素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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第11話 そんな顔をしなくても黒崎君は取らないから

 部屋に入室した後、雑談などを挟みながら順番に歌い始める。俺はというと歌う曲をどうするかでさっきから頭を悩ませていた。

 歌おうと思っていた曲はかなりマイナーなため知らない人が大多数だと思う。だから多分皆んなリアクションに困ると思う。

 かと言って、メジャーな曲はあまり知らないし。そんなことを思いながら歌う曲をどうするか考えていると紗奈が話しかけてくる。

 

「この曲を歌おうと思ってるんだけど春人も一緒にどう? 私一人だと不安なのよね」

 

「あー、これか。まともに歌えるのはサビくらいだけどそれでもいいなら大丈夫だ」

 

「じゃあお願いするわ」

 

 紗奈が提案してきた曲は少し前に流行ったドラマの主題歌だったため大多数が絶対一度は聞いたことがあるはずだ。それから順番は進みいよいよ俺達の番がやってきた。

 俺と紗奈はマイクを持って立ち上がり二人で歌い始める。サビ以外はあやふやなのでちょっと心配だったのだが、俺が歌えない部分に関しては紗奈が上手くフォローをしてくれたため問題なく歌え切れた。

 

「黒崎君と紗奈ちゃん、めちゃくちゃ息がピッタリだったね。私、感動したんだけど」

 

「私と春人は幼馴染だからこのくらいは朝飯前なのよ」

 

 テンション高めの進藤さんから話しかけられた紗奈は得意げな表情を浮かべている。その他のクラスメイト達もちょっと感心した様子だ。

 それにしても紗奈がここまで俺のペースに合わせてくれるとは思わなかった。今までの紗奈なら絶対俺のペースに合わせようとはしなかったはずだ。

 

「そっか、そう言えば二人は幼馴染なんだよね。私にはいないからちょっと羨ましいな」

 

「……例え萌音に頼まれても春人はあげないわよ」

 

「そんな顔をしなくても黒崎君は取らないから」

 

 紗奈と進藤さん、その他女子達はそんな話題で盛り上がっていた。そんなやり取りを見て男子達もニヤニヤしながら俺を見てくる。

 だから恥ずかしくなってしまうのは仕方がないことだと思う。いよいよ恥ずかしさが限界を越えそうになった俺は席を立って部屋の外に出る。

 とりあえずドリンクバーでほとぼりが冷めるまで待つつもりだ。そんなことを考えながらドリンクバーに行く俺だったが、そこには秋夜の姿があった。

 

「おっ、春人じゃん。もしかしてお前もハブられたのか?」

 

「そんなわけないだろ。てか、ハブられるってお前は何をやらかしたんだよ?」

 

「実は幼馴染は負けヒロインかどうかって議論になったんだが、ついついやり過ぎてしまって部屋に居づらくなったんだよ」

 

「うわぁ……」

 

 どういう経緯でそんな話題になったのかは知らないが、秋夜の前でうかつに幼馴染の話題を出すとこういうことになってしまうのだ。

 多分クラスメイト達も秋夜の姿を見て結構ガチ目にドン引きしたに違いない。だから秋夜の前で幼馴染という単語は出すのは変なスイッチが入ってしまう可能性があるため要注意だ。

 

「……ちなみに秋夜は何て言ったんだ?」

 

「勿論幼馴染は負けヒロインじゃなくて勝ちヒロインっていうことを熱く語らせて貰った」

 

 うん、知ってた。秋夜の中で幼馴染は勝者であり、敗者になることなんてあり得ない。そんなことを思っていると突然第三者の声が聞こえてくる。

 

「へー、川口もたまには良いこと言うじゃない。最後に勝つのは誰が何と言おうと幼馴染って決まってるわ」

 

「やっぱり伊吹さんもそう思うよな、幼馴染が負けヒロインとかいう話が通じない奴らばかりで困ってたんだよ」

 

 紗奈の言葉を聞いた秋夜は数少ない同志を見つけたような表情を浮かべていた。どうやら紗奈も幼馴染勝ちヒロイン派らしい。

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