くなる。

 

「リングの機能は問題ないようですね。このまま職業の項目を指で触れてみてください。いまのユウゴさんのステータスに応じてなりたい職業を選択できます。職業は今後の活動で成長したステータスや積んだ経験値で自由に変更が可能ですのでご安心ください」

「こう、だな!」

 

 気を取り直して、作業を進めていこう。

 エステルさんが順序良く、分かりやすく説明してくれる。

 今のところは昔遊んだことのあるRPGの要領で考えても大丈夫そうだ。

 この調子だとさっきクロムが使っていた魔法の他にも剣からビーム出せる大技や水面を歩けるみたいな特殊なスキルなんかもあるんじゃないか?

 夢みたいなことだらけでテンション上がるけど、まずは生業を決めないとだ。

 いまの俺が一体どんな職業になれるのかこれは流石に楽しみと緊張でドキドキが止まらないだろう!

 

「あの! ちなみに俺、どんな職業になれそうとか予想つきます?」

「そうですねぇ……うん、先ほどの試験の立ち振る舞いですと盾使いや聖騎士といった防御や防衛に秀でた職か格闘家、武闘家あたりじゃないでしょうか?」 

「可能性だけでも四つも候補があるのか……悩ましいもんですね」

「剣士や魔法使いといったスタンダードとは少し趣は異なりますけどソロでもパーティを組むことになっても大変重宝される職業だと思いますよ」

 

 嬉しいことを言ってくれるじゃないですかエステルさん!

 労働意欲がガンガン湧いてくるぞ。思えばあっちの世界でも研究所の復興もあらかた終わって仕事らしい仕事がないもんだから調子狂っていたし、一丁ケニーさんの宿屋に支店を建てられるぐらい稼いでみるのも吝かじゃないな。

 

「おっしゃ! じゃあ、さっそく……俺がなれる職業はなにかなーっと」

 

 逸る心を抑えつつ、目の前に浮かぶメニュー画面の職業の項目をそっと指でタッチした。すると魔力光の画面が切り替わり、探求者としての俺が就ける職の一覧が表示された。

 

《■■■■マスター》

 

 長方形の枠内の左上の隅っこに控えめに一行、いや一単語だけが記されていた。

 なんだこれ?

 肝心の部分が読めないんだけど。なんのマスターだよ? 黄色いネズミでも連れて旅立てとでも?

 

「あの、エステルさん」

「はい?」

「文字化けしていて、なんの職業になれるのか分かんないです」

「ええっ!?」

 

 助けを乞うような俺の言葉にエステルさんは大声を上げて椅子から立ち上がった。

 どうやら、前代未聞のトラブル発生のようだ。

 

「ちょちょちょっと失礼しますね! あ、ほんとだ……え、えっと……こういう時はですねー。ここをこうして、あそこをこうで……」

 

 エステルさんは受付カウンターを飛び出して、俺の傍に来てくれると目を泳がせながらもどうにかしようと数分間尽力してくれた。けれど――。

 

「ダメでしたぁ」

「そうですかぁ」

 

 申し訳なさそうに深々と頭を下げて謝罪しようとするエステルさんをなんとか留めて、俺自身も気持ちを切り替える。

 探求者にはなれたのだから地道にクエストをこなして転職できる職業が増えるまでステータスなり経験を積めばいいだけのことなんだ。悲観することはないさ。

 

「しょうがないんで基本職に就いてコツコツとやってみますよ! 冒険者とか町人みたいなのありますよね? えっと、俺のメニュー画面には映ってないですけど職業変えの方法を教えてもらっても?」

「無理です」

「は?」

 

 恐ろしく躊躇いのない即答に俺の方が愛想笑いのまま固まってしまう。

 無理ってなんだ? ここに来て市民権まで剥奪されるってのか!?

 

「ご、ごめんなさい。取り乱してしまって詳しい説明を忘れてしまいました! その、ですね……ユウゴさんの現在のステータスは基本職である探求者と比較して体力と器用度、幸運はかなり高いのですが逆に筋力、素早さ、魔力が平均より低いんですよね……なので、そのぅ」

「まさか基本職への条件を満たしていないと?」

 

 恐る恐る問いかけた俺にエステルさんは目を逸らしながらコクコクと首を縦に振った。

 嘘だろ。基本職以下ってこの世界じゃ赤ん坊よりも劣りって言われているみたいなもんだろう? さっきのクロムとの激闘が茶番になっちまうぞ。

 それにいまエステルさんが言ってた各ステータスの種類、すごく大事なもんが抜けてたよな?

 

「ちょっと待った! 多分あると思うんですが俺の知力と防御みたいなのは……?」

「その二点は普通でした。その、ご安心ください?」

 

 良かった。馬鹿で紙装甲な異世界冒険者とかお粗末にも程がある。

 しかし、こうなると俺は正体不明のジョブでこれからこの世界を渡り歩いていくことになるのか。そこはかとなく……いや、洒落にならないぐらい不安だ。

 

「あの! 前例がないことなので滅多なことは言えませんがユウゴさんがなれる職業はステータスの特徴としてはゴーレム使いや人形使いに似た配分になっていますので決してクエストを請け負えないということはないと思いますよ」

「そうなんですか!?」

「はい。それどころかマスターという呼称が付いているので何らかの上級職で間違いはないはずです。きっと、便利なユニークスキルなども早くに使用が出来るものかと」

「そういうもんなのか……にしても上位職か」

 

 この人がこの場をやり過ごすために適当なでたらめを言うとは考えられないし、当初の目的では身分証としてライセンスリングが欲しかったから最優先で探求者になりたかったというのが事情だ。

 別に魔王を倒して世界を救え! みたいな大層な使命を帯びているわけでもない身だし、ここは腹を括って謎の異世界人から謎の職業にジョブチェンジして気長に構えてもいいだろう。

 

「よし! 上位職って言うならありがたく、胸張ってこれでやっていくことにしてみますよ!」

「は、はい。では便宜上■■■■(シークレット)マスターとお呼びさせていただきますね。改めてギルドハウスへようこそユウゴ様。スタッフ一同、今後のご活躍を期待しています!」

 

 エステルさんは落ち着き払うと眼鏡を輝かせて知的で柔らかな笑みを浮かべてくれた。一時はどうなることかと思ったが無事に異世界での本格的な探求者生活を始められそうだ。

 

■■■■(シークレット)マスター……カッコいいじゃねえか」

 

 素敵なジョブ名をありがとう、エステルさん。

 最初は予想だにしていない事実を告げられてお先真っ暗な気分にもなったけど、いきなり上位職になれたという状況に俺は思ったよりも気持ちが舞い上がっているようだ。

 酒場の方へ移動してカルーニャを探さねばならないというのに受付近くで鼻歌混じりにライセンスリングから表示される自分のジョブやステータスを見てほくそ笑んでいる。

 気分は小学生の頃に友達たちと一緒に近所のコンビニでトレーディングカードを買った時に自分一人だけがレアカードを手に入れた時のそれに近い。

 

「うん? スキル……もう使えるのがあるな? これが職業固有のユニークスキルってやつか?」

 

 まだまだ用はないと思っていたスキルの項目を開いてみると一つだけ色違いで記された文字があった。詳細は分からないがきっとこれが■■■■マスターである俺だけが使える専用技なんだろう。

 一体どんなすごい能力を使えてしまえるんだろうか?

 どれどれ……。

 

「スキル……カタパルト?」

 

 俺は一体、どういう職業の探求者になってしまったんだろう?

 

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