雨と名無しのウマ娘   作:サルミアッキパイ

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急展開

 とりあえず、家から引っ張り出したアタシの小さい頃のパジャマを着せたレイの作った夜ご飯を食べ終えて、チャーハンだった。レイをアタシのベッドに寝かせた。多分疲れが溜まっていたのだろう。最初は抵抗していたけれど、ベッドに押し倒して布団を被せたら一瞬で寝てしまった。すごく力が弱かった。

 

 今日は大雨だし仕方ないとは言え、レイを育てていた人は大慌てで探していることだろう。今すぐに警察に行って捜索届が出ていないか聞きたいところだが、まだ学生のアタシに詳しく話してもらえるかがわからない。レイはあの後もほとんど話してくれなかったし、スマホも持っていなかった。

 

「とりあえずトレーナーに相談してみるしかないかな」

 

 アタシ一人でできることが限られてるなら、協力者をつくればいい。トレーナーなら理事長たちにも話が行くはず。今日はもう遅いから電話で連絡しよう。

 

 

「というわけで、ウチに預かっているウマ娘がいるんだけど」

「急すぎるだろ⁉︎身元不明のウマ娘預かったんならもっと早く伝えてくれよ⁉︎」

「仕方ないじゃん、トレーナー。アタシも落ち着いたばっかなんだから」

 

 全く焦りすぎだ。ただウマ娘を預かってると伝えただけなのに。こんなんだから()()()に仲間が来ないのだ。ウマ娘の脚を撫でまわすせいでもあるが。

 

「とりあえずトレーナーは理事長に連絡して。レイのことについて詳しく調べてほしいんだ」

「今たづなさんに連絡した!ロストレインって名前でよかったよな?」

「あってるよ。それと明日のトレーニングはオフにして。レイともっと話したいから」

「あぁわかってる。一緒にいてやれ──っと、理事長から連絡が来た。『確認‼︎明日ミスターシービーの家にお邪魔してそのウマ娘と話したいっ!』だってよ」

「来ても大丈夫って伝えておいて。とりあえずアタシは寝るから」

「あ⁉︎ちょっと待てっ⁉︎まだ話は ピッ

 

 ふぅ。とりあえずの連絡は終わった。後は寝るだけなのだが、どうしようか。今アタシのベッドにはレイがいる。どかすのはかわいそうだが、アタシもベッドで寝たい。

 

 いや待てよ?別に二人でベットで寝ればいいのでは?

 

 一人用のベッドだから二人で寝たら少し狭いだろうけど、なんとか寝れるだろう。ぐっすり寝てるレイを起こさないようにずらしてっと──

 

「じゃ、お休みー」

 

 

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 なんか寒いな。もう冬は過ぎたと思ってたんだけど。そう思って目を開けたら、アタシの布団をはぎとって独り占めして寝ているレイがいた。昨日の態度からは考えられないほど図太い。リラックスして寝られたのだろう。朝ごはんをつくったら、起こしにこようか。

 

 

 

「おはよぅござぃます……」

「おはよ。そろそろ起こそうと思ってた頃だよ」

 

 ちょうど朝ごはんができたぐらいでレイが起きてきた。まだ眠そうに目を擦っている。朝には弱いらしい。レイは顔を洗いに洗面所へ向かう。ちっちゃくて可愛い。

 

 朝食にはハムエッグとトースト。なかなかいい出来だと思う。この朝食なら特に嫌いなものはないだろう。

 

 

「いただきます」

「……いただきます」

 

 食欲はあるようですんなり食べてくれている。昨日の大雨で体調を崩していたらどうしよう、と考えていたけれど大丈夫そうだ。だけど、やっぱり話さない。アタシから話しかければ一言ぐらいは返してくれるが、そこで終わってしまう。まだ信頼されてないのかな。

 

 そういえばアタシって名乗ったっけ?

 

 やばい!名乗った覚えがない!レイは名前も知らないウマ娘にホイホイとついてきた挙げ句、食事を振る舞って、そのウマ娘のベッドでぐっすりだったってこと⁉︎危機感なさすぎるよ!

 

 このままだとアタシが誘拐犯になってしまう!さっさと名乗ろう!

