素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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第8話 ってわけで俺も紗奈の共犯者になったんだから裏切るなよ

「こんな感じでどうかしら?」

 

「ありがとう、助かる」

 

 紗奈が俺の指に巻いてくれたテーピングテープは程よい強さだった。何も考えずに大量の消毒液をぶっかけてきていたあの頃とは比べものにならない成長だ。そんなことを考えていると紗奈はベッドに腰掛ける。

 

「体育館には戻らないのか?」

 

「ええ、もう少し休憩してから戻ろうと思って」

 

「紗奈は体力があんまりないもんな」

 

「だから運動はあんまり好きじゃないのよ」

 

 だから紗奈は昔から体育の授業を何かしらの口実でよくサボっていた。実際に小学四年生の運動会の時、こけた俺に付き添って保健室に行った理由は、その後にあった綱引きに出るのが面倒だったかららしいし。

 

「あっ、でも今回は春人が心配で付き添ってあげたんだから喜びなさい。春人じゃなかったらわざわざついてこなかったし」

 

「なるほど、サボるのはおまけってことか」

 

「ちょっと、せっかく私が良いことを言ったんだからそれをぶち壊すようなツッコミを入れないでよ」

 

「ごめんごめん」

 

 そう言葉をくちにしながら俺は紗奈の隣に座る。すると紗奈はちょっと意外そうな表情になった。

 

「もしかして春人もサボるつもり?」

 

「ああ、てかサボらざるを得なくなったってのが正解だけど」

 

「どういうことよ?」

 

「ほらっ、俺だけ先に戻るのは明らかに怪しいだろ」

 

「なるほど、確かにそうね」

 

 二人とも戻るのが遅いくらいなら全然誤魔化せるが、一緒に保健室に行ったはずなのに俺だけ先に戻って紗奈が全然戻ってこなかったらサボりを疑われるに違いない。だから紗奈に付き合ってやることにしたというわけだ。

 

「ってわけで俺も紗奈の共犯者になったんだから裏切るなよ」

 

「裏切らないわよ、だって私がサボってたのも一緒にバレるし」

 

 紗奈はそう言い終わった途端、そのままベッドに横たわった。完全にここでくつろぐ気満々じゃん。てか、いくら幼馴染とは言え男子の俺の前でよくそんな無防備を晒せるよな。

 

「保健室のベッドって意外と寝心地が良いわね」

 

「あんまり保健室のベッドのお世話にはなりたくないけどな」

 

 過去に保健室のベッドで寝転んだ時は高熱で苦しんでいる時だった記憶があってあまり良い思い出はないのだ。しかも早退して病院に行ったらインフルエンザだったためしばらく家で寝込むはめになったし。

 

「そんなこと言わずに春人も寝転んでみたら? 結構快適よ」

 

「……じゃあちょっとだけ」

 

 好奇心に負けた俺は実際にベッドへ寝転んでみる。紗奈が快適というだけあって寝心地はめちゃくちゃ良かった。

 

「確かにこのベッドは中々いいな」

 

「でしょ、このまま寝れそうなんだけど」

 

「実際に寝たら体育どころかその後にある数学Aの授業までサボるはめになるな」

 

「それは流石にまずいわね」

 

 俺とは違い紗奈は勉強があまり得意ではないため、授業をサボると大ダメージになりかねない。岡山県内でトップの偏差値を誇る高校のため授業難易度もそれだけ高いのだ。

 それから数分間ベッドを堪能し、そろそろ体育館に戻るかとなったタイミングで事件が発生する。先にベッドから立ち上がった紗奈がバランスを崩して俺の方へと倒れてきたのだ。

 

「きゃあぁぁぁぁ!」

 

「おい!?」

 

 突然のことに俺は思わず目をつぶる。そして次に目を開けると至近距離に紗奈の顔があった。こんなに近くで紗奈の顔を見るのは久々だが相変わらずめちゃくちゃ美人だな。そんなことを思っていると突然第三者の声が室内に響き渡る。

 

「ちょっとあなた達、保健室で何やってるの!?」

 

 それはいつの間にか戻ってきていた養護教諭だったわけだが、何故そんなことを言われたのかにようやく気付いて思わず血の気が引く。紗奈がベッドに寝転んだ俺に対して覆い被さるような体勢になっていたため変な誤解をされてしまったに違いない。

 てか、何で紗奈はちょっと鼻息が荒いんだよ。その後、何とか養護教諭の誤解は解けたがサボっていたことがバレたため二人揃って担任から怒られた。

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