 

「アタシの名前はミスターシービー。去年デビューしたウマ娘。今年はクラシック三冠を取ろうかなって思ってる。シービーって呼んでね?」

「…………」

 

 レイはポカンとしている。急すぎたのだろう。まぁ家に連れて来たときに自己紹介しなかったアタシが悪いのだが。ついでに、今日理事長が来ることも伝えておこう。さっき確認したら理事長が何時に来るかトレーナーから連絡があった。

 

「そういえば今日、トレセン学園の理事長が来るんだ。昨日みたいに質問されるだろうけど頑張って答えてね。少し元気すぎるだけでいい人だから」

「理事長……?」

 

 なんでもないことのように情報量で畳み掛ける。あまりプレッシャーを感じないようにするためでもあるけれど、アタシの名乗りが遅すぎたことにあまり触れないようにするためでもある。まあ今すぐには理事長も来ないから、ゆっくり気持ちを落ち着かせることもできるだろう。

 

 レイはまだ固まっているけれど、理事長が来るまでには復活していることだろう。

 

 

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「質問っ‼︎キミがロストレインで間違いないか⁉︎」

「は、はい……」

 

 理事長がやって来た。やっぱり少し気圧されているかな。アタシは面と向かって話す理事長とレイを見つめる。今回たづなさんは学園に残って仕事をしているらしい。たづなさんってちゃんと休めているのかな。

 

「直球‼︎キミはどこから来たのだ⁉︎昨日たづなと調べたが、キミの捜索届はだされていなかったし、ロストレインという名前は戸籍にも登録されていなかった!」

「それどういうこと?」

 

 それは初耳だ。捜索届がでていないことに関しては、レイがいなくなったことに気づいていないのか、あまり考えたくはないが、捨てたと考えればまだわかる。ただ戸籍がないのは話が別だ。ロストレインという名前は偽名の可能性が高くなる。偽名だったとしたら本名を話してもらわないと確かな情報が集まらない。なんで偽名を名乗ったかも聞かなきゃならない。

 

「レイ。キミの名前はロストレインじゃなかったの?」

違う!いや、違くないけど……

「落ち着いて。キミをせめてるわけじゃない」

「肯定‼︎キミの身元がわからないことには我々も対応ができないっ!」

 

 少しレイが焦っている。やっぱり偽名だったのかな。

 

私には記憶がない!名前はパッと頭に浮かんだのを言っただけ。シービーさんと会う前の記憶は全然なくて、覚えていたことは私には帰る場所がないことと、自分がウマ娘だということだけ!」

「驚愕‼︎キミは記憶喪失なのか⁉︎」

 

 なるほど。それならまだ辻褄が合う。レイが嘘をついている線は消えないけれど、戸籍が見つからないことも、レイの捜索届が出されていないことも。でも

 

「それが本当だとして、レイはこれからどうするの」

「えっ?」

「キミは帰る場所もないんだし、頼れる人もいないんでしょ?」

「うっ……」

「アタシも身元がわからない子はずっと家にはおいて置けない」

「うぐっ……」

「だから、義理の妹としてウチに養子に来たらどう?」

「うぐぐ……ん?」

 

 名案だね。アタシの義妹になれば身元がわからないウマ娘じゃなくなるし、この家に住んでいても何もおかしいことはない。アタシの親も「娘が一人増えた!」って喜ぶことだろう。懸念点はレイの身元がわかって保護者が来た時かな。その頃には、アタシはレイを返したくなくなってるかもしれない。

 

「理事長はどう思う?レイは孤児としてウチが迎え入れてもいいと思うんだけど」

「不明っ……‼︎私も記憶喪失で身元不明のウマ娘など初めてなのだ……!しかしっ‼︎私個人の意見とするならっ!双方の合意があれば良いと思うっ‼︎」

「じゃ、決まりだね」

 

 よかったよかった。ここで反対なんてされたらアタシが理事長にあーんなことや、こーんなことをしなきゃならないところだった。アタシも手荒な真似はしたくないからね。

 

「いやいやっ!待ってくださいっ⁉︎そんなことしてもらうわけにはっ!──

「そんなことって何?レイはアタシと姉妹になるのは嫌?」

 ──そんなことないです……」

「やっぱり決まりだね!」

 

 

 

 

 その後何やかんやあってアタシに姉妹が増えたよ!

 

 

 




今回ちょっとダイジェスト気味になってしまった気がしている。
